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[本]のメルマガ vol.670

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□■[本]のメルマガ【vol.670】18年1月25日発行
[ケイト・フォックスの著書 号]
http://honmaga.net/ 
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□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4365名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→募集中です

★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→今年のイタリアは美術展ラッシュ

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→ケイト・フォックスの著書があるって知ってました?

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→詰まらないのはスマホのせい

★「はてな?現代美術編」 koko
→フェリペ二世の好きな画家

★「スプートニクとカガリーンの闇」内藤陽介
→スプートニク2号の“特攻”

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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp

『石上三登志スクラップブック:日本映画ミステリ劇場』
石上三登志著 原正弘編

A5判 428ページ 本体各3,800円+税 ISBN:9784562054671

三谷幸喜氏推薦◎奇想天外な映画宝庫イシガミワールドへようこそ! 本邦ミ
ステリ映画の原作者、脚本家に関する詳細な分析と解説を中心に、対談や評論
など、単行本未収録のテキストを集大成。
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■トピックス
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■トピックス募集中です!

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■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
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第86回 2018年はまた美術展が目白押し

昨年、イタリアで開催された美術展の収支はすこぶる快調というメディア記事
がある。入場者数もチケット販売高もブームいえるほどの盛況だったようだ。

ヴィチェンツァで開催中のゴッホ展、ミラノの王宮のカラヴァッジョ展は好調
で継続中という。最終日は、ゴッホ展が4月8日。カラヴァッジョ展は今月の28
日終了だったが、1週間延期されて2月4日になっている。

そして今年も見逃せないものが目白押しというのだ。

北はミラノから南はシチリアのパレルモまで、その間にあるヴェネツィアやフィ
レンツェやローマなどの各地で、ピカソ、マルグリット、ミケランジェロなど
の美術展だけでなく、写真展や音楽関連のイベントがある。

テーマや作品がかなり専門的なのもあるだろうし、日本の美術愛好家の嗜好や
興味に合わないのもあるかもしれないが、イタリアへの旅を考えていらっしゃ
る方に役立つかもしれず、また、知ったことで旅が企画されることがあればい
いと思う。

北から始めよう。会場などの詳細は最後に。
ブレ−シャで、“ピカソ、デ・キリコ、モランディ。19−20世紀の傑作100”が
ある。ブレーシャの県と都市にある傑出した個人コレクションから集められて
いる。20世紀初期にイタリアで始まったフチュリズムから形而上絵画、また、
それに反動する主張の絵画と幅が広い。ピカソ作の静物画の傑作(雄牛の頭部が
描かれた1942年の作品)が初公開されるのも売りで、すでに今月の20日から始ま
り6月10日までだ。

ミラノでは、メキシコの現代絵画のアイコンであるフリーダ・カーホの隠れた
視点を紹介するという“Frida Kahlo. Oltre il mito”(フリーダ・カーホ、
伝説をこえて)が始まる。会期は2月1日から6月3日まで。イタリア初公開の作
品もあるので期待される。
絵画100点以上は油彩、水彩、デッサンで、それに写真が加わり、フリーダの青
の家からだけでなく、広範囲な2大コレクションOlmedo と Gelman所蔵の作品と
いう。

自画像の多いフリーダの作品群から、家族関係のトラウマやディエゴ・リヴィ
エラとの結婚の苦悩、叶わない母になる希求、病との闘いを分析し、短絡的な
フリーダ観を打ちくだく意図がありそう。
あまりに知られている作家だからこそ、ただ虚心坦懐に観たい。

パヴィーアで開催されるアメリカ人の写真家スティーヴ・マッカーリー(
Steve McCurry)の100点以上の写真展“スティーヴ・マッカーリー. アイコン
ズ”はどうだろう。
かれの40年になるキャリアでは、インド、アフガニスタン、ビルマ、日本、キュー
バ、ブラジルと、内面が切りとられた映像やイメージが足跡のように残されて
いる。〈アフガニスタンの少女〉で有名な写真家の作品はウィキでも見られる
が、写真展には心が広がる感じがある:
http://www.stevemccurrysansepolcro.it/
会期は2月3日−6月3日。

