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[本]のメルマガ vol.757


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□■[本]のメルマガ【vol.757】20年6月25日発行
[有料レジ袋 号]
http://honmaga.net/ 
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□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4065名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→募集中です
★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→休載です

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→今こそソンダク

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→STAY HOMEからWALKING、そして空き巣か竜巻か

★「はてな?現代美術編」 koko
→休載です

★特別寄稿 内藤陽介
→レジ袋有料義務化反対の理由

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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp

『時が止まった部屋:遺品整理人がミニチュアで伝える孤独死のはなし』
小島美羽著 本体1,400円+税 ISBN: 9784562056804

【フジテレビ「ザ・ノンフィクション」6月21日放送(孤独死の向こう側:27歳
の遺品整理人)で大反響!】孤独死、ごみ屋敷、残されたペットたち——故人
の部屋を片づけ、弔いつづける27歳の遺品整理人が依頼現場をミニチュアで再
現。死と向きあってきたからこそ伝えたい想いを初書籍化。
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■トピックス
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募集中です
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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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スーザン・ソンタッグ 富山太佳夫訳 『隠喩としての病 エイズとその隠
喩』 みすず書房 3200円

私は石田純一という人が大好きです。かの「不倫は文化」発言。まさにそのと
おりだと思いました。不倫がなければ、『アンナ・カレーニナ』も『ボヴァリー
夫人』もこの世に存在しないのですから。10歳も歳が違わない義父の東尾修
に、へこへこと頭が上がらないのもおかしい。それだけに彼が新型コロナウイ
ルスに感染した際、テレビで謝っていたことには失望しました。彼の行動に、
軽率な面があったのかもしれません。しかし病人は、本来労わられるべきもの
です。病人を指弾し、謝らせる社会は、それこそ病んだ社会です。

著者のソンタグが乳癌に罹った時、彼女は病そのもののもたらす苦痛だけで
はなく、癌患者を道徳的能力的劣者とみなす風潮にも打ちのめされます。19
世紀を代表する病は結核でした。結核は、空気を扱う「きれいな」器官である、
肺に生じます。かつて結核は、過剰な情熱をもち、たとえば詩人のような感受
性の鋭い人が罹る病気だと考えられていたのです。結核には高みに昇るイメー
ジが託されていました。高原のサナトリウムに収容された結核患者の命は静か
に燃え尽き、天へと召されていくという表象が広まっていました。

20世紀を代表する病は、癌です。癌は、排泄器や生殖器のような「恥ずかし
い」部位にも生じます。ロマン主義の世紀に、結核は精神性と結びつけられて
いましたが、高度資本主義の世紀に癌は、欲望と結びつけられます。欲望やス
トレスをコントロールすることのできない、競争社会の敗者が癌に罹ると人々
は信じていたのです。癌患者が経験するのは、一つには強い恥の意識です。癌
に罹った人は、「なぜ自分が?」と問います。癌は懲罰と受け止められていま
した。癌患者は、恥だけではなく罪の意識にも苦しめられたのです。

20世紀末には、結核はもとより癌も、必ずしも不治の病ではなくなりました。
これらの病気に託された隠喩も和らいでいきます。しかし、性行為を介して伝
染するエイズの出現は、病をめぐる隠喩を再燃させていったのです。感染病対
策は、これまで戦争の隠喩で語られてきました。「侵略」、「戦い」、「殲滅」、
「勝利」等々のことばが、頻繁に用いられてきたのです。病気とその治療を戦
争の隠喩で語ることに、著者は強く反対しています。「病気をデーモン化する
発想から、患者に罪を着せる方向への移行は必然である」(102頁)。

病はただ病として扱い、病人に対して適切な治療を施せ。過剰な意味を病に付
与して患者を苦しめるな。これが自らの闘病体験から導きだされた著者の結論
です。コロナ禍の日本で感染者は、「自粛」の「和」を乱す非同調者として指
弾を受けます。現在の東京都知事は、「夜の街」ということばを用いることで、
この病に道徳的意味を付与したがっているようにみえます。コロナとの戦いを
「第三次世界大戦」に喩えた安倍首相には、開いた口が塞がりません。安倍政
権こそが日本の癌だ、などといえばソンタグに怒られるでしょうが。

◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「怠ける権利」高文研
http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「歩く」話

