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[本]のメルマガ vol.735

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 ■■ [本]のメルマガ                 2019.11.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book     [令和、どうなの?の今日この頃号]
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 ★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/
 
 『ウェールズ語原典訳 マビノギオン』
 
 森野聡子 編・訳
 A5判 560ページ 本体各5,000円+税 ISBN:9784562056903
 
 アーサー王物語を含む、ウェールズの神話、伝承がおさめられた古典物語集で
 あるマビノギオンをウェールズ語原典から翻訳。詳細な註解と解説を加え、中世
 ウェールズの思索と世界観を第一人者が浮き彫りにする。図版多数。
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 【連載】………………………………………………………………………………
 
 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第61回「にほん と にっぽん」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第125回 友人のような本
  
 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 →  「朝鮮人虐殺は無かったという説」を真っ向から否定しなければ
    ならない現状
  
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 ■トピックス
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 二つのイベントをご紹介します。
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 ■「散慮逍遥月記」 / 停雲荘主人
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 第61回「にほん と にっぽん」
 
 こんにちは。
 
 めっきり寒くなってきました。当方は大学の学校暦における後期の日程が始ま
 っても相変わらず,講義の準備に追われる毎日ですが,みなさま如何お過ごし
 でしょうか。後期の講義は4科目ありますが,これまで手掛けたことのないもの
 がそのうち3つを占めるために,これまで仕事として関わってきたことであって
 も,学生に教えるには改めてそのために,こちらが持っている知識を現在の状
 況に対応したアップデートも含めて仕立て直さねばならず,なかなか気の抜け
 ない状況です。
 
 その,これまで仕事としてこなしてきたものの中には長年の蓄積で,その仕事
 で扱うモノを見たときに考えるより先に「手」が動くようになっている仕事もあり
 ます。わたしにとってのその例が,図書館の仕事で言うところの「目録作成」
 「受入(うけいれ)」と呼ばれる仕事です。1980年代以降,図書館ごとの目録作
 成業務は図書館システムの導入により「コピーカタロギング
 (Copy Cataloging)」と呼ばれる,大本になるMARC
 (MAchine Readable Catalog,機械可読目録)の書誌レコード(データ)を図書
 館ごとのローカルデータとして図書館システムにダウンロードする方法が一般
 的になり,目録規則と呼ばれる,書誌レコードを作成するためのツールを図書
 館ごとの目録作成者が参照しながら,自ら書誌データを作成し,図書館目録を
 作成していく,という作業は一部の書誌を除いてほとんど行われなくなりました。
 
 それでも勤務先は,扱ってきた図書館資料の中に,国内外で出版された楽譜
 と,大学が立地する地域の歴史などを記した地域資料(むかしは「郷土資料」
 と言いましたが,このところ図書館業界では「地域資料」と呼び習わします)を
 それなりに扱ってきたため,書誌を作成する機会が案外多かったこともあり,
 それなりに目録規則には慣れ親しんできました。それはそれなりに,演習など
 で学生さんに教えるときにも役立ってきました。これまでは。
 
 日本の図書館で一般的に使用されている目録規則は『日本目録規則』と言い
 ます。始まりは第二次世界大戦前に大阪にあった「青年図書館員連盟」(現在
 の日本図書館研究会の前身)が編集し,これも大阪にあった間宮商会が
 1943年に出版したものです。これを『1942年版』と呼びます。戦後にその編集
 と出版が日本図書館協会に移って『1951年版』『1965年版』『新版予備版』
 『1987年版(初版から改訂3版まであり)』と,その時々の様々な技術の移り変
 わりを反映して続いてきたものですが,昨年出版された『2018年版」からは規
 則そのものの内容が用語からまったく変わってしまい,これまで培ってきたノ
 ウハウが壊滅的な打撃を受けるのではないか,と戦々恐々としている目録担
 当者は少なくないのではないかと(苦笑)。この大改変は,世界標準の変更に
 よるものですが,これから様々な局面で大きな影響が出ることが予想されます。
 