ローマで行われるミュージック関連のイべントでは、ピンク・フロイドがロン
ドンの成功のあと、19日に“The Pink Floyd Exhibition: Their Mortal 
Remains”のオープニングがあったばかり。マルチで感覚に訴える歴史的バンド
のイベントに没入できるのは7月1日まで。

かつてヴェネツィアに女性誌の取材で行っていたときに、明日はピンク・フロ
イドが来るというのでびっくりするような人の増え方だったのを思い出す。ヴェ
ネツィア駅の階段もサッコ・ア・ペーロ(羽毛の入った寝袋)を持った若者でいっ
ぱいだった。ただこのバンドのイベントのあとはゴミの山だったと話題になっ
た。

さて、これぞ見逃せないといわれている、イタリア美術のフォロワーたちに興
味深い美術展もあるのだ。

それはエミリア・ロマーニャ州のフォルリーで開催される“L’Eterno e il 
tempo tra Michelangelo e Caravaggio”(永遠なるものとミケランジェロ−カ
ラヴァッジョの間で)、会期は2月10日から6月17日まで。

時代はルネサンスの終焉からマニエリズまでで、欧州史としての魅力と定説だ。
ローマ略奪(1527)からカラヴァッジョの死(1610)にいたる90年間に満たない期
間に重要な文化上の動向が起きた:ミケランジェロの〈最後の審判〉(1541)が
あり、近代の始まりといわれるガリレオ・ガリレイの論文『星界の使者』(
Sidereus Nuncius) の発表(1610)なのだ。

タイトルにある2人の他に出展される画家のほんの一部をあげると、ラファエッ
ロ、ヴァザーリ、ポントルモ、コレッジョ、エル・グレコ、イ・カッラッチ、
ティツィアーノ、ヴェロネーゼなどなど、テーマがどう浮き彫りにされるか。

6月まで開催される美術展はまだまだある。
ローマでは3月に、風景と自然の巨匠、歌川廣重展がクイリナーレ元厩舎で開催
され、230点の浮世絵が展示される。〈江戸百景〉〈東海道五十三次〉や人気の
ある動物・花・昆虫など、原画や元のままの版画も紹介され、話題になりそう
だ。

ミラノの王宮でも2月下旬から“デューラーとルネサンス、ドイツとイタリアの
間で”が始まり、3月には“印象主義と前衛派”展でモネ、ドガ、ルノワール、
ピカソなどの50点が観られる。

今年の後半にはピサでルネ・マルグリット展もあり、パレルモで10月に開催の
アントネッロ・ダ・メッシーナ展やフィレンツェのウフィツィ美術館でレオナ
ルド・ダ・ヴィンチの没後500年となる2019年に先駆けて公開される、レスター
手稿展には、個人的な関心も大ありだ。

これらについてはまたの機会に...。

詳細を最初から順に:
*“Picasso, De Chirico, Morandi, 100 capolavori del XIX e XX secolo” 
会場Palazzo Martinengo、ブレーシャ

*“Frida Kahlo. Oltre il mito” 会場はMUDEC(Museo delle Culture)、ミ
ラノ

*“Steve McCurry . Icons”会場Scuderie del Castello Visconteo(ヴィスコ
ンティ城元厩舎)、パヴィーア

*“The Pink Floyd Exhibition: Their Mortal Remains”会場はMacro Spazio 
Expo、ローマ    
*“L’Eterno e il tempo tra Michelangelo e Caravaggio” 会場は教会堂を
再生したMusei di San Domenico(サン・ドメニコ美術館)、フォルリー

*“Utagawa Hiroshige”会場はScuderie del Quirinale(クイリナーレの元厩舎
)、ローマ 

◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
イタリア・フィレンツェ在住。著書に『天才力 三巨匠と激動のルネサンス (
ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ラファエッロ)』(世界文化社)、『メディ
チ家 ルネサンス・美の遺産を旅する』(世界文化社)。
3月に創刊15年を迎えるメルマガ「イタリア猫の小言と夢」は、melmaの地域情
報部門で2007年メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞。ほぼ隔週で発行中です: 
http://www.melma.com/backnumber_86333/
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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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『イングリッシュネス』みすず書房
ケイト・フォックス 北條文香他訳 3200円