「ステイホーム」だ「リモート授業」だとほとんど家から出ない生活が続いて
いる。

元々漫画家なんて家業は引きこもりの延長みたいなもので、結構仕事をしてい
た時などは、ほぼ一日中机の前というのも珍しくなかった。

漫画の仕事より講師の仕事がメインになってからは逆に移動が多くなって一時
は分刻みで学校のハシゴをしていた時もあった。その時は逆に「少しは机の前
に座れよ!」な状態だったりも色々あって講師業も縮小傾向になったがそれで
もなんだかんだと外出する時間は多かった。

それがいきなり「ほぼ家生活」に。

「まあ、昔の漫画三昧生活に戻ったと思えば」と軽く考えていたが、若い頃の
引きこもりと歳をいってからの引きこもりでは筋肉量の減りが全然違う事に気
づいた。
ただでさえ「膝が」「腰が」「肩が」「足裏が」「右手の親指の付け根が」と
言って整形に行っては、全て「加老のせい」で片付けられてしまう昨今、この
ままではヤバイと家の周りを歩く事にした。

「郊外型住宅」
聞こえはいいが単なる田舎で車がなければ生活が出来ない場所に住んで30年近
く。駅と家の往復ぐらいしか歩く事は無かった。

だが「郊外型住宅」とはつまり「宅地開発された住宅と店舗しかない」場所で
店舗は閉まっているため歩くと言っても「人の家を見て回る」しかする事がな
い。
そして下手に住宅地の中に足を踏み入れると戸建てダンジョンと言う迷路には
まり込んでしまうのだ。

微妙に曲がった宅地内の道路は三半規管を迷わせ、帰路に向かっているはずが
どんどん遠ざかってしまう現象にパニックになりそうになり(単に方向音痴と
もいえるが)人から見たら空き巣の下調べのようにも。

それでも何度か歩くうちに「この辺りは開発初期、この辺はバブルの前のお買
い得な物件」「おお、この区画は敷地面積がデカい!このサイズだと二世帯住
宅か?」「なんかバブリーな物件です事。分譲当時はんー千万だっただろうか」
などと。

空き巣から不動産屋のようになって行く。

歩く事で血流が良くなりひいては脳を活性化させる事に繋がる様なのだが…私
の場合、漫画のアイデアとか文章の整理とかではなく不純な興味だけに特化し
ている様だ。

この辺りの開発住宅地は山を切り開いて出来ているのでほんのちょっと足を伸
ばすと森やら谷やらがある。
真に脳の活性化を求めるならその辺まで行けば良いのだが、本格的に遭難の恐
れがあって今は躊躇している。


◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html

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■特別寄稿 レジ袋有料化に反対する! 内藤陽介
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7月1日から、プラスチック製買物袋(以下、レジ袋)の有料化が全国で義務
付けられ、無料配布は禁止される。

この問題については、筆者は、自らがコメンテーターとして出演した文化放
送のラジオ番組、「おはよう寺ちゃん」でも幾度となく述べた通り、絶対に反
対の立場である。今春、この問題を初めて取り上げた頃は、ほとんど世間の反
響はなかったが、今月に入り、いよいよ制度の実施が近づいてくるなかで、ツ
イッターで#レジ袋有料化に反対します とのハッシュタグのついたあるツイー
トをリツイートすると、思いの外多くの反響が寄せられ、以後、毎日、この問
題についての発信するようになった。

そこで、今回は改めて、なぜ、筆者は「レジ袋有料化」(正確には、「レジ
袋有料化の制度的な義務化」というべきなのだが、煩雑になるので、本稿では、
以下、単に「レジ袋有料化」という場合には、「制度としての義務化」の意味
を含むものとしたい)に反対するのか、その点について、少し長文になるがま
とめておきたい。

1.経産省の掲げる目的の合理性への疑念
「レジ袋有料化」を進めている経済産業省(経産省)は、今回の有料化制度
は「プラスチックごみの削減」が目的であり、「廃棄物・資源制約、海洋プラ
スチックごみ問題、地球温暖化などの課題に対し、プラスチックの過剰な使用
を抑制し、賢く利用していく必要がある」と主張している。

しかし、プラスチックごみ全体の中で、レジ袋、しかも不法投棄されるレジ
袋のみが海洋プラスチックごみ問題において大きな比重を占めているとは考え
にくい。
そもそも、プラスチックごみの削減を主張するのであれば、買い物をした後
のレジ袋の中に入っている弁当や菓子など、個々の商品の包装等(もちろん、
その中には一般人には過剰包装のように見えても、製品の品質保持のために必
要なものも少なからずあるのだろうが…)を簡素化したほうがはるかに効果的
なのではないのか。

