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[本]のメルマガ vol.678

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 ■■ [本]のメルマガ                 2018.4.15.発行
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 ■■          mailmagazine of book [風光る本の季節 号]
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 になって、二十代でお寺を開いた。首都圏ベッドタウンのお寺需要の調査から
 始まって、街の中の架け橋となるお寺をめざし、若き住職は奮闘中!
     
 【連載】………………………………………………………………………………
 
 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第52回「評伝と書評の難しさ」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 
第106回 国を愛すること

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → 「フィールドノート」というツール
  
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 ■トピックス
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 ふたつのイベントをご案内しています。
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 ■「散慮逍遥月記」 / 停雲荘主人
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 第52回「評伝と書評の難しさ」
 
 こんにちは。
 
 近頃,興味深い書評を見かけたので,遡ってその書評が取り上げていた書籍を
 読んでみました。その書籍は書評を読むより前に入手していたものですが,パ
 ラパラと繙いてみたところ,げんなりするようなことが書いてあったので放り出し
 てあったものでした。それをわざわざ気を取り直して読む気にさせた書評という
 のは,

 「戦後公立図書館発展史の中の前川恒雄さんの実践と思想」
                                      山口源治郎,出版ニュース2018年4月上旬号

 です。そして読んだ書籍は
 
 『前川恒雄と滋賀県立図書館の時代』田井郁久雄著,
                                                    出版ニュース社,2018年2月
 
 でした。著者の田井氏がが前川恒雄にインタビューし,その記録を基に再構成さ
 れた著作のようで,取材対象である前川のことを書きながら時に(裏方であるは
 ずの)田井氏の私感が全面に出てくる,しかもそれはいわゆる評伝というものと
 いうよりは,田井氏自身の著作(『図書館の基本を求めて』シリーズ,大学教育出
 版)で田井氏が展開している論旨の繰り返しという,伝記としては破格の構成を
 とっています。わたしが編集者だったら,田井氏の私感はすべて削除して前川自
 身の考え方をもっと書き込め,というところでしょうが,著者はもとより,取材対象
 であった前川もこの構成を了としたから斯様な書籍に仕上がっているわけで,こ
 の書籍を「警世の書」とする狙いがあったのかと思われます。
 
 おっと,話が先走りました。この書籍で取り上げられている前川恒雄(1930−)
 は,日本図書館協会の事務職員として『中小レポート』という通称で知られる
 『中小都市における公共図書館の運営』(1963)の編集に携わり,日野市立図
 書館の館長に転じて「徹底した資料提供」を前面に押し立てた公共図書館経を
 実践し,その実践を『市民の図書館』(1970)という形で世に送り出した,この国
 の戦後公共図書館を先導したふたつの書籍に深く関わった,この国の戦後公共
 図書館の立役者のひとりと評価されていい人物です。『移動図書館ひまわり号』
 (初版は筑摩書房,1988,復刻版は夏葉社,2016)では日野市立図書館の実
 践について,『われらの図書館』(筑摩書房,1987)では自身の公共図書館観を,
 盟友であった石井敦との共著『図書館の発見』初版では公共図書館の役割を熱
 く簡明に解説し,1970年代から90年代にかけて公共図書館の躍進とその市民
 権の獲得に果たした役割と功績は計り知れないものがありました。
 
 さて1980年に前川恒雄は滋賀県立図書館の館長に就任します。当時の滋賀県
 知事だった武村正義−のち中央政界に転じ,新党さきがけの党首として大蔵大
 臣,官房長官を歴任した政治家−の要請によるものでした。標題の通り,この書
 籍では滋賀県立図書館時代の前川恒雄について,これまであまり語られて来な
 かった,もしくはひとの口の端に上ることはあっても文章化されてこなかったエピ
 ソードなどを盛り込んで詳しく書かれています。わたしには未知の内容も多く,意
 外に面白く読める書籍でした。何より田井氏の文章は明快で歯切れがよい。ある
 知人から「田井氏は『書ける』ひとですよ」という評価を聞いたことがありましたが,
 なるほどと思わせます。
 
