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[本]のメルマガ vol.666


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 ■■ [本]のメルマガ                2017.12.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book     [Xmasが過ぎてしまいました号]
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 ★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/
 
 『刑務所の読書クラブ:教授が囚人たちと10の古典文学を読んだら』
 
 ミキータ・ブロットマン著 川添節子訳
 四六判 304ページ 本体2,000円+税 ISBN:9784562054657
 
 殺人犯と『マクベス』を読む…女性教授が刑務所で始めた読書クラブ。壮絶な
 人生を歩んできた囚人たちは古典文学を読んで何を思うのか。彼らはやがて
 思いがけない視点から物語の核心へと近づいていく。驚嘆のノンフィクション!
     
 【連載】………………………………………………………………………………
 
 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 今月も残念ながらお休みです。来年に乞うご期待!

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第102回 元気な気持ちで今年を終えるための本 

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → ブレイディみかこさんの本
  
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 ■トピックス
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 ふたつのイベントをご案内します。
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第102回 元気な気持ちで今年を終えるための本
 
  今年もあと少しで終わってしまうなあ。還暦を迎えて、ぼくにとってはひと
 区切りの年だったのだろうけれど、さほど代わり映えのしない一年だったよ
 うな気がする。あ、いやいや、セカンドアルバム『ある日の続き』をリリース
 したんだった。『PIED PIPER DAY パイドパイパー・デイズ 私的音楽回想
 録』(リットーミュージック)を読んだときには思いも付かなかったが、伝説の
 レコード店パイドパイパーハウスの長門芳郎さんにお会いすることが出来た
 し、たまたまジャズ喫茶でぼくのアルバムを聴いた音楽評論家の小川真一
 さんから連絡を頂いたこともあった。音楽雑誌『レコード・コレクターズ 
 12月号』(ミュージックマガジン)の新譜紹介でもお褒めの言葉もいただいた。
 (これ、プチ自慢です)。いつも愛読している雑誌に自分のアルバムが採り
 上げられるなんて感無量です。やはり表現したり、発信することで新しい世
 界が広がるんだなあ、と思う。
 ただ、喜んでばかりはいられない。アルバムはいちおうレコード会社を通じ
 て全国発売になったものの、注文がなければ売れないわけで、部屋に積み
 上げられたダンボール箱を見ながらため息をつく毎日です。
 
  ちょっと落ち込み気味のときに元気をもらえる本を読んだ。『編む人』(南
 陀楼綾繁 著 ビレッジプレス)。カバーイラストは森英二郎さんだが、木版
 画ではなくクレヨン画なのが新鮮だ。「ちいさな本から生まれたもの」という
 サブタイトルがついているとおり、ミニコミや本を介して場を作る人、地域に
 根ざした雑誌を作る人のインタビュー集で筆者の南陀楼さんが書いている
 とおり、ベストセラー作家やカリスマ編集者は登場しない。自分のやりたい
 ことを徹底的にやっている人たちが登場するのだが、読んでいて決して感
 情が高ぶるわけでもなく、じわじわと勇気がわいてくる本だった。ああ、残
 りの人生、こんなふうに送りたい。
 
  最初に登場するのは小西昌幸さん。これは2009年に古書ほうろうであっ
 たトークショーをまとめたものだ。ああ、そうだ、このトークショーには行った
 んだっけ。読みながら記憶が甦ってきた。小西さん、熱い人だった。公務員
 というのが意外だったのを覚えている。徳島に住む小西さんは一人でロック
 雑誌『ハードスタッフ』を発行している。今まで12号を発行しているが、ちょ
 うど12号を発行したときに企画されたトークショーだった。それが15年ぶり
 ということだった。それから8年、現在13号を製作中という。じつに息が長い。
 これが「好きになったものには、一生つきあうのが信条」ということなのか。
 休んでいる期間が長くても、続いている。これは大事なことだと思う。小西さ
 んは公務員で徳島北島町の創世ホール館長なのだが、ここでも「やりたいこ
 とをやる」を徹底する。地方の小さなホールに紀田順一郎、種村季弘、松田
 哲夫など錚々たる人を呼んでしまうのだった。小西さんの熱心な、というか
 “執拗な”依頼にとくに縁故のない町にこれだけの人たちが来たのだ。杉浦
 康平に手紙を送り続けて、ついに講演を了解してもらい、ぎゃくにあわててし
 まう話には笑ってしまったけれど、そんなこと普通出来ないだろう。本気にな
 るということは、こういうことなのか。
 