また、レジ袋の多くはポリエチレンでできており、多くのユーザーはそれをご
み袋として再利用している。ポリエチレンのゴミ袋/レジ袋は自治体の焼却炉
で高熱で燃焼されればダイオキシンも発生しないばかりか、生ゴミを燃やす際
の燃焼補助剤にもなっている。したがって、レジ袋のみをやり玉に挙げて、そ
の削減が環境対策になると主張するのはかなりの無理がある。

この点については、レジ袋の製造元である清水化学工業株式会社(以下、清水
化学)のサイトに、詳しい説明が出ている。
http://www.shimizu-chem.co.jp/message.html

したがって、環境やエコという観点からしても、環境対策としてレジ袋(のみ)
の削減を目指すのであれば、最低でも、清水化学の主張を完膚なきまでに論破
したうえで、一般国民を説得する必要がある。

ところが、昨年6月3日、当時の原田義昭環境相は、省内での記者会見で、小売
店などで配られるレジ袋について「無償配布してはならないという法令を速や
かに制定したい」と述べて、有料化の方針を打ち出した際、「レジ袋がプラご
みに占める割合は多くないが、有料化は(削減の)象徴になる」と強調してお
り、レジ袋のみを削減することがプラスチックごみの削減につながらないこと
を自白している。

目指すべき政策目標の達成には資するところが少ないとわかっていながら、生
贄としてレジ袋を取り上げるのは、あまりにも不見識ではないか。

さらに、6月25日付で、環境省は、タレントの西川きよし氏と東京海洋大学名誉
博士のさかなクン氏、それにモデルのトラウデン直美氏の3氏をレジ袋有料化の
“広報大使”に任命した。おそらく、3氏はタレント活動の一環として深く考
えずに引き受けたということなのかもしれない。

しかし、いやしくも、さかなクン氏は、東京海洋大学名誉博士という称号だけ
でなく、客員准教授というポストにもついている。したがって、さかなクン氏
は、海洋大学の教育・研究者という、いわば広義の専門家としての立場から、
「レジ袋がプラごみに占める割合は多くない」との原田前環境相の発言があり
ながら、それでもなぜ、あえてレジ袋のみを規制対象とする今回の「レジ袋有
料化」の広報大使を引き受けたのか、また、清水化学のサイトに記載されてい
るような内容についてどのように考えているのか、自説を明らかにする社会的
な責任があるのではないか。

もっとも、レジ袋問題に限らず、いわゆる “環境問題”についての意見は、多
分に個々人の人生観や世界観と深く結びついており、それゆえ、人々の感情を
刺激するものとなりがちだ。その結果、レジ袋問題に関しても、規制推進派(
将来的には廃止すべきとの主張も含む)と容認ないしは現状維持派との間では、
多くの場合、感情的な表現の応酬になって感情的な亀裂を深めるだけの結果に
なることが多い。
そこで、今度は、いったん環境問題から離れて、レジ袋有料化を制度として
義務付けることの何が問題なのか、考えてみよう。

2.店の自主的な判断を妨害してよいのか
誤解のないように言っておくが、筆者は、それぞれの店が自分の判断でレジ
袋を有料で販売することには反対しないし、レジ袋をもらってなにがしかのお
金を請求されたら素直に支払う。ただし、レジ袋を有料にするのか、無料で提
供する(そのコストは別の形で商品等に転嫁されている)のか、その選択は、
あくまでも、それぞれの店の経営方針なり、扱い商品の性質、顧客対応のため
の行動オペレーションや万引対策などを総合的に考慮して、彼らが自主的な判
断すべきものである。

1円でも安く商品を提供したいのでレジ袋の費用は消費者に負担してほしい
というビジネスモデルは当然あってよいし、筆者もこれまで、その種の店は何
度となく利用してきた。

その一方で、たとえば、汁の出る弁当類や植物、園芸用の土、衣料のクリーニ
ング、通常のエコバッグには収納しづらい大型の商品(ホームセンターなどで
はよくある)、未使用の郵便切手(湿気で裏ノリがべとついたり、折れ曲がっ
たりするのを防ぐには袋があったほうが良い)など、これまでの日本人の生活
の中で、レジ袋ないしはポリエチレンの袋に入れてお客に渡すことが前提になっ
ている商品も少なくない。そうした商品を扱う店では、当然のことながら、レ
ジ袋のみを別料金で精算するのはきわめて不便で、レジ袋の値段はあらかじめ
商品に転嫁しておかなければ極めて効率が悪い。

