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[本]のメルマガ vol.742

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□■[本]のメルマガ【vol.742】20年1月25日発行
[ミサイル郵便 号]
http://honmaga.net/ 
■□------------------------------------------------------------------
□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4066名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→募集中です

★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→30年前のヴェネツィア映画祭

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→文学から見た天皇譲位の返答

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→読書に割ける時間

★「はてな?現代美術編」 koko
→カラヴァッジオ・デジタルなき時代のコピー

★「スプートニクとカガリーンの闇」内藤陽介
→宣伝のソ連、実質のアメリカ

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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp
『最期の言葉の村へ:消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』

ドン・クリック著 上京恵訳
四六判 332ページ 本体各2,700円+税 ISBN: 9784562057207

言語が消滅するとき、何が消えるのか? グローバリズムに呑み込まれゆくパ
プアニューギニアの先住民族の村。現地の人々と寝食を共にし、30年間にわ
たって調査をしてきた言語人類学者による、ある「終わり」のルポルタージ
ュ。
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■トピックス
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■トピックス募集中です!
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■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
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第107回 メルマガから1989年ヴェネツィア映画祭

はるか16年も前、2003年3月13日にmelmaの地域情報部門で創刊しましたメル
マガ「イタリア猫の小言と夢」がmelmaの事情により、残念ですが今月末で終
了とのことです。

イタリアについて日常的な次元で「イタリア猫〜」のメルマガ、そしてやや批
評的な目で「甘くて苦いイタリア」というリズムができあがっていました。
その片方がなくなるとどうなるのか、これからの課題です。

消去の憂き目を見る前に「イタリア猫〜」の全327号の中から、超なつかしい
昔話の一つをここに引用させていただきます(誤字は訂正し、一部カットして
あります)。

なんでも、魚をよく食べる人ほど認知症の発症が少ないようですが、昔の話を
するというのも脳の劣化を遅らせるのに役立つという記事もありますので。

〜ここから引用〜
《私的百景》イタリア、こんなこともあった!
『萬屋錦之介のヴェネツィア映画祭』

1989年(平成元年)の第46回ヴェネツィア映画祭で銀獅子賞を受賞したの
は、日本から出品された熊井啓監督の『千利休 本覺坊遺文』だった。熊井啓
監督を始め、利休役の三船敏郎、織田有楽斎(織田信長の弟)を演じた萬屋錦
之介、本覺坊の奥田瑛二などがリド島を訪れた。

私も熊井啓監督がメディアのインタビューを受ける際の通訳を頼まれて、リド
島に行った。こんな仕事はめったにできない。

三船敏郎はもちろんヴェネツィア映画祭には縁が深かったし、萬屋錦之介もテ
レビ「子連れ狼」がItto Ogamiという変なタイトルでイタリア語吹き替えで放
送されているところだった。しかし、そんなTV番組は『千利休 本覺坊遺
文』の格調を壊すとでもいうように、フランスのコーディネート会社は私に絶
対に口にしてはいけないというのだった。

前夜にリド島のホテル・エクセルシオールに入り、翌日の朝から、当時は赤い
カーペットはなかったが、監督さんと出演者全員のフォトセッションがあり、
それが終わると熊井啓監督へのTV局のインタビューだった。ギリシャやトル
コ、南米のメディアも来た。

夕方にはホテルに戻って着替え、紋付に袴を着け大きな扇子を動かしていた萬
屋錦之介や監督さんたち一行と『千利休 本覺坊遺文』の上映会場に行き、終
了後に、今度はモーターボートでホテル・ロンドラに行く。審査員たちを招い
た夕食会が深夜過ぎまで行われたのだ。

会場はとても古びたヴェネツィアらしい雰囲気の館で、100人以上の人たちが
詰めて置かれたテーブルにつき、エアコンもあまり効かない中でハリズ・バー
が用意した料理がサーブされた。

