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[本]のメルマガ vol.653

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■■ [本]のメルマガ                 2017.08.05.発行
■■                              vol.653
■■  mailmagazine of books       [どこか落ち着かない気分 号]
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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/

『世界一の珍しい鳥:破格の人〈ハチスカ・マサウジ〉の博物随想集』

蜂須賀正氏著 杉山淳編 A5判 本体3,800円+税 ISBN:9784562054206

◎「ドクター・ハチスカ、君こそ日本最後の超人博物学者であった」荒俣宏
蜂須賀正氏が一般向けに書いた、絶滅鳥ドードーや、モアなど鳥に関する文章
を集成。稀覯書『世界の涯』収録のエッセイを中心に卒業論文「鳳凰の研究」
や雑誌発表記事を加え、蜂須賀の文業の粋を一巻に収めた。解説=川端裕人

■CONTENTS------------------------------------------------------------

★トピックス
→ トピックスをお寄せください

★味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
→ 『奇妙な食べ物』2.草 

★声のはじまり / 忘れっぽい天使
→ 写実でない写実 ―「ジャコメッティ展」(新国立美術館)

★ホンの小さな出来事に / 原口aguni
→ 中小企業診断士試験(一次試験)を受けてきました

★「[本]マガ★著者インタビュー」
→ インタビュー先、募集中です。

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■トピックス
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■〈第 3 回文化通信フォーラム〉のご案内 
└──────────────────────────────────

アメリカで独立系書店が元気な理由
―書籍で成り立つ産業構造とマーケティング

アメリカではなぜ中小書店が増えているのか。ビジネスモデルの違い、書店組
合の活動、出版社や取次の政策などについて、文化通信社が実施した海外視察
結果を踏まえて報告する。

■講 師:星野渉(文化通信編集長)
■日 時:8月29日(火)17時〜19時
■会 場:文化産業信用組合会議室
 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町1-101神保町101ビル
■参加料:5000円(別途懇親会あり・会費5000円)
■詳細・お申し込み=https://www.bunkanews.jp/event/

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■トピックスをお寄せください
└──────────────────────────────────

 出版社の皆様、あるいは出版業界の皆様より、出版関係に関わるトピックス
(イベント、セミナー、サイン会、シンポジウム、雑誌創刊、新シリーズ刊行
など)の情報を、広く募集しております。

 情報の提供は、5日号編集同人「aguni」hon@aguni.com まで。

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■味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
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その14『奇妙な食べ物』2.草 
 
 さて、前回に続いて作家が生み出した奇妙な料理を見て行こうと思う。今回
は、ハーブや薬草に注目して物語の中をさまよってみよう。

一、白い飲み物

 実は私には、長い間あこがれ続けているけれど、絶対飲むことができない飲
み物がある。それは、アイラ・レヴィン著の『ローズマリーの赤ちゃん』に出
てくる白い飲み物だ。この本が出版されたのが一九六七年。すぐに翻訳され、
次の年には映画にもなった。

 物語の舞台は、ニューヨークのオノ・ヨーコが住んでいることでも有名な古
風なマンション。ここに引っ越して来たばかりの若い俳優の妻ローズマリーが
主人公。彼女たちは隣に住む老キャスタベット夫婦とだんだん懇意になって行
く。彼らは、ローズマリーが妊娠したときくと、とても有名な産婦人科医を紹
介してくれる。その医師の命令で、ローズマリーは市販のビタミン剤を処方さ
れることなく、隣人が作って届けてくれるジュースを毎日飲むことになる。
 
「いや、錠剤はいけません。ミセス・キャスタベットが薬草園と調剤器を持っ
ているから、彼女に毎日の分を作らせましょう」
 
 こう医師は言うのだが、妊娠したからってなんでビタミン剤なんか飲むんだ
ろう? いかにもアメリカだなあと思う。

 彼の言う「薬草園」というのは、窓際に置いた戸棚の中で育てているハーブ
の鉢植えのことなのだ。
 ローズマリーがマンションの部屋の下見に来たとき、その部屋の以前の住人
も窓際の薬草園を持っていた。ローズマリーは、その鉢植えを見て、