 前川恒雄自身はあまり自己に言及しないひとのようで,批判的なひとからは「前
 川さんは自らの失敗を語らない」「イギリスへの留学についてほとんど何も言わ
 ない」と評されていますが,巷間前川の失敗と評されることの多い日野市の助役
 からの降格については,この書籍では意外にも当人は肯定的に捉えているよう
 で(あとから振り返っての評価であることもあるでしょうが)なかなか興味を引かれ
 るところです。またイギリス留学については,前川がその時の資料を捨ててしま
 ったことを惜しんでいるエピソードが「あとがき」で紹介されるにとどまっています
 (p232)。興味深いのは,田井氏が一貫して前川を「非政治的な人間」として描き
 出すことに意を尽くしていることで,例えば石井敦のことは「マルクス主義者」と言
 い,「前川は明確な政治思想を掲げるようなことはしていない」(p36)とその対比
 を際立たせています。
 
 読める文章であるだけに,わたしが感じたこの書籍の問題点もわかりやすく浮
かび上がってきます。例えば,36ページに出てくる『中小レポート』の成立過程
 など,まるで石井敦と前川恒雄しか存在しないような書きぶりですが,わたしは
 他の『中小レポート』に関わった方々(例えばこの書籍にもチラッと登場する黒
 田一之)を存じ上げており,石井・前川の両人だけが文章化したかのような表
 現には違和感が残ります。そして『中小レポート』の編集委員長であった清水正
 三の名前は別件で登場するものの,『中小レポート』の関係者としては出てこな
 いのは如何なものですかね。総じてこの書籍は,清水正三の扱い方といい,前
 川の後半生における敵役として登場させられている栗原均の描き方といい,日
 本図書館協会事務職員時代以降に前川に関わったひとびとを,田井氏がおの
 れの好みで選別し役柄を割り付けたのではないかと思えるほど,その描き方が
 恣意的に感じられます。生涯の盟友であった石井敦ですら,この書籍の中では
 前川の引き立て役でしかない。
 
 そしてこの書籍を読んでいて困る(?)のは,先にも述べたように,とにかく田井
 氏の公共図書館に対する私感がそこかしこに散りばめられていることです。わ
 たしが冒頭の記した「げんなりするようなこと」もこれに類することです。その私
 感が前川恒雄の実践や思索を後付たところから来ているものだ,と田井氏自身
 は考えているのだろうけど,開館日と閉館日をめぐる議論(p102),「ビジネス支
 援」への呪詛(p134)などのように,わざわざ前川の伝記であるはずのこの書籍
 で展開する必要のない私感も多く,それがこの書籍の「伝記」もしくは「記録」とし
 ての価値を損なっているのは残念です。本来であれば田井氏は前川恒雄の実践
 と思索を以て,自らの思考を代弁させなければならない立場であるにもかかわら
 ず,おのれが前面に出て何かを語ることがこの書籍では多すぎます。矩を超えて
 いるのではありますまいか。
 
 この書籍の内容に照らし合わせるに,山口源治郎氏の書評は贔屓の引き倒しの
 ようなものであり,その手放しの高評価を疑うところから,わたしは『前川恒雄と
 滋賀県立図書館の時代』を読み始めたと言っても過言ではありません(苦笑)。
 その感想は上に書いたとおりであり,山口氏の書評のように一点の曇りもなく前
 川恒雄を神格化する方向にはとても向かえるものではない,というのがこの書籍
 の評価です。
 
 ところで,山口氏の書評にはひとつ引っかかる箇所があります。
 
 “図書館研究の業界には『市民の図書館』とその執筆者である前川さんの言説を,
 「貸出至上主義」と批判する人々がいる。このような人々は『市民の図書館』を実
 際に読み,前川さんの実践や言説を十分理解した上で批判しているのかと,疑問
 に思うことがある。自己に都合のよい『市民の図書館』像を勝手に作りあげ,前川
 さんの言説の一部を切り取って批判しているとすれば,図書館研究としての科学
 性も信頼性も無くしてしまうことになる。”
 
