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[本]のメルマガ vol.715

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□■[本]のメルマガ【vol.715】19年4月25日発行
[イギリスの自給率ゼロ% 号]
http://honmaga.net/ 
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□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4116名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→募集中です

★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→イタリアのビジネスチャンス?Brexit(ブレグジット)

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→「政府紙幣」という劇薬

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→今回はペンネーム人生幸朗に変更します(嘘w)

★「はてな?現代美術編」 koko
→美術買うカネはどこから来た?

★「スプートニクとカガリーンの闇」内藤陽介
→ハンガリーの5フォリント切手

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■トピックス
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■トピックス募集中です!
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■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
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第99 回 英国EU離脱の風が吹けば、イタリアの種子業が儲かる??

英国のEU離脱はBrexit(ブレグジット)といわれる。Britishとexitの造語の
ようだが。その離脱条件を巡って、テレーザ・メイ首相が英議会の承認をえら
れない状況にあり、離脱期限が10月31日まで再延期されたと報道された。メイ
首相には退陣も望まれているという逆境なのだ。

“風が吹けば〜〜が儲かる”ではないが、この状況下、イタリアから英国への
輸出が増えているとイル・ソーレ24オーレ紙にあるが、これは“めでたい”の
か...。

Brexitによって、英国の企業はこれからどのように欧州から製品を輸入できる
かにとまどい、市場にパニック的な現象がうまれ、買占めが進んだとある。

同紙によると、めざましいケースは製薬関係で、イタリアから新たな納入がな
くても数週間の需要が確保できるよう在庫を増やすことになり、イタリアの多
くの製薬会社もこれに応じた。それでイタリアからの輸出額が昨年に比べて51
パーセントも跳ねあがったという。

これはほかの業種も同じで、食品が22%、繊維が24%、化学関連が25%、車も
22%と、輸出の伸びを記録している。全生産業種でほぼ二桁の増加になった、
というのはかなりスゴいことなのではないか。

世界的にみて、イタリア製品の輸出の伸びはやっと3.2%というから、好成績そ
のものだ。EU離脱をめぐるロンドンの折衝が難航している状況がイタリア輸
出業にとっては良いビジネスの機会を提供しているとは。

こうした風を受けたイタリア人の業者がロンドンにいる。20年前から英国に住
み、野菜や果実の種子をイタリア産に限って輸入して英国で販売しているパオ
ロ・アッリゴさん。なぜ種子を?という疑問や答えは同紙のこの記事を読むと
わかる:

https://www.ilsole24ore.com/art/mondo/2019-04-19/un-kit-sementi-made-i
taly-sopravvivere-brexit--171007.shtml?uuid=AB7YojqB (イタリア語)

種子と聞いて、モノを土の中で育てたことのある方には疑問もわかないかもし
れない。なんといっても、小さな種子から生存に欠かせない物が育っていくの
だから。

英国で消費される約30%の食品はEUから供給されていた。そのため、大型食
品チェーン界もBrexitへの懸念を表明していた。
Brexitの選択に揺らいだ英国人が、離脱後に野菜や果物の種を撒いて育てよう
というのだろうか。

アッリゴさんは19世紀末に北イタリアのピエモンテ州ビエッラ県からロンドン
に移民した世代の子孫にあたる。英国の離脱後も野菜の種子によってサバイバ
ルできるようにと、商品のネーミングを「Brexit野菜サバイバルキット」とし
た。価格は一袋21.99イギリスポンド(約3,183円)。

一袋に12種類の野菜の種が少なくとも一年間分入っている。トマト、黒キャベ
ツ(ケール)、サラダ菜、バジリコ、ニンジン、ブロッコリ、ホウレンソウな
どだ。こうした野菜を庭やバルコニーで育てればいい。

種子は細心に選別される。トマトはカンパーニャ州のサン・マルツァーノ種、
バジリコはリグーリア州産、黒キャベツはトスカーナ産と、まさにイタリア代
表の野菜の種だ。

「リスクのある時期、種は大量に売れる」とアッリゴさんはいう。サバイバル
キットのネーミングが生まれた経緯はいかにもイタリアらしい。アッリゴさん
が友だちとグラッパ(蒸留酒)を飲んでいて、Brexitについてソーシャルに悲
観的なメッセージが渦巻いているのに気がついた。食料を大量にためこむ人が
いたりして、集めたものはパスタや薬や種子だった。

