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[本]のメルマガ vol.729

 

 


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 ■■ [本]のメルマガ                 2019.9.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book        [小さな秋を見つけたい 号]
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 『彩色写真で見る世界の歴史』
 
 ダン・ジョーンズ/マリナ・アマラル著 堤理華訳
 B5変型判 432頁 本体各4,500円+税 ISBN: 9784562056484
 
 世界が劇的に変化した1850年から1960年の白黒写真200点を最新技術でカラー
 に彩色。鉄道、高層ビル、電話、飛行機などの発明品から、二度の世界大戦、
 内戦、革命にいたるまで、人類の歩みをあざやかに目撃する歴史写真集。
 
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 【連載】………………………………………………………………………………
 
 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第51回「カオスをコスモスにする仕事のキモを学ぶ,ということ」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第123回 うんとこしょ、どっこいしょ
  
 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → テクノロジーの進歩が常に人間に幸福をもたらす?
     AIについて。
  
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 ■トピックス
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 三つのイベントをご紹介します。
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 ■「散慮逍遥月記」 / 停雲荘主人
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 第51回「カオスをコスモスにする仕事のキモを学ぶ,ということ」
 
 こんにちは。もちろん時事問題には関心が大アリで,この国の行く末を心配す
 ることでは人後に落ちないつもりですが,取り敢えず今回は別の話を。
 
 来年度,と言っても,もう来月からに迫っていますが,紆余曲折あって勤務先
 の司書課程で「情報資源組織論」「図書館情報技術論」というふたつの講義を
 受け持つことになりました。今日は「情報資源組織論」のお話をしましょう。
 
 この講義は,わたしが大学で学んだ頃は「分類・目録論」という,1980年代ま
 での図書館学,そして図書館の現場における「専門性」の専門性たるゆえんを
 説く講義であったのでした。しかし1990年代以降は図書館業務の電算化に伴い,
 様々な館種の図書館にMARCが広く行き渡りコピーカタロギングが当たり前のよ
 うに行われるようになると,基本的に書籍を整理する業務を学ぶ「分類・目録
 論」と,分類作業と目録作成を柱とした,いわゆる「図書館員の専門性」論は
 図書館を論じる舞台の第一線から遥か後方に退くことになります。分類・目録
 論の栄光と転落は,例えば『図書館に訊け!』(井上真琴著/筑摩書房/2004年
 8月/ちくま新書486)でも,図書館内における目録担当部屋の消滅,という形
 で描かれています。
 
 のち,1996年度の図書館法施行規則の改定により,「分類・目録論」は「資料
 組織概説」と名称を変えますが,これは図書館で扱う「資料」が書籍と雑誌の
 枠を超えたことを考慮しての変更だったと記憶します。日本図書館協会が編集
 ・出版している『日本目録規則1987年版』の改訂も,片方では目録の電算化を
 見据えて,目録作成の方式を基本記入方式から記述ユニット方式へ変更すると
 いう改革を行う一方で,図書館が扱う目録の範囲を書籍から大きく範囲を広げ
 て雑誌のみならず,地球上に存在する人間の知的生産の結果をすべて図書館で
 扱い,目録化するという壮大な実験をしているのではないか,とあらぬ誤解を
 招きかねないほど様々な資料について,目録化を可能にする改訂が施されてい
 きます。講義の名称は変更されましたが,扱うべき図書館資料の内実と学ぶ対
 象に大きな変化はなく,「分類・目録論」の教科書の内容を引き継いだものが
 「資料組織概説」の教科書となっていました。
 
 そして2012年度より「資料組織概説」は「情報資源組織論」と再度名称を変更
 します。図書館業務において機械化・電算化と言われ,世の中ではOA化と称さ
 れていたものが,情報技術(Information TechnologyもしくはInformation
  and Communication Technology)の発達に伴い,情報化・情報社会の大きな
 進展に飲み込まれる形でインターネットが世界を席巻し,いまやほとんどの社
 会人がスマートフォンでインターネットにアクセス可能なほどの基盤整備が急
 速に実現している社会において,図書館学もまた「図書館情報学(Library
  and Information Science)」に衣替えしています。図書館もまた「情報」
 「情報化」とは無縁ではいることはできず,情報を図書館の活用できる「資源」
 として扱い,これを図書館間で共有し,利用者に提供できるような形で整理し
 ておかなければならない時代を迎えています。
 
