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[本]のメルマガ vol.708

 

 

 


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 ■■ [本]のメルマガ                 2019.2.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book       [春になるのが今年は早い号]
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 ローラ・J・スナイダー著 黒木章人訳
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 フェルメールの『地理学者』『天文学者』のモデルとされる顕微鏡科学者レー
 ウェンフック。長年謎だった二人の運命的な関係を新たに解明し、光学の発
 展と科学革命が17世紀オランダにもたらした「見る」概念の大転換点を解説。
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 【連載】………………………………………………………………………………
 
 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第57回「平成30年著作権法改正について」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 
 第116回 町に愛される書店

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → AIって何?
  
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 ■トピックス
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 1つのイベントをご紹介します。
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 ■「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人
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 第57回「平成30年著作権法改正について」
 
 こんにちは。大変ご無沙汰をしておりました。昨年の12月初旬に,その半年ほ
 ど前から入退院を繰り返していた父親が亡くなりまして,常日頃より定命は逃
 れがたしと考えているので,特に残念とかそのようなことはなかったのですが,
 それにしてもひとひとり亡くなると諸手続きが面倒な上に財布がどんどん軽く
 なり,その上幾分離れたところに住んでいたものですから手続きに関わるため
 の移動がまた大変ということで,結局3回も連載をお休みすることになりました。
 今回より復帰いたしますが,休んだ分を取り戻せるような記事を書けるかどう
 か,寝かせておいたネタが寝かされすぎて時期を失してしまったりしているの
 でかなり不安です(苦笑)。
 
 さて今回は著作権のお話でみなさまのご機嫌を伺います。実のところ著作権を
 巡る喫緊のトピックは海賊版対策において,違法ダウンロードの対象を静止画
 も含めた著作物すべてに広げる著作権法改正を安倍晋三政権が検討している
 ことですが,これはもう少し追いかけてから取り上げることにします。
 
 ご存知のとおり,2018年5月に公布され2019年1月より施行されている「著作
 権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)」により,次の4点につい
 て法改正がなされました(1)。
 
 1) デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定の整備
    (第30条の4,第47条の,第47条の5等関係)
 2) 教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備(第35条等関係)
 3) 障害者の情報アクセス機会の充実に係る権利制限規定の整備
    (第37条関係)
 4) アーカイブの利活用促進に関する権利制限規定の整備等
    (第31条,第47条,第67条等関係)
 
 改正に関する解説(2)でも1)の「柔軟な権利制限規定の整備」についてはかな
 りのページを割いて説明がなされており,Web上においてもこの改正をビジネ
 スチャンスだと捉えているページが散見される一方,図書館業界では3)の「盲
 人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物
 を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」(3)締結に伴う対応が重要
 視されているようで,日本図書館協会や国立国会図書館から様々な形でアナ
 ウンスがなされています(4)。マラケシュ条約への対応は,特に公共図書館が
 担うべき「ユニバーサルサービス」や「社会的公正」の保障という点からも重
 要であり,図書館業界が今次著作権改正の中で最重要視するのは当然のこと
 です。
 
 ところで,わたしは大学図書館に勤務していることもあって,今次著作権改正
 では2)の「教育の情報化に対応した権利制限規定等の整備」が気になってい
 ます。2018年5月,まさに今次著作権法改正が成立したその日に開催されて
 いた大学図書館シンポジウム(5)のテーマになってはいましたが,改正が成立
 したのちも,管見の限りではさほどひとの口の端に上ることがないように見え
 ます。しかし,大学を含む教育機関(営利を目的とするものを除く)にとって
 この改正は,JASRACが楽器教室から著作権使用料の徴収を開始する決定を出し
 たこと(6)にも匹敵する,あるいはそれ以上の社会的影響を及ぼす改正なので
 はないかと,わたしは考えています。
 
 この改正は,これまで営利を目的としない学校その他の教育機関においては,
 授業内での使用に限って他者の著作物の無断使用および複製を認めていた
 (教室の外に持ち出すことはできない)ものを,今後は授業で利用していた他
 者の著作物の無断使用・複製を含めた教材を教室の外での公開・利用も可能
 にしますよ(元著作者の権利制限の拡大),そのかわり補償金の支払い義務
 を営利を目的としない教育機関にも課しますよ,というものです。言葉だけで
 説明しようとするとなかなかややこしい話です。
 
