[本]のメルマガ

配信済のメルマガのバックナンバーを見ることができます。また、記事に対するコメントもお待ちしております。
<< [本]のメルマガ vol.689 | main | [本]のメルマガ vol.692 >>
[本]のメルマガ vol.690

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ■■------------------------------------------------------------------
 ■■ [本]のメルマガ                 2018.8.15.発行
 ■■                             vol.690
 ■■  mailmagazine of book      [涼しさをわすれてしまったな号]
 ■■------------------------------------------------------------------
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/
 
 『主治医だけが知る権力者:病、ストレス、薬物依存と権力の闇』
 
 タニア・クラスニアンスキ著 川口明百美・河野彩訳
 四六判 360ページ 本体2,400円+税 ISBN: 9784562055852
 
 ヒトラー、ムッソリーニ、毛沢東…世界で知られる8人の国家元首が抱えてい
 た持病、ストレス、薬物依存、情緒不安定、薬物中毒などの健康問題と、主
 治医だけが知っていた裏の顔。輝かしい権力がつくりだす影の部分を暴く。
 
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【連載】………………………………………………………………………………

 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第55回「緑陰読書ならぬ緑陰音楽をどうぞ」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 →  第110回 「寄席」に行きたい!
 
 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → <火の見櫓>の役割
  
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ----------------------------------------------------------------------
 ■トピックス
 ----------------------------------------------------------------------
 ひとつ、イベントをご紹介します。
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 ----------------------------------------------------------------------
 ----------------------------------------------------------------------
 ■「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人
 ----------------------------------------------------------------------
 第55回「緑陰読書ならぬ緑陰音楽をどうぞ」
 
 こんにちは。残暑お見舞い申し上げます。
 昨年までとは異なり,転居したおかげで冷房のある部屋で盛夏を迎えています
 が,転居せず以前のアパートにそのまま居座っていたら,間違いなく部屋で熱
 中症に倒れていたのではないかとすら思われる,それほどの猛暑ですね。
 
 現在,大学の研究紀要というものに図書館情報学関連(なのかどうかいささか
 怪しい,という話もありますがそれはさておき)の記事を投稿すべく参考文献の
 収集中ですが,暑さのために外へ出るのが億劫になり,なかなか足で稼ぐこと
 も出来ない状況で,どうしても文献探索も机に向かいながらインターネットでオ
 ープンアクセス文献を探すことが中心になります。自室に居ながらにして,いま
 や日本語文献へのアクセスもそれなりに容易になりつつあり,わたしのような
 図書館情報学,と言っても人文・社会科学系の図書館情報学研究者ではあり
 ますが,そのような立場の人間もオープンアクセスの恩恵にあずかる場面が多
 くなっています。
 
 図書館業界的には,ここから「シリアルズクライシスとオープンアクセス運動」に
 ついて語り出すのが政治的に正しいあり方でしょうが,その方面の話はわたし
 が語らずとも記事が年々増加して汗牛充棟,つい先日もあるblogが立派な記
 事を投稿しています(1)。今回このあたりの話は,他のみなさまに譲り,わたしは
 自室ではどうしても切れてしまう集中力を補うために,いったん書も端末も放擲
 して暑い夏をしのごうと思います。
 
 わたしが敬愛する作曲家グスタフ・マーラーの好敵手であったリヒャルト・シュト
 ラウス(1864-1949)(2)の作品の,わたしはよい聴き手ではなく,なかでもシュ
 トラウスが後半生で取り組んだ歌劇を全くと言っていいほど聴かないので,シュ
 トラウスについて的確な評価をしているかどうか心もとないところはありますが,
 それでも交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」作品30(3)と「英雄の生涯」作品
 40(4)の両作品は40年ほどの付き合いがあり,マーラーと同様に大規模な管絃
 楽を縦横無尽に使いこなしたオーケストレーションの妙技には聴くべきものがあ
 ります。
 
 「英雄の生涯」は1898年,シュトラウスが最後に完成した交響詩ですが,シュト
 ラウスは当時まだ34歳です。そこからシュトラウスは50年以上長命を保ちま
 すが,「サロメ」「エレクトラ」「薔薇の騎士」などすぐれた歌劇を世に送り出す一
 方で,最晩年にヴィーン・フィルに献呈すべく取り組んだ「ドナウ」はとうとう完成
 せずに終わりました。歌劇に取り組む一方でシュトラウスは「家庭交響曲」
 (1904年)(5),「アルプス交響曲」(1915年)(6)という2曲の「交響曲」と名付け
 られた作品を世に送り出します。交響曲と名付けられていいるとはいえ,どちら
 もいわゆる絶対音楽ではなく,ある情景を描写する標題音楽です。ちなみに絶
 対音楽としての交響曲をシュトラウスは10代の頃に2曲書いていますが,あまり
 取り上げられません。シュトラウスの若い頃の作品で現在も時々取り上げられる
 のは,むしろ室内楽の佳品であるヴァイオリン・ソナタ(1888年)(7)とチェロ・ソ
 ナタ(1883年)(8)です。
 