レヴィ・ストロースの『悲しき熱帯』。マーガレット・ミードの『サモアの
思春期』。文化人類学者といえば、「未開」とされる社会でフィールドワーク
を行う人々がイメージされます。文化人類学とは、人々の行動を規制する文化
のコードを解明する学問。「未開」社会ばかりではなく、現代の先進文明も文
化人類学の研究対象となりえます。持ち前の美貌でテレビでも大人気の著者が、
パブや競馬場などでの人々の何気ないやりとりのなかから、イギリス人らしい
行動様式(イングリッシュネス)の特質を浮かび上がらせていきます。

ここで疑問が生じます。グローバル化が進展した今日、イギリスの「国民性」
を語ることにどんな意味があるのか。著者の答えは明快です。世界の70憶が
単一の文化に取り込まれていくはずもない。グローバル化と言いながら、ナショ
ナリズムや部族化(国家より小さな単位に愛着を示す傾向)は、かつてない高
まりをみせている。「国民性」は消え去るものではない。文化的マイノリティ
たちも、自分たちの文化を保持しながらも、「イングリッシュネス」を取捨選
択しながら取り入れ、同時に新たな何かをそこに付け加えている。

イギリス人はシャイな人々です。よほど親しくならない限り、自分の職業や
出身校等、プライバシーを晒すことにひどく慎重です。自慢や自己宣伝の類は
ご法度。自己卑下や自虐が大好きです。同じ英語圏の国でもアメリカ人とは大
違いです。自分を笑うユーモアは、イギリス人の身についた習性です。大真面
目になり、むきになることを彼らは何より嫌います。ロイヤル・ウエディング
にも外国人に比べてはるかに無関心。テロの犠牲者に対する大げさな追悼の表
現も好みません。自己抑制こそが「イングリッシュネス」の特質です。

イギリスはいまなお階級社会としての性格を強くとどめています。階級を分
けるものは、職業や所得ではなく、「文化資本」の有無だと著者は言います。
「文化資本」の有無が端的に表れることば遣いに、人々は非常に神経質になり
ます。「パードン」や「トイレット」は労働者階級のことばとして、中流階級
以上の人々は使用を避けます。労働者階級は中流の人々のことば遣いを「BBC英
語」と揶揄している。パブや競馬場のような社交の場で、人々は一定の作法に
基づきながら自己抑制を解除し、階級の隔たりを超えて親しく交わります。

シャイで自己抑制を美徳とするイギリス人は、著者も言うように日本人とと
てもよく似ています。イギリス人であれば、「日本を取り戻す」、「人づくり
革命」等々の安倍首相の大げさな言葉遣いには、強い嫌悪感を示すことでしょ
う。イギリス人によく似た日本人が、何故こうした言説を受け容れていくのか。
知りたいところです。著者は自分を、「ポップ人類学者」と卑下していますが、
日本の若い「ポップ社会学者」の著作とは異なり、本書は深い学問的な蓄積と、
豊富なデータの収集をもとに書かれています。是非ご一読下さい。


◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「ジェラシーが支配する国」高文研
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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「ちょっとそこを詰めて」の話

今現在、日本がどんどん悪い方向に舵取りをされているにも関わらず何の報道
もされない末期的な症状を見るにつけ、腹立たしくて血圧も上昇気味。そんな
血圧をちょっと下げるためにもぼんやりした話題をセレクトしてみた。

エッセイのタイトルにもなっている「ちょっとそこを詰めていただけませんか?」

電車の中でなぜか微妙な隙間を空けて座る方たちを見ていて「言いたくてもな
かなか言えない」そんな話をしようと思いつけたタイトルだが、スマホの普及
率の上昇に連動するかの様に隙間の数が急上昇している。