 ここで問題になるのは,営利を目的としない教育機関であってもこの改正の補
 償金の支払い義務を負わされることです。権利者側からすると,これまでが間
 違っている,という主張のようです(7)し,文部科学省も「本条における著作物
 の利用の主体は非営利教育機関であり,その教育活動には高い公益性が認めら
 れることから,当該教育機関が支払うべき補償金の額は,同条の趣旨も踏まえ
 たふさわしい額とすることが適当」(7)とは言うものの,これまで一銭も払う必
 要のなかったものを新たに予算措置して支払うことには抵抗がありそうです。
 
 漏れ伝わるところでは,補償金が支払われる先となる「指定管理団体」,また
 教育機関の側で補償金の支払いを取りまとめる「教育機関の設置者の代表団
 体」および補償金の算定方式は未定とのことですが,遅くとも「公布の日から
 起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」の期限である2021年
 5月25日までには上記団体が決定し補償金を各教育機関が支払う義務が生じ
 ると考えられます。そのときになって悶着の種にならないような対応が,教育
 機関の側にいまから求められることになるのではないでしょうか。
 
 では,また次回。
 
 
 注記
 (1) 著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)について 
      | 文化庁
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei
                                                      /h30_hokaisei/
 
 (2) 著作権法の一部を改正する法律(平成30年改正)について(解説)
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei
                                  /h30_hokaisei/pdf/r1406693_11.pdf
 
 (3) 盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された
     著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約 | 外務省 
      https://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page25_001279.html
 
 (4) E2041 - マラケシュ条約の締結・著作権法の改正と障害者サービス
      | カレントアウェアネス・ポータル
      http://current.ndl.go.jp/e2041
      著作権法の改正とマラケシュ条約の締結(日本図書館協会)
      http://www.jla.or.jp/Portals/0/data/iinkai
           /%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E5%A7%94%E5%93%A1
                 %E4%BC%9A/Marrakesh%20Treaty_Flyer_20181106.pdf
 
 (5) 大学図書館著作権検討委員会主催「大学教育のICT化と著作権法改正
      : 学習資源のデジタル化と図書館資料の活用」の開催について
      (お知らせ) | 国公私立大学図書館協力委員会(JULIB) 
      https://julib.jp/blog/archives/1977
 
 (6) 楽器教室における演奏等の管理開始について(Q&A) JASRAC 
      https://www.jasrac.or.jp/info/gakki/faq.html
 
 (7) 著作権法の一部を改正する法律?概要説明資料 p.13
      http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/hokaisei
                                  /h30_hokaisei/pdf/r1406693_02.pdf
 
 
 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第116回 町に愛される書店

 
  千駄木にある古書ほうろう(https://horo.bz/)が3月に移転することにな
 った。移転先が池の端なので、それほど遠くはないことを知ってホッとしてい
 る。それでも、いつも、そして、いつまでも「そこにある」と思っていた古書
 ほうろうが、千駄木の町からなくなってしまうのだ。やはりさびしいなあ。つ
 い先日、日暮里にある古書信天翁が閉店したばかりだ。古書信天翁は、古書ほ
 うろうにいた山崎さんと神原さんのおふたりが2010年に開店した古書店だった。
 町から、ふたつも古書店がなくなってしまう。誰に文句を言えばいいのか、わ
 からないけれど、町は大きな財産を失ったのだと思う。

 
  古書ほうろうのホームページに掲載された移転の挨拶をなんども読んだのだ
 けれど、道灌山下の交差点に、古書ほうろうのウィンドウがなくなることはど
 うしても想像しにくい。クリーニング店のとなりに「BOOKS HORO」の看板がな
 くなった風景を思うと、ちょっとおおげさだけれど、大きな喪失感を覚える。
 千駄木がもう知っている町ではなくなってしまうような気がするのだ。それほ
 どこの町の風景に溶け込んでいたし、その存在は大きかった。それは古書店と
 して、本を売ったり、買ったりする店としてだけでなく、町と人を結びつける、
 人と人が出会う「場」であったからだ。古書ほうろうを知っている人なら、き
 っと、だれでもが感じることだろう。
 
