[本]のメルマガ

配信済のメルマガのバックナンバーを見ることができます。また、記事に対するコメントもお待ちしております。
<< [本]のメルマガ vol.759 | main | [本]のメルマガ vol.760 >>
[本]のメルマガ vol.760

■□------------------------------------------------------------------
□■[本]のメルマガ【vol.760】20年 月25日発行
[ダ・ビンチ、いまだに新発見 号]
http://honmaga.net/ 
■□------------------------------------------------------------------
□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4015名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
□■------------------------------------------------------------------

★トピックス
→募集中です
★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→ダ・ビンチは、古生物学者のはしりでもあつた?

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→蒙昧の結果、滅びる国

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→コロナは、ギャグ漫画家を越えるギャグを連発させる

★「はてな?現代美術編」 koko
→ヤン・ヴォーがわからねぇ!

★新連載 内藤陽介
→「沖縄切手モノ語り」スタート

----------------------------------------------------------------------
★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp

『エネルギーの物語:わたしたちにとってエネルギーとは何なのか』

マイケル・E・ウェバー著 柴田譲治訳
四六判 320ページ 本体2,400円+税 ISBN: 9784562057801

「水」からはじまるエネルギーはつねに人間社会の中心である。エネルギーが
人類とどのようにかかわり進歩してきたか、そして未来はどうなるのか。その
負の面も余すところなく伝え持続可能な明日を探る、新時代の必読書。
----------------------------------------------------------------------
■トピックス
----------------------------------------------------------------------
募集中です

----------------------------------------------------------------------
■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
----------------------------------------------------------------------
第112回 トスカーナはクジラの化石の地だった ─ 再びレオナルド・ダ・ヴィ
ンチへ

コロナウイルスの危機にみまわれるとネガティブな状況の本を読むことになっ
たが、その危機がまだ完全には収束していない現在、今度はまた過去の天才レ
オナルドに還るの?と思われるかもしれない(思い過ごしだろうけれど)。

イタリアはピサ大学、米国はカリフォルニア州のサン・ディエゴ大学と、二つ
の大学の古生物学者たち四人が、レオナルド・ダ・ヴィンチのアランデル手稿
(大英図書館蔵 The Codex Arundel)のページについて研究発表をした7月21
日付けの記事がある。
このアランデル手稿が書かれたのは15世紀末から16世紀始めで、283ページの文
書という。

上記の古生物学者たちの研究の対象となったレオナルドの紙片には、海の怪物
のような図が描かれており、それまで定まっていた解釈によれば、それはレオ
ナルドが古代文学のテーマを気晴らしともいえる空想で描いた図と考えられて
いた。

書かれた文章も完結しないフレーズや訂正が多いのだが、それでも2014年に米
国の生物学者が、怪物ではなくクジラ目の化石を描いたと仮説を出版するほど
には明白だった。

今回、ピサで発表されたのは、明確にレオナルドが生きていた時代のトスカ─
ナで多数見られたクジラ目の化石を、省察力によって詳細に描いたものと『ヒ
ストリカル・バイオロジー』(Historical Biology)誌に発表された。

レオナルドについては、画家・彫刻家・デッサン画家・建築家・解剖学者・工
学士・哲学者のタイトルがあるが、それに現代の地質学の先駆者という新たな
タイトルがつけ加えられると四人の研究者の一人、アルベルト・コッラレータ
(Alberto Collareta)氏はいう。

その分析によれば、地質学、とくに化石についてのレオナルドの省察力は海洋
脊椎動物を含めている点でさらに幅広く、脊椎動物の古生物学の先駆者であり、
大博物学者として知られるフランス人のジョルジュ・キュヴィエに三世紀も先
んじていると上記の研究発表にある。

さらにコッラレータ氏の発表はこう続く。レオナルド時代のトスカーナはまさ
に“クジラ目の化石”の地であったが、その起源も古い。
つまり、260万年以上遡る鮮新生に後戻りして、アペニン山脈から沿岸平野へと
広がるトスカーナの丘を散策しながら旅ができたとしたら、今日、目にするの
とはかなり違った風景を観察できるだろうと、氏は書いている。