 もともと図書館が所蔵する書籍や雑誌に分類を施しその目録を作成する,とい
 う一連の作業は,片や目録を作成することにより財産の管理を行うことが目的
 のひとつであり,他方で利用者(来館者)の求めに応じてすばやく的確な資料
 を提供することをもうひとつの大きな目的としていたわけですが,現在では
 「情報」という名称の下に集約される,当該図書館が所蔵していない(所有し
 ていない)資料をも整理し提供できるようにすることが,これからの「目録」
 作成者には求められるようになってきている,というのが,「情報資源組織論」
 という名称変更の主たる眼目ではないか,とわたしは見立てているのですが,
 さてどうでしょうか。司書養成カリキュラムの2011年度改訂後もなお,旧来の
 分類・目録論の枠から一歩も出ようとしていない情報資源組織論のテキストも
 あるのが現状です。
 
 こんなことを考えながら,「情報と知識の違いは」「情報資源とは何か」「図
 書館情報学における組織化とは何ぞや」「情報資源の組織化とは」「情報を的
 確に利用者に伝えるとき,図書館は何をする必要があるのか」などを15回に渡
 って講義してまいります。今日は花粉症とそのクスリに負けたので,この続き
 はまた後日。

 では,また次回。
 
 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第123回 うんとこしょ、どっこいしょ

 
  小さな絵本美術館 八ヶ岳館で「うちだ りさこ -遠い国の物語を日本の子
 どもたちへ- 展」という展覧会を開いていただくことになった。

 
  ぼくの母、内田莉莎子は児童文学の翻訳家で、主にロシア、ポーランドなど
 東欧の童話、絵本の翻訳、民話の再話などをしてきた。1997年に亡くなったが、
 50年近く子どもの本を翻訳してきた。1966年初版の『おおきなかぶ』
 (A・トルストイ 再話 佐藤忠良 絵 福音館書店)はずいぶん長いあいだ
 教科書にも載っているのでおなじみだと思う。いまでも幼稚園などで児童劇に
 なったり、ラジオで朗読が流れたり、ロシアの昔話のスタンダードとなってい
 るようだ。

 
 美術館の依頼で資料をさがしたのだけれど、引っ越しに次ぐ引っ越しで、本
 はダンボールに詰め込んだままで、それもきちんとまとめて詰めていないため、
 なかなか探している本が見つからない。やっとのことで主な絵本、童話、その
 原書を見つけ出した。もっとも主な絵本の原書は資料として出版社に寄贈した
 ため、手元には残っていない。

 
  それでも子どものころ、大好きだった『きつねものがたり』(ヨゼフ・ラダ
  作絵 福音館書店)の原書を見つかったのがうれしい! ぼくはラダの描く
 動物の絵が大好きだ。ラダはチェコの国民的なイラストレーターで、昨年、プ
 ラハに行ったとき、街中でイラストを見かけた。レストランチェーンの看板だ
 ったんだけど。
 
 
 絵本は、どうしても絵、絵描きが注目を集めることが多い。書店で絵本をさ
 がすとき、まず絵を見るものね。でも、面白いお話は、文章の魅力によるとこ
 ろが大きい。話の展開の面白さ、文章のリズム、テンポが楽しい絵本を作るの
 だと思う。とくに外国の絵本となると、日本とちがう外国の習慣や環境を子ど
 もにわかるように、違和感なく伝えなくてはならない。あまり目立たない裏方
 の仕事だけれど、翻訳の良し悪しで絵本(もちろんどんな本でもだが)の魅力
 が決まってしまう。目立たない、というのが母がこの仕事を続けてきた理由の
 ひとつだったような気がする。「トップは目指さないで、3位くらいがちょう
 どいい」が口癖だった。
 