 
 古書ほうろうでは、本について、映画について、音楽、落語、町のこと、
 ジャンルを超えたバラエティに富んだトークショーや展示も行われてきた。い
 わゆる流行を追ったものではなく、地味だけど知っておきたいことがテーマに
 なっていた。そして、なによりも不忍ブックストリートの一箱古本市の本部と
 しての役割も大きい。そういえば、一箱古本市のときに古書ほうろうの宮地
 健太郎さんが「恭太さんにぜひ会ってほしい人が箱を出しているから、行って
 ください」と声をかけてくれた。それが音楽やサブカルに詳しい「たけうま書
 房」さんだった。おたがいに人見知りをするタイプだったから、そのときは、
 それほど話は弾まなかったけれど、いまでも大切な友人のひとりになっている。
 そうやって、人と人を結びつけてくれる場所でもあった。

 
  ぼくが古書ほうろうを訪ねるようになったのは、一箱古本市がきっかけだっ
 たから、もう14年になるのか。本好きの友人たちがいっしょだったかもしれな
 い。初めて訪れた印象は、以前のホームページの口上にあるように「ほこりっ
 ぽくない、薄暗くない、敷居が高くない」だった。町の古本屋にしては広い店
 内の棚には日本文学、外国文学、詩集、美術書、そして音楽関係の本がずらり
 と並んでいた。通路に余裕があるせいか、たいていの古本屋に入ると感じる息
 苦しさがまったくなかった。それでいて新刊書店にあるよそよそしさがなくて、
 古い本の匂いが心地よかったくらいだ。

 
  店は、若い(当時は…です)二組のカップルが運営していた。ぼくの持って
 いた古本屋のイメージとまったく違っていて新鮮だった。


  古書ほうろうの「ほうろう」は、音楽好きなら「ああ、そうか」と思うだろ
 う。小坂忠の名盤「ほうろう」が由来となっている。2010年暮れには、本当に
 小坂忠さんがやってきて歌ってくれた。古書ほうろうで名曲「ほうろう」を聴
 くことができるなんて夢のようだったな。そう、古書ほうろうは、夢を叶えて
 くれる場所だった。

 
  2010年の7月から「サウダージな夜」というライブをやらせてもらうように
 なった。ぼくはギターを弾くことが好きで子どものころから、とくにプロを目
 指すでもなく、ずっと弾き続けてきた。縁があり、50歳近くになって、ライブ
 でギターを弾いたり歌ったりするようになったのだが、もちろん大きなコンサ
 ートなど夢見たこともなかった。ただ友人たちにギターを聴いてもらえる、ち
 いさな集まりが出来たらいいな、とはずっと考えていた。
 そんな夢が実現したのも古書ほうろうだった。

  
  きっかけは不忍ブックストリートの茶話会で、ぼくがギターの師匠である
 伊勢昌之というジャズギタリストの話をしたことだった。筒井康隆のエッセイ
 集「狂気の沙汰も金次第」(新潮文庫)にも登場する伊勢昌之は、どうしても
 その奇行ばかりが話題になってしまうが、だれよりも早くブラジル音楽を研究
 し、独自の音楽に昇華した音楽家だった。正当な評価を得ることなく1995年に
 53歳で亡くなった。その話のあとで数曲、ギターを弾いたのだが、それを聴い
 た古書ほうろうの宮地さんが声をかけてくれた。

 
  古書ほうろうでの「サウダージな夜」は、古本屋の営業中に店の奥でする入
 場無料のライブ。午後8時から1時間くらい、椅子に腰掛けて聴いてもよし、
 本棚を眺めながらもよし、飲み物の持ち込みもかまわないという、ゆるいイベ
 ント。スケジュールのお知らせに、「三軒隣に酒屋あり」と書かれているのが
 好評だ。2010年7月に始まったイベントも、もう9年目、61回を数える。よく続
 いた、というか、続けさせてもらったと思う。