 「家庭交響曲」では作曲当時としては珍しくなっていたオーボエ・ダモーレと,
 当時の目新しい楽器だったサクソフォンとを用いて作品を書いてますが,「アル
 プス交響曲」では舞台裏の金管アンサンブル(バンダ)をはじめ,ヘッケルフォ
 ーン,ワーグナー・テューバからカウベル,ウィンドマシーン,サンダーシートな
 どという風変わりな楽器を動員して,アルプス山脈の様子を描写することを試み
 ており,それは成功したと言っていいでしょう。
 
 今年の,あまりに暑い夏を乗り切るべく,聴くために頭を使う音楽よりも流れて
 いく派手な音響を楽しめる音楽が執筆のBGMとして適当なものなのですが,
 この夏のオススメは,まさにこの条件を満たすリヒャルト・シュトラウスの「アル
 プス交響曲」です。全編通して45分から50分ほどかかる作品ですが,冒頭数
 分と末尾数分がピアニシモの,暗闇に溶解してしまうような音楽になっている
 ため,リピートをかけてエンドレスで聴いていてもさして抵抗がない(「ツァラトゥ
 ストラはかく語りき」も同じような冒頭と末尾ですが,こちらは冒頭すぐに出る動
 機があまりに圧倒的なため,起承転結の「起」がわかりやすすぎてリピートして
 聴くことに向いていないような気がします)ところがBGMとして適しているんじゃ
 ないかと思うところです。全体に親しみやすい旋律と起伏に富んでおり,何を描
 写しているかわからなくてもあまり問題になりません。それどころか,冒頭から
 数分たって最初のクライマックスに現れるのはチャイコフスキーの交響曲第6番
 第1楽章の第2主題後半に出てきたのと同じ動機ですし,登山者の躍動するよ
 うな主題が現れてしばらくすると出現する「岩壁の動機」というのが「ウルトラセ
 ブン」のテーマにそっくりという,実に親しみやすく聴きやすい(苦笑)音楽では
 ないかと愚考する次第です。
 
 シュトラウスの管絃楽作品は,有能な指揮者でもあったシュトラウス自身による
 録音もあり,「ドン・ファン」などが早くから取り上げられてきましたが,「アルプ
 ス交響曲」は上に書いたような多彩な楽器群を150人ほどのオーケストラで演
 奏するのが適当,とされたこともあり,ようやく1970年代に,デッカによるメータ
 とロサンゼルス・フィルの録音(9)など,優秀な録音のサンプラーとして取り上げ
 られるようになりました。中でも1980年に録音されたヘルベルト・フォン・カラヤ
 ンとベルリン・フィルによる「アルプス交響曲」の録音(ドイツ・グラモフォン)(10)
 は,当時導入されたばかりのデジタル録音初期の優秀録音として,またその
 音楽の持つ説得力において桁違いの魅力を醸し出しています。さて,これから
 誰がカラヤンを越える録音をものするでしょうか。
 
 暑い夏が続きます。どうかみなさまもお身体にお気をつけてお過ごしくださいま
 せ。では,また次回。
 
 (1) 研究者諸賢への引継ぎ:学術誌の購読料高騰と論文のオープンアクセスに
      ついての情報まとめ - Take a Risk:林岳彦の研究メモ
  http://takehiko-i-hayashi.hatenablog.com/entry/2018/08/09/214457
 (2) アルマ・マーラーなどの伝えるエピソードのためか,マーラーに比べてシュト
     ラウスは夫妻揃って「俗物」という評価が定着しているような気がするので
     すが。
 (3) Richard Strauss: "Also sprach Zarathustra" op.30
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=o5bU7ibqGko&t=16s
 (4) Strauss: Ein Heldenleben ? hr-Sinfonieorchester ?
     Andres Orozco-Estrada
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=Us1jfC7bMpA
 (5) STRAUSS Domestic Symphony | RAI Torino, F.Leitner | video 1990 R
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=i8P-nAZGbf8
 (6) Strauss: Eine Alpensinfonie ? hr-Sinfonieorchester ? 
     Andres Orozco-Estrada
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=zsTo7QxxgYg
 (7) Minami Yoshida | Strauss | Sonata in E Flat 
      | 2016 Montreal International Violin Comp
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=tQS1LqsDWGs
 (8) Mischa Maisky: Richard Strauss ?
      Sonata for cello & piano in F major, Op 6 (2003)
      - YouTube https://www.youtube.com/watch?v=L838Gfi8Hmw
 (9) ズービン・メータ/R.シュトラウス:アルプス交響曲/ドン・ファン<限定盤>
      - TOWER RECORDS ONLINE https://tower.jp/item/537395/
 (10)  ヘルベルト・フォン・カラヤン/R.シュトラウス:アルプス交響曲
      - TOWER RECORDS ONLINE https://tower.jp/item/4290578/