英国人の園芸や家庭菜園へのパッションは幾世代と続いて知られているが、種
子の生産者はなく、1950年代には種子の業者が40人くらいはいたが現在はいな
くなり、種子はオランダやドイツやイタリアから輸入されている。

EU離脱から来る不安が菜園についても高まっているためか、アッリゴさんが
1月にBrexitキットを売り出すと、すぐに売れた。もちろん、Brexitがビジネス
の機会だなんて考えもしなかったが、要望は予想もしなかったほど大きくて、
4月中旬まで千キット売れたという。

アッリゴさん自身も移民した祖父から菜園や種子へのパッションをうけついだ。
離脱には反対で、反Brexitの活動をしている。

Brexit後はどうなるのか。
アッリゴさんが抱いている憂いは、種子のような伝統のある産物が品質の劣る
もの、例えば中国から来るものに置き換えられてしまうことだという。

◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
イタリア・フィレンツェ在住。著書に『天才力 三巨匠と激動のルネサンス 
(ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ)』(世界文化社)、『メディ
チ家 ルネサンス・美の遺産を旅する』(世界文化社)。
創刊から15年のメルマガ「イタリア猫の小言と夢」は、melmaの地域情報部門
で2007年メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞。ほぼ隔週で発行中です: 
http://www.melma.com/backnumber_86333/

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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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エレン・H・ブラウン 早川健治訳 『負債の網 お金の闘争史・そしてお金か
ら自由になるために』 奈須里山舎 4800円+税

19世紀末のアメリカは、金本位制度の下で通貨不足に苦しんでいました。恐
慌が深刻化する中、「産業労働者連盟」は無負債の政府紙幣の発行を求めて、
ワシントンへの行進を行っています。フランク・ボームの名作『オズの魔法使
い』のエメラルドの都への行進は、ワシントン行進の隠喩であると著者は述べ
ています。かかしは農民。ブリキの樵は工場労働者。ライオンは運動の指導者。
狡猾な老詐欺師であるオズの魔法使いは銀行家。そして主人公ドロシーは、ア
メリカン・ドリームを追及する力強いコモンマンを体現しています。

アメリカ植民地は、イギリスの銀行の融資を受けることなく、地方自治体が
独自の通貨を発行することによって、繁栄を謳歌していました。イギリス政府
が植民地通貨の発行を禁止したことが、独立革命を引き起こす大きな要因となっ
たのです。建国の父たちも、銀行によって国家財政を牛耳られることに対する、
強い警戒感を抱いていました。南北戦争当時、リンカーンは、「グリーンバッ
ク」紙幣を発行し、北軍を勝利に導きました。人民の福利のために政府紙幣を
発行することは、アメリカのよき伝統であったと著者は言います。

1913年に連邦準備銀行(連準)が発足しています。連邦の制度を装いな
がらも連準は、銀行家たちの恣意のままに運営されています。通貨の発行権も
連準が担います。銀行は、「…紙幣…を政府に融資し、政府はこれを国債…と
交換し、前者を国家の通貨として流通させる」(90)。紙幣は、利子付きの
負債として発行されています。国家は、銀行が仕掛けた「負債の網」にからめ
とられ、膨れ上がった利息の返済に苦しむことになります。これは、民間機関
である中央銀行が通貨の発行を担う、すべての国で生じていることです。

「負債の網」から人々を解き放つために、グリーンバック紙幣の伝統に立ち
返るべきだと著者は言います。合衆国憲法には、「連邦議会は貨幣を鋳造する
権限を有する」(456頁)と書かれている。連準を廃止して、政府紙幣を発
行すればよい。累積した膨大な国家債務も、政府紙幣で支払えば瞬時に消え去っ
てしまう。その場合には国債を紙幣に置き換えただけだから、インフレは起こ
らない。政府紙幣の発行が可能になれば所得税も不要になる。これこそがドロ
シーたちの思い描いた、「アメリカン・ドリーム」に他なりません。