 ところでこの『日本目録規則』,和文タイトルのヨミはCiNii Books(1)を見ても
 「にほん もくろく きそく」ですが,英文タイトルは“Nippon Cataloging Rules”
 で「にっぽん」なんですね。これは『日本十進分類法』も同様(2)で,和文タイトル
 は「にほん じゅっしん ぶんるいほう」ですが,英文タイトルは
 “Nippon Decimal Classification”で「にっぽん」なのです。これが以前から不思
 議で気になっていたのですが,今年になって改めて講義で「にほんとにっぽん」
 の話をしてみたところ,受講している学生に書いてもらっているミニットペーパー
 (リアクションペーパーとも言います。講義の終わりに簡単な感想や質問を書い
 て提出してもらう用紙のことです)に「関西が発祥だったからじゃないですか?」
 という推測が書かれておりました。確かに東京では「にほんばし」だけど大阪で
 は「にっぽんばし」だよなあ,何か調べる手立てはないかなあ,と考えて思いつ
 いたのが「国立国会図書館デジタルコレクション」。戦前の『日本十進分類法』
 はもり・きよし(森清)の個人著作で,もりさんは長命(1906-1990)を保ったの
 で『日本十進分類法』は著作権の保護期間がまだ切れていませんが,『日本
 目録規則』は青年図書館員連盟の団体著作だから1943年刊行の『1942年版』
 はデジタルコレクションで見ることができるんじゃないか。
 
 デジタルコレクションを検索したら『日本目録規則1942年版』出てきました。イン
 ターネット公開されていました(3)。そちらを確認してみたところ,コマ番号5番に
 掲載されているページに「NIPPON MOKUROKU KISOKU」とあるではないです
 か。大阪で最初に出版されたときのタイトルのヨミは「にっぽん もくろく きそく」
 だったんですね。これを見つけたときはちょっと驚きました。恐らく戦後,東京に
 本部を置く日本図書館協会に編集と出版が変更された後に,『日本目録規則』
 もヨミが「にほん もくろく きそく」になったのではないかと推測されます。その
 際,英文タイトルまで変更されなかった理由はわかりません。
 
 先日,勤務先図書館が国立国会図書館デジタルコレクションの「図書館向けデ
 ジタル化資料送信サービス」の閲覧を承認されたので,機会を見つけて『日本
 十進分類法』の戦前の版も確認してみようと思うところです。
 
 では,また次回。
 
 注記
 (1) 
 CiNii 図書 - 日本目録規則 
 http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB27491287
 
 (2)
 CiNii 図書 - 日本十進分類法 
 http://ci.nii.ac.jp/ncid/BB17876514
 
 (3)
 日本目録規則 - 国立国会図書館デジタルコレクション 
 http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1122648
 
 
 ◎停雲荘主人
 2019年4月から司書養成が本務のはずの大学教員兼大学図書館員。南東北在
 住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は我に存す,毀誉は他人の主張,
 我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第125回 友人のような本

 
  ここのところ、永井宏の本を続けて読んだ。永井宏は、美術作家、雑誌編集者、
 詩人、作家とさまざまな顔を持つ人で2011年4月に亡くなっている。59歳だった。
 ぼくはいままで永井宏という作家について、それほど熱心な読者ではなかった。
 名前は知っていたが、印象に残っているのは中川五郎さんとの対談で音楽を紹
 介している『友人のような音楽』(アスペクト)ぐらいだった、いや、だけじゃなかっ
 た。調べてみたら『カフェ・ジェネレーション TOKYO』(河出書房新社)も持って
 いるのを思い出したけれど、永井宏は、「名前を知っている」程度だったといって
 いい。
  