「ほとんどが薬草よ」
「はっかやめぼうきがある」

と、言っていた。

 こういう室内でハーブを育てる流行などは、当時の日本にはまだ全然入って
いなかったから、意味が分かるようになったのは十数年たってからだった。ち
なみに、めぼうきというのはバジルだから、こんな風に訳されていたというの
は、バジルを使った料理がまだ普及していなかった証拠だと思う。六十年代当
時の日本人にとって、イタリア料理というのはピザではなく、せいぜいスパゲ
ッティ・ナポリタンだったのがよくわかるだろう。    
 
 さて、そのジュースはこんなものだった。

「毎朝十一時に、ミニ―がピスタチオの香料入りのミルクセーキを水増しした
ようなものを運んできた。それは冷たくて酸っぱかった。」

 何が入っているとのローズマリーの問いかけに、ミセス・キャスタベットは、

「生卵、ゼラチン、薬草」
「タニスの根?」
「それを少しと、他のものも少しずつ」

と、答えている。

 実はここに出てくる「タニスの根」というのが重要なモチーフで、悪魔崇拝
者にとってはとても大切な薬草らしいことがわかってくる。彼らはこの根を常
に身に着け、儀式でも用いているらしい。きっと、悪魔が元気になる植物でも
あるのだろう。もちろん実在しない植物だろうし、そんな薬草を私は絶対摂り
たくない。けれど、この飲み物がどんな味なのか味見だけはしてみたい気がす
るのだ。

 夏休みに白いカルピスやミルクセーキを飲むたびに、この
「青と緑の縞柄の大きなグラスに入った」
冷たくて白い飲み物の味を思い浮かべてしまう。

そんな、忘れられない本の中にだけ存在する飲み物なのだ。


二、蛇含草

 さて、アメリカの怖い薬草の話をしたので、日本の怖い薬草の話で締めくく
ろう。

 私の親は関西系だったので、長じるまで東京の男たちがこんなにも蕎麦を愛
しているというのに気づかなかった。あらゆる街角には立ち食い蕎麦の店があ
るし、男たちにとって蕎麦の名店に足を運ぶのが楽しみらしいということもだ
んだんと知っていった。まあ、東京の蕎麦の盛りは少ないから、デートで蕎麦
を食べることはダイエットにも役立つし、私としては何の異論もないのだけれ
ど、蕎麦屋ののれんをくぐる度にふと思い出してしまう薬草の話がある。
 
 それは、落語の『そば清』に出てくる薬草だ。
 
 落語の常としてひとつとして同じ物語はないのだが、中心となる物語は同じ
だ。

 蕎麦好きで大食いの清兵衛が蕎麦屋で蕎麦を食べている様子を見た男が、何
杯食べられるかの賭けをもちかける。清兵衛は見事に何十杯もの蕎麦を食べて
賭けに勝つ。男が賭けに負けて悔しがっていると、その様子を見ていた人に、
実はあの男は有名な大食いで毎回賭けに勝っているのだよと教えられる。そこ
で、男たちは語り合って、今度はみんなで一両ずつ持ち寄って、もっとすごい
量を食べる賭けをもちかけてやろうということになる。そんなある日、清兵衛
は商売で出かけた先の山の中で、巨大なうわばみが猟師を丸のみする場面に遭
遇する。そして、大きなお腹を抱えたうわばみが苦しそうに這って行き、そこ
に生えていた草を食べ、その途端、お腹がペチャンコになっていくのを見たの
だ。これはよいものを見たと喜んだ清兵衛は、その草を持って帰り、お腹がい
っぱいになった時のこなれの助けにしようとする。

 さて、ある日、それまでにはないほどの大食いの賭けをしてお腹がはちきれ
そうになった清兵衛は、別室でしばらく休むと言って、そこでこの草を口にす
る。しばらくたって、賭けをした人たちが様子を見に行くと、そこには誰もい
ず、ただ蕎麦切りが羽織を着た姿で座っていただけだった。