  『入谷コピー文庫』の堀内恭さんには会ったことがある。といってもげんげ忌
 のときに挨拶をしたぐらいだ。その後、入谷コピー文庫にぼくの文章を載せて
 もらうようになったのだが、堀内さんはメールをやらないので、連絡はもっぱら
 ハガキのやりとりになる。出来上がった冊子を送ってもらうと、感想をハガキ
 に書いて送る。原稿の依頼も封書でくる。原稿を書くとA4の紙にプリントアウ
 トして封筒で送るという具合だ。文通をしているようで楽しい。入谷コピー文庫
 は、1点の発行部数は15部だという。たとえ少部数であっても、だれかが読
 むという感覚が大事なんだ。「たった15部でも深夜できあがったときには15
 部をなんとなく並べてみてしまう」という堀内さん、ぼくも入谷コピー文庫に書
 かせてもらうのを誇らしく思う。堀内さんのやり方には学ぶところが多いなあ。
 音楽も聴いてほしい人だけにさしあげるのもいいかな、と。
 
  そのほか『コミック・マヴォ』の竹熊健太郎さんの話は漫画家志望の人には
 必読だと思うし、プロとアマチュアの違い(どちらが良いということではなく)が
 わかりやすかった。情報誌『プレイガイドジャーナル』の村元武さんは「本と街
 とのつながり」について、街と「なくなったもの」について話す大竹昭子さん、
 70年代の熱い雰囲気が伝わってくる新宿プレイマップの本間健彦さんの話、
 地域に根ざした『Lifeーmag.』の小林弘樹さん、フリーペーパー『雲のうえ』を
 続けている牧野伊三夫さん、そして谷根千工房・山崎範子さんと読みながら、
 この人たちの持っている「思ったことを実行する力」と「続ける力」に圧倒され
 る。雑誌のこと、活動のことを聞きながら、その人の生き方が深いところまで
 浮き上がってくる、見事なインタビューだと思う。
 
  地域雑誌『谷根千』は2009年8月で終刊してからも、さまざまな活動に忙
 しい山崎さんがのお金を持っているかじゃなくて、楽しく暮らしているかどう
 か。『まわっている』ことが大事なの」という言葉が心地よく響いた。我が家の
 かたすみに積み上げられたダンボール箱をちらりと見ると、ため息をついてし
 まうけれど。ああ、最後は愚痴になってしまいましたが、2017年も「積ん読」
 を読んでいただいてありがとうございます。来年は愚痴をこぼさないように頑
 張ります。どうぞ、よろしくお願いします。
 
 ◎吉上恭太
 文筆業。エッセイ集『ときには積ん読の日々』がトマソン社から発売中。詳しく
 はトマソン社のサイトを見てください。
 http://tomasonsha.com/ 。
 セカンドアルバム「ある日の続き」、こちらで試聴出来ます。
 https://soundcloud.com/kyotayoshigami2017
 タワーレコード、アマゾンでも入手出来ます。よろしくお願いします! 
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  早いもので2017年ももうすぐおしまいということで、今年はどんな本を読んだ
 かとつらつら思い返してみると、今年はブレイディみかこさんの本をよく読みま
 した。新潮ドキュメント賞受賞作『子供達の階級闘争』(みすず書房、2017)を皮
 切りに、『花の命はノー・フューチャー』(ちくま文庫、2017)や『ヨーロッパ・
 コーリング』(岩波書店、2016)などに手を伸ばしていった感じでしょうか。
 
  これまで取り上げそびれていたので、個人的に気に入った箇所を紹介しつつ、
 皆様の年末年始の選書の参考になればと思ったり思わなかったりという感じで、
 今月は書いてみたいと思います。
 
  冒頭に挙げた3冊のうち『子供達の〜』はイギリスの託児所に通う子供たちと
 その親たちの周辺を中心に、彼らのおかれているイギリス社会の現状ついても
 書かれた本です。著者自身がイギリスで保育士をしており、その職場は自ら底
 辺託児所などと呼ぶようなところです。その視点からのイギリス社会のレポート
 となっています。
 
  著者を取り囲む人々、それは託児所にやってくる移民の親子であったり、アル
 コール依存症のシングルマザーであったりします。一緒に働いている人々も移
 民の保育士は当たり前。「前世紀の終わりから賃金をもらえる職についたことが
 ない」(p,202)ボランティアの男性なんて人もいたりして多士済々です。
 
  そういった人たちが入り混じる日々を、過度に感情をこめるでもなく、さりとて
 突き放すわけでもない筆致で描きます。労働者階級が移民を排斥しているとか、
 遠い日本の読者でも思い描けるような単純な話ではなく、現場にいたからこそ
 見えてくる、イギリス社会の現状を知ることができます。
 
  文章もまた特徴的。ブレイディ節とでも呼びたくなるような歯切れのよさが感じ
 られます(著者の対峙する状況はそんなに歯切れがいいものじゃありませんが)。
 
  「くだらない相手だからといって、自分にとってプラスになるどころかマイナスに
 しかならない相手だからといって、好きになってしまったものを愛することはや
 められない。そこでやめることのできるぐらいの愛なら、そんなものは最初から
 愛ではないのである。」(p,250)
 
 なんていう文章がふと現れたりして、心奪われます。
 
  緊縮財政下で福祉の切り捨てが進むなかで、託児所を巡る現状は気の短い人
 なら簡単に絶望してしまいそうな状況です。それでも読み進めることができるの
 は著者の文章の魅力と、綺麗なかたちを全然見せてくれないどうしようもない愛
 の中に、かすかに希望が見えるからでしょうか。
 
