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[本]のメルマガ vol.645

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 ■■ [本]のメルマガ                 2017.5.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book             [風薫る聖五月号]
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【連載】………………………………………………………………………………

 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第44回「またしても資料の廃棄」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第95回 命がけでぼんやりした人生

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → [漢字]の、広くて深ーい世界の面白話の本をご紹介します!
 
 ★「小さな本屋の小さな話」 / のん 
 → 今月はお休みです。次回をお楽しみに!

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 ■トピックス
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 イベントを3つご紹介します。
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 ■「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人
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 第44回「またしても資料の廃棄」
 
 こんにちは。大型連休もあっという間に終わってしまい,日常生活が戻ってき
 ましたがみなさま如何お過ごしでしょうか。
 
 その大型連休直前に持ち上がった騒動が,4月27日付で京都新聞が報じた「桑
 原武夫氏の蔵書1万冊廃棄 京都の図書館、市職員処分」(01)でした。この件,
 4月末に集中的に報じられたのちは,ぱったり報道が止んでしまったようで
 (Googleで検索かけても5月に入ってからの報道を見つけることが,わたしは
 できませんでした),いまひとつ事実関係がはっきりしないところがあるので
 すが,報道の中で断片的に伝えられていることを見ると,恐らく
 
 1)「寄贈」ではなく「寄託」だったのではないか。
 2)京都市立図書館にではなく,建設が予定されていた(?)記念館・記念室
     のような施設にて運用することを想定していたのではないか。
 3)財政上の事情などで施設が設置されること無く,旧蔵書は市立図書館で死
     蔵されたけど,事実上宙に浮いてしまっていた。
 4)事情を知っていた副館長(当時)が,周囲の無知を奇貨として廃棄した。
 
 という成り行きを想像しています。ほぼすべての記事が「寄贈」という言葉を
 使っていますが,「ただ桑原氏の蔵書は、保存を前提に市に寄贈されており、
 他の寄贈書とは取り扱いが異なっていたという。」という京都新聞の表現,毎
 日新聞にあった「相談さえあれば他に受け入れ先を探せたかもしれない。」と
 いう遺族の言葉から推し量ると,むしろ「寄託」に近い契約だったのではない
 かと考えられます。
 
 昨年問題が明らかになった穴水町立図書館の寄贈図書廃棄事件(02)と同様に,
 図書館職員の連携と認識が不足していたと言われても仕方のない一件だと考え
 て差し支えないでしょう。今回の件は,廃棄された資料の旧蔵者が“京都大人
 文科学研究所を拠点とした「新京都学派」を代表するフランス文学者”“京都
 大学名誉教授”であったにも関わらず,その活動の本拠であった京都市におい
 て杜撰な扱いがなされた挙句に,桑原武夫の思考を裏付ける貴重な書き込みが
 あったかもしれない資料が廃棄されてしまったという,この国における「知的
 貧困」「人文学の黄昏」−それは現在のこの国における大学行政の貧困にも通
 じる新自由主義の跳梁跋扈を主因とする−の象徴とも思える出来事であった,
 と図書館史的にも後世評価されるのではないかと思われます。
 
 その館種にかぎらず,図書館はその機能として「資料の収集・提供・保存」を
 旨としているわけですが,近年は『市民の図書館』を錦の御旗にした「資料の
 提供」への傾斜・偏向が公共図書館経営にはびこっているように見受けられま
 す。穴水町立図書館のときも利用が少ないことが廃棄の理由とされましたが,
 京都市立図書館においても「寄贈図書が、もともと図書館にある蔵書と重なっ
 ている」