 「戦後公立図書館発展史の中の前川恒雄さんの実践と思想」山口源治郎,
 出版ニュース2018年4月上旬号p8
 
 ここで山口氏が言っていることは,要するに論敵の主張が「見解の相違」ではなく
 「認識不足」だと言っているわけです。永井荷風だったか,日華事変の頃に「最近
 は相手の意見を『見解の相違』ではなく『認識不足』と称するのが流行っているが
 云々」と指摘していたのと同じく,論敵を「認識不足」とするのはファシズム−とい
 うのが言い過ぎならプロパガンダ−のやり口であることが問題なんですね。「認識
 不足」とレッテルを貼れば,レッテルを貼った側はその意見を「取るに足らないも
 の」として処理できてしまう。
 
 貸出至上主義批判者のひとりであるわたしは,『市民の図書館』はもちろんのこと,
 『われらの図書館』も『図書館の発見』新版(初版は気がつくのが遅く入手は間に
 合いませんでしたが図書館で借りて読みました)も『前川恒雄著作集』も自腹切っ
 て購入し,読んでいます。『市民の図書館』について,山口氏が信奉するただひと
 つだけの「読み」を以てそれが正統であり,他の「読み」を認めないのが山口氏の
 唱える“科学性”なのでしょうか。『市民の図書館』の功と罪,明と暗はすでに歴史
 として研究の素材とされるべき対象であり,2018年の現在において「『市民の図
 書館』は戦後公立図書館の大いなる飛躍を作り出す導きの書となるとともに,現
 代日本の公立図書館の基本形としての意味を持つことになったのである」(出版
 ニュース2018年4月上旬号p8)という「読み」だけが正統であるという姿勢は,結
 局のところ師説を正典として奉るだけで何の発展性もなく,少なくとも近代市民が
 担う民主制下の社会科学としては成立し得ないのではありますまいか。
 
 わたしは,1990年代を境に前川恒雄の考え方が変化したところがあるのではな
 いか,それは親しい後輩であった伊藤昭治率いる日本図書館研究会読書調査研
 究グループの活動に影響を受けたからではないか,と考えています。それが『図
 書館の発見』初版(1973)と新版(2006)の間にある,埋めようのない思索と品位
 の落差の原因であろうと。それが前川にとってよいことだったのかどうか,わたし
 はそれを判断する材料を持っていません。
 
 では,また次回。
 
 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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第106回 国を愛すること

 
  ぼくはポーランドのワルシャワにいた。いまから30数年前のことだ。ワルシャワ
 大学に勤めていた父が帰国するというので、荷物運びの手伝いという口実で出
 かけることにした。ちょうど勤めていた会社を辞めたときだったのもいいタイミング
 だった。

  戒厳令こそ、すでに解かれていたが、まだベルリンの壁は崩壊していず、空港
 に到着すると、銃を携えた警備兵がこちらをじっと見ていた。

  社会主義の国を訪れるのは初めてのことで、最初のうちは緊張していたのだが、
 ワルシャワ大学の学生たちは日本語がうまかったし、とても気さくにつきあってく
 れたので、楽しく日々が過ぎていった。

 
  音楽好きの若者とも友人になって、彼にワルシャワのレコード店や楽器店を案
 内してもらった。レコード店も楽器店も対面式の販売だった。つまりカウンターが
 あって、レコードや楽器は店員のうしろに飾ってあった。客は店員に「あのレコー
 ドが欲しい」とリクエストをする。店員は商品をカウンターの上に置いて、「これか
 ?」と確認して販売する。

  こんなふうに客は直接触れることはできないようになっている。餌箱(レコード棚)
 をあさるのに慣れているぼくにはとても不思議な光景だった。ぼくは、ポーランドで
 人気のあるロックバンドを教えてもらい、レコードを何枚か注文した。友人がバンド
 の名前をいうとカウンターの向こう側にいる店員は面倒臭そうに棚からレコードを
 取り出した。日本円に換算すれば、一枚数百円から千円ぐらいの値段だったが、
 ポーランド人には高価だったのかもしれない。西側、つまりイギリスやアメリカのレ
 コードは一枚も置いていなかった。たぶんドルショップに行かなくては手に入らない
 のだろう。あったとしても高価なのだろう。