 
  そして、2011年3月には東日本大震災があった。そのときのブログにこんな
 ことを書いていた。

 「地震の後に、すぐに思い浮かべたのは不忍ブックストリートの友人たち。
 そして元気をくれたのも、ツイッターのタイムラインに流れる彼らの言葉でし
 た。ふだんどおりの言葉、会話にどんなに力づけられたか!
  ぼくも、いつもどおりの力の抜けたサウダージをやろうと思います」

 
  2011年3月29日の「サウダージな夜」から、震災をきっかけに歌詞を書くよ
 うになった鶯じろ吉さんといっしょに作ったオリジナル曲を演奏するようにな
 ったんだっけ。震災がなければ、こんなに続かなかったかもしれない。


  友人、仲間たち、そして古書ほうろうという場に支えられて続けてきた「サ
 ウダージな夜」は、千駄木では最後の夜を迎える。そこでいままで出演してく
 れたミュージシャンに声をかけたら、なんと10人以上の人からオーケーの返事
 が!
 

  みんな、古書ほうろうで演奏することを楽しんでくれていた!
  いったいどんなライブになるかわかりませんが、よかったら遊びに来てくだ
 さい。


 「サウダージな夜」

  2月28日(木)午後7時から2時間ほど。
  無料(投げ銭歓迎)飲み物持ち込み自由。三軒隣に酒屋あり。
 
  古書ほうろう(https://horo.bz/)


  上野池の端の新しい古書ほうろうは、3月30日に開店予定。カフェスペース
 があって美華子さんが焙煎した萬福亭のコーヒーも飲めるらしい。
 「サウダージな夜」も続けさせてもらえる。ぼくの母が使っていたアップライ
 トピアノも持っていってくれるそうです。よかった!

  そうだ、新しい古書ほうろうで、いつか宮地健太郎さんと美華子さんに「古
 書ほうろう」について語るトークをしてほしい! そして新しい古書ほうろうは、
 池の端で、どんな風景を見せてもらえるのだろう? とても楽しみだ。

 ◎吉上恭太

 文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し

 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。
 翻訳絵本『あめのひ』『かぜのひ』は徳間書店から出ています。

 セカンドアルバム「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。

 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017

 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします!
 

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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  最近AIの話が巷を騒がせていますね。なんでも人間の仕事をAIはどんどん
 奪っていくだの、その分ベーシックインカムを導入すべきだなど、薔薇色なん
 だか真っ暗なんだかわからない未来が待っているようです。
 
  しかしAIはそんなに万能なのだろうか、と思うこともしばしばです。もう少
 し奴らのことを知っておかなければならないような気もします。と言うわけで
 今月はこちら。
 
 『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』、松田雄馬、新潮選書、2018
 
  チェスや将棋の世界では人工知能が人間よりも強くなってきています。もは
 や人間の行う様々な仕事も人工知能に置き換わってしまうという話も昨今色々
 と言われています。それでも人工知能はそんなにすごいのだろうかと、ぼんや
 りした疑問を抱えている方もいるのではないでしょうか。本書では現在の人工
 知能がどういったことができて、どういったことができないかを、人間の知能
 と比較しながらわかりやすく教えてくれます。
 
  人工知能が得意とするのは「最適解を発見すること」。その点で言えばチェ
 スや将棋などは、人間では学習しえないくらいの膨大な棋譜を読み込んで、実
 際の局面でどう指せば勝利をより得やすくなるのかを学習すればよいので、人
 工知能の得意とするところです。

 色々なデータをもとにして、どうすればいいのかを導き出すことは人工知能
 の得意な点です。しかしここで注意しなければいけないのは、何について最適
 解を見つけないといけないかは、人工知能自身が判断するわけではないことで
 す。その問題設定は人間がしてあげないといけません。チェスや将棋に強い人
 工知能は、(当然ですが)予めゲームに勝つという目的ために作られているか
 らこそ力を発揮できるわけです。
 