 なお,演奏へのリンクは音楽の雰囲気を確認するためのもので,これが名演で
 あったり決定版であったりするわけではありません。念の為。
 
 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
 ----------------------------------------------------------------------
 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 ----------------------------------------------------------------------  

  第110回 「寄席」に行きたい!

  
 このところ落語ブームらしくて、毎日のように落語会が行われているという。そ
 ういえば区報の催し物には必ず落語の公演が載っているし、町の掲示板にも若
 手の落語会のお知らせが貼ってあったりする。ぼくは落語に詳しくないし、寝しな
 にyoutubeで聞くのは漫才のほうが多い。古典の教養のないぼくには落語は正
 直いってどうも敷居が高い。

  もちろん寄席という場所があるのは知っている。若い頃、自転車通勤をしてい
 て新宿末廣亭の前はしょっちゅう通っていたけれど、なんとなく入ってみる“勇気”
 がなかった。寄るのはもっぱら新宿ピットインだった。そういえば昔はテレビで寄席
 中継はあったけれど、最近はないものなあ。「笑点」くらいなのかな。どうしても寄
 席には、縁遠くなってしまう。

  寄席に興味はあっても、行くきっかけがない入門者、入門者以前の人にも、ぴっ
 たりの本がこの本、『寄席の底ぢから』(中村伸 著 三賢社)だ。
 落語の入門書
 はあっても、ここまでくわしくて初心者にもわかりやすい寄席の本っていままでなか
 ったのではないかな。寄席が大衆娯楽の場としていかに大切なのか、ということが
 伝わってくる。寄席の歴史はもちろん、寄席がある上野、新宿、浅草、池袋などの
 街のこと、著者が経験した寄席での出来事、色物といわれる落語以外の漫才、曲
 芸などの芸の重要性など、一年を通じて空いている時間をすべて寄席通いをして
 いるんじゃないかと思われる著者だからこそ書ける愛情あふれる、チャーミングな
 寄席ガイドだ。この本で出囃子の大切さを知って、今度寄席に行くときは三味線に
 耳を澄まそうと思った。

 
  ぼくが初めて寄席に行ったのは1年ほど前のこと。この本の著者、中村伸さんが
 誘ってくれたからだった。夕方、新宿で待ち合わせて、まず向かったのは新宿三
 丁目の楽屋(らくや)。落語関係者がよく利用している純喫茶だそうだ。小腹が空
 いていたので磯辺巻きを食べた。

  そしてついに新宿末廣亭に入ることになった。古い木造の建物で、頭の中にあっ
 た寄席のイメージどおりの小屋だった。昼夜の入れ替えがないせいか、けっこう席
 はうまっていた。馴染みの芸人が出演しているわけでなく、初めて見るぼくは、少し
 緊張したのを覚えている。そのためか、大爆笑をすることはなかったのだが、あま
 り可笑しくない芸も、かえってそれが面白かったりする。あまり面白くない芸があっ
 ても、出番の時間は15分程度なので退屈することはない。曲芸、紙切り、漫才、
 そして落語とバラエティに富んでいてあっというまに時間が過ぎていった。ふーん、
 ほんとうに気楽なところなんだ、というのが感想だ。ただ初心者のアウェイ感はあ
 ったかな。何回か通って自分のお気に入りの芸人さんが出来ると、きっと楽しいだ
 ろうなあ。「寄席はワッと笑って、気分よく帰ってもらうことを誰もが大事にしている
 から、想像以上に面白くて楽しい場所だ」と本にあったけれど、その通りだった。
 
「初めての寄席ならば、きょうはこんなところでしょう」と中村さん。まずは、寄席は
 けっして敷居の高い場所でないこと、落語だけでなく幕の内弁当のようにいろんな
 芸を楽しめる場所ということがわかればいいということだったのだと思う。末廣亭を
 出ると、深夜寄席を待つ人たちの行列が出来ていた。