私たちが目にするであろうものは、なんと、世界の表面にたっぷりと多量にあ
る、水なのだ。
鮮新生の270万年間、トスカーナのかなりの領域は多様性に富んだ生物が密集す
る海中にあったのだ。

それから起きた地質学的かつ気候上の大きな変動によって、この領域は型が作
り直され、現状の環境の起源となった。レオナルドが生まれ、青年になるまで
生きたヴィンチ村の高地を含めて、トスカーナの丘の多くは古代の水深の上に
沈積した主として砂と粘土でできており、現在も鮮新生の海洋動物相の残骸が
ある。

化石の出土品が見つかるのは、クジラ、イルカ、ジュゴン、サメなどで、ヒマ
ワリ畑やブドウ畑、丘の側面などからよく出てくるそうだ。
最近の発見には、五百万年前にグロッセートの海に生存したイルカの絶滅種が
あるという。


◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
イタリア・フィレンツェ在住。著書に『天才力 三巨匠と激動のルネサンス (
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ)』(世界文化社)、『メディ
チ家 ルネサンス・美の遺産を旅する』(世界文化社)。
melmaで16年間、メルマガ「イタリア猫の小言と夢」を発行。


----------------------------------------------------------------------
■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
----------------------------------------------------------------------
磯崎憲一郎 『日本蒙昧前史』文藝春秋 2100円+税

新型コロナウイルスの感染が、再び猛威を振るっています。政府は感染予防に
注意を払うよう呼び掛ける一方、国内旅行を促す「Go to キャンペーン」を
始めました。この国の政治は、支離滅裂です。政治学者の坂野潤治は、21世
紀日本政治の混迷を「崩壊の時代」と評しました。芥川賞作家の著者に、この
状況は「蒙昧」の極みと映じています。日本は「蒙昧」の結果滅びゆく国となっ
た。「蒙昧」は、日本が「もっとも果報に恵まれていた」197、80年代に
かけての時代にすでに兆していた。それが、著者の歴史認識です。

拉致監禁された菓子メーカーの社長。五つ子の父親となったNHKの記者。19
70年の大阪万博で太陽の塔によじ登った「目玉男」。28年間、グアム島の
ジャングルに籠っていた、元日本兵…。著者は当時を象徴する出来事の、有名
無名の当事者たちを次々と登場させています。そこに登場するエピソードは、
興味深いものですが、どこまでが事実で、どこまでがフィクションなのか。当
時の記憶を鮮明にもつ評者にも判然としません。著者は、登場人物たちの辿っ
た数奇な運命を描くと同時に、彼らに時代への批判を語らせています。

「蒙昧」をもたらした主犯の一つは、やはりマスメディアでしょう。日本の
マスメディアが狂い始めたのも、「もっとも果報に恵まれていた時代」におい
てです。マスメディアは、菓子会社の社長を拉致した犯罪グループを英雄に祀
り上げてしまいました。組織的詐欺事件の首魁が取材陣の眼前で殺されていま
す。五つ子の父親は、NHKの記者ですが、土足で自分たちのプライバシーを踏み
にじる、同業者に深い軽蔑の念を抱きます。ジャングルから帰還した元日本兵
は、メディアが作り出した自らの虚像に苦しめられることになります。

「目玉男」と元日本兵に共通するものは、物質万能主義と拝金主義への懐疑の
念でした。「目玉男」は、最愛の姉を交通事故でなくしています。便利さの追
求と引き換えに尊い命が毎日失われている。「人類の進歩と調和」という美名
のもとに機械文明を讃美する万博への抗議の意味をこめて、彼は太陽の塔の目
玉の部分を占拠したのです。元日本兵は、28年間、1円もお金を遣うことな
く過ごしてきました。ところが日本に帰るとみんなの頭にはお金のことしかな
い。そうした風潮に異を唱えるために彼は国政選挙に出馬したのです。