『サンライト』(夏葉社)は、永井宏の残した8冊の本から26のエッセイを集めた
 アンソロジー。読んでみようと思ったのは、この本を編集した丹治史彦さんが
 毎日のように永井さんの言葉をTwitterに投稿していて、その言葉に惹かれる
 ものがあったからだった。
 
  『サンライト』には、少年時代の永井さんが過ごした東京のことや、映画や音楽、
 喫茶店のことが書いてあった。ぼくが子どものころ、若いころを過ごした60年代
 から80年代の東京が描かれている。
 とくに冒頭の「初めて書いたライナーノーツ」というエッセイが好きだった。
 1974年、アメリカに滞在していたころのことを書ていて、「見るもの、聴くものが
 全てが珍しく、体験した全てが、新しい未来を見つけ出したような楽しさに満ち
 ていた」という感覚が、ちょうど同じ時期にロサンゼルスに行っていたぼくも同じ
 ことを感じていたなあ、と思ったりした。
 
 永井さんは、トム・ウェイツの「クロージング・タイム」「土曜日の朝」の2枚のア
 ルバムをサンフランシスコで買ったのだけど、ぼくもロサンゼルスで
 
 「クロージング・タイム」を買っている。ワン、ツー、スリー、フォーというカウント
 から始まる「オール55」、かっこよかった!
  
  と、初めてトム・ウェイツを聴いたときのことを思い出してしまった。

 
  トム・ウェイツだけじゃなくて、ダン・ヒックス、ジム・クウェスキンといったぼくが
 高校生のころ、渋谷百軒店にあったギャルソンという店で聴いたいたミュージシ
 ャンが次々と登場するのもうれしい。当時、いや今でも知る人ぞ知るミュージシ
 ャンたちだ。
 このころのエッセイをもっと読みたいと思っていたら、このエッセイ
 が収録されている『マーキュリー・シティ』(mille books ミルブックス)が復刊され
 ていた。
 永井宏の初めてのエッセイ集というこの本が東京書籍から刊行されたのは、
 1988年のことだ。
 音楽、美術、サブカルを書いた名著ということだけれど、ぼくはまったく知らなか
 った。どうしてだろう?

  そのころのぼくは、いちばん音楽から離れていたからか、いやレコード店には
 通っていたはずだ。ただそのころのぼくは、レコード店に行って、店でかかって
 いる曲でレコードを選んだり、ジャケットが気に入ったものを買っていた。インタ
 ーネットはもちろんなかったし、音楽雑誌も読んでいなかった。音楽好きな友人
 ともあまり付き合いがなかった。まあ、昔も今も、流行には疎いからなあ。

 
  あ、そうそう、ある日、会社帰りに寄ったレコード店を出たときに、バンドに
 スカウトされたことがあったっけ。テクノカットをした小柄な青年と黒ずくめの服を
 着た女の子にいきなり「ぼくたちとバンド、やりませんか?」と声をかけられた。
 ぼくがキョトンとしているのを見て、青年のほうがニコニコしながらいった。

 「あなたが手に取ったレコードがみんなぼくたちの趣味に合っているんです。
 だからきっとセンスがいいはずだと思って」

 
  あのとき彼らの連絡先をもらったかどうかも覚えていないけれど、もしいっしょ
 にバンドをやっていたら、売れていたかな?
 
  売れないにしても楽しかったにちがいない。まじめなサラリーマンだったことを
 悔やんでいる。
 
 
 そのとき手に取っていたレコードは、マーティン・スティーブンソン&デンティー
 ズ、ファンタスティック・サムシング、チャイナ・クライシスあたりだったかもしれな
 い。
 『マーキュリー・シティ』にも登場するぐらいだから、ぼくのセンスもまんざらでも
 なかったんだろう。