 
 不肖の息子であるぼくもときどき翻訳の仕事をいただくようになったのだけ
 ど、翻訳や文章に困ったとき、それが難しければ難しいほど嬉しそうに答えて
 くれた。ぼくが原文にとらわれて、ウンウンと悩んでいると、母は、ときには
 大胆に「そこのところ、丸ごと、とっちゃえ!」なんていうこともあった。原
 文を忠実に訳すのではなく、作品の意味を伝えるために翻訳する、ということ
 だった。

 
  照れ臭さもあって、あまり翻訳について母と話したことはなかった。今回、
 いろいろと資料を探していて、何冊かの雑誌に翻訳についての原稿を見つけた。

 
  「翻訳というのは、原作のイメージをはっきりつかんで、テンポにのれて、
 生き生きとした自然な日本語になっていれば最高なのでしょうけれど、なかな
 かそれが難しくて、いつも苦しい思いばかりしています。原作の文章にあやつ
 られて自然に訳していたら、みんなに喜ばれる文章になっていた、というよう
 な幸福はことは、めったにあるものではありません」


  雑誌「翻訳の世界」1980年1月号で「経験をつんだ翻訳者のちから」という
 タイトルで翻訳の苦労を語っている。また、原作の雰囲気・内容を丁寧に伝え
 るということが翻訳の第一義だと思うが、結局自分は日本人で、原書を書いた
 人は外国人なのだから、作者が伝えたいことと自分がつかんだことは違うかも
 しれない。それは仕方がないことで、「作品を読んで私自身がああこういう世
 界なんだな、と感じたものを自分が日本語にするほかはありません」だからそ
 の責任は全部翻訳者にあるという。ときおり見せる母のきびしい面はこのよう
 な覚悟があったからだろう。

 
  翻訳は役者の演技や、音楽家の演奏にたとえられるが、内田莉莎子もそのと
 おりだといっている。作品の解釈と自分なりの表現というのは共通したもので、
 だから翻訳者によって翻訳作品はずいぶん変わってくる。たとえば谷川俊太郎
 や木島始のような詩人は、詩人としての日本語を持っているので訳文に強い個
 性を持っている。日本の児童文学のパイオニアともいえる瀬田貞二の翻訳は、
 瀬田が出したいものをフルに出している。

 
  それでは内田莉莎子はどうだったのか。それらの個性的な翻訳者に比べると、
 内田莉莎子自身は無色透明、個性のない翻訳者だという。それぞれの作品に合
 った文体を考えていて、いわば読者的な立場で翻訳をしている、といっている。

 
  原書に向かうとき、読者として作品を受け取って、自分を水みたいな状態に
 置いて、丸い器だったら丸く、くねくねしていたら、自分をせいいっぱいその
 器に合わせてくねくねさせるし、四角かったら四角く流れさせようと努力して
 いるといっている。

 
  自分が読者だったら、こういう日本語、こういう文体で読みたい、というの
 が文体を作る上での最大の判断基準なのだという。

 
 「素材としてだけ原文が与えられている民話の翻訳は、自分である程度自由に
 ふくらませるられるので、楽しく翻訳ができる。だが、創作の絵本は、読者と
 してはこう読みたい、だけどテキストはこうなっている、ということで、いつ
 も戦いがある。そういうときはギリギリの線であまりテキストからは遠ざから
 ないように翻訳する。」

 
  「翻訳の世界」1977年9月号では、こうもいっている。
 
  
「テキストを忠実に訳すことはもちろん大切ですが、テキストを一言一句ゆ
 るがせにせずすべての単語を訳すことが、必ずしも忠実な訳とは思えないので
 す。ある場合、べったり原文通りなぞった訳が、しまりのないのっぺらぼうな
 文章になって、原作者の意図した文章からはずれることもあるような気がしま
 す。丁寧な訳というのは、原作の内容、雰囲気、スタイルをできるだけきちん
 と伝える訳のことだと考えています。」