「蒙昧」はこの時代から始まっていた。しかし当時はまだそれに疑問をもち、
異を唱える人がいました。彼らの抗議に共感する人もいたのです。五つ子の父
親の妻、「目玉男」の亡くなった姉、そして元日本への妻。3人は個性的で腹
の座った女性たちであり、闘う彼らの精神的支柱となります。元日本兵は、手
先の器用さを生かして、晩年は陶芸三昧の生活を送ります。彼が長い苦闘の果
てに幸福を掴んだことに安堵するとともに、陶芸に打ち込むその姿には、「蒙
昧」の対極には何があるのかが、暗示されているように思いました。

◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「怠ける権利」高文研
http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

----------------------------------------------------------------------
■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
----------------------------------------------------------------------
今回は「ギャグ殺し」の話

今政権は漫画家の上手を行きすぎて本当にどうにもこうにも、にっちもさっち
も、兎にも角にもな状態だ。

アベノマスクは言うに及ばず、前に取り沙汰された「お肉券」「お魚券」も凄
すぎて「いや、さすがに現実でそれを考える奴なんて」居ないと思ったらうじゃ
うじゃいたし、GoToなんちゃらの破壊力もなかなかのものだ。
「全てを乗り越えた東京五輪」のセリフも…。

政権のみならず各首長もなかなか侮り難い。
やれ「大阪モデル」とか「東京アラート」とか…フィクションならばまだしも、
言ってて(やってて)恥ずかしく無いのか?

こちらの発想力が貧困すぎるんじゃないかと思うぐらい、「漫画家の斜め上」
じゃなく「真上はるか上空」を行ってくれる。

そして「笑えない」

こんな笑えない議員や組長たちを我々が選んでいると言う、もっと「笑えない
話」がこの「真上はるか上空」に漂っているのだが。

今回のGoToご旅行キャンペーンは瀕死の旅行業界を救うべく、だそうだがオー
バーツーリズムによって「まともに歩けない街」や「何時間も並ばなければな
らない施設」の構造そのものに問題はなかったのだろうか。
「新しい生活」と謳いながら「元に戻ろう」とする。その後押しをなんで税金
を使ってやらねばならない?
「明日から始まりますが詳しくはまだ決まっておりません」最初の説明会はキャ
ンペーンから外された東京で行われたそうで、…ブラックジョークのダブルパ
ンチ。真上も真上「成層圏」まで行ってる。

私がはるか昔に描いた「嗚呼、宴会の灯は消えず」と言うマンガは政府が庶民
パワーを増幅させる「宴会を禁止する」と言うアイデアが元だった。「宴会は
禁止、パーティーは認める」
今、5人以上の会食は自粛して欲しいと要請され、その裏で麻生派の1000人規模
の政治資金集めのパーティーが行われた。

上も上、太刀打ちできない「ギャグ殺し」案件だ。

その作品の中で宴会派の主人公が拘置所内で「づぼらやのテーマソングを歌い
ながら一人宴会をする」シーンがある。

その「づぼらや」もコロナ禍の中、廃業を余儀なくされた。フグが泣いている
ぜ。

◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
----------------------------------------------------------------------
■はてな?現代美術編 koko
----------------------------------------------------------------------
第108回 『リハビリ美術館探訪 苦痛編 ─── 国立国際美術館』

自粛生活から解放されて、再開が始まった美術館や博物館を訪問し始めました。
フランスでもボチボチ再開され始め、美術好きなフランス人は大喜びです。
会場でのオークションも始まりました。

日本で毎日報告される新規感染者数は、ヨーロッパの国々では感染が収まった
と認識されている数です。日本人は慌てず騒がず、マスクをして注意しながら
淡々と日々の生活を自由に送ればいいと思います。

そんな考えのもと、この春に開催予定で会期延長された関西の展覧会を観に回っ
ています。

素直に楽しむ展覧会もあれば、国立国際美術館の『ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ』
展のように、強制的に脳みそのリハビリを余儀なくされるものもあります。。

作品が体に定着しない!
イメージが染み込んでこない!
なんのことだかわからない!