同じテーブルの真向かいに三船敏郎は着物姿の小さな娘と夫人と座り、拍子抜
けするくらい腰が低く寡黙だった。萬屋錦之介は当時まだ結婚していなかった
甲にしきがいっしょで、彼女といることが日本へ発覚しやしないかビクビクし
ていると、呆れたようにプロデューサーは朝から私にいっていた。プロデュー
サーの口調には反発を感じさせられた。奥田瑛二は夫人の安藤和津さんといち
ばん若く、夫妻ともとてもくだけた様子で座を盛り上げていた。甲にしきも安
藤和津も完璧なヘア&メイクで、正調な着物を美しく着ていた。

相手は大スター、ツーショットやサインを頼まれるのには慣れきっているだろ
うに、扇子にサインをもらってもツーショットを頼む気にはなれなかった。か
ろうじていっしょに撮らせてもらった奥田瑛二以外は、写真は一枚もない。携
帯という便利なものもなかった。

食事が進むにつれて蒸し暑くなり、招かれた女性たちも我慢がならないように
扇子やメニューの紙で風を送っていた。

ドルチェを味わうころだったか、錦之介さんが私に向かって呼びかけ、「頼み
たいことがあるんですが」という。ラ行の発音がちょっと引っかかるところ
も、その素顔も昔から観ていた映画と全く変わらず、まるで知っている人に呼
びかけるような口調だった。「何でしょう」とすぐにいったが、声が震えない
ようにした。

錦之介さんはちょっと先のテーブルの方に眼差しを向け、「あそこに座ってい
る真ん中の女性を見たことがあるんですが、誰ですか?」とかすれたような声
でいう。離れてはいるが、そこは審査員のテーブルで、女優のマリアンジェ
ラ・メラートが真ん中に座っていた。彼女の出世作でリーナ・ヴェルトミュラ
ー監督の題名が長いのでも有名な映画を錦之介さんは観たのだろう。

日本語題名が『流されて…』という映画のことをちょっと話し、主演女優だと
いうと、錦之介さんはぱっと目を輝かせ「そう、それだ、食事が終わったら、
ぜひ、挨拶したい」といった。

もちろん快諾し、「映画をほとんど毎日見ている」と錦之介さんがいうのを驚
いて聞いた。映画をいちばんよく観るのは映画人、小説をいちばんよく読むの
は小説家のはずだ。

『流されて…』はマリアンジェラ・メラートと、孤島に漂流する相手役は今も
人気のあるジャンカルロ・ジャンニーニの主演と知っていた。

エスプレッソが運ばれるころ、錦之介さんとマリアンジェラ・メラートがどん
な話をするのだろうとワクワクしていると、突然、審査員テーブルの方で大き
な音が聞こえ、見ると、彼女の真向かいにいた女性が床に倒れていた。ムシム
シした暑さと食事と、何かわからない個人的な理由があって卒倒したようだ。
審査員テーブルは騒然となり、倒れた女性の周りに人垣ができた。

錦之介さんと私が審査員のテーブルに近づいたのは、その状況が一段落してか
らだ。錦之介さんを紹介すると、マリアンジェラ・メラートの表情はあまりほ
がらかではなかった。『千利休 本覺坊遺文』もまだ選考中のはずだったし、
必要以上の好意は示せなかったかもしれない。錦之介さんも握手がすむと、そ
れ以上の話をしようという気分ではなかったらしい。それで、千載一隅のチャ
ンスは、錦之介さんがいったとおり、挨拶で終わってしまった。

授賞式は翌日の夜で、私は午前中にはフィレンツェに戻ることになっていた。
監督賞・銀獅子賞の受賞を知ったのもわが家のテレビの前だった。

あの女性が卒倒しなかったら、二人の映画人が交わした話はどうだったのだろ
う…。ヴェネツィア映画祭といえば、そのシーンが忘れられない。錦之介さん
は亡くなり、マリアンジェラ・メラートも女優として姿を見なくなって久し
い。 〜引用終わり〜


◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
イタリア・フィレンツェ在住。著書に『天才力 三巨匠と激動のルネサンス 
(ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ)』(世界文化社)、『メデ
ィチ家 ルネサンス・美の遺産を旅する』(世界文化社)。
創刊から16年のメルマガ「イタリア猫の小言と夢」は、melmaの地域情報部門
で2007年メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞。melma の事情により今月末でサ
ービス終了とのことです: 
http://www.melma.com/backnumber_86333/

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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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赤坂真理 『箱の中の天皇』河出書房新社 1400円+税

生前退位の意向を告げる現上皇のテレビメッセージを聴いた時、私は深い驚
きを覚えました。その時彼は、高齢に達したいま、「全身全霊をもって象徴の
務めを果していくことが、難しくなる」と述べました。象徴といえば旗やロゴ
をイメージします。それらが何かを「する」とは誰も思いません。ところが現
上皇は、天皇として存在する(「である」)だけでは不十分であり、国民統合
の象徴として行為「する」ことによってはじめて、天皇はその責務を果たしう
ると考えていたのです。本作は、このメッセージへの優れた文学的応答です。

作者の分身と思しきマリが、1946年の横浜にタイムスリップします。そ
こで彼女は謎の老女から、マッカーサーのもとにある天皇の魂の入った箱を、
偽物とすり替えて奪還して欲しいと頼まれます。マッカーサーのもとを訪れた
マリは、箱の奪還に成功しますが、中は空っぽ。マリは元帥の性的な魅力の虜
になります。敗戦後の日本人が、不在の「父」の像をマッカーサーに投影して
いたこと。そして占領がアメリカという「男」が日本という「女」をかき抱
く、性的なニュアンスを強くもつ現象であったことを感受するのです。

本作には数多の死者が姿をあらわし、マリは彼彼女らと対話をします。マリ
の父も、姿をあらわした死者たちの一人です。父は言います。あの空っぽの箱
は、私の人生なのだと。戦争に敗れすべてを失った空虚を満たすために、家族
を顧みず懸命に働いた。その挙句、バブル期の円高不況で破産して、自ら命を
絶った自分を許して欲しいと。戦争に敗れ、その男性性を否定された日本の男
たちの屈辱と不安に、マリは思いを致します。その苦しみを理解していなかっ
たことを、マリは父に対して詫びました。父娘は和解を果したのです。

憲法と占領政策を立案したGHQの幹部たちも姿をあらわし、マリと一緒に
生前退位のメッセージに耳を傾けます。彼らは言います。天皇は歴史的に権力
者から利用されて来た。空虚で実体のない存在だからこそ利用価値があった。
われわれはそれに倣った。だから「象徴」という空っぽの器を憲法の最初に据
えた。その空虚を満たすのは日本人の仕事なのだと。しかし日本人は誰もその
空虚を満たして、民主的な国家を創ろうとはしませんでした。現上皇のみが、
どうすれば国民統合の「象徴」たりうるかと考え、奮闘していたのです。

現上皇は、第二次世界大戦の激戦地や大災害の被災地、そして僻地離島への
慰霊と慰問の旅を退位の直前まで重ねてきました。大きな被害にあい、あるい
は日々困難な状況に置かれた人たちによりそい、彼彼女らのために祈りを捧げ
ることによって、誰一人として日本国民を見捨ててはならないという暗黙のメ
ッセージを発し続けてきたのです。それが現上皇の考えた「象徴的行為」でし
た。死者と交響する幻想的な作風は、石牟礼道子を彷彿とさせるものです。優
れた文学性と深い政治的思索とを含んだ本作を是非お読みください。

◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「怠ける権利」高文研
http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「何をどうすれば?」の話

ここ数年「マンガ図書館Z」と言うマンガ無料配信サイト(昔は「絶版図書館」
と言う名前でその名の通り絶版になった単行本を広告付きで無料で配信してく
れている)の新年会に行って情報を仕入れて来るのが正月の慣わしとなってい
る。

いやしくもマンガの講師をしているのだから少しはお金も使って学生の為に…
とは名ばかりで、それにかこつけて東京観光してると言う噂もあるが、色々実
になる情報や身の毛のよだつ情報など知る事が出来てありがたい。