 
  もちろん原文を省略するのが良い翻訳といっているわけじゃない。テキスト
 だけにとらわれてはいけない、ということなのだと思う。茶の間のテーブルに
 原稿用紙を広げて、ひとつの文章、フレーズに納得がいかないと何冊も辞書を
 引きなおして、何回も原書を読み直していたすがたを思い出した。
「おおきな
 かぶ」のおなじみのフレーズ、原文にある「ひっぱる、ひっぱる、ひきぬけな
 い」を「うんとこしょ、どっこいしょ、まだまだ、かぶはぬけません」とした
 のは、こうした試行錯誤の上に生まれたフレーズだったのだろう。やはり翻訳
 家・内田莉莎子らしい訳文だったのだと思う。

 
  児童文学の翻訳家として単行本だけでも100冊近くを出している内田莉莎子だ
 が、雑誌「ポロニカ 1990年創刊号」(恒文社)掲載の「私が出会ったポーラ
 ンド児童文学」というエッセイの冒頭部分で石井桃子の翻訳によるエリナー・
 ファージョン『ムギと王さま』(岩波書店)の素晴らしさに触れながら、自分
 の仕事のことを振り返っている。

 
 「私はつくづく考え込む。いままで胸がキュンとなるような物語を訳したことが
 あるだろうか?
  翻訳の仕事を始めて、かれこれ35年はたったけれど、はっきりいって、ただの
 一冊もない。人生を深く考えさせる感動的な作品、血沸き肉躍る大長編というの
 を訳したことも、ただの一度もない。正直なところ、ときどきとても寂しく
 なる。」

 
 翻訳という仕事が何よりも好きで天職であるといっていた母だったが、それ
 なりに悩みはあった。ただそれは「でもそんな本に出会うチャンスがなかった
 というより、自分でチャンスをつかもうと努力しなかったから、ということも
 よくわかっている。まったく自分で情けなくなるなるほど消極的で、何にせよ
 仕事をするのに向いていないようだ。」といっている。
 どうやら、ぼくは母
 親の情けない部分だけ受け継いでしまったようだなあ。

 小さな絵本美術館 八ヶ岳館
  https://www.ba-ba.net/

 うちだ りさこ 
-遠い国の物語を日本の子どもたちへ- 展

 2019年9月29日(日)〜12月1日(日)


 【展示予定作品】(予定)

 ・『てぶくろ』1965年 ウクライナ民話 エフゲーニー・ラチョフ
    ※本作のみ複製
 
・『おおきなかぶ』ローシン ロシア 

 ・『12のつきのおくりもの』1973年 スロバキア 丸木俊
 
・『ひつじかいとうさぎ』1977年 ラトビア民話 スズキコージ

 ・『パンのかけらとちいさなあくま』1992年 リトアニア 堀内誠一

 ・『ねことおんどり』1997年 ロシア  小野かおる  

 ・『ごてんにすむのはだれ』片山健 ロシア・ビアンキ作


 
 ◎吉上恭太
 
文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し

 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。翻訳絵
 本『あめのひ』『かぜのひ』は徳間書店から出ています。
 セカンドアルバム
 「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。

 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017

 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします! 


 
 
 
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  今年の初めにも人工知能に関する本
 (『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』、松田雄馬、新潮選書、2018)
 
 を紹介しましたが、またしても人工知能についての本を取り上げたいと思いま
 す。
 
 『AIには何ができないか』、メレディス・ブルサード著
                                          ・北村京子訳、作品社、2019

  以前取り上げた本もAI礼賛とは一線を画すものでしたが、今回もタイトルの
 とおりAIが何でもできるわけではないことを示しています。
 
  この手の本を私が取り上げるのは、結局のところ人工知能とか言っても動か
 してあげる人がいなければ何もできないし、そもそも人工知能は機械であって
 人間と比較されるようなものではないと思っているからで。シンギュラリティ
 とか自動運転とかに対して、かなり冷ややかな気持ちでいるからなのですが…。
 