  これは聞いた話なのだが、楽器店では客は楽器を選ぶことができないらしい。た
 とえばギターを買いに行くと、店員はうしろに吊ってあるギターをカウンターに置く。
 このギターではなく、となりにあるものが欲しいといっても、店員は「だめだ」とひと
 こと。しかたがなしに店員が選んだギターを買ってきたという。
 こんなことを書くと
 ポーランド人におこられちゃうな。もちろんポーランド人が性格が悪いわけではない。
 みんな親切だしフレンドリーな人が多かった。店員の態度は制度のせいなのだろう
 と思う。どこの店でもおしなべて無表情で不機嫌そうだった。客に対するホスピタリ
 ティは感じられなかった。

 
  その日の夕方、友人の部屋に行った。彼は時計に目をやるとラジオのスイッチを
 入れた。ノイズまじりに音楽が聴こえてきた。ドアーズの「ライト・マイ・ファイア」だっ
 た。おそらくウィーンあたりのラジオ局の放送だろう。こうやって西側の音楽を聴い
 ているのだといった。

  日が翳りはじめた部屋で、ときおり遠くなるジム・モリスンの歌を聴きながら、友
 人は窓のむこうの空を見つめながら、「まったく、くだらない」とつぶやいた。
「国」
 を考えるとき、ぼくはなぜかこの光景が目に浮かんでくる。国の制度のために好き
 な音楽を自由に聴くことが出来ない。たかが音楽かもしれないが、ぼくには国家と
 いう存在が実にリアルに感じられた経験だった。いまから30数年前のこと、いまの
 若者はこんな時代のことはきっと知らないだろう。

 
  高橋源一郎の『ぼくたちはこの国をこんなふうに愛することに決めた』(集英社新
 書)を読んだ。新書ではあるけれど、これは小説といってもいいし、若い人たちに向
 けたファンタジーであるといってもいいと思う。

  主人公の小学生「ぼく(ランちゃん)」とその仲間たちが、夏休みの研究に「くにを
 つくる」ことにする。「くに」をつくるには「国旗」や「憲法」を決めなくてはならない…
 架空の小学校を舞台にして、子どもたちが「くに」をつくることを通して国家の在り
 方を考えていく物語だ。

  たんに国家や憲法の解説ではなく、「くに」をつくるという発想で国家の理想的な
 形を考える手法がわかりやすい。きっと子どもにも読みやすいのではないかと思う。
 素直な子どもたちもいいが、ランちゃんの両親、小学校の園長ハラさんは知的で個
 性的であり、彼らの子どもたちを見守る姿勢に「理想の大人」を見るような気がする。
 なかなかできることではないが、こんなふうに子どもたちと接することが出来たらい
 いだろうな。

  あとがきを見ると、高橋源一郎は21世紀版の『君たちはどう生きるか』(吉野源三
 郎 著 岩波文庫)を目指して書いたという。そして現在が吉野源三郎が立ち会っ
 た時代に似てきているような気がするといっている。

  ツイッターのタイムラインで人気フォークデュオ・ゆずの新曲の歌詞を読んでゾッと
 した。いつだったか、テレビで徴兵制のことを議論していた。若者が徴兵に反対す
 る意見をいうと、年配の女性評論家が「あなたは国を愛していないのか!
  もし敵が攻めてきたとき、銃をとらないというのか!」とすごんだ。あのときのギラ
 ついた目を思い出したからだ。

 
  さて今月末、4月29日(日)は不忍ブックストリートの一箱古本市です。もう20回
 になるんですね。ぼくも助っ人として、どこかのスポットに立っています。どんな本
 と出会えるか、とても楽しみです!