先日、そんなに混み合ってる訳でもないが、まあまあの乗客数なのに見事に全
員がこぶし1個から1個半空けて座っている車両に遭遇した。2駅ほど過ぎたあ
たりで立つ人も多くなっているにもかかわらずその隙間はいっこうに詰まる気
配がない。

なぜか?
全員がスマホに没頭して周りを見ていないから。

考えれば始発駅でいきなり満員ならそんな隙間が出来るハズはない。ゆったり
座れる状態で隣の人がキツキツに座って来たら変なヤツだと思うだろう。

ばらけて座る人の隣に微妙な隙間を空けて次の人が座る。次の人も同じ様にちょっ
と隙間を空ける。横の人が近づいてきたらその人との空間を確保するため、こ
れまた少しだけ腰の位置をずらす。そうやって全員が微妙な隙間を作る車両が
出来上がって来たのだろう。

それはいい、と言うか理解出来る。問題はその後の事だ。結構な人が立ってい
て、もちろん自分の前にもつり革につかまって立っている人がいる。ちょっと
詰めれば1人や2人座れるってもんだ。なのになぜ?

答えは「気づいていない」が7割「何となくアクションを起こせない」2割
残りの1割は「権利は私に有る」と考えている人かも。

この7割の気づかない原因はやはりスマホの様だ。本を読んでる人も没頭はし
ているがスマホへの没頭感はそれ以上。。画面に集中する余り周りが全く見え
ていない、と言うより意識の外にある。

「そろそろ混んで来たから詰めようかな」
ぼんやり周りを眺めていればそんな気持ちにもなるだろうが意識外ではどうし
ようもない。

気になるのはこの中のかなりの確率で依存性の人たちがいるであろう事。
前に子どもがうろうろしているにもかかわらずスマホに夢中な両親の話を書い
たけど、この「微妙な隙間車両」に乗っていると全員がそんな人たちか、また
は予備軍に見えてしまった。

◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
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■はてな?現代美術編 koko
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第82回
『オランダ南部でアート鑑賞1ざっくり歴史前編:ヒエロニムス・ボス』

年をまたいでのベルギー・オランダ紀行の続きとなりました。
今年もボチボチと美術について書いていきますので宜しくお願いします。

昨年秋にはアントワープ旅行の経験を交えてお伝えしました。
今回はその続きでベルギー・オランダの国境をまたいでのご案内です。
固有名詞などの表記にバリエーションがありなかなか統一して書けないところ
もありますがご了承ください。

オランダの国土は九州ほどで人口も1700万人に至らず、絶えずドイツやフラン
ス、スペインの大国の脅威から身を守りながら、そして低地の国土を水から守
りながら、地政学的には苦しい道を歩んできた国です。

どうやってそれでもジパングにまで貿易をするほどの世界覇権をもつ時代を迎
えることができたのか、昔から不思議でした。

フランスで生活し始めた時は言語の壁と手前のベルギーが面白くて、ゆっくり
とオランダを巡る機会がありませんでした。寛容の街アムステルダムには遊び
にいくことはあってもその他の町にはなかなか行けなかったです。

些末なことですが、オランダについて一番の驚きは、ルーブル美術館のコレク
ションの作品解説版上に頻繁に≪La Haye≫という町の名前が出てきて「どこだ、
これ?」ってなんとなく思っていたのがハーグのことだとわかった時。
「へぇ〜、そうだったんだ!」

オランダ語読みなら、町の名前は<デン・ハーグ>。
フランス語表記と英語表記、さらにオランダ語表記がそれぞれに変化すること
はヨーロッパの町ではよくあることですが、でもねぇ〜って。
ややこしい。。。

ハーグといえばオランダ第3番目の都市で、オランダ王室が留まるこの地に国際
司法裁判所があることで日本人にも知られているはず。
実質上のオランダの首都です。
政治行政機能や各国大使館もすべてハーグにあるそう。

そんなハーグに向かってベルギーアントワープから車で真っ平な景色が続く道
をひた走りました。ベルギーも真っ平ですが、当然オランダ旅行中は山や丘ら
しいものは見えません。