 つまり、蛇が口にした草の名がこの蛇含草で、その効用は人間を溶かすこと
にあって、蕎麦は消化されないということなのだが……。

 よく考えるとすごく矛盾した話ではある。人間が溶けてしまうような薬草な
ら、なんで、無事摘んで来られたのだろうかとか、口に含んで消化の助けにす
るならば、胃の中にあるものを溶かすのであって、外にある人間が溶ける筈が
ないじゃないかとか思えてくる。

 蛇のお腹の中にいた人間と蕎麦をお腹の中に入れた人間が溶けてしまう薬草。
この中と外が逆転した感じは、考えれば考えるほど奇妙で魅力的でもある。

 落語の全集などを読むと、わかりやすくこの草を「人解草」として話す落語
家もいたりする。さらに解説には、「蛇漏斗」だとか「ウワバミ草」だとかの
別名まで記されていて、あげくの果てに、南方熊楠がこの草について調べた話
まであって驚かされる。

 まあ、そんなことは関係なく、ちょっとぞくりとくる終わり方なのがこの落
語の楽しみというところだろう。
 
 元々は関西の落語の『蛇含草』という話で、餅を食べる話だったらしい。そ
れを、明治時代に東京の落語家が蕎麦に直して語ったという。蕎麦はあまり噛
まずに飲み込んで食べるものだから、ただ蕎麦だけが着物の中に一杯詰め込ま
れて人の形になっているという様子が、まるで絵のように目に浮かび、ありそ
うな感覚を呼んだのだろう。昔は『そばの羽織』という演題だったらしい。

 現代でも、この蕎麦がぎっしり着物に詰まっている姿が絵になるせいか、絵
本や子供向けの落語の本では人気の話だ。

 ぞっとする話なのに、大笑いのうちに幕を閉じるこの蛇含草の話。信州の大
盛りのお蕎麦や岩手のわんこ蕎麦を食べ過ぎた時等には、必ず思いだしてしま
う。食べ過ぎてうわばみの気分になり、強力な消化剤がほしくなるからだろう
か。飲んだら溶けてしまうのは自分なのに、何故そう勘違いしてしまうのかわ
からない。そんな魅力があるからこそ、この話は語り継がれて来たのだろう。

 もし、山の中でこの草をみつけても、決して持ち帰らないようにしようとだ
けは思っている。
  
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『ローズマリーの赤ちゃん』アイラ・レヴィン著   ハヤカワ文庫
『五代目古今亭志ん生全集第八巻』           弘文出版
『古典落語第四巻』                  筑摩書房
『ゆかいな10分落語』山口理著              文渓堂

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高山あつひこ:ライター(主に書評)。好きなものは、幻想文学と本の中に書
かれている食物。なので、幻想文学食物派と名乗っています。著書に『みちの
く怪談コンテスト傑作選 2011』『てのひら怪談庚寅』等

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■声のはじまり / 忘れっぽい天使
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写実でない写実 ―「ジャコメッティ展」(新国立美術館)

 ジャコメッティの彫刻は特徴がある。誰でも、遠くからでも、ひと目見れば、
「ああ、この作品はジャコメッティだな」と直ちにわかるだろう。やたらと細
長く、ごつごつしていて、顔はくしゃっとしている。ロダンやブールデルのよ
うな写実的な力強さとも、抽象に徹したブランクーシのような遊び心とも無縁
の、奇妙な味わいだ。写実であれ抽象であれ、すぐれた彫刻作品には、今にも
動き出しそうな感じを与えるものが多い。土偶だってそうだ。三次元の芸術で
ある彫刻は、身体性を自然に備え、それが「生きている」という感じを起させ
るのだろう。しかし、ジャコメッティの彫刻には、その「生きている」という
感じが余りない。 かと言って死をイメージさせるわけではない。生と死の中
間のような場所にじっと耐えて佇んでいるといった感じなのだ。