さらに、スーパーマーケットのように、顧客が自分でエコバッグ等に商品を
詰めるスペースが確保されていない店舗の場合、店側の顧客対応のオペレーショ
ンは根本的な変革を迫られる。

また、いままでは、商品を購入した客には専用のレジ袋に入れて持ち歩いても
らうことで万引の防止策にも立っていたが、客が自分のカバンに入れた商品が、
果たして店の商品を万引きしたものなのか、それとも、店外から持ち込んだも
のなのか、識別は困難になるだろうし、“冤罪”のトラブルも多発することが
予想される。

店側の多くは、こうした事情をすべて勘案して、いままで自分のビジネスモデ
ルに合った方式を採用してきたのであって、伊達や酔狂でレジ袋を無償で配っ
ていたわけではない。そうした個別の事情を無視して、国や自治体が制度とし
て、レジ袋の有料化を義務づけ、さらには無償配布までをも禁じるのは、どう
みても、営業妨害や嫌がらせの類ではないのか。あるいは、大げさな話かもし
れないが、『日本国憲法』でも保障された経済的自由権の侵害にさえ当たるの
ではないかと筆者は考えている。

3.増税への懸念
レジ袋を義務的に有料化するということは、国が新たな規制を作るというこ
とだ。また、環境やエコを大義名分に、広く国民から強制的になにがしかのお
金を集めるのは、事実上の税金といってもよい。

ちなみに、レジ袋の「有料化」に際しては、1枚ずつ値段をつけて商品とする
ことが義務付けられており、たとえば、「2枚目以降は無料」「会員は無料」
といった提供の仕方は違法とされている。ということは、国民が強制的に買わ
されることになるレジ袋には、当然、消費税が課税される。環境省によると、
わが国では年間300億枚、乳幼児を除いた国民一人あたり約300枚を使用してい
るとのことだが、仮に、今回の「有料化」によってレジ袋の使用量が半減して
150億枚になったとして、レジ袋1枚が平均4円で販売されればその売り上げは
600億円、これに10%の消費税がかかるとすると60億円(8%なら48億円)が自
動的に増税となる。国全体の財政規模からすれば微々たる金額ではあろうが、
そこに釈然としない気持ちを持つ国民は多いのではないか。

また、今回のレジ袋問題に関して、小泉進次郎環境大臣は、「レジ袋有料化
をきっかけとしたライフスタイル変革を進める」としているが、その小泉大臣
と環境省は“炭素税”の導入に熱心であることが知られている。

炭素税は“温暖化対策”を名目に、欧州などで導入されている税で、国など
が二酸化炭素の排出量に価格をつけたうえで、企業や一般国民が排出量に応じ
て税金を支払うというのが基本的な仕組みだ。わが国でも、2004年前後に検討
されたが、経済成長を阻害するとの財界の猛反対で実現せず、代わりに、2012
年、エネルギー関連業に限定的に負担を求める地球温暖化対策税(課税額はCO
2、1トン289円)が導入された。

これに対して、2018年、環境省は大臣諮問機関として“カーボンプライシン
グの活用に関する小委員会”を立ち上げ、炭素税の議論を活発化させている。
こういう状況の下で、科学的な根拠があいまいなまま、「レジ袋削減は環境
に良いことだから、レジ袋の有料化を義務付けるのもやむを得ない」というこ
とになってしまうと、そこから「エコと言えば国民は黙って金を出す」、「環
境対策といえば国民は文句を言わない」という空気が醸成され、炭素税の導入
へとつながる懸念が大いにある。

こうしたことをいうと“滑りやすい坂理論”だとの批判が必ず出てくる。
しかし、東日本大震災の後には、明らかに復興を阻害することが予想されてい
ながら復興税が導入されたこと、社会保障財源の確保を名目に第二次安倍政権
は消費税率を二回あげたが、実際には、社会保障費は消費税を含む一般財源で
賄われており、消費税が社会保障財源であるというのは詐術に等しいものとなっ
ていることを、我々は経験から知っている。

そうした経験を踏まえて、あらためて、レジ袋有料化についての政府の広告を
見てみると、有料化を推進する5省の名があり、その筆頭は財務省である。財
務省が筆頭になっているのは建制順であって他意はないという指摘はありうる
が、それでは、なぜ、そもそも財務省がレジ袋有料化の旗振り役に名を連ねて
いるのか。