 
  じつは著者の中村伸さんは、ぼくのジャワの案内人でもある。知り合ったときは、
 ジャワに伝わる影絵劇ワヤンにくわしい人として、だった。初めて会ったのは、イン
 ドネシア、ジョグジャカルタのホテルのロビーだった。挨拶をすると、伸さんは
 「さ、ちょっと散歩しましょう」といって近くの駅まで連れて行ってくれた。時刻表を
 見ると「一駅だけでも乗ってみようと思いましたけれど、ちょうどいい列車がありま
 せんね」と駅員に交渉して駅構内を見学することになった。伸さん、けっこう“鉄分”
 の高い人だったのだ。驚いたのは、初めて会った駅員に構内の案内までさせてし
 まう交渉力。暇だったのだろうが、駅員はぼくたちふたりを実に丁寧にガイドしてく
 れた。中村伸という人は、人心掌握術というか、人の懐に飛び込んで気持ちを掴ん
 でしまう天才なんである。

  ジョグジャカルタの町でも、東京の下町でも、どこを歩いていてもその才能は発揮
 される。田舎の定食屋のおばちゃんにも、聞きたいことがあると、さっと声をかけて
 しまう。きっとインタビュアーとしても優秀なんだろうな。いつのまにか、心を許して
 胸の奥にしまっていたこと、自分でも気づかなかった本音を話してしまうにちがいな
 い。ぼくにとって、寄席、インドネシアの先生は、町歩きの師匠でもあるようだ。町を
 そぞろ歩く姿は、速すぎず遅すぎず、とてもいい感じだ。

 
  江戸時代に400軒ほどあった寄席は、いまでは定席といわれる本来一年を通じ
 て無休で開演している寄席は、上野・鈴本演芸場、新宿末廣亭、浅草演芸ホール、
 池袋演芸場の4つだけという。そのほか落語、講談、浪曲などの興行をほぼ毎日
 やっている国立演芸場や上野広小路亭などを加えると11軒だという。落語そのも
 のは50年、100年後にも廃れることはないだろう。漫才やコントもそうだ。だが寄
 席はどうだろうか?
  と中村さんは問いかける。災害などで何かひとつ条件が崩れれば、寄席が今の
 まま残るかどうかはわからない、という。寄席のある町の風景を愛おしむように歩
 く中村さんの思いが伝わってくる。

 
 ◎吉上恭太
 文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し
 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。
 セカンドアルバム「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。
 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017
 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします! 

 ----------------------------------------------------------------------
 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
 ----------------------------------------------------------------------
  火の見櫓。残っているところには残っていますが、無いところには全然ないので
 馴染みのない人もいるかもしれません。もしかすると「火の見櫓」って何?と言う人も
 いる…のだろうか。
 
  鉄骨等で組まれて一番てっぺんに望楼が付いており、そこから火災を発見・確認
 し、同時に半鐘で火災を住民や消防団に周知する建造物です。
 
  火の見櫓なぞ同じようなものだと思いきや、実はデザイン色々。よく眺めれば眺め
 るほど面白いものです。本書はその火の見櫓についてまとめた数少ない解説書で
 す。
 
 『火の見櫓-地域を見つめる安全遺産』、火の見櫓から町づくりを考える会編、
鹿島出版会、2010

  いつごろから登場したのかというと、消防の体制が整いだした明治期以降が多い
 ようです。その後順調に数を増やしていった火の見櫓でしたが、戦時中には鉄材供
 出のため取り壊されてしまいます。現在残ってる火の見櫓の多くは戦後昭和20〜
 30年ごろに作られたものが多いようです。
 
  半鐘が取り外されたり、明らかに現役ではなさそうなまま立ち続けているものも散
 見されます。それでも消防ホースの乾燥用だったり、防災スピーカーの設置用だっ
 たり用途を変えて生き残っているものもありますし、今なおてっぺんに半鐘をぶら下
 げている現役の櫓ももちろんあります。
 
  そうした火の見櫓を色々な視点から考えていくのですが、一番わかりやすいのは
 見た目のバリエーションの楽しさでしょうか。
 
  先ほど鉄骨と書きました。まあ普通火の見櫓と聞いてイメージするのは鉄骨製で
 しょうが、他にも鉄筋コンクリートや丸太で作られたものもあります。
 
  またその高さも様々。30メートル級のものも存在したようですが、さすがにそれ
 は珍しい方で。一般的なものだと10メートル程度。高さ2メートルぐらいのものま
 であるようです。もともと眺望のいい場所なら櫓自体の高さは要りませんし…。
 
  そして同じ鉄骨製でも細かい意匠は様々です。踊り場があるか、望楼の形は円
 形か四角か八角形か、屋根の形状、風見鶏のデザインや有無など、細かいところ
 を見ていくと、それぞれに個性豊かな味わいがあります。
 