著者の主張は非常に過激なものです。本書で示された様々な処方箋が実現可
能なものか。経済の門外漢である評者には見当もつきません。しかし膨れ上がっ
た政府債務に圧迫されて、日本社会の窮乏化がとどまることなく進んでいるこ
とも事実です。いまこそお金とは何かを問うべき時であり、本書にはそのため
の豊富なデータが詰まっています。本書掛け値なく面白い。訳文も実にこなれ
た見事なものです。そして地方の小さな出版社が、この大著の翻訳を刊行した
ことにも、大きな意義があると思います。どうか、ご一読ください。


◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「怠ける権利」高文研
http://www.koubunken.co.jp/book/b371637.html

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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「木綿のハンカチーフ」の話

ついにネタがなくなったと思われるだろうか。古過ぎて知らない人はYouTubeな
どでご確認を。
(この曲が大好きと言う人はご容赦を)

「木綿のハンカチーフ」は太田裕美の曲で作詞 松本隆、作曲 筒美京平のゴー
ルデンコンビが最初に放ったヒットらしい。内容は都会に働きに行った恋人の
言葉に田舎に残る彼女が応える形になっている。で、私はヒットしたその時か
らずっと違和感を感じていた。

「恋人よ、僕は旅立つ、東へと向かう列車で」
どうも彼は東京(大阪かも)以西の出身のようだ。

「華やいだ街で君への贈り物、探すつもりだ」
なるほど、ちょっと頑張って「さすが都会は違うねー」と言うプレゼントを探
そうとしてるんだな。
そしてそのアンサーが
「いいえ」

何?いきなりの否定形?

そう、この曲は知らない都会で頑張ろうとしている恋人の言葉に必ず否定から
入るのだ。
「都会で流行りの指輪を送るよ」「見間違うようなスーツを着た僕の写真を見
て」

「いいえ」
「都会の絵の具に染まらないで」「草にねころぶあなたが好きだった」

いや、ちょっと待てよ、ヤツは頑張ってんねんぞ!
ウソでもなんでもありがとうとか似合うねとか言えんか?

人生幸朗みたいになってしまったが。
そしてこれ男女を変えたらチャレンジし変化して行く女性を縛るトンデモ男の
話になる。
最終的に彼女が別れを切り出したらどうなる事やら…。

恋人や友人が自分のフィールドから離れて行く事は確かに寂しだろう。だがチャ
レンジを止める足枷の様な存在では自分も成長する事は出来ない。
未来は自分の手で切り開いてなんぼだと思う。

「最後のお願い、涙ふく木綿のハンカチーフください」
涙は自分のタオルで拭きなさい。


◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
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■はてな?現代美術編 koko
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第95回 『アーティストの社会貢献─── 平成最後に知った幾つかのアーティ
スト活動』

たまたま見ていたNHKのニュースでガーナのスラム街の環境改善をテーマに活動
する日本人アーティスト長坂真護(ながさか まご)さんの作品や活動を知る
機会がありました。

作品映像のファーストインプレッションは、嫌いじゃないな、って感じ。その
反面、ガーナなんてフランスにいるときには少し身近に感じたこともあったけ
どねぇ、、、てなぐあい。

しかし、たまたま最近読み始めたエドワード・ケアリーの≪アイアマンガー三
部作≫の1作目『堆塵館』の影響もあり(ゴミに囲まれた館が舞台の小説)、果
てしなくゴミが拡がるガーナの風景が目に入って俄然意識集中。

つまり見渡す限りゴミに覆われた土地、悪臭や頭痛に襲われる空気の悪さ・・・
TVに映し出された光景は、ヨーロッパから運ばれた電子廃棄物の山でした。

聞こえてきたのは、そのゴミの山から金属を取り出して売って生計をたてる地
元の人達の劣悪な住環境を、少しでも改善したいと活動する日本人アーティス
トのお話でした。こうして私の脳みそに長坂真護さんの作品がインプットされ
たのです。

□電子廃棄物の墓場”で働く人々を救いたい…34歳日本人の壮大な挑戦 AERA.
com (日本語)
https://dot.asahi.com/aera/2018110100044.html?page=1