 ◎吉上恭太
 
 文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳し

 くはトマソン社のサイトを見てください。http://tomasonsha.com/ 。
 
 セカンドアルバム「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。

 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017
 
 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします! 
 
 
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  高校生くらいの頃、予備校のパンフレットなんかに綺麗なノートがいっぱい載
 っていたりするのを見て、思わずため息をついてしまったものです。私なんぞは
 居眠りをしつつ授業を聴いてるもので、板書を写しているだけであるにもかか
 わらず、ノートに何が書いてあるか判別不能だったのですから。
 
 そんな思い出もありつつ手にとった本はこちら。
 
 『フィールドノート古今東西』、梶丸岳・丹羽朋子・椎野若菜編、古今書院、2016
 
  「100万人のフィールドワーカーシリーズ」と銘うたれたシリーズの第13巻にあ
 たります。フィールドワークにまつわるあれこれを網羅した本シリーズのなかで、
 本書はフィールドノートにスポットを当てています。
 
  フィールドノートというのは、言わずもがなではありますが、調査地で気づいた
 様々なことを記録するノートですが、ひとくちにフィールドノートといってもそこに
 記録されている内容は、観察する対象によって色々です。

  理系の研究者は割と着眼するところが決まっていて、ある程度の様式があり、
 そこにデータを記入していくという感じのフィールドノートも多くあります。西表
 島のカタツムリの研究者のフィールドノートは、必要な情報が数値と記号で表さ
 れていて、その典型と言えるでしょう。
 
  一方で文系の研究者は一見研究の内容と結びつかないようなことまで記録
 に残している印象があります。研究対象の人にフィールドノートに書いてもらう
 ということもあるようです。
 
  図書館で史料漁りをしていた史学科学生だった私にとっては、こうしたフィー
 ルドノートを垣間見ることは非常に刺激的です。大学時代にもっと外に出て勉強
 すればよかった、とか思いましたね。
 
  寄稿している研究者の皆さんも、相手あってのことなので上手くいかなかった
 り失敗したりして今のフィールドノートを作り上げてきた(そして今も進化中)わけ
 です。それができるまでの悪戦苦闘(?)ぶりもまた本書の読みどころの一つでも
 あります。勝手ながらノートを見てるとなんだかフィールドワークって楽しそうだ
 なあと思えてきます。
 
  ちなみに歴史学者もフィールドワークをしないわけではありません。その辺に
 ついては『古文書はいかに歴史を描くのか』(白水智、NHKブックス、2015)をお
 読みください。学生時代にも「歴史学者は足腰が大事」といわれた覚えもありま
 す。
 
  デジタル全盛の時代にあっても、手書きフィールドノートが使われているのが
 多いのも特徴でしょうか。ノートに書かれた内容の整理はパソコンでするでしょう
 し、もちろんデジカメでの写真、ICレコーダーでの録音なども併用されています
 が、紙に記録することの利点もあります。
 
  水を被ってもデータが飛ばないとか…基本的なことですがけっこう大事です。
 そして時には研究対象の人とのコミュニケーションツールになったりもするよう
 です。いちばんフィールドノートのIT化が進んでいたように感じたのは、ミュージ
 アム研究者の人でしたがそれでも手書きノートも大事なツールのようです。
 
  巻末の座談ではデジタルツールは何でも記録してしまうけど、ノートは自分が
 必要と思ったところだけが記録してあるとも言われています。だからノートの情
 報は質が高い(逆に記録を落とすともうどうにもならないという欠点もあるわけで
 すが)。そういったところも手書きフィールドノートが現役の理由かもしれません。
 
  と、くどくど述べてきましたけれど、フィールドワークなんてしないし関係ないね
 と思われてしまうかもしれません。しかしフィールドワークは学者だけがするも
 のというわけではありません。寄稿している研究者の方々も以下のように言って
 います。
 
 「思考の旅の始まりとしてのフィールドノートは研究者だけの専売特許ではなく、
 誰もが実践可能な知的技法の一つなのではないだろうか。」(増野亜子、p,47)
 
