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[本]のメルマガ vol.684


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 ■■ [本]のメルマガ                 2018.6.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book     [雨とサッカーとモヤモヤ号]
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【連載】………………………………………………………………………………

 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 今月はお休みです。来月にご期待を! 

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第108回 プラハ「黄金の虎」へ 

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → モグラ、虹、ハエトリグモ…。鬱々とした時は異世界へ!
  
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 ■トピックス
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 二つのイベントをご紹介します。
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第108回 プラハ「黄金の虎」へ


  5月の連休後、1週間ほどプラハに行ってきた。ひさしぶりのヨーロッパ、
 チェコを訪れるのは初めてだ。じつはプラハ行きが決まったのは、ひょんな
 ことだった。最初はハワイに住む友人を訪ねる予定だった。すっかりその
 つもりで常夏気分を味わおうとウクレレを引っ張り出してポロポロと弾いて
 いた。ところが友人からキャンセルのメールが届いた。ぼくが予定してい
 た期間にプラハに行くことになった。ついては、いっしょに行かないか?
 という内容だった。出不精で旅慣れないぼくは、それまでヨーロッパ旅行な
 ど考えたこともなかった。それもヨーロッパのど真ん中、チェコ!

  子どもの頃から、両親はたびたび東欧に出かけていたから、まったくなじ
 みがないわけではない。ポーランドに行ったこともあるけれど、はるか30
 年以上も前のことだ。予算もかかるわけで一旦は断ろうと思った。だがそ
 のとき、ふと父・吉上昭三(ポーランド文学者)の友人だったチェコ文学者の
 千野栄一さんのことを思い出した。


  16年前のことだった。入院していた千野さんからハガキをいただいた。
 話したいことがあるという。千野さんは病気のせいで耳が聞こえなくなって
 いたけれど、病室には原書が山のように積み上がっていた。「ここはゆっく
 り仕事が出来るからいいよ」とにっこりした。

 
   父と千野さんは、本当に仲がよかった。しょっちゅう家に遊びにきては、
 いたずらっ子のような笑顔で冗談をいっていた。
たとえば、こうだ。イギリス
 に行ったとき、切符を買おうとして、「ツー(to)・リバプール」といったら駅員
 が切符を2枚よこしたので、「フォー(for)・リバプール」といい直すと今度は
 4枚切符をわたされてしまった。「ああ、これじゃ、てんで話にならないぜ」と
 いったら、駅員は切符を10枚わたした…なんていうジョークを得意そうに
 話した。千野さんは言語学の先生だったから、アクセントにもうるさかった。
 ちなみに千野さんの千野は、チにアクセントがあるそうだ。アクセントをつけ
 ずに平坦に「千野さん」といわれると、「チ!の」と直していた。

   あまりにしょっちょう家に来ていたので、ぼくにとってはエラい言語学の
 先生ではなく、近所の面白いおじさんだった。父が亡くなってからも、なに
 かと気にかけていただいた。

 
   病院のロビーでいつかチェコ、プラハを訪ねなさいといってくれた。父が
 ポーランド、ワルシャワを愛していたように、千野さんはチェコを、プラハを
 愛していた。千野さんは、それからしばらくして亡くなった。
 
   友人がくれたこの機会を逃しては、一生プラハに行けないかもしれない。
 それでは千野さんにも申し訳が立たない。というわけですぐにエアチケット
 とホテルを予約した。
 
   プラハについて、なんの予備知識がなかった。ガイドブックをパラパラと
 めくってみたが、どうもイメージがわかない。チャペック兄弟、カフカ、エゴン
 ・シーレ、ミュシャ……と文学、美術の大家を生んだ街であり、中世ヨーロッ
 パがそのまま残る街であることは知っているけれど、行くまでは、それが
 どういうことなのか感じることが出来ない。いやいや今だってチェコの文学
 や美術、歴史に知識があるわけじゃない。
 