 新国立美術館開館10周年企画だというこの「ジャコメッティ展」に訪れた人
の表情をチラリと覗いてみると、そこには一様に微かな戸惑いが浮かんでいる
ように思える。美術館に展示された作品を鑑賞する時、我々は自然と、天下の
名品に感心するというあの観光にも似た態度をとりがちである。しかし、ジャ
コメッティの作品はそれを許してくれない。作品の概要自体は写真などでよく
知られているにもかかわらず、実物に接すると、どこか落ち着かない気分に陥
ってしまうのである。

 アルベルト・ジャコメッティは1901年にスイスのイタリアに近い地方で生ま
れ、1966年にスイスで死去。父親は画家、弟は家具製作者であり、弟はジャコ
メッティの彫刻のモデルを何度もつとめている。ブールデルに学んだが、シュ
ールリアリズムの運動に共鳴し、抽象性の高い、超現実的な作風で名をあげた
ようだ。本展にも「女=スプーン」(1926)他、この時期の作品が幾つか展示
されている。「女=スプーン」は、女性の体の丸みをスピーンの形状と重ね合
わせた作品で、彼が研究していたアフリカやオセアニアの彫刻の影響が見られ
るという。線に何とも言えない柔らかさと暖かさがあり、抽象な形態でありな
がら、ひと目で女性性を感じさせる腕は、冴えているとしか言いようがない。
しかし、まもなく彼はこの方向での創作を放棄してしまい、シュールリアリス
トたちと疎遠になってしまう。

 彼は写実に基づいた創作を始めるができあがった作品は何とも奇妙なものだ
った。大きさが極端に小さいのである。5センチからせいぜい20センチくらい。
そうした小像を、彼は憑かれたように作り続ける。目を凝らして鑑賞すると、
後年のジャコメッティ彫刻の特徴がしっかり表れているのがわかるが、ぱっと
見た感じでは小さな岩の断片のようである。彼はこの時期の作品について、
「見たものを記憶によって作ろうとすると、怖ろしいことに、彫刻は次第に小
さくなった。それらは小さくなければ現実に似ないのだった。」
と述べている。

 この謎めいた言葉の真意を言い当てるのは難しいが、彼が「現実」をどうい
うものとして捉えていたかを示すものであるようにも思える。 小さな像では
顔つきや表情の細かい部分がよく見えない。小像同士を比較すと、差異よりも
同質性が際立つ。つまり皆同じような岩の塊に見える。このことにより、ジャ
コメッティは、写実といってもいわゆる通常のリアリズムとは違うものを目指
していることがわかる。いかにも「本物らしく」見せようとすると、そこに作
為が生まれ、作品は逆に本物から遠ざかってしまう。現実に似せた何かではな
く、「彼が感じるところ」の現実そのものを、そこに出現させようとしたので
はないか、ということだ。

 やがて彼は通常のサイズで創作を始める。「大きな像 女:レオーニ」(19
47)は、細長い体にごつごつした肌触りの、あのジャコメッティ・スタイルに
よる作品で、長い髪、上半身にぽつんとついた乳房、強調されたウエストによ
って女性だということがわかるが、それ以外は男性の立像とあまり変わりがな
い。シュールリアリズム時代の「女=スプーン」は、抽象的な形態ながら、丸
みを帯びた線の工夫によりひと目で女性を描いているのだなと鑑賞者にわから
せているが、この「大きな像」は逆である。女性だということは辛うじてわか
るが、一般的な意味での女性性を感じさせない。

 本展では群像の彫刻作品が幾つか展示されている。「林間の空地、広場、9
人の人物」(1950)はその一つで、撓みのある土台に9人の人物像がひょろひ
ょろと頼りなく立っている様を描いた作品である。顔はよくわからず、それぞ
れの個性は希薄、長すぎる足は立場の不安定さを感じさせ、強い風でも吹いた
ら飛ばされそうでもある。人間という存在の物理的な弱さを印象づけられるが、
同時に、それでも立っていようとする意志の在処も感じさせる。