と、とんだ体たらくな状態で、展示室内を行きつ戻りつ、最終的には絶望的な
気持ちを抱え会場を後にするのでした。

この日は、ミュージアムショップに置いてあった、会田誠の『天才でごめんな
さい』の展覧会カタログをパラパラめくって心を落ち着かせる、そんな結末に
なってしまったのです。

□『ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ』展 国立国際美術館サイト
http://www.nmao.go.jp/exhibition/2020/danh_vo.html

ヤン・ヴォー(Dahn Vo)は1975年、ベトナム・バリアに生まれ、現在はベル
リンとメキシコ・シティを拠点に世界各地で活躍。4歳の時にベトナムからの難
民として、海上でデンマークの船に救助され難民キャンプを経てデンマークに
移住。コペンハーゲン王立美術学校、フランクフルト(ドイツ)のシュテーデ
ル美術学校で学んだアーティストです。

日本での個展はこれが初めてで、以前はヨコハマトリエンナーレなどに出品さ
れていたらしいのは、あとからわかったことです。

私を悩ましたのは、ベトナムについての絶対的知識不足、そして言葉が大きな
意味を持っていそうなのに十分にニュアンスを理解できない言語の壁、視覚的
に興味がもてないことへの焦燥感、などなど。

ピンとこないのがここまで重なると、やはり絶望的になってしまいます。

私が現代美術館へ足を運ぶのは、理解するために作品鑑賞するわけではありま
せん。それは結果です。

そもそもはただ好きになり、好感を持った事物に対して理解したくなる衝動に
駆られるのが楽しいからです。。

理解したくなる気持ちが起これば、もうしめたもの。
あとはひたすら精進あるのみ。

ところが今回は、額装されたフランス語の手紙(宣教師が死刑になる前に父親
に向けて書いたもの)を読んで内容がわかったとしても、「それが何なんじゃ!」
みたいな。

辛うじて木枠に収まったシャンデリアを観た時になんとなく興味が持てたかな。
でもホワイトハウスのレターヘッドにキッシンジャーのサインがある複数の手
紙も、「だからなんなん?」の有様。

屈辱的美術館探訪後、ピンとこないことへのくやしさから調べはじめる始末。
自宅でヤン・ヴォーのオークション落札状況を確認。
「えー、結構するじゃん・・・・吃驚!」

※高いものならば2000万円ほどの価格がついている作品もありました。
基本は数百万円台のものが多いようでした。
別に価格が全てではないので、あくまで参考程度です。

2011年のインタビュー記事を読んでも、やっぱり肌に馴染まないというか、不
思議な虚無感。

しばらくは日々の移動電車の中で、展示を思い出しては漠然と想う日々が続く
ことになりました。

□Art-it 「ヤン・ヴォーインタビュー」記事(日本語)
https://www.art-it.asia/u/admin_ed_feature/d0NKgOxvJsimL4w1IZck

歴史的文書や事物を分解して再構築する作業をしていることはわかったけれど、
心に響くまでにはまだ時間がかかりそうです。

ただ言えることは、展示している事物が全て本物であることが、この展示を堅
牢な質の高いものにしていることは間違いないです。

私がミュージアムショップ内で会田誠の展覧会カタログに身を寄せたのは、視
覚的直観的な感情を持ちたかったからなんだろうと思います。
椹木野衣氏のコラムの中に、「現代美術館の存在意義」について以下のような
文章がありました。

≪未だ価値の定まり切らない同時代の表現に対して、広く論議を募り、私達の
美術の歴史を前進させるために存在する・・≫
私も少しは前進できるかな?