問題になった「漫画村」や今、問題視されている「リーチサイト」(個人でア
ップした作品をまとめてダウンロード出来るところを「紹介」するサイトらし
い)などの存在などもここで教えてもらった。

やはり1番のテーマは出版業界の話と電子書籍の事になる。

去年までは紙の本の減少分を電子書籍が補って全体ではまだ増加傾向にある、
と言う話だったのだが…今年は全体数がなだらかに落ちてきたらしい。うん、
少子化で人口そのものが減っている中、右肩上がりを夢見る事は流石に無理な
様だ。

若年層壮年層の電子書籍シフトはどうなっているんだろう?そのあたりの細か
い動静はプロである彼らもまだ把握してはいない様だが、マンガ図書館Zに限
っては訪問分布では若い層が多い様なのだが、サイトに留まっている時間は
60代が多いらしい。

なるほど。
考えれば人間の1日の時間は限られている。
その中で「読書」に割ける時間はどれぐらいなのだろう?

特に若年層壮年層は日々流れてくるLINEに目を通さない訳にもいかないしも
ちろん返信も必要、面白いYouTubeがあれば見に行くだろうしTwitterもチェッ
クする。もちろん仕事に学校に取られる時間は削る訳には行かない。テレビ離
れが言われているがそれなりに録画なり配信なりで見る層は見ている。
実質時間はかなり限られてしまうような気がする。

しかし…紙の本は続きを読むためカバンから取り出して栞のところから読めば
いい。が、電書になるともう一手間二手間かかるように思えるのは慣れてない
だけなんだろうか?

読書って習慣だしなぁ。

購入した電子書籍がクラウドの中で積ん読になっているのは何とも笑えない話
だ。


◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
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■はてな?現代美術編 koko
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第103回 『カラヴァッジオ展を観て ─── 素人探偵の真贋判断』

2014年にフランスのトゥルーズ(Toulouse)という町の民家の屋根裏部屋で
見つかったカラヴァッジオと思われる絵がオークションに出品されるという報
道に、アートマーケットは盛り上がったことをこのメルマガでもお伝えしまし
た。

2019年6月に行われるはずのオークションは、2日前にキャンセルされ、絵は
示談成立でフランスの地から海を渡ったようです。
たぶんアメリカ方面です。

20世紀に入って再びその価値を再認識されたカラヴァッジオの絵が、フラン
スの建物の片隅に誇りを被っているところを発見されることがこれまでにもあ
りました。

例えばロッシュ(Loches)の教会で発見された2枚の絵は本物ではないとの
大方の見方で一致。ロッシュの絵は素人の私が見ても本物ではないと思う程度
の出来でした。

かなりの出来栄えの今回のトゥルーズの絵が限りなく本物の可能性が高く、派
手な宣伝効果もありオークションではざっくり130億円から170億円ほどの評
価額がでていました。

□カラヴァッジオ作とされる《ユディトとホロフェルネス》 美術手帖(日本
語)
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/19887

実際この絵がいくらで買われたのかは闇の中ですが、本物としての値段で売ら
れたわけです。バスキアが100億円を超える昨今は、当然100億円台でしょ
う。

そんな中、今回、北海道・名古屋・大阪を巡回中の『カラヴァッジオ展』を見
た時、限りなく本物と見まがうコピーがかかっていて驚きました。
それがコピーだなんて信じられない絵だったのです。

素晴らしい緊張感に覆われたこの絵を会場で見た時は、本物だと思ってまずは
見入ったのですが、、、、ありゃりゃ、表示板にはコピーとの文字が。
素人の印象なんてなんの意味もないけれど、この完璧に見えるコピーの目の前
では、トゥールーズの絵の細部は怪しいと探偵kokoの第一印象。
あ〜、悩ましい印象が頭に貼り付きました。

今回の展覧会には10点ほどの本物のカラヴァッジオの絵画が展示されていま
す。なかなか充実した展示で、当時のイタリアのカラヴァッジオを取り巻く様
子がよく理解できる構成でした。