 このように書くと、ジャコメッティは個々の人を彫り分けることについて関
心がないように見えるかもしれないが、実はその反対なのである。ジャコメッ
ティの制作過程を撮った映像が流されていたが、彼はモデルを凝視するほど見
詰めながら作品を作っていた。弟のディエゴや日本人哲学者の矢内原伊作ら、
気に入ったモデルについては何作も彫刻や肖像画を制作している。その際、モ
デルには動くことを禁じていたそうで、矢内原伊作はちょっとでも動くと、彼
が大声を出して嘆いたことを回想している。だが、できあがった作品は、面影
こそあれ、そっくりという感じではない。

 ジャコメッティの作品は、一様に溶岩が固まったような外見をしているが、
それは、世界や人間の動きを一旦止め、その奥にある彼にとって本質的と思え
る何かを精査した上での結果という風に見える。歩行の最中の人物を彫った
「歩く男」(1960)でさえ、前のめりの姿勢のまま凍ってしまったかのように
見えるのだ。つまり、個々の人間を見つめる中で、その深層にある、人間とし
ての同一性を抽出しようとした挙句、ああなっていったのではないかというこ
とだ。ジャコメッティの人物像は、皆生真面目な顔で立しており、くだけた格
好や笑顔、あるいは泣き顔を見せることはほぼない。ある意味で人間臭さに欠
けた、幅の狭い彫刻だと言えなくもない。同時に、彼が心の中で抱いた現実に
対しては、限りなく誠実な彫刻だと言える。ジャコメッティの作品を前にした
ある戸惑いというのは、この徹頭徹尾主観性に貫かれた表現に対し、同調でき
たりできなかったりすることから生まれてくるのではないろうか。人間って必
ずしもこんなものじゃないと思うけどな、と感じつつ、いやこれこそが人間な
んだとぐいぐい押されて、ああそういう面もあるかもしれないとつい納得して
しまう。写実でない写実を押し通すジャコメッティの彫刻には、挑発性という
ものが力ある表現として備わっているように思えたのだった。

*「ジャコメッティ展」(新国立美術館)
  会期:2017年6月14日(水)〜9月4日(月)
*『ジャコメッティ展 公式図録』(TBSテレビ 本体価格2,583円)
*矢内原伊作「ジャコメッティ』(みすず書房 本体価格5,400円)

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■ホンの小さな出来事に / 原口aguni
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中小企業診断士試験(一次試験)を受けてきました。

 思えば前職時代、やはり経営のことをちゃんと勉強しないと、と思ったのが
きっかけ。WEB担当、システム担当として、社長にくっついて外回りしたと
き、システムを除却して、減資して増資して、なんて話を聞いていて、こうい
うことを考えつける人になれたらすごいんだろうなぁ、と思ったのが、まだ20
代ですか。遠い日々っすね。バリューチェーンという言葉も知らず、リーダー
役の方から説明を受け、当時の会社の事業が価値を生んでないねー、とか言っ
てたのが懐かしいです。

 その後、経営情報が日々わかんないと経営判断もできないと、親会社の経理
部と連絡して情報をリアルにもらえる仕組みを作ったのだけれども、で、その
数字を読んでどうすればいいのか、というアイデアが浮かばない。当時、流行
っていた『ザ・ゴール』『ザ・ゴール2』の思考プロセスを真似っこしても、
結局、出てきた答えが「物流会社と一緒になる」というアイデア。こりゃ使え
ん。ということで、やはりビジネス書を読むだけでは限界があると思い始めま
した。

 で、やっぱり勉強したいな、と思って、MBAを取るか中小企業診断士の資
格を取るか悩み、結果として後者を選んで勉強し始めたのが、かれこれ10云
年前のこと。最初はUCANの通信添削で、やっぱり無理、と思って日本マン
パワーに通い出し、その学校に通っている間に退職してしまうことになったの
でした。