 「読者の皆さんには、日常的にフィールドノートをとるという生活をお勧めしたい。
 ひたすら溜め込んだ断片的な情報が、ある日突然一つのストーリーとなって浮
 かび上がってくる感覚はフィールドノートと共に生きることならではの醍醐味で
 あろう。」(柚洞一央、p,73)
 
  皆さんも出かけたときにポケットにノートを一冊忍ばせて、出会った興味のあ
 ることを書き込んでいけば、その積み重ねの中から新たな発見があるかもしれ
 ません。
 
  私も旅の記録はデジカメで済ませていたのですが、最近写真の整理をしてい
 て、何だかわからない写真が多くなってしまった(情報の質が低い典型か?)の
 で、今後は旅先で出会った面白そうなことはノートに記録していこうと思ってい
 ます。
 
  
 ◎副隊長
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。

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 ■トピックス
 -------------------------------------------------------------------

 ■ Book! Book! Miyagi@こみち市
 └─────────────────────────────────
 ◆日時:2018年4月28日(土)10:00〜15:00

 毎月28日に新寺界隈でにぎわう「新寺こみち市」と合同で本の市をひらきます。
 宮城、福島、東京、秋田から個性豊かな本屋やショップ、コミュニティースペース
 が集まります。地域にとけ込む定期市と一緒に、生活に必要な食べものや生活
 雑貨を手に取る延長で、この日は本との出会いも楽しんでいただけますよう、
 ご来場をお待ちしております。

 ◇会場:新寺こみち市会場
      仙台市若林区新寺小路緑道〜新寺五丁目公園
     *Book! Book! Miyagiの会場は新寺五丁目公園。
      仙台駅より歩いて10分。

            新寺こみち市 http://www.komichiichi.com
          *駐車場の案内については上記のサイトをご覧ください。

 【出店者】
 石巻まちの本棚(石巻市)  NEWS STAND SATAKE(南三陸町)
 ちいさいおうち(多賀城市) スローバブックス(丸森町) イースト・リアス(気仙沼市)
 岡田書店(福島県楢葉町) 阿武隈書房(いわき市)
 うさぎや、Books & Cafe コトウ(福島市) 
 ブックギャラリーポポタム(東京) 6jumbopins、のら珈琲(秋田) RE プロジェクト、
 風の時編集部+3.11オモイデアーカイブ、 メアリーコリン、
 古書水の森、火星の庭、Book! Book! Sendai(仙台市)


 ■ 第20回 不忍ブックストリート 一箱古本市
 └─────────────────────────────────
   谷中・根津・千駄木エリアの書店、雑貨店、ギャラリー、カフェなどの店舗や
 施設の軒先をお借りして、一人が一箱分の古本を持ち寄って販売する
 青空古本市、それが「不忍ブックストリートの一箱古本市」です。
 
 誰でも参加できて、一日だけの「本屋さんごっこ」を愉しめるイベントです。
 
 ◆日時:2018年4月29日日曜日 11時〜16時30分 *雨天決行

  ----------------------------------------------------------------------
 ■あとがき
 また、遅れた配信となってしまいました。申し訳ありません。
 日が注ぎ、気持ちいい季節になってきました。本のブックイベントも
 このGW多いようです。どこかに出かけて、新しい本やひとと会いたいですね。
                                畠中理恵子
 ----------------------------------------------------------------------
 ■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在4317名の読者名の皆さんに配信して
 おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
 ■ 今号のご意見・ご質問は
  15日号編集同人 「畠中理恵子」までnora.7-4.ttpnkfb.c@ezetweb.ne.jp 
 ■ トピックスの情報提供もよろしくお願いします。
   なお、当メルマガは配信日によって、情報の提供先が変わり
   ・5日号:aguni原口 hon@aguni.com
   ・15日号:畠中理恵子 nora.7-4.ttpnkfb.c@ezetweb.ne.jp
   ・25日号:朝日山 asahi_yama@nifty.com
   ただし、掲載の可否については編集同人が判断します。
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