  そういった個人的な理由は置いておいて。前に紹介した『人工知能はなぜ椅
 子に座れないのか』はどちらかと言うと技術的な視点からのアプローチだった
 のに比べると、本書は人工知能を巡る社会にも多く光をあてているのが特徴と
 言えるでしょう。
 
  特に著者が本書の中で強調しているのが「技術至上主義」への疑問です。
 「技術至上主義」とはコンピューターは人間より物事を客観的に判断できるた
 め、コンピューターが適切に使われることによってユートピアが生まれるとい
 うような考え方のことです。
 
  シリコンバレーのようなところでIT関係の技術者たちには、そういう考えの
 持ち主が結構多いようです。テクノロジーの進歩が常に人間に幸福をもたらす。
 IT技術者でなくともそいう考えの人は結構いそうな気がします。
 
  本書ではドローンや自動運転車が挙げられていますが、技術的に可能である
 からといって、それが実用的だったり合理的だったりするかは別の問題なので
 すが…。優れた技術を用いれば問題は解決するというわけでないのは、ちょっ
 と考えればわかることではないでしょうか。
 
  例えば本書第6章では「人間の問題」というタイトルで、シリコンバレーに
 集う「技術至上主義」な人々の特徴を描いています。
 
  自らの数学的能力を過大評価する傾向にあり、(中略)女性や有色人種より
 も機械を優先し続けており、彼らはSFを現実のものにしようと思いがちで、彼
 らは社会的な慣習にはあまり関心を払わず、彼らは社会の規範やルールが自分
 にも適用されるとは思っておらず…(p,149)
 
  もちろんこういう人ばかりではないのでしょうが、人工知能研究の背景にこ
 うした思想の持ち主がいることは充分に気に留めておくべきでしょう。ちなみ
 に著者が自動運転車に同乗させてもらった際の技術者の態度はいかにもな感じ
 が漂っています。
 
  結局のところ人工知能をプログラミングするのは人間なのですから、こうし
 た思想などは、意識的にせよ無意識にせよ人工知能に入りこみます。
  
  それだけではありません。人工知能が結論を導くために取り入れるデータは
 現実の社会を反映したものです。本書ではアメリカで用いられている、警察に
 逮捕された人が再び犯罪を犯すリスクを計算するアルゴリズムが紹介されてい
 ます。このアルゴリズムは黒人の方がそのリスクが高いという結論を出します。
 
  しかしもとから黒人の方が告訴されやすいという要素があるので、それを単
 なる一つの要素として処理してしまっては、現実社会のゆがみを考慮しない結
 論が出てしまいます。誤った因果関係に基づいておかしな結論を出したり、逆
 に誤った因果関係から正解が出てくることもあります。常に客観的で公平な回
 答を出してくれるわけではないのです。
 
  色々なデータを打ち込んで、総合的な結果を人工知能が判断したとしても、
 それが正しいとも公平ともいえるわけではないのです。
 
  では人工知能は役に立たないのかというと、もちろんそういうわけではあり
 ません。あくまで中心になるのは人間で、人工知能が出した結論を判断するの
 も人間です。シンギュラリティとかなんとか喧しく言われる世の中ですが、人
 工知能はあくまで道具。道具がいくら優れているとしても人間の価値が下がる
 わけではありません。
 
  「技術至上主義」者の思いつきに振り回されているとろくなことはないので、
 本書を読んで人工知能の得手不得手を学び、AIバブルに踊らされず生きていき
 たいものです。
       
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■トピックス
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 ■ 詩祭―百年のわたくし巻四
 └─────────────────────────────────

 ◆日時:2019年10月5日(土) 開場・14時 開演・15時
 
 ◇場所:徳正寺本堂
 
      京都市下京区富小路四条下ル徳正寺町39
 
 ●申込窓口:メリーゴーランド京都 
          〒600-8018 京都市下京区河原町通
            四条下ル市之町251-2寿ビルディング5F
 
            mail:mgr-kyoto@globe.ocn.ne.jp
            tel/fax:075-352-5408
 
 〇定員:70名 
 
 ★参加費:2000円
 
  
 