 当時は一遍に受からないと合格しない試験でしたが、その後、科目合格制度
が取り入れられました。これは、いったん合格した科目は3年間、キープでき
るということで、何やらスタンプラリーの様相を呈してきました。

 この試験、問題数が少なくて出題範囲が広い科目が鬼門なので、まずは1科
目をつぶそうと、応用情報技術者試験を春秋受けて、これは2回目で突破。ま
あ、もともとシステムとかやってましたので、高等数学のところを中心に勉強
しました。教材はアイテックさんの通信教育でした。(ちなみにその後、午前
の試験が免除になる特典を利用し、ITストラテジストにも2回受験で合格。
論文試験対策にTACの本が役立ちました。)

 しかし、肝心の中小企業診断士試験は、なかなか全科目合格せず、3年間で
ゾンビのごとく復活する科目と戦う毎年…。

 ここのところの勝敗の推移はこんな感じ。

平成22年度
 財務・会計     ⇒ ×不合格
 経営情報システム  ⇒ ×不合格
 中小企業経営・政策 ⇒ 〇合格

→この時に情報処理試験に合格し、経営情報システムを永久免除科目に。

平成23年度
 経済学・経済政策  ⇒ 〇合格
 財務・会計     ⇒ ×不合格
 経営法務      ⇒ 〇合格

平成24年度
 財務・会計     ⇒ ×不合格
 企業経営理論    ⇒ ×不合格
 運営管理      ⇒ 〇合格

→簿記3級を受け、ファイナンス対策に力を入れ、財務・会計が得意科目に。
 (実は、1問2分と時間を測りながら解いたら簡単に合格した…。)

平成25年度
 財務・会計     ⇒ 〇合格
 企業経営理論    ⇒ ×不合格
 中小企業経営・政策 ⇒ 〇合格

平成26年度
 経済学・経済政策  ⇒ ×不合格
 企業経営理論    ⇒ 〇合格
 経営法務      ⇒ ×不合格

→フリーラーニングの教材に速習問題集が登場し、それで再び経済学をクリ
 ア。

平成27年度
 経済学・経済政策  ⇒ 〇合格
 運営管理      ⇒ 〇合格
 経営法務      ⇒ ×不合格

平成28年度
 財務・会計     ⇒ 〇合格
 経営法務      ⇒ ×不合格
 中小企業経営・政策 ⇒ ×不合格

 結果として、今年の受験科目はこちらの3つ!

平成29年度
 企業経営理論
 経営法務
 中小企業経営・政策

 ひっくり返してはまた戻るオセロのように、いつまでたってもビンゴが揃わ
ない状況…。きりがないです。

 この試験、時期がお盆前ということもあり、毎年毎年、なんだかんだと邪魔
が入るので、今年はかなり前から時間を確保しようと根回しし、勉強のために
部屋まで借り、さらに直前期は試験会場のホテルに籠るという徹底ぶりでした。
(ホテル作戦は毎年やってたのですが、毎回、勉強時間不足で1科目は合格せ
ず、まったく前に進まない…。

 今回、時間ができたことでやったことは、試験直前期の勉強法でした。とい
うか、実際には試験勉強ができるのが試験2週間前なので、短期決戦でいかに
合格レベルまで持っていくか、という勝負なのですが、どうも毎年、焦るばか
りでレベルアップしている気がしなかったのです。

 もうひとつの問題は、あれこれ手を出してしまうと、全科目を均等に勉強で
きず、

 ということで、今年の作戦は、あれもこれもと手をつけずに、絞り込む!と
いうことにしました。毎年の作戦は、とりあえず過去問を回してみる、という
ことで、過去問をひたすらやり、間違ったところを潰していく、という方法だ
ったのですが、だんだん疑心暗鬼になっていく自分がいました。で、結果的に
実際の受験でも素直に解けずに、なんか裏があるんじゃないか、とか疑って、
書き直して間違える、というパターンに陥っていたのです。

 とりあえず教材を買いあさり、で、ある教材にびっくり。
 対策本にビデオ講義が〇〇時間ついてくる! 無料で!