川を渡るときは橋より地下をくぐるほうが多かったですね。サッカーでも有名
ですがオランダの国色はオレンジ。そのオレンジの由来は、国父と慕われるオ
レンウェイ公ウィルヘルム1世(1533-1584)の名前からきています。

オラニエ公と書くこともあるし、フランス語でいえばオランジュ公、昔の日本
の教科書ならオレンジ公。。。そう、オレンジといえば・・・てなことでオレ
ンジ色がカントリーカラーとなっています。

国歌もウィルヘルム1世を歌っているらしく、世界で一番古い国歌という記述
もWikiに書いてありました。ちなみにオランジュという町は昔フランスのブル
ゴーニュ公国の一部に属するオランジュという町の名前からきています。

現在のオランダは、英語でネザーランド、仏語でペイバ、つまりは≪低い土地
≫という意味の名前となっています。オランダという名前はHollande(ホランド)
州からきていて、まさにこの州にハーグをはじめとする有力な町があったので、
後世はホンラド=オランダのようになったそうです。

オランダはベルギーフランドル地方と同じくフランドル絵画の土地です。
オランダのアーティストといえば、フェルメール、ヤン・ステーン、フランツ・
ハルス、レンブラント、ゴッホ、モンドリアン、デ・クーニング、エッシャー・・
・巨匠の名前が並びます。ここはアート好きなら立ち寄らずにいられないお宝
満載の国です。

上記以外にオランダ出身の画家でその作品がスペインのプラド美術館のお宝1
5選に入る人物がいます。

初期フランドル派であり異端の画家、ヒエロニムス・ボス(1450-1516)がその
方。

彼の生涯はよくわかっていませんが画家一族の出身で、彼の代表作三連祭壇画
『快楽の園』をめぐる話を通じてオランダの1500年代の歴史をざっくり見るこ
とができます。

そもそもどうして『快楽の園』がプラド美術館にあり、プラドには10点のボス
作品が収蔵されているのか。
実際ボスの作品は現在世界中で30点ほどしか残っていないにも関わらずです。
□快楽の園 (wiki)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BF%AB%E6%A5%BD%E3%81%AE%E5%9C%92

『快楽の園』の作品依頼をしたのは、ナッサウ=ヴィマンデン伯エンゲルベル
ト2世という説が有力です。エンゲルベルト2世は当時ボスがいたス・ヘルトー
ヘンボスという町の会合に1481年に出席していたことがわかっています。

ナッサウ家は神聖ローマ皇帝カール5世に仕えていました。1517年にブリュッ
セルのナッサウ伯爵邸の装飾の一つとしてこの絵の記述が登場。ウィルヘルム
1世は父ナッサウ=ディレンブルグ伯ヴィルヘルム1世と母ユリアーナ・ツー・
シュトルベルグの長男だったため、1544年従兄のルネ・ド・シャロンの戦死を
うけて父方からネーデルランドの所領と母方の叔父から相続していた南フラン
スのオランジュ公国を共に相続しオランウェイ(オラニエ)・ナッサウ家の当
主になりました。

あ〜ややこしい。。。
つまりは、こうしてウィルヘルム1世はボスの『快楽の園』の持ち主となったっ
てわけです。

当時のウィルヘルム1世はカール5世に仕え、その死後は息子のフィリペ2世に仕
えるのですが、フィリペ2世がガチガチのカトリックでプロテスタントも多いオ
ランダ民衆を苦しめたので、その後スペインハプスブルグに反旗を翻すことと
なりフィリペ2世がフランドル地方へ派遣したアルバ公フェルナンドによってこ
の祭壇画は没収となります。

将来のオランダ国父オレンウェイ公ウィルヘルム1世がスペインハプスブルグ家
に反旗を翻ることになるのは、オランダ独立戦争(八十年戦争)を主導するこ
とになるからです。

この反乱の結果として、ネーデルラント17州の北部7州はネーデルラント連邦共
和国として独立し、北部7州は1581年にスペイン国王フェリペ2世の統治権を否
認し、1648年のヴェストファーレン条約によって独立を承認され現在のオラン
ダの原型となりました。