その中で本物に全く引けをとらないと思われる「聖トマスの不信」(カラヴァ
ッジオ作品からの模写 1610-1660 ウフィツィ美術館蔵)が問題の作品。
個人的には他の本物とされている作品以上に素晴らしく見えてしまうよ〜〜
〜。
コピーとはいえ、流石ウフィツィ美術館蔵、第一級コピーです。

□『カラヴァッジオ展』(ニコニコニュース)※問題の絵はサイトの3番目の
画像です。
https://news.nicovideo.jp/watch/nw6464884?news_ref=50_50

当時、カラヴァッジオの人気は高く、たくさんのコピーが作られていました。
特にこの「聖トマスの不信」は人気の主題で、17世紀に制作された模写のう
ち22点が現存し、まだまだその数が増える可能性も大いにあるそうです。
こんなすごいコピーが描けるなら、トゥルーズの絵なんて偽物でも驚きませ
ん。
カラヴァッジオっぽい絵を描くことは当時の画家にとってはそんなに難しくな
いことだったんですね。

□オリジナルとされる「聖トマスの背信」画像
http://www.salvastyle.com/menu_baroque/caravaggio_tommaso.html

このコラムで時折触れる真贋問題ですが、描かれた時代が同時代ならば科学的
な調査をしても判断が難しいでしょうね。400年後アートファンの熱狂の中、
真贋問題を考えるのは夢あふれる話題です。

いつもワクワクします。
この絵の発見と調査に関わったトゥールーズの関係者のスリリングな4年間を
想像すると、またこんな発見がどこかで起こるのが待ちどおしいなぁ。
今後、どこの美術館にトゥールーズのカラヴァッジオ作品が飾られる日がくる
のか・・・それも楽しみですね。

◎koko
円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html(現在休刊中)
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■スプートニクとガガリーンの闇 26 内藤陽介
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米国のロケットメール実験

1959年末の時点で、ソ連はルナ2号を月に衝突させ、同3号で月の裏側の
写真撮影に成功し、その成果を政治的プロパガンダとして大々的に活用してい
た。ただし、そうした成果は、必ずしも、すぐに軍事・民生面で実際に応用さ
れたわけではなく、見かけの華やかさに比して、じつは米ソの実際の軍事バラ
ンスは米国が圧倒的に優位という状況は変わらなかった。

一方、米国の宇宙開発は実用本位の地道なものであったため、ソ連の後塵を
拝しているような印象を与え、西側世界の一般市民に“ミサイル・ギャップ”の
不安を与えていたが、ソ連に比して遜色のない成果を着実にあげている。

たとえば、1957年10月にソ連がスプートニク1号の打ち上げに成功した後、
米国は1958年1月31日、人工衛星エクスプローラー1号を搭載したジュノーI
ロケットをフロリダ州ケープ・カナベラル空軍基地から打ち上げることに成功
した。この計画を主導したのは米陸軍で、衛星を製造したのはジェット推進研
究所だったが、ロケットは、米陸軍弾道ミサイル局がそれまで開発を進めてき
たレッドストーン短距離弾道ミサイルの技術を活用し、84日間で組み立てた
ものである。米国としては、ともかくもソ連による宇宙の独占を一刻も早く打
破したいという思いが強かったのだろう。

もっとも、軍主導の計画ではあったものの、エクスプローラー1号の打ち上げ
は国際地球観測年事業の一環でもあったことから、実際の衛星の活動は科学目
的の計測が優先され、衛星にはガイガー・カウンターが搭載されていた。その
観測結果は、エクスプローラー3号によるものとあわせて、ヴァン・アレン帯
(地球を取り囲む放射線帯)の発見という成果に結びついている。

ついで、1958年3月のヴァンガード1号(太陽電池パネルを利用した最初の
衛星)、12月のプロジェクト・スコア(世界初の通信衛星)、1959年2月の
ヴァンガード2号(世界初の気象衛星)、ディスカバラー1号(世界初の極軌
道周回衛星)、8月のエクスプローラー6号(初の衛星からの地球撮影)な
ど、米国の宇宙開発は着々と専門的な実績を積み上げていったものの、プロパ
ガンダを主目的としたソ連の衛星に比べると地味な印象はぬぐえず、当初は記
念切手も発行されなかった。