 
  こんなふうに『マーキュリー・シティ』を読んでいると、80年代の自分が甦って
 くる。
 懐かしいというより、もっと生々しい感覚だ。それは永井宏という書き手があの
 時代の空気を表現しているからだと思う。
 いや、80年代だけじゃない。前書きで書いているように「ときどき60年代の
 全てが夢のなかのことのように思えてきて、過ぎ去った昔を懐かしんでいる
 自分に出会ってしまうが、それとは別に今まで気がつかなかった60年代の
 何かを、現在のなかに探している自分にも気づくのである」というように、
 過去の思い出は現在につながっているのだと思う。
 「ウッドストックなんて知らなかった」というエッセイでは、70年代始めの、まだ
 アメリカが遠い国だったころのことを描いている。

 
  1969年の8月にニューヨーク郊外のウッドストックで歴史的なロックフェスティ
 バルがあった。ウッドストック・フェスティバルだ。今年は50周年にあたり、
 雑誌でも特集が組まれている。アメリカ、イギリスのロックバンドが出演して、
 観客は3日間で40万人も集まった。記録映画になって日本でも翌年公開され
 て、「ラブ&ピース」という言葉も流行した。
 永井さんは、高校3年生だったと書いている。ウッドストックの映画は美術学校
 に入った年に見たのだろう。中学生だったぼくは、有楽町のスバル座で見たの
 だと思う。
 評判にはなっていたのに、映画館はがら空きだった。スクリーンには、ぼくの
 知らないミュージシャンが次々と現れた。ミュージックライフなどの雑誌で名前
 は知ってはいるが聴いたことのないミュージシャンばかりだった。中学3年生
 のぼくは、ビートルズくらいしか知らなかった。印象に残っているのは、画面は
 暗くてよく見えなかったが、ハーモニーがきれいだったクロスビー・スティルス
 &ナッシュ、アコースティックギターで激しいリズムをきざむリッチー・ヘブンズ、
 妙な踊りをしながらしゃがれ声で歌うジョー・コッカー、顎を突き出して、ギター
 を早弾きするアルビン・リー率いるテンイヤーズアフター、
 そしてなんといってもジミ・ヘンドリックス!
 
  ぼくにとって、いや多くの日本人にとって「動くロック」を見るのは初めての
 ことだったんじゃないかな。

 
  翌日、その興奮を伝えようと、映画のプログラムを学校に持っていった。
 でも、クラスメイトはだれも興味を示さず、委員長だったS君に「こんなものは
 不良の見るものだ」とプログラムの表紙を破られてしまった。先日、そのプロ
 グラムを発見して、なんともいえない気分になった。
 ロックって、そういうものだったんだよ、そのころは。
 
 
 永井さんは当時、ヒット曲は聴いていたけれど、ロックのことはあまり知らな
 かったと書いている。美術学校で知り合った友人たちの影響でヒット曲以外の
 様々なレコードを聴くようになった。
 そして「60年代を生きていたけれど、何も知らずに生きていただけのことだ。
 好きな音楽の世界のこともよく知らずにいたのだから」と書いている。
 ウッドストックについても「どこか遠くの出来事であった」という。
 そう、アメリカってまだ遠いところにあったんだよね。

 「思い出せる限りのフォークソング・オリエンテッド」では、キングストン・トリオ、
 ブラザース・フォア、ピーター、ポール&マリーなどのフォークソングへの愛着
 を書いている。ぼくより5、6歳以上の世代はフォークソンングといえば
 「トム・ドゥーリー」や「7つの水仙」なんかを歌っているんだろう。
 永井さんは、フォークソングを愛しながらも、クリームやジミ・ヘンドリックスなど
 ハードなロックにも魅力を感じ始めている。このへんの感覚がフォークから
 ロックへと音楽の流れが変わっていく時代を表しているんだろう。
 このエッセイの終わりにP.S.として書かれている、片桐はいりが歌う
 ボブ・ディランの「ドント・シンク・トゥワイス・イッツ・オーライト」の日本語バー
 ジョンの話が出てくる。
 「イッツ・オール・ライトやで」と語りかけるという片桐はいりの歌、
 聴いてみたい!
 