  機能から考えれば、そんなに個性を出す必要はないはずのモノではありますが、
 その機能の内側での違いがマニア心をくすぐります。当時はそれぞれの地区の顔
 となる建造物であっただけに、同じ火の見櫓でも近隣のものとは違うかっこいいも
 のを…という思いもあったのかもしれません。
 
  火の見櫓の形態論は奥が深い。静岡県の大井川流域や森町の火の見櫓の詳
 しい調査は一見の価値ありです。
 
  それ以外にも半鐘の音がもたらすサウンドスケープや、火の見櫓から地域社会
 のあり方を考えたり、様々な角度から火の見櫓について考えています。
 
  火の見櫓が建てられる場所は地区のうちでも、公共機関や神社のそばなど重要
 な場所であることも多いものです。取り壊しの検討に際して火の見櫓と共にあった
 様々な記憶がよみがえり、結局取り壊しが中止となった富士宮市星山のような例
 もあります。まだまだ地区を象徴する建造物という側面は残っています。
 
  じつは登録有形文化財になっている火の見櫓もあったりします。実際的な機能
 はだいぶ失いつつある火の見櫓ではありますが、地元の人々と共に積み上げて
 きた歴史しかり、デザインしかり、まだまだ魅力が沢山潜んでいそうです。本書を
 読めばそうした魅力を色々引き出すことができるでしょう。
 
  ちなみにそういった火の見櫓が宿す物語にもっと深く耳を傾けてみたい方には
 『火の見櫓慕情』(内藤昌康、春夏秋冬叢書、2008)がおすすめです。
 
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
 -------------------------------------------------------------------
 ■トピックス
 -------------------------------------------------------------------

 ■ 藤岡拓太郎 コーヒー吹き出さないよう気をつけ展
 └───────────────────────────────── 
 ◆日時:2018年 8月14日(火) - 26日(日)10時〜18時 定休日:月曜日

 ◇場所:CLOUDS ART+COFFEE
     〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-25-4

『藤岡拓太郎作品集 夏がとまらない』の作品や、
 最近の1ページ漫画、原画も数点展示いたします。
 サイン本やポストカード販売もあります。
 小学生の身長でもたやすく見れるように、壁の下のほうにも展示してもらいます。
 これでもかとばかりにご家族でおいで下さい。
                             ―HPより抜粋
 ----------------------------------------------------------------------
 ■あとがき 毎日暑い日々ですね。本当に体に効きます。早く秋が来ることを
  願いつつ。読書だけが友達の夏です。           畠中理恵子
 ----------------------------------------------------------------------
 ■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在4245名の読者名の皆さんに配信して
 おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
 ■ 今号のご意見・ご質問は
  15日号編集同人 「畠中理恵子」まで nora.7-4.ttpnkffb.c@ezweb.co.jp 
 ■ トピックスの情報提供もよろしくお願いします。
   なお、当メルマガは配信日によって、情報の提供先が変わり
   ・5日号:aguni原口 hon@aguni.com
   ・15日号:畠中理恵子 nora.7-4.ttpnkffb.c@ezweb.co.jp
   ・25日号:朝日山 asahi_yama@nifty.com
   ただし、掲載の可否については編集同人が判断します。
 ■ 広告掲載につきましては、下記までお問い合わせください。
   事務局担当:aguni hon@aguni.com
 ■ HPアドレス http://www.honmaga.net/
 ■ このメルマガは『まぐまぐ』を通じて発行しています。
 ■ メールマガジンIDナンバー:0000013315
 ■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行えます。
 ---------------------------------------------------------------------
 

| バックナンバー | 10:30 | comments(0) | trackbacks(0)
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://back.honmaga.net/trackback/979322
トラックバック
SEARCH
[本]のメルマガ
哲学・思想・社会などの人文書や、小説や詩など芸術の最前線、書籍の出版流通、電子出版などの「本」の現在を気鋭の出版社員、書店員が伝える、まさに[本]のメルマガです。
発行周期発行周期:月3回
バックナンバーバックナンバー:すべて公開
マガジンIDマガジンID:0000013315

メールアドレス:

メールアドレス:
Powered by まぐまぐ
※読者登録は無料です

コーチ募集(コーチングバンク) 無料 コーチング カーディーラー経営品質向上 CSR コンプライアンス 経営倫理 実践研究 BERC フリーラーニング
LATEST ENTRY
RECENT COMMENT
RECENT TRACKBACK
CALENDAR
S M T W T F S
      1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30      
<< September 2018 >>
ARCHIVES
LINKS