こうした宇宙開発の成果を実際に応用したものとして、1959年6月、米海
軍は郵政省(現・郵便公社)とともにミサイル・メールの実験を行った。

すなわち、1959年6月8日正午少し前、フロリダ沖に停泊中の米海軍の潜
水艦バルベロから郵便物(郵政長官、アーサー・サマーフィールドの挨拶状が
同封されていた)を搭載したミサイルが発射され、22分後、フロリダ州メイ
ポートの海軍補助飛行場の標的に着弾。3000通の郵便物は、バルベロがヴァ
ージニア州ノーフォークを出航する前に、6月8日午前9時30分のバルベロ艦
内郵便局の消印を押してミサイルに搭載され、着弾後、大統領アイゼンハワー
以下の米政府要人ならびに万国郵便連合加盟各国(当然、ソ連も含まれる)の
郵政機関の長宛に届けられている。

http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/

201210211512397bd.jpg は、この実験で届けられた郵便物)
実験に立ち会ったサマーフィールドは、無事に郵便物がメイポートに到着した
ことを受けて、「郵便物の輸送という重要かつ実用的な目的のために、誘導ミ
サイルを平和的に利用したことは、今回が世界初の快挙であります」と演説
し、ミサイル・メールを「全世界の人々にとっての歴史的偉業」と自賛した。

さらに、サマーフィールドは「人類が月に到着する前に、誘導ミサイルを利用
して、ニューヨークからカリフォルニア、英国、インド、オーストラリアま
で、数時間以内に郵便が届くようになるでしょう」とも述べている。このくだ
りは、「ソ連はルナ計画で月ロケットを成功させているというが、それが一般
国民の生活にとって何の価値があるのか」と言っているようで、正論ではあろ
うが、負け惜しみに聞こえなくもない。

一方、http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/

2012121513142928f.jpg は、エクスプローラー6号の打ち上げ当日の
1959年8月7日、打ち上げられるロケットのデータを印刷した封筒に、ケー
プ・カナベラル空軍基地近くのポート・カナベラル郵便局の消印を押して作成
された記念カバーである。

エクスプローラー6号は、捕捉放射線観測、電磁圏の電波伝播観測、流星塵の
フラックス測定などを目的として打ち上げられ、所期の目的を達したが、一般
には、衛星軌道から撮影した地球の写真データを初めて地上に送信した衛星と
いうイメージの方が強いようだ。一般の米国民にとっては、理解しづらい専門
的な業績よりも、衛星写真は、ソ連に対する“ミサイル・ギャップ”を埋める対
抗手段になりうるものとして、その意義がわかりやすかったのだろう。

ちなみに、カバーに貼られている切手は、エクスプローラー6号の打ち上げか
ら4ヶ月ほど前の1959年4月に発行された北大西洋条約機構(NATO)創立
10周年の記念切手だが、カバーを制作・販売した業者が、こうした切手を封
筒に貼ることを選択したこと自体、エクスプローラー6号による衛星写真の撮
影成功に喜ぶ一般市民の心情に寄り添ったものと考えてよい。


内藤陽介
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会
員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
日韓基本条約 (シリーズ韓国現代史1953-1965)』えにし書房
電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」「年賀状の戦後史」角川
oneテーマ21などがある。

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■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在4066名の読者の皆さんに配信してお
り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。

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■編集後記

竜巻先生の原稿。とてもタイミングが悪かった。24日にこういう記事が出て
いますが、これより前に原稿は出ていたと言うことで・・・(^^;)
新文化
紙と電子」の出版市場、0.2%増に(出版科学研究所調べ)
http://www.webdoku.jp/shinbunka/2020/01/24/183446.html

人口減少が止まらないので、このまま市場が成長軌道に乗るとは思えないのだ
けど、ある種の下げ止まりが来ているのかも知れません。

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