  永井さんが「日本の強烈なネオ・モダン・フォークブームは片桐はいりに
 よって始まると真剣に思ったりするのだ」と書いているのだ。

 
  音楽の話、美術の話、映画の話、知っていることもあるけれど、もちろん
 知らなかったこともたくさんある。この本が最初に出たときに読んでいたら、
 どれだけ刺激を受けて、まだ新鮮だったその頃の空気を吸えたのだろうと思う
 と悔しいと思う。
 きっと80年代に出会っていたら、「友人のような本」になっていたはずだ。
 

 

 ◎吉上恭太
 
文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し

 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。翻訳絵
 本『あめのひ』『かぜのひ』は徳間書店から出ています。
 セカンドアルバム
 「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。

 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017

 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします!
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  関東大震災の際に「朝鮮人虐殺が『あった』と言い切ってしまって大丈夫か」
 (p,3)ということばが、全国紙の校閲担当者から発せられたというエピソードか
 ら本書ははじまります。「大丈夫」も何もという感は否めませんが、どうやら
 一部ではおかしなことになっていることを感じさせます。
 
 『トリック『朝鮮人虐殺』をなかったことにしたい人たち』、加藤直樹、
                                                                                ころから、2019
 
  関東大震災の時に「朝鮮人が暴徒化している」、あるいは「井戸に毒を投げ
 入れている」等のデマが広まり、多くの朝鮮人が自警団をはじめとする日本
 人に虐殺されたというのは、歴史の授業でも習うところです。しかし近年その
 ような虐殺などは無かったという主張がなされているといいます。
 
  本書は朝鮮人虐殺の実相をまとめた『九月、東京の路上で』(ころから、
 2014)の加藤直樹氏が「朝鮮人虐殺否定論」の主張が荒唐無稽なものである
 ことを徹底的に暴くものです。
 
  例えばインターネット上で言われている、朝鮮人虐殺について「諸説あって
 はいけない」のかという主張があります。著者は当然のごとくばっさり切り捨
 てるわけです。朝鮮人虐殺は無かったという説は存在しません。
 
  まともな歴史家であれば朝鮮人虐殺を否定する説を唱える人など誰ひとり
 としていません。本書でも紹介されているように「右寄り」とされる育鵬社の
 歴史教科書においてさえ、朝鮮人虐殺は記載されています。
 
  過去に事実について諸説あっていいのは、残された史料を集めて検討した
 結果まだひとつの確たる結論に達していない場合であって、捏造や妄想は
 「諸説」のうちには入りません。
 
  それでもネット上には証拠を出せという人はいるようですが、著者はそれに
 も史料を挙げて懇切丁寧に対応しています。(自分で調べればいいのにと思
 いますが…。)
 
  それだけではなく意図的に朝鮮人虐殺は無かったという主張を流布する人
 物までいます。特に本書では工藤美代子・加藤康男夫妻を取り上げます。
 夫妻はその著書でまさに震災直後に出回ったデマの新聞記事等を史料とし
 て引用します。震災直後に朝鮮人が暴動を起こしたり凶悪犯罪を働いたの
 だから日本人は被害者であるという主張をし、虐殺ではないというのです。
 
  史料の恣意的な引用や文書史料の意図的な省略など、夫妻はわざと虐殺
 があったことを示す部分を避けて主張を構成していることは明白です。つまり
 夫妻は虐殺が存在したことを知りながら、あえてそれはなかったと主張して
 いると考えられます。
 
  (本書の著者の)加藤氏は夫妻の挙げる史料がいかに不適切な処置を施さ
 れた上で引用されているかをこれでもかと暴き立てます。 
 
  こうした虐殺否定の出版物を根拠に、「諸説」あるように思われてしまうのは、
 やはり朝鮮人虐殺は無かったという主張を、全く取るに足らないものとして無
 視してきてしまったことの表れでしょう。本職の歴史家にとって、明らかに荒唐
 無稽な説を否定するために労力を割くのはできれば避けたいところではある
 のでしょうが…。
 