  逆に人工知能は現実の世界を認識することが不得手です。本書にもグラスに
 ワインが注がれている写真があるのですが、それを見せても人工知能はグラス
 にワインが注がれている写真であることが理解できません。ただの色の付いた
 画像としか認識できず、意味を見出すことができないのです。p,164にロボッ
 トに見えている世界の図があるのですが、そもそも世界の中から物体を抽出す
 ることが難しいようです。
 
  では人間はなぜ軽々とそのハードルをクリアできるのかと言うと、身体を持
 っていることが大きく関わっています。ゴンドラ猫という(ちょっとかわいそ
 うな)実験が紹介されていますが、幼少時に身体の動きを拘束されていた猫と
 能動的に体を動かした猫とでは、拘束されていた猫は拘束が解かれた後も、視
 覚での感覚認識に不十分な点が出てきてしまうのだそうです。ここからも人間
 が世界を認識するためには身体が重要なことがわかってきます。
 
  当然ながら世界では様々な出来事が発生しますが、人間(や他の生物)はそれ
 に対処しながら生きていかなければなりません。それに対応するために人間は
 身体と精神をフル活用して世界を認識し、それに立ち向かっていきます。コン
 ピュータはそれができません。
 
  じゃあ全部言葉で教え込めばいいかというと、それはおそらく無理でしょう。
 「フレーム問題」として本書に紹介されているように、定義したものと現実と
 の照合に無限の時間をとられてしまうのではないでしょうか。
 
  コンピュータは条件が限定された空間では力を発揮しやすいのですが、変化
 の激しいこの世界の中に投げ込んでしまうと、なかなか力を発揮できません。
 翻って人間や他の生き物が日常に行っている些細なことのひとつひとつが、細
 かな判断と動作の巧みな積み重ねであることが実感されます。
 
  人間のような知能を持つ人工知能は未だ開発されていません。そもそも人間
 の知能自体がまだまだ未解明なところも多い中で、どの程度の達成がなされれ
 ばそれは開発されたと言えるのでしょうか?
 
  人工知能に過度な期待や落胆をしたりせず、冷静に考えるために本書はよい
 案内役になります。そして人工知能に世界を認識させることの厄介さから、人
 間の持っている能力のすごさも改めて認識させられます。
  
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
  
 -------------------------------------------------------------------
 ■トピックス
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 ■ 坂本千明 『退屈をあげる』原画展
 └─────────────────────────────────
 ◆日時:2019年2月22日(金)ー3月24日(日) 11時〜18時 火・水休
 
 ◇場所:ギャラリー 日色 
     〒921-8031 石川県金沢市野町3-16-2
     TEL 076-205-6119
         https://hiro-g.com
 
 イラストレーター/紙版画作家・坂本千明さんの詩画集『退屈をあげる』
 私家版でも話題を呼び、2017年秋、青土社から新装版として出版されました。
 猫好きに限らず、多くの人が手にしている本作の原画展を開催いたします。
 特別出演として、陶芸作家・駒ケ瀬三彩さんのブローチとオブジェ、
 寅印菓子屋さんのお菓子の販売もあります。
                         (案内状より抜粋)
 ----------------------------------------------------------------------
 ■あとがき
 毎度遅れてすみません。
 福岡県の出版社、書肆侃侃房さんが本年度の福岡市民文化活動功労賞を受賞さ
 れました。「芸術を中心とした地元文化の向上、発展に顕著な功績を残した人
 や団体に贈る文化賞」。書肆侃侃房さんは「主に小説や短歌、気候ガイドなど
 を刊行している。同社発行の文芸誌『たべるのがおそい』に掲載された今村夏
 子さんの小説「あひる」は、16年の芥川賞候補作とな」りました。(「あひる」
 は同社で単行本『あひる』としてかんこうされています)
 おめでとうございます!                                畠中理恵子
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 おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
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  15日号編集同人 「畠中理恵子」まで nora.7-4.ttpnkffb.c@ezweb.co.jp 
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   なお、当メルマガは配信日によって、情報の提供先が変わり
   ・5日号:aguni原口 hon@aguni.com
   ・15日号:畠中理恵子 nora.7-4.ttpnkffb.c@ezweb.co.jp
   ・25日号:朝日山 asahi_yama@nifty.com
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