アーティスト活動の典型だと思いました。自分のことを語って社会に訴求する
アーティストもいれば、社会にもの申す啓蒙型のアーティストもいます。長坂
さんは後者ですね。

前者のアーティストとして挙げるのが、ナン・ゴールディン。ここ数年アメリ
カで大変な問題になっているオピオイド中毒への抗議活動でナン・ゴールディ
ンの姿を見ました。

Nan Goldin(1953-)は80、90年代を代表するアメリカ人女性フォトグラファー
です。写真がアートとして認められた頃に活躍していた人なので、私みたいに
写真に今ひとつ縁のない人間でも知っている有名人です。

90年代半ばにフランスに行った頃、彼女は凄い写真家だ、絶対に彼女の写真を
買っておけば値が上がるぞ、と友人が熱く語っていたことを思い出します。

ある意味友人の予言通りです。当時ヨーロッパではアラーキも大変有名で、写
真展があちらこちらで開催されていました。90年代はフォトグラファーのアー
ト界での価値がグッと上がった時期です。

ナン・ゴールディンは、70年代に世の中では認められていなかったトラベスティ
(女装の男性)の日常を撮影したり、自分がバイセクシャルであることを隠さ
ずありのままの日常を作品にしました。今見ても、作品のイメージは強烈です。

当時はゲイであれば常にエイズの恐怖と隣あわせでしたし、マイノリティであ
るがために陽のあたるところに出ることができなかった人々を撮り続けた女性
アーティストです。ドラッグ常習者やセックス依存症の人達の写真もたくさん
あります。

そんなアンダーグランドな人達でもというか、そういう人だからこそ、『なぜ
二人でいることがこんなにも大切なのか』と考えさせられます。今でも彼女の
作品群を見るとなんだか切なく感じます。

下記の記事を読むまで、私は彼女がオピオイド中毒になっていたことを知りま
せんでした。彼女は事態改善を訴えるための団体「P.A.I.N」を立ち上げていま
す。そしてオピオイドの問題を随分前から知っていたにも関わらず販売し続け
る製薬会社パーデュー・ファーマ社の経営者一族サックラー家が関係する美術
施設で抗議活動を続けています。

ルーブル美術館にもサックラーの名前を冠した展示スペースがあるそうで、サッ
クラー家は『現代のメディチ家』と呼ばれるほどアート関連施設や大学へ寄付
をしてきたそうです。皮肉なことに人々を麻薬漬けにして手にした金で慈善事
業をしてきたのです。

アメリカ人の多くが被害にあっているこの問題についてアーティストができる
ことはたくさんあるなと感じます。関連記事には、2018年コンテンポラリーアー
ト界で最も影響力のある100人の第4位に選ばれた、ドイツ人アーティスト、ヒ
ト・シュタイヤルの活動も報告されています。

平成最後の今春の世界では、テロで苦しむ国もあれば、知らぬ間に麻薬中毒に
なってしまう国もあります。テレビドラマで大統領を演じた役者が本当に大統
領になってしまう国もあります。

世の中はホント奇々怪々です。
フランスに住んでいた身としてはノートルダム大聖堂が燃える姿を見るのは辛
く悲しくもありました。
元号が変わったら少しは気分が晴れるニュースも見たいものです。

(参考記事)
□オピオイドとサックラー家 Afp通信(日本語)
□ナン・ゴールディン オピオイド抗議活動 美術手帖
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/13318
□ヒト・シュタイヤル サックラーを消すアプリ 美術手帖
https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/19664

◎koko
円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html(現在休刊中)

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■スプートニクとガガリーンの闇 18 内藤陽介
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1956年革命の残り香

第一次大戦の敗戦により広大な国土を失ったハンガリーは、第二次大戦では、
旧領土の回復を目指して枢軸陣営に加わり、ソ連と戦った。

しかし、結局、第二次大戦も敗戦に終わり、ハンガリーはソ連の占領下に置
かれて王制が廃止。1949年にはソ連の衛星国として共産化され、スターリンの
意向に忠実なラーコシ・マーチャーシュが首相兼ハンガリー勤労者党(共産党)
書記長として、スターリン路線を推進することになった。