途中で戦争脱落した10州はカトリックの地域で現在のベルギーやルクセンブル
グとなっていきます。

フィリペ2世はボスが大好きだったようで、ウィルヘルム1世はこの『快楽の園』
の譲渡を拒否し、最後の最後まで隠し通そうとしたらしいのです。

彼の死後、アルバ公から作品が流出し競売にかけられたのを結局フィリペ2世が
購入し、エル・エスコリアル修道院の自身の寝室に飾っていたというのですか
ら、この『快楽の園』はオランダの歴史と共に持ち主を渡り歩いた作品と言え
ます。

この作品自身が素晴らしいのは言うまでもないのですが、この奇妙奇天烈な祭
壇画は時空を超えて今の私達も魅了してしまう不思議ちゃんなのでした。

不思議ちゃんの作品についてはいろんなところで語られているので興味があれ
ばぜひ読んでみてください。

私は30年ほど前に貧乏旅行中にこの絵を鑑賞しました。その時はまだよく美術
のことを知らなくて、プラドの他のお宝みるのに大変でした。
要はベラスケスとピカソで手一杯でした(笑)
今行けば、プラドのフランドル絵画の見方が随分変わることでしょう。

『快楽の園』ドキュメンタリー映画も現在日本で公開中です。
□快楽の園 ドキュメンタリー映画(美術手帖)
https://bijutsutecho.com/insight/8444/

◎koko
円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html(現在休刊中)
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■スプートニクとガガリーンの闇 5 内藤陽介
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スプートニク2号

1957年10月4日、ソ連は人工衛星スプートニク1号の打ち上げに成功したが、
当初、ソ連の最高権力者であったフルシチョフは人工衛星の打ち上げを単純に
科学技術上の問題と考えており、そのことの持つ軍事的ないしは政治的な意味
をほとんど理解していなかった。ところが、全世界が大騒ぎになるのを見た彼
は、ただちに、事態の重大さを認識する。

10月10日、開発責任者のセルゲイ・パヴロヴィチ・コロリョフを呼び出したフ
ルシチョフは、11月7日のロシア革命40周年記念日までの、もうひとつ、よりイ
ンパクトのある衛星を打ち上げるよう指示した。

1ヶ月以内に2発目の衛星を打ち上げるという無理難題に困惑したコロリョフは、
とっさに、犬を載せたスプートニクを打ち上げることを提案する。

第二次大戦後のロケット開発の文脈の中で、1949年以降、犬を載せたロケット
の打ち上げ実験が行われていた。実験動物としては、当初、犬と猿が候補とさ
れていたが、躾が容易で飢えにも強く、なおかつ、見栄えが良い(実験成功の
暁には、大々的にそのことが報じられることが考慮されたためである)などの
理由から犬が採用となったのである。このため、犬を載せるためのコンテナや
生命維持装置などには制作実績があった。

ただし、それらのロケットは高度80キロまでで、犬もパラシュートで回収され
ていた。これに対して、そもそも、大気圏再突入の技術が不十分であるがゆえ
に、長距離弾道ミサイルではなく、人工衛星を打ち上げざるを得なかった当時
の技術力では、衛星に載せた犬を“回収”することは不可能である。

それでも、軌道上に打ち上げた衛星に何らかの動物を長時間滞在させ、さまざ
まなデータを取ることは、将来の有人宇宙飛行の布石として、説得力のあるプ
ランであり、フルシチョフを大いに満足させた。実際、フルシチョフは、側近
でロシア・ソヴィエト連邦社会主義共和国首相(翌1958年、ソ連第一副首相に
昇格)のフロル・ロマノヴィチ・コズロフを担当者として直々に任命し、進捗
状況を毎日報告させている。

スプートニク2号の衛星本体は円錐形で、送信機のほか、犬を入れたコンテ
ナと生命維持装置、血圧、心拍数、呼吸数、心電図などの記録装置、紫外線な
らびにX線測定装置などを搭載していたため、スプートニク1号(質量83.6圈
よりも大幅に重い質量は508圓箸覆辰拭