結論:国立国際美術館にはいつも感謝しております。

◎koko
円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html(現在休刊中)

----------------------------------------------------------------------
■沖縄切手モノ語り 内藤陽介
----------------------------------------------------------------------
(1)ニミッツ布告と占領時代の開幕

第二次世界大戦末期の沖縄戦は1945年3月26日、米第77歩兵師団が慶良間諸
島の座間味島など数島に上陸したことから始まった。

慶良間諸島に上陸した米軍は、即日、“太平洋艦隊司令長官・太平洋区域司
令官兼米国軍占領下の南西諸島及びその近海の軍政府総長 チェスター・ニミッ
ツ米海軍元帥
https://blog-imgs-142.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20200725000239789.jpg 

の名で米国海軍軍政府布告第1号を公布した。つづいて沖縄本島に上陸した19
45年4月1日にも同名の布告を公布、4月5日には読谷村比謝に軍政府(琉球
列島軍政府。長官はニミッツ)を開設した。

この米国海軍軍政府布告第1号は、米軍占領地おいて日本政府の全ての行使権
を停止し、南西諸島及び近海並びにその居住民に関するすべての政治及び管轄
権並びに最高行政責任が、占領軍司令官兼軍政府総長、米国海軍元帥であるニ
ミッツの権能に帰属すると宣言するもので、同布告の第10号までは“ニミッツ
布告”と総称される。

ニミッツは、1885年2月24日、テキサス州フレデリックスバーグ生まれ。1905
年に114人中7番の成績で海軍兵学校を卒業後、少尉候補生として東アジア航海
に参加した際、日本海海戦の勝利で一躍時の人となっていた東郷平八郎と会話
して大いに感銘を受けたという。

その後、第一次世界大戦中に大西洋潜水艦隊参謀長。1939年に海軍省航海局長
を歴任し、日米開戦直後の1941年 12月、太平洋艦隊司令長官に任命され、陸軍
のダグラス・マッカーサーが担当した太平洋南西部を除く太平洋における最高
指揮官となった。

1942年6月にはミッドウェー海戦で勝利を収め、以後、ソロモン海戦、ギルバー
ト諸島の戦い、マリアナ沖海戦、フィリピン進攻で軍功を挙げ、マッカーサー
と並ぶ米軍の象徴的存在として、1944年12月、海軍元帥に昇進。日本の戦時歌
謡「比島決戦の歌」では「いざ来いニミッツマッカーサー 出て来りゃ地獄へ逆
落とし」と歌われた。

日本側に「来い」と言われるまでもなく、ニミッツは沖縄戦を指揮して米軍に
勝利をもたらしたが、7月31日付で軍政長官は陸軍大将のジョゼフ・スティルウェ
ルに交替してニミッツは沖縄を去るが、彼の名前で出された“ニミッツ布告”
は、1972年5月の沖縄の本土復帰まで効力を保ち、現在に至るまで沖縄の米軍
基地問題の原点となっている。

その後、ニミッツは、1945年9月2日、戦艦『ミズーリ』での降伏調印式に参加
し、1945年12月から1947年12月まで海軍作戦部長を務めて引退。1966年2月20
日、80歳で亡くなった。

さて、1945年6月23日(ただし、異説もある)、80日を超える激戦の末、司
令官・牛島満中将が摩文仁の司令部壕で自決したことにより日本軍による組織
的な抵抗は終了。沖縄は米軍占領下に置かれた。その後、玉音放送が行われた
8月15日には米軍政下の行政機構を作るための準備機関として沖縄諮詢委員会
が発足。米軍の軍政区域は沖縄・奄美の全域に拡大されることになり、宮古諸
島は12月8日、八重山諸島は12月28日、奄美群島・トカラ列島は翌年2月2日に軍
政下に入った。

翌1946年1月29日、東京の総司令部により「若干の外郭地域の日本からの統治
上及び行政上の分離に関する総司令部覚書(外郭地域分離覚書)」が発せられ、
「北緯30度以南の琉球(南西)諸島(口之島を含む)、伊豆諸島、南方諸島、小笠
原諸島及び硫黄列島並びに他のすべての外郭太平洋諸島(大東諸島、沖ノ鳥島、
南鳥島、中ノ鳥島を含む)」は正式に日本の行政権から分離され、同年4月22日、
諮詢委員会は琉球列島米民政府(奄美・沖縄・宮古・八重山の4地区におかれ
ていた。以下、民政府)へと改組される。