 ■出演:山崎佳代子/ぱくきょんみ/荒木みどり/吉田省念/季村敏夫
            /藤原安紀子/かりきん(下村よう子+宮田あずみ)/扉野良人
 
 □ゲスト:佐々木幹郎
 
 ■ 企画展「猫にお願い-東北地方の猫神・猫絵馬・猫供養-」
                                                in 村田町歴史みらい館
 └─────────────────────────────────
 
 猫は、江戸時代から鼠除けや愛玩動物として飼われていました。
 猫を神格化して祀った神社、猫を供養した塚や石碑などが、
 特に福島・宮城・岩手で見つかっています。
 
 今回の企画展では、猫を描いた絵馬、猫の絵が入った鼠除けのお札、
 猫の石像など、江戸時代から明治時代の貴重な民俗資料で、
 猫と人の深い関係を紹介します。ぜひ、ご覧下さい。 
                           (HPより抜粋) 
 
 ◆日時:2019年7月20日(土)〜10月20日(日)
            9:00〜17:00(展示室への入室は16:30まで)

 ◇開催場所:村田町歴史みらい館 1階 企画展示室 

         〒989-1305 宮城県柴田郡村田町大字村田迫85

                  ☎ 0224-83-6822
 ▼アクセス
 JR仙台駅より高速バスで30分「村田町役場前」下車徒歩5分 
 東北本線大河原駅からバスで20分 
 東北自動車道村田ICから車で1分 
 
 ★観覧料 :無料 

 ■ 「エドワード・ゴーリーの優雅な生活」展
 └───────────────────────────────── 
 ◆日時:25019年9月29日(日)〜11月24日(日) 10時〜18時
                           (入館は17時半まで)
 
      休館日→月曜日
      但し、10/14、11/4、開館、10/15、11/5閉館 
 
 ◇場所:練馬区立美術館
       〒176-0021 東京都練馬区貫井1丁目36−16
        TEL 03-3577-1821 
 
 ★観覧料:一般→1000円 高校・大学生、65〜74歳→800円
        中学生以下、75歳以上→無料
 
 ☆協力:Edward Gorey Charitable Trust、
      Brandywine River Museum、
      河出書房新社
 
 ☆後援:一般法人 日本国際児童書評評議会(JBBY)


           https://www.neribun.or.jp/museum.html
 ----------------------------------------------------------------------
 ■あとがき 
 台風15号の被害を受けられた方たちに、心よりお見舞い申し上げます。
 すでに10日経ちましたが、まだ電気が復旧されていない方たち、水道が通じ
 ていない方たち、壊れた家で辛い不安な日々を送られている方たちを思い胸
 が痛みます。
 毎年どこかで災害が起こり、大変な思いをされ、その後の生活にも苦労を重
 ねていらっしゃる方たちが増える度、自治体や政府に対して「なぜ」という
 憤りを強くします。
 今回の台風も、なぜもっと早く動き、被災されている方たちの支援ができない
 のでしょうか。もちろん、色々な要因はあるのでしょうが、これほどの痛みを
 経験してきた国が、いつも同じように被害者の我慢に頼っているのに絶望を
 感じます。一体全体、どうしたら隣の、あるいは、地続きの、また同じ国の人
 たちが苦しむことに、すぐに手を差し伸べることができないのでしょうか。
 公共とは、こういう時にこそ力を発揮するものなのではないのでしょうか?
 自分への自戒も込めて強く思います。
 民間のボランティアも素晴らしいですが、公には「責任」を取って欲しいです。
 福島の東電訴訟の件も含め、だれも「想定外」で「責任はない」としてほしく
 ない。
 「長」とつく立場は、「責任」をとるためにそこにいるのでは、と思うのです。
 長々と申し訳ありませんでした。
 
 やっと秋です。
 読書の秋を、大いに楽しみましょう。            畠中理恵子
 
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