衛星に載せられる犬は、スペースの都合から、体重6キロ以下、体長は35セ
ンチを越えない雌犬(排泄の時に片足を上げない)のうち、実験結果の撮影の
ために体色は白もしくは明るいもの、ロシア原産の種であること、などの条件
の下、航空医学アカデミーが手持ちの10匹の中から3匹を選び、最終的に、巻
き毛の“クドリャフカ”という名の犬が選ばれた。

クドリャフカは、もともと、医学研究目的に保護施設から航空医学アカデミー
に送られた雑種犬だったが、性格が大人しく、打ち上げまでの期間、毎日、数
時間コンテナの中に入れられていても、ほとんどじっとしていて動かなかった。
コンテナの内部は立ったり座ったりできる程度のスペースがあり、食糧は高カ
ロリーのゼリーが20日分、毎日一定量、自動的に供給される仕組みになってい
た。

ちなみに、この犬は“ライカ犬”という名前でも知られているが、これは、ソ
連側が犬種を“ロシアン・ライカ”と発表したことによる。

ロシア語の“ライカ”は“吠える”を意味する動詞の“лаять(ラヤート)
”から派生した名詞で、もともとは、ロシア北部およびその周辺地域で伝統的
に飼われてきた猟犬全般を指す語だったという。このため、たとえば、シベリ
アン・ハスキーを“ヤクート・ライカ”、サモエドを“サモエド・ライカ”と
呼ぶこともある。
国際畜犬連盟(FCI)が認定する“ライカ”犬としては、ロシアおよびシベリア
原産の犬から作出されたラッソ・ヨーロピアン・ライカ、ウエスト・シベリア
ン・ライカ、イースト・シベリアン・ライカの3種があるが、このほかにも、コー
レル・ライカ、ツングース・ライカ等のように、実際に猟犬として使用されて
いるものの、詳細がよくわからないものも少なからずある。

さて、クドリャフカを乗せ、10日分の酸素と食糧と実験データを取るための各
種の計測器を積み込んだスプートニク2号は、スプートニク1号の打ち上げか
ら1ヵ月後の1957年11月3日、バイコヌール宇宙基地から打ち上げられ、記念
切手

https://blog-imgs-108.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20180125171258a5e.jpg

も発行された。
ただし、このとき発行された記念切手には、打ち上げのハイライトともいうべ
き犬の姿はどこにも描かれておらず、代わりに、クレムリンを背景に描いてい
るのは、衛星の打ち上げが革命40周年の記念事業であったという事情を如実に
反映しているといってよい。もっとも、クドリャフカに関しては、切手のデザ
イナーには実験の詳細な内容など知らされていなかった可能性は高い。

なお、スプートニク2号からの地上への通信は11月10日に途絶え、機体そのも
のも打ち上げ162日後の1958年4月14日に大気圏に再突入し消滅したが、打ち上
げ後4周目にしてすでに衛星からの信号では生体反応は確認できなかったとい
う。これが正しければ、衛星はおよそ100分で地球を一周していたから、6時間
後にはすでにクドリャフカは死んでいたということになるが、当時のソ連当局
者は「ライカ犬は1週間程度生きていた」と発表している。

いずれにせよ、クドリャフカの宇宙飛行は国家のために片道燃料で死地に向か
う“特攻”のようなものだったから、英国動物愛護協会はライカの死に対して、
ソ連に抗議。これに対して、ソ連側は、追悼のためとして、在りし日のライカ
の姿を描いたパッケージのタバコ“ライカ”

https://blog-imgs-108.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20180125174556997.jpg

を発売した。
なお、かつて、クドリャフカが訓練を受けた、モスクワのペトロフスキー公園
の南西にある航空宇宙医学研究所には、スプートニク2号の打ち上げから40周
年にあたる1997年、“ライカ”の記念碑が建てられた。

内藤陽介
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
リオデジャネイロ歴史紀行』えにし書房
電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」「年賀状の戦後史」角川
oneテーマ21などがある。

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ケイト・フォックスの著書、お楽しみいただけましたでしょうかw?いや、私も
原稿をいただいたときに「まさか!」って思いましたからw

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