沖縄が“日本”から切り離されたことを示しているのが、

http://blog-imgs-23.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20051210014053.jpg

の郵便物である。

1945年8月の終戦に伴い、日本から海外宛の郵便物は取扱停止となったが、同
年11月、葉書に限って、まず、旧外地(ただし、当初はソ連占領地域は除く)
などとの郵便交換が再開された。

この郵便物は、そうした状況の中で、このカバーは沖縄宛に差し出されたもの
で、差出人の発想では、沖縄は“日本”の一部だったのだろうが、米国側はす
でに沖縄は日本から切り離されており、占領当局の視点では、日本から沖縄宛
の郵便物も“外国郵便(国際郵便)”という扱いになった。

この結果、当時の規定では、日本から沖縄宛には、葉書の差出しか認められず、
封書を差し出すことは認められないという結論が導き出され、この郵便物もルー
ル違反ということで差出人に返戻された。なお、郵便物には、「国際郵便通信
トシテ許可セラレタルモノハ端書(=葉書)ノミナルニ付キ此ノ手紙ハ差出人
ニ返送ス」との事情説明の付箋が付けられている。

ところで、この時期、広義の“琉球”として日本政府の施政権から分離された
地域の状況は、地区によって大きく異なっていた。

たとえば、戦闘により徹底的に破壊された沖縄本島の場合、米軍は住民に対し
て無料で生活物資を提供する変わりに無償労働を提供させるという、実質的な
無貨幣経済政策が採られていたこともあって、当初は郵便物も無料で取り扱わ
れていたが、1946年7月1日になって、ようやく、有料での郵便の取扱が再開
された。ただし、当初は切手の代わりに郵便物に料金徴収済みであることを示
す印を押して対応しており、切手は使用されていなかった。

https://blog-imgs-142.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20200724221450adc.jpg
は、1947年5月5日、1種(普通便)、30銭などの数字が書き込み、具志川局
の料金別納印を押して差し出された郵便物)

これに対して、同じ沖縄地区であっても、戦争の被害が比較的軽微だった久
米島(沖縄本島の西100キロに位置する)では、早くも1945年10月1日には米軍
政下での郵便が再開され、これにあわせて謄写版印刷の暫定的な切手(久米島
切手) http://blog-imgs-23.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20051210015027.jp

が発行されている。ただし、1946年4月に沖縄地区で民政府が発足すると、久
米島はそこに編入され、切手の発行も停止されてしまう。

一方、宮古地区や八重山地区では、当初は島内に残存していた日本切手が使
用されていたが、宮古地区では1946年2月から日本切手に逓信部長・富山常仁
の認印を押捺した暫定切手(富山印切手)
http://blog-imgs-37.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2009112708443125a.jpgが
使用されるようになった。米軍政下の体制が整い始めるなかで、戦前に売られ
ていた切手と、米軍政下で売られた切手を区別するため必要が生じたためであ
る。

また、八重山地区では、1947年5月末日限りで日本切手が使用禁止となり、沖
縄地区同様、切手を使わずに料金徴収済の印を郵便物に対応する時期を経て、
1948年1月から、日本切手に逓信部長・宮良賢副の認印を押した暫定切手(宮
良印切手 )http://blog-imgs-23.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2008030501143
0.jpg

が使用されている。
この間、沖縄地区でも、1947年11月1日、日本切手に通信部長・平田嗣一の認印
を押捺した暫定的な切手(平田印切手)が使用されることになったが、沖縄本
島の郵便局はほとんどすべて焼失し、戦前の日本切手の在庫もほとんどなかっ
たため、戦後、日本本土から切手・葉書を持ち込んで平田の印が捺されている。
なお、物資不足の折から、平田印が捺された葉書のうち、売れ残りの在庫となっ
たものは、1948年以降、“通信事務”の印を押して郵政当局の業務用の通信に
使用された。

https://blog-imgs-142.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20200724234848154.jpg
は平田印の捺された通信事務用の葉書 