1953年にスターリンが亡くなると、後継のフルシチョフはスターリン批判を
行い、スターリン時代の政策を修正し始める。衛星国のハンガリーでは、ソ連
の意向を受けてスターリン路線に批判的な改革派のナジ・イムレが首相となり、
経済改革を進めようとしたが、書記長の座に留まったラーコシは1955年にナジ
を追放。そのラーコシも1956年7月にソ連の圧力で権力の座を追われ、ラーコ
シ以上に強硬なスターリン主義者のゲレー・エルネーが後継書記長に就任する。

敗戦により心ならずもソ連の衛星国にさせられたハンガリーの人々はナジの
失脚とスターリン主義者の復活に反発。首都ブダペストでは、1956年10月23日、
市民の大規模デモが発生。反ソ感情が高まるなか、ゲレー退陣を求めるデモ隊
と警官隊との衝突を機に、暴動が拡大の一途をたどり、ハンガリー全土に波及
した。

いわゆるハンガリー動乱(ハンガリーでは“1956年革命”と呼ばれている)
である。

動乱当初、ソ連は懐柔策としてナジの復権とゲレーの辞任を決め、ナジによ
る平和的な事態の収拾を期待していた。しかし、脱ソ連化を求める市民の声に
押されたナジは複数政党制の導入と(=共産党一党独裁の否定)ハンガリーの
中立国化(=ワルシャワ条約機構からの脱退)を打ち出す。このため、ソ連が
軍事介入してハンガリーの“革命”を武力で鎮圧。ナジも逮捕された。

その後、ソ連の支援を受けたカーダール・ヤーノシュが実権を掌握したが、
1957年半ばまでは共産党政権に対する散発的な武力抵抗やストライキが続く。
結局、一連の動乱は、1958年6月、事態の鎮静化を待って、ナジが処刑されたこ
とでようやく終結。以後、1989年の民主化まで、ハンガリー社会主義労働者党
(勤労者党から改称)による一党独裁体制が続くことになる。

このように、1957−58年という時期は、ハンガリーにとっては国際地球観測
年どころではない混乱の最中にあり、無邪気にソ連との友好をうたい上げるよ
うな切手を発行することはとてもできない状況だった。この結果、ハンガリー
が国際地球観測年の記念切手を発行したのは、観測年終了後の1959年3月にま
でずれ込んでいる。

ハンガリーの国際地球観測年の記念切手は7種セットで発行されたが、このう
ち、ソ連の人工衛星が取り上げられているのは、5フォリント切手と60フォリ
ント切手

https://blog-imgs-111.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20190425213224222.jpg
https://blog-imgs-111.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20190425213225fb3.jpg 

の2種である。カーダール新政権としては、ソ連に対する忠誠心を示すためにも、
遅ればせながら、国際地球観測年の切手を発行してソ連の人工衛星を讃えざる
を得なかったというのが実情だろう。

ただし、5フォリント切手をよくみると、ソ連の人工衛星と並んで米国のロ
ケットも描かれている。まさに、ナジが目指した“中立化”を連想させるデザ
インですが、人心の安定を考えると、ソ連もそれを黙認せざるを得なかったと
いうことなのだろうか。

内藤陽介
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
パレスチナ現代史: 岩のドームの郵便学』えにし書房
電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」「年賀状の戦後史」角川
oneテーマ21などがある。

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■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在4116名の読者の皆さんに配信してお
り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。

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■編集後記
原書房の広告のとおり、拙著が好調です。7月にも17年ぶりに新規就農マニュア
ルを改訂しますので相乗効果で売れてくれるといいのですが・・・。

竜巻先生の原稿読んで「木綿のハンカチーフ」を聞き直した。今の若い歌手が
カバーしてもそれなりに売れるんじゃないかと思ったりもするが、どうなんだ
ろう?

リバイバルって、アレンジ次第でどうにでもなる。たとえばロシアの有名な軍
歌も、アレンジ次第でこの通り
「赤軍に勝る者なし」
Красная Армия всех сильней
原曲
https://youtu.be/NRNofGKSRkM
ロック板
https://youtu.be/H0WKRSkXFY4?list=RDH0WKRSkXFY4

「君たちはどう生きるか」もベストセラーになりましたし、リバイバルに鉱脈
はけっこう残ってるかも知れません。


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