 早稲田出版 TOP > 1次試験対策
 http://waseda-pub.com/1ji-cyuusyou

 なぜびっくりしたかと言うと、このビジネスモデル、実はフリーラーニング
(Free-LearninG For Your Extention)というプロジェクトで、経済学の石川
先生が2011年から始めたビジネスモデルだったからです。

 こちらがそのガイダンス動画。
 https://www.youtube.com/watch?v=ZNfJXo50Y04

 講師的に時間の制約のある予備校の授業では、わかりやすく伝えられないの
で、むしろたっぷり説明を受けた方が、結果的に早い、というコンセプト。

 今回、発見した教材の紹介動画。
 https://www.youtube.com/watch?v=M-uon4XE8Oc

 書籍の名前も「速修」って…。たぶん、コンセプトまるまるぱくってますや
ん(w。

 とはいえ、受験生としてはこのコンセプトはありがたい。ということで、該
当試験科目の講義を全部聞いてインプット勉強しました。しかも、基本的には
2回ずつ聞く。

 で、この本を信じて、他の分厚い教材には目もくれずに、試験直前にこの教
材付属の付属の問題集を書き込みながらやる。

 直前にテキスト部分、問題部分、解説部分を読む。

 それだけ。

 ちなみに振り返ってみると、このテキストを購入したのは7月16日でした。
ってことは、実質、勉強期間は2週間ですね。

 なんとこの期間に出張も2回入っていたので、実際に集中して勉強できた日
数は1週間だったのと思いますが、動画は電車の中でヘッドフォンして見てま
した。ちなみに2倍速です(笑。

 ということで、信じる者は救われる、という作戦(?)だったのですが、こ
れがなんと、驚きの結果に。

 ちなみに試験会場で視察したところ、T〇Cさんのスピードテキストが圧倒
的なシェアでしたが、私は昨年、それで受からなかったので、今回は購入した
ものの、まったく見ていませんでした。何が違うのかはよくわかりませんが、
今回のテキストはそれよりも文字が少なくコンパクトながら、試験を受けてみ
ると問題がすごく簡単に思えるという不思議。

 つまり、幹の部分を理解していれば、葉の部分は正解できるということなん
でしょうか。実際、テストが終わったときには1科目ぜんぜん出典元がわから
ない問題が多く、また1科目落ちたか…と思っていたのですが、採点してみる
とその科目が最も高得点でした。目と耳と両方からインプットして記憶させる、
恐ろしい教材です。

 ということで、試験の結果は、自分が立ち上げに協力した教材のコンセプト
をパクられた教材に助けられるという結果…。何とも言えない心境ではありま
すが、正直、嬉しいです。

 ということで、今年は無事に一次試験を合格することができました。約15年
に渡る戦いが終了しました。満州事変からポツダム宣言くらいの長さですね。
30年戦争にならずによかったです。

 ところが、正直な心境としては、毎年毎年の夏の風物詩が無くなってしまう
ような、高校球児の高校野球ロスみたいな、少し寂しい心境が無くもありませ
ん。で、またゼロから受けるのは嫌なので、このまま二次試験もクリアして、
これっきりにしたいと思っています。

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■「[本]マガ★著者インタビュー」:
----------------------------------------------------------------------

 メールにて、インタビューを受けていただける印象に著者の方、募集中です。
 【著者インタビュー希望】と表題の上、
 下記のアドレスまでお願い致します。
 5日号編集同人「aguni」まで gucci@honmaga.net

----------------------------------------------------------------------
■あとがき
----------------------------------------------------------------------

 配信遅くなりました。早くも8月もお盆の時期を迎えています。私も今年は
親の初盆なのですが、話をすると、周囲にも初盆の方が多く、そういう年齢に
なってきているんだなぁ、と実感しました。(aguni原口)

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おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
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