やはり、レジ袋有料化は、財務省にとって推進すべき(=省益にかなう)政策
と考えているのであろう。過去の経緯を見ても、そこから、財務省が炭素税の
導入をはじめとして“環境”名目での増税をにらんでの地ならしとして、今回
のレジ袋有料化を位置づけようとしているとの懸念を持つのは自然な思考では
ないか。

消費税が導入された時、その大義名分は直間比率の見直しと、税制の簡素化だっ
た。そうれならば、一定の年数が経過したところで、消費税の導入後、直間比
率はどのように変化し、それが国家国民に与えた功罪はいかなるものであった
か、十分に検証し、国民的な合意を得る(よう努力する)のが筋であろう。し
かし、そうした検証結果が国民に共有されることのないまま、突如、消費税は
社会保障の財源だという議論のすり替えがなされ、社会保障財源確保のために
は消費税の増税もやむなしとの“世論”が作られていった。しかも、実際には
社会保障は一般財源で賄われているから、消費税収の一部は社会保障に使われ
ているかもしれないが、別の部分は他の歳出に宛てられているから、消費税=
社会保障財源というのは悪質な詐術である。

こうした“前科(あえてこういう)”があるから、仮に炭素税が導入されても、
果たしてそれが純粋に温暖化対策や環境対策に使われるものとなると無邪気に
信じられるほど、筆者はお人よしではない。

日本経済が長期のデフレに苦しむ中、増税は経済成長を抑制し、景気を落ち込
ませるマイナス面が大きいことは、すでに多くの日本人が身を以て証明してい
る。したがって、日本の国力を増強させたいと真剣に考えているなら、新税な
いしは増税につながりかねない芽は早めに摘んでおくべきで、そのためにも、
国の制度として、レジ袋の有料化を一律義務化することにも反対の声をあげね
ばなるまい。

4.衛生面での問題
現在、新型コロナウイルスの感染拡大を予防することが全国民にとっての喫緊
の課題となっていることは言うまでもなかろう。その場合、衛生面から考える
なら、むしろ使い捨てのレジ袋を奨励したほうが適切ではないか。

もちろん、エコバッグを使っている人の中には、毎回、洗濯・除菌して常に清
潔になるよう心掛けている人もいるだろうが、現実には、それは少数派で、多
くの人はなかなか洗濯などしていないだろう。

昭和30年代までは、買い物籠に新聞紙や経木でくるんだ肉や魚を入れて持ち歩
き、帰宅後、荷物を出した後も駕籠自体はそのまま放置して、そこから雑菌が
発生して衛生面のトラブルが生じることは珍しくなかった。その後、家庭での
冷蔵庫の普及とあわせて、毎回新品のレジ袋を使い捨てにする習慣が定着して
いったことで、衛生環境は劇的に改善された。
じっさい、ツイッター上では、コンビニ店員の中には、客からエコバッグに商
品を入れるように言われてバッグの中を見たところ陰毛が付着していた、エコ
バックそのものが黄ばんでいて異臭を放っていたなど、レジ袋ではなく、エコ
バッグを使うのが明らかに不潔な例も多く報告されている。

じっさい、米国では、しばらく前にレジ袋の有料化を始めて、大半の利用者が
エコバッグを使うようになっていたが、昨今のコロナ禍でエコバッグが不衛生
であることが取り沙汰されると、多くの店でレジの係員が客のエコバッグに触
れることを拒否したことから、使い捨てのレジ袋が復活している地域も多い。

このような指摘をすると、自分のエコバッグは清潔さを保っているから大丈夫
だという反論もあるのだが、公衆衛生というのは、どれほど個人が衛生に気を
使っていようと、誰かが“穴”をあけてしまったら元も子もない。外出時に必
ずマスクを着用している人たちは、自分の感染予防もさることながら、万一気
づかずに感染していたとしても他人には感染させてはならないとの意識を持っ
ていると思われるが、絶対にマスクをしない人たちがそうした意識を共有する
ことはあるまい。それと同じことで、自分は気を使っているから大丈夫、は公
衆衛生では通用しない。

そもそも、新型コロナウイルスで我が国の感染者・死者が他国に比べて低水準
で抑えられてきたのは、多くの国民が、政府や自治体の指示に従い、不要不急
の外出を避け、外出時にはマスクを着用して社会的距離を取り、帰宅時にはう
がい・手洗いを励行するなどの行動に努めてきた結果である。