  『花の命は〜』のほうは『子供達の〜』よりも前に出版されたものが文庫になっ
 たものです。まだこのころは著者は保育士ではなく、身の回りのイギリスレポート
 といった感じですが、文章の弾けた感じはこちらの方が堪能できると思います。
 
  『ヨーロッパ・コーリング』は岩波から出ているだけあって(?)ちょっとかための政
 治レポートの趣です。スコットランド独立投票、ギリシャ問題、イギリスの緊縮財
 政と反緊縮運動などここ数年のトピックの数々が並んでいます。(イギリスのEU
 離脱まではフォローしていません。それについては『労働者階級の反乱』(光文
 社新書、2017)をお読みください。)
  
  スコットランド独立を目指す政党が、政策は社会民主主義的だったりして、右派
 か左派かということで理解しようとすると、なかなかうまくいきません。むしろヨー
 ロッパの社会運動の内実は上と下の「階級闘争」のようです。
 
  スコットランド独立派の意見を著者流にまとめると「『それ(※新自由主義的なイ
 ギリスの現状のこと)がもう嫌なんじゃ。金のことばっかり考える社会じゃなくて、
 オルタナティブな社会を俺らは目指したいんじゃ』」(p,40)ということになります。
 (言い回しが漫才コンビ千鳥のノブを思い出させます…。)
 
  格差が開くばかりの社会にヨーロッパの人も飽き飽きしつつあるというのが伝わ
 ってきます。「金のことばっかり考える社会じゃなくて、オルタナティブな社会を俺
 らは目指したいんじゃ」…いいセリフだ。
 
  スコットランド国民党党首のニコラ・スタージョンやスペインのポデモス党首のパ
 ブロ・イグレシアス、あるいはイギリス労働党左派で党首のジェレミー・コービンな
 ど、ヨーロッパには面白そうな政治家がけっこういます。翻って日本を見てみる
 と…。
 
 というわけで話題も文章も読みどころ満載ですので、まだお読みでない方は年
 末年始のお伴にお薦めです。ついでにイギリスの新自由主義の進展した社会の
 実態を描いた『チャヴ-弱者を敵視する社会』(海と月社、オーウェン・ジョー
 ンズ著/依田卓巳訳、2017)もあわせて読むとより理解が深まると思われます。
 
 それでは皆様よいお年を。
  
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■トピックス
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 ■ 歌集『ナイトフライト』書肆侃々房 刊行記念
     伊波真人 × 谷川電話 トークイベント
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 ◆日時:2018年1月20日(土) 15時〜
 
 ◇場所:枚方蔦屋書店@HT_book

 ■ 平野甲賀と晶文社展
  ギンザ・グラフィック・ギャラリー第364回企画展
 └─────────────────────────────────
 
 ◆日時:2018年01月22日(月)〜03月17日(土)
  
 ◇場所:ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)
       〒104-006 東京都中央区銀座7-7-2 DNP銀座ビル1F
 
         TEL:03-3571-5206/FAX:03-3289-1389 
 
       最寄り駅
      ■ 地下鉄/銀座線、日比谷線、丸ノ内線「銀座」駅から 徒歩5分
      ■ JR/「有楽町」「新橋」駅から徒歩10分 
 
 
 平野甲賀は1964年から1992年にわたり、晶文社の本の装丁を一手に担ってきま
 した。ひとりの装丁家が30年近く、ほぼ一社の装丁をすべて手掛けるのは稀なこ
 とで、当時のカウンター・カルチャーの旗手でもあった晶文社のスタイルを作り
 上げ、出版界に旋風を巻き起こしてきました。
 本展では、平野甲賀が半世紀かけて7,000冊以上手がけた装丁作品の中から、
 晶文社の装丁本を中心に約600冊を展示します。
 また、2014年から瀬戸内海の小豆島に移り住んだ平野甲賀氏が、毎日写経のよ
 うに自身の装丁ともうひとつの活動である舞台やコンサートのチラシやポスター
 を手直しし、作品上にメモまで書きつけ、竹和紙に刷り出した作品およそ80点も
 合わせて展示いたします。
 装丁本を手に、本と出版と時代と装丁家の密月な関係に思いを馳せてみませんか。

                                     (gggギャラリーHPより抜粋) 
   
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 ■あとがき
 今年二回目の25日超え配信です。
 もう、本当に、関係者の皆様、読者の皆様にお詫びの言葉もないです。
 誠に申し訳ありませんでした。
 来年はこのようなことがないようにいたします。行動で示します!
 2017年の最後のご挨拶が何ともマヌケなかたちになってしまいました。
 何卒ご容赦くださいませ。
 
 今年も大変お世話になりました。
 どうぞ来年もよろしくお願いします。皆様、よいお年を! 畠中理恵子拝
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