さらに、奄美地区でも、当初は日本切手がそのまま使用されていたが、1947年
12月1日、日本切手に“検”の字の印を押した暫定切手(丸検切手)
http://blog-imgs-55.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20131110174418a73.jpg 
が発行され、1948年2月1日以降、無加刷の日本切手は使用停止となった。
このように、奄美まで含めた種々雑多な地域の連合体として始まった“沖縄
”の米軍政は、東西冷戦が進行してく中で、1948年夏頃から徐々にRYUKYUSとし
て統合されていくことになる。

内藤陽介
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会
員。フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国
家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。
最新作『みんな大好き陰謀論』ビジネス社
電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」「年賀状の戦後史」角川
oneテーマ21などがある。

----------------------------------------------------------------------

■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在4015名の読者の皆さんに配信してお
り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。

----------------------------------------------------------------------
■編集後記
おそらくは七十代の方から最近読んだ「テロリストのパラソル」藤原伊織の感
想を聞いた。かつて江戸川乱歩賞と直木賞をタブル受賞した本で、私も乱歩賞
受賞後すぐに読んだ覚えがある。

2大文学賞受賞作だけに、決してつまらない作品ではないが、世間が激賞する
ほど良い作品だとは当時は思えなかった。

この方も、最初はそう思っていたらしい。しかし出版された年と著者のプロフィー
ルを見てから「ああ、なるほど!」と納得して、すばらしい作品なんだと分か
るようになったとか。

どういうことかというと、かつて学生運動に身を投じていた人が、この作品の
出版年である1995年ごろ、何を考えて生きていたのか。ほぼ同時代に生きてい
た自分には身に染みるようにわかる・・・おそらく文学賞の審査員たちもそう
ではなかったか?ということらしい。もちろん今では考えが変わっているから、
何の予備知識もなしに読むと評価が変わるわけだ。

読者(要は自分)の生きてきた時代と出版のタイミングで作品評価がこうも違っ
てくるとは思わなかったと、読んだ本人も驚いておられた。

====================================================
■ 電子メールマガジン「[本]のメルマガ 」(毎月5・15・25日発行)
■ 発行:[本]のメルマガ発行委員会
■ 掲載されたコンテンツを小会の許可無く転載することはご遠慮ください。
■ copyrightはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・ご質問は25日号編集同人「朝日山」まで
メールアドレス asahi_yama@nifty.com
(あっとまーくは、全角ですので半角にしてください)
■ バックナンバーurl http://back.honmaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を通じて発行しています。
■ メールマガジンidナンバー:13315
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行えます。
====================================================

◎このメルマガに返信すると発行者さんにメッセージを届けられます
※発行者さんに届く内容は、メッセージ、メールアドレスです

◎[本]のメルマガ
 の配信停止はこちら
⇒ https://www.mag2.com/m/0000013315.html?l=kbi00b11f0

| バックナンバー | 21:16 | comments(0) | -
コメント
コメントする









SEARCH
[本]のメルマガ
哲学・思想・社会などの人文書や、小説や詩など芸術の最前線、書籍の出版流通、電子出版などの「本」の現在を気鋭の出版社員、書店員が伝える、まさに[本]のメルマガです。
発行周期発行周期:月3回
バックナンバーバックナンバー:すべて公開
マガジンIDマガジンID:0000013315

メールアドレス:

メールアドレス:
Powered by まぐまぐ
※読者登録は無料です

コーチ募集(コーチングバンク) 無料 コーチング カーディーラー経営品質向上 CSR コンプライアンス 経営倫理 実践研究 BERC フリーラーニング
LATEST ENTRY
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031     
<< August 2020 >>
ARCHIVES
LINKS