  本書に紹介されている「横浜市副読本回収事件」など、虐殺否定論は行政
 にまで影響を与えるようになってきています。実はすでに一部ではないのか
 もしれません。
 
  虐殺否定論を徹底的に粉砕する本書の役割は非常に大きなものです。
 「最近朝鮮人虐殺は無かったという話も聞くのだが…」という方には是非読ん
 でいただきたいです。
 
  しかしこのような本がわざわざ出版されなければならないほどに虐殺否定
 論が蔓延してしまったという現状には、無念を感じます。改めて間違ってるも
 のは間違っていると声を出し続けないといけないということを身に沁みて思
 います。
 
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■トピックス
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 ■ 金井久美子さん×金井美恵子さんトークイベント
                                      『武田百合子対談集』(中央公論新社)刊行記念
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 『武田百合子対談集』刊行を記念して、金井久美子さん、金井美恵子さんに、
 武田百合子さんとの思い出について対談していただきます。
 本書には、1979年1月におこなわれた百合子さんとお二人との鼎談が収録さ
 れています。それ以後も、親しくお付き合いを続けてこられたお二人から、
 百合子さんの作品や、人となり、そしてその周辺の人々について、貴重な
 お話を伺えるまたとない機会です。どうぞご期待ください。
 ※対談後にサイン会を予定しております。


 金井久美子《画家》(かない・くみこ)
 
 1945年、北京生まれ。ルナミ画廊(67年)、シロタ画廊(75年、77年)、アート
 スペース美蕾樹(87年、2003年)、青山ブックセンター(02年)、村越画廊
 (07年「楽しみと日々」、11年「猫の一年」、13年「小さいもの、大きいこと」、
 16年「お勝手太平記」「金井久美子 猫デッサン展」)にて個展開催。
 『愛の生活』から『「スタア誕生」』まで、妹・金井美恵子の著作の装幀、装画を
 手がける。姉妹の共著に、『金井美恵子、金井久美子の部屋』(85年)、
 『ノミ、サーカスヘゆく』(01年)、『待つこと、忘れること?』(02年)、
 『楽しみと日々』(07年)ほか。

 
 金井美恵子《作家》(かない・みえこ)
 
 1947年、高崎市生まれ。67年、「愛の生活」でデビュー。68年、同書で現代詩
 手帖賞受賞。小説に『岸辺のない海』(74年)、『プラトン的恋愛』(79年、
 泉鏡花文学賞)、『文章教室』(85年)『タマや』(87年、女流文学賞)、
 『恋愛太平記』(95年)『噂の娘』(2002年)、『ピース・オブ・ケーキと
 トゥワイス・トールド・テールズ』(12年)、
 『カストロの尻』(17年、芸術選奨文部科学大臣賞)、『「スタア誕生」』
 (18年)ほか。エッセイに『映画、柔らかい肌』(83年)、
 『待つこと、忘れること?』(02年)、『スクラップ・ギャラリー 切りぬき美術館』
 (05年)、『目白雑録』1〜6(04〜16年)、『金井美恵子エッセイコレクション』
 (全4巻、2013〜14年)などがある。

 ◆日時:2019年12月4日(水) 19時00分〜(開場18時30分)
 
 ◇場所:東京堂書店 神田神保町店6階 東京堂ホール    
 
 ★参加費: おひとり様1,000円(要予約)
 
 ⇒予約方法:メール・店頭・電話
 
 ・メールでご予約の場合
  上記「お申し込みはこちら」のリンク先専用応募フォームから
  お申し込みください。
 ・店頭または電話でご予約の場合
  イベント名・お名前・電話番号・参加人数をお知らせください。
 