    だけど、プラハの街を歩き始めたとたんに千野さん、そして意外に多い
 チェコ好きの友人たちの気持ち わかった。名所旧跡に行かずとも石畳の
 道をコツコツと歩き、百塔といわれる、街中に見られる教会の尖塔を見上げ
 ていると中世の歴史にすっぽりと飲み込まれた感じがする。多くの小説家、
 詩人、たとえばミラン・クンデラが原稿を書いていたという老舗カフェ・スラヴ
 ィアで窓の外を行き交う路面電車を見ながらコーヒーを飲んでいると、じわじ
 わとこの街にいる喜びが湧いてきた。

 
   路面電車を乗り継げば、たいていのところに行くことが出来る。友人が教え
 てくれた古本カフェ「オーキー・ドーキー」に行った。入ってみると普通のカフェ
 でけっこう大きな音でポップスが流れている。古本カフェは奥の部屋だった。
 テーブルが4つほどで窓からの自然光がやわらかく、ほの暗い。とても落ち
 着く。壁一面は本棚になっていて、ほとんど天井まで古本でうまっている。棚
 はジャンルごとに分類されていた。本はすべて売り物のようで値札がついて
 いる。ちょっとかび臭いが古書好きならば、それもまた魅力になっているのか
 もしれない。このカフェが近くにあれば通うだろうなあ。ただこんなにたくさん
 の本があるのに、読める本が一冊もないのが残念。ああ、チェコ語が出来れ
 ば天国なのに。
 
   1週間の旅はあっという間に過ぎてしまう。とりあえず古書店でチャペック
 の「ダーシェンカ」を手に入れたし、感じのいい中古レコード店も見つけた。
 あとは…。フェイスブックに写真をあげたら、知人から「千野先生のお気に入
 りだったビアホールに行ってみては」というアドバイスがあった。そうだ、千野
 さんのエッセイ集『ビールと古本のプラハ』(白水社)に登場する「黄金の虎」
 に行かなくては!
 
   グーグルマップを頼りに旧市街近くにあるビアホールにたどり着くと、まだ
 午後6時前というのにテーブルは満席で、ジョッキを手にした人たちでごった
 返していた。これでは仕方がないとあきらめようとしたところ、旅慣れた友人
 夫婦が奥に入っていくと、「せっかく日本から来たのだから」と席を譲ってくれ
 た。千野さんのエッセイにも同じようなことが書いてあった。自慢のビールを
 遠い国から来た人に味わってもらいたい、という地元愛なのだろう。このとき
 ばかりは下戸の自分を恨んだ。ああ、くやしい。千野さん曰くプラハで一番お
 いしいビールなのだ。エッセイによると、常連たちは何十年も同じテーブルで
 飲んでいるそうだ。もしかしたら奥のテーブルには、千野さんといっしょに飲
 んだ人たちがいたのかもしれない。


 ◎吉上恭太

 文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し

 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。

 セカンドアルバム「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。

 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017

 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします! 
 
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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   失恋してしまったので、もうお天道様の下で生きていくのは嫌になってしま
 ったよ。よし、モグラになろう。私にはうらぶれた日陰暮らしがぴったりさ。
 けどどんなモグラになればいいのかわからないな?そんなときはこれ。
 
 『モグラハンドブック』、飯島正広・土屋公幸、文一総合出版、2015
 
   これで好きなモグラを選べばいいんだ。ミズラモグラやセンカクモグラは絶滅
 の危機にあるらしい。ちょっと生き延びるのが大変そうだからやめておこうかな。
 それにしてもセンカクモグラは尖閣諸島に固有のモグラなのか、日本固有種と
 書いてあるけど中国から抗議は来ないのかな。
 
   まあそれはそれとして、やっぱり関東人だしアズマモグラあたりがいいかな。
 だけど西からコウベモグラが進出してきてるのがちょっと心配だな。単独生活で
 坑道を守るために絶えず激しい喧嘩もするらしい。地中ならほとんど天敵もいな
 いように見えるけど、なかなか楽はできないものだ。
 
   地中をうごめくモグラの写真を見ると、なんだか目を見開いてるぞ。モグラは
 ほとんど視力がないように思っていたけど、どうもそうでもないらしいな。そもそ
 も生モグラを見たことがないような気がするので、今度見に行こうかな。
 