これに対して、梅雨に入り、ただでさえ食中毒などが増加するこの時期に、拙
速なかたちでレジ袋の有料化が制度として義務付けられてしまうと、上手の手
から水が漏れる如くコロナ対策に穴が開き、いままでの成果が水の泡になりか
ねない。

少なくとも、これまでの国民の努力を足蹴にするようなかたちで、衛生的なレ
ジ袋を削減し、むざむざ不衛生になりかねない環境を、政府が率先して作ろう
としている愚は何としても食い止めなければならない。

筆者とて、なにも環境問題の重要性を頭から否定するわけではないが、現在
のわれわれにとっては、衛生問題は、まさに国民一人一人が生きるか死ぬかの
問題であり、緊急性が高いことは言うまでもなかろう。
エコも環境も、まずは命あっての物種である。

5.拙速な制度導入で良いのか
ところで、もともと、レジ袋有料化の義務付けを前に、経産省は3月から説
明会を開始するとしていたが、ウイルス感染防止を理由に開催を無期延期にし
たままの状態が長らく続いていた。

一応、5月21日から経産省のサイト内で説明の動画の配信は始まったが、そ
の時点では説明会の開始の告知話されておらず、6月17日になって、ようやく、
説明会の参加募集が始まったばかりだ。

そらならば、いまからでも、大々的にレジ袋有料化の説明会についても広報を
行うべきなのだが、筆者の知る限り、説明会の参加募集がようやく始まったこ
とについて知っている人は驚くほど少ない。このような状況では、説明会の開
催も、アリバイ作りのために形式的にやっただけで、国民がよくわからないま
ま新制度を強行しようとしているとみられても仕方ないだろう。

じっさい、6月18日付の『中日新聞』には、「業界団体から何も連絡がなく、
自分も周りの経営者も最近まで例外など制度を勘違いしている部分があった」
との鮮魚店の声が掲載されていたが、現場に十分な説明もないまま、オペレー
ションの大幅な変更を伴う施策が強行されてしまえば、現場が大混乱に陥るの
は当然のことだ。
そうした現場の混乱をよそに、6月25日、環境省は3人のタレントを“広報大使
”に任命したが、そもそも、制度開始1週間前に任命される“広報大使”なんて、
どれほどの意味があるのか。そんなことをする前に、やるべきことは山ほどあ
るのではないか。

仮に、いままで述べてきたような反対論をすべて押し切って「レジ袋有料化」
を強行するにしても、制度実施のための説明会を延期したなら、その日数分は
制度の実施も延期するのが道理ではないのか。具体的には、3月開催予定だっ
た説明会が6月17日以降に延期になったのだから、制度開始も、スライドして3
ヵ月、5月21日の動画投稿を基準にしても最低50日は延期しなければなるまい。

以上、あらゆる角度から考えて、現状のまま、7月1日からレジ袋有料化を義務
付ける動きには、何一つ賛成できる要素はない。速やかに制度の中止(少なく
とも延期)を要求する。

内藤陽介
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会
員。フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国
家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
日韓基本条約 (シリーズ韓国現代史1953-1965)』えにし書房
電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」「年賀状の戦後史」角川
oneテーマ21などがある。

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■編集後記
内藤先生のレジ袋の件、おそらくはたった1人から始めて、現在少しづつ大き
なうねりになりつつある。

私も内藤先生の主張には賛成で、「地球に優しい」とか「エコ」と言えば何で
も通るような風潮に反発を覚える。自分勝手な感情や利権を通すために言って
るとしか思えないような主張も少なくないからだ。

たとえば、ラウンドアップのせいでガンになったという人がいるが、いったい
どうしたら校庭を管理する程度の仕事でラウンドアップに暴露するのか、意味
が分からない。しかも使っていたのはモンサント製ではなく他社のジェネリッ
クなのに。
https://www.afpbb.com/articles/-/3185756

ラウンドアッブは除草剤散布機に適量放り込んで水で一般には100倍に薄めて散
布されるが、通常薬剤に体が接触することなどない。当然飲んだりすることも
ない。いったいどんな使い方をしていたのか?

言い換えれば、1車線分しか幅のない生活道路でフェラーリを全力疾走させて
事故を起こしてフェラーリに損害賠償せよとするようなことがおきているわけ
だ。

日本を、こんな馬鹿な判決を出すような裁判所をもつ国にしてはならない。

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