        ご予約受付電話番号:03-3291-5181
 
 ※当日17:00より1階レジカウンターにて受付を行います。
    受付時にお渡しするイベントチケットは6階入口にて係員にご提示いただ
    きますのでそのままお持ちください。 
 ※6階には待機場所を設けておりませんので、開場時間前に6階へお上がり
    いただくのはご遠慮ください。 
 ※会場での書籍のご購入は現金のみの対応となっており、クレジットカード
    ・図書カード・電子マネー等でのお支払いはできません。また、東京堂の
    ポイントカードへのポイント付与もできませんので予めご了承ください。 
 ※やむを得ずキャンセルされる場合は、お手数ではございますが
     電話またはメール(shoten@tokyodo-web.co.jp)にて
     ご予約のお名前・イベント名をご連絡ください。

                                       ―――東京堂書店HPより抜粋―


 ■  2019年ドラマ大蔵ざらえ  テレビドラマの構造分析 番外編 京都・誠光社
 └─────────────────────────────────

  『いだてん』、『きのう何食べた?』、『凪のお暇』、はたまた、
 『白衣の戦士!』、『Heaven?』、『シャーロック』と、
 今年もさまざまなドラマが話題にのぼった豊作の一年。え?観てない?
 全然?もったいない!
 
 毎回圧倒的な熱量のトークでファンを増やしている
 「テレビドラマの構造分析」番外編として
 小柳帝さんの2019年ベスト10&ワーストを大発表。
 それらについて徹底的に語り尽くします。
 ドラマにはドラマの文法と語り口、そして楽しみ方がある。
 聴けばますますドラマが見たくなる名物トークイベント。
 
 新年注目のドラマの紹介もあり。
 年の瀬におつまみとビール、お菓子とコーヒー片手に
 2019年の振り返りと新年の視聴計画を。
 


 小柳帝(こやなぎみかど) 

 映画・音楽・デザイン・知育玩具・絵本などの分野を中心に、
 さまざまな媒体で執筆活動を行なってきた。主要な編・著書に、
 『モンド・ミュージック』、『ひとり』、『EDU-TOY』、
 『グラフィックデザイナーのブックデザイン』、
 『ROVAのフレンチカルチャー A to Z』、
 『小柳帝のバビロンノート 映画についての覚書1・2』、
 また、翻訳書に『ぼくの伯父さんの休暇』、
 『サヴィニャック ポスター A-Z』などがある。
 その他、CDやDVDの解説、映画パンフレットの執筆等多数。
 なお、小柳およびROVAについては、『ROVAのフレンチカルチャー A to Z』や、
 折形研究所発行の『折る、贈る』という本に詳しい。


 ◆日時:2019年12月13日(金)19時〜
 
 ◇場所:誠光社
 
 ★定員30名 ★参加費1500円+1ドリンクオーダー
 
 ⇒予約方法E-mail:s-contact@seikosha-books.com
 (参加ご希望イベント名、お名前、お電話番号をご記載ください)
 または店頭、お電話にて承ります。 

                      ―――誠光社HPより抜粋―

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 ■あとがき

  独立系出版社が集まるイベント「Books&something」が、
 今年も開催されます!
 11月30日(土) 11時より、18時まで。
 中目黒 bonill garally にて。
 興味のある方は、ぜひ!

 毎度遅れてしまい申し訳ありません。(こればっかりでごめんなさい)
 消費税が上がって、皆様いかがでしょうか。先日NHKでアンケート
 として、「あまり変わらない」という意見が三分の二くらいを占めていて
 愕然としました。売上、落ちてますよね?自分も出費が増えるばかり
 のように思うのですが…。これからどうなるのか。厳しいばかりな気が
 します。                         

                             畠中理恵子
 ----------------------------------------------------------------------
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 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
 ■ 今号のご意見・ご質問は
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 ■ トピックスの情報提供もよろしくお願いします。
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   ・5日号:aguni原口 hon@aguni.com
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