   そうだ、いつまでもくよくよしてちゃダメだ。もっと上を向いていかないと。雨の
 後には虹も出る。と思ったら見たことない虹が出てきたな。下のほうまである丸
 い虹だ。
 
  『空の虹色ハンドブック』、池田圭一・服部貴昭、文一総合出版、2013
 
   これを紐解けば珍しい虹でもどんな現象かバッチリ解説してくれる。丸い虹…
 眼下に水滴がある場合には虹が丸く見える。そんなにレアな現象ではなかった
 …残念。
 
   だけどレア度の高い現象が起こっていても、こっちが気づかなきゃお話になら
 ないわけで、この本での予習は欠かせない。
 
   この本の中であと見たことあるのは、「紫色の夕焼け」かな。昔山口市で見た
 けど、あれはなかなか視界一面が赤紫に染まって幻想的な風景だったなあ。で
 きればまた体験したいもんだ。
 
   とこんな具合に、今まで風景の一部でしかなかったものに、実は名前があっ
 たことを知ると、世界の見方が昨日とは少し変わります。そういう体験を味わう
 には文一総合出版のハンドブックシリーズは実にお薦めです。
 
 『ハエトリグモハンドブック』、須黒達巳、文一総合出版、2017
 
   こちらは最近出たハエトリグモのガイドブック。なんと著者は日本産のハエト
 リグモ全種の採集・撮影を目指しフリーターになったという。カラフルでモフモフ
 なハエトリグモの姿を楽しむことができます。
 
   部屋の隅でピョンピョンしているあいつも、これを読めば単なるクモからアダン
 ソンハエトリ(例)として認識されることになるでしょう。
 
   ハエトリグモの生態についても知ることができます。なになにハエトリグモの
 オスはこんな風に求愛して、カップルになるのか。求愛…。…そういえば振られ
 ちゃったんだっけ。ハエトリグモでさえ出来ることが私にはできなかったと言うこ
 とか…。…。…。(冒頭に戻る)
  
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■トピックス
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 ■ 「trip to zine ~zineへの旅〜」展
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 ◆期間:2018年6月14日 (木) 〜 7月16 日(月)  9:00〜21:30
 
 ◇場所:多賀城市立図書館 3階 ギャラリー
 
 □主催:多賀城市立図書館/Book!Book!Sendai
 
 □問い合わせ先:多賀城市立図書館 022-368-6226
 
 ホームページ
 http://bookbooksendai.com/
 
 
 “近年、zineへの関心は高まっていて、ニューヨーク、フランス、台湾、
 韓国、東京など世界各地でzineのイベントが開かれています。
 なぜこれほど人を惹きつけるのでしょうか。
 本展は『日本のZINEについて知ってることすべて』に掲載されている
 zineを中心に、1960年代から2010年代までに発行されたzineを
 年代順にセレクトして展示。
 会場内にzineライブラリーを開設し、東北のzine、世界のストリート
 ペーパーも合わせて紹介いたします。
                                 ======火星の庭HPより抜粋======

 ■ 僕の人形 原田栄夫作品展 at 長野県茅野市 アノニムギャラリー
 └─────────────────────────────────
 ◆期間:2018年7月5日(金)〜31日(火)  
                                     11:00−18:00 水・木曜は休み
 
 ◇場所:アノニム・ギャラリー&カフェ
       〒391-0211 長野県茅野市湖東4278
              Tel/Fax  0266-75-1658
              E-Mail  contact@anonym-gallery.com
 
            電車の場合
            JR中央本線 茅野駅よりタクシーか路線バス 
            路線バスの場合は
            「茅野駅〜横谷峡入口〜渋川口〜麦草峠線」で
            「北部中学校入口」下車 
 
 90歳を過ぎてから
 日々の趣味としてつくるようになったという
 原田栄夫氏の人形。
 
 テッシュでつくられた「ちり紙人形」。
 紙粘土を使った動物、張り子たち。
 
 唯一無二の人形たち。
  
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 ■あとがき 
 何だか嫌なことが続く年のような気がするのは私だけでしょうか。2018年、
 後に忘れられない年、として思い出すような気がします。毎度、遅くなって
 しまい本当に申し訳ありません。来月もよろしくお願いします。                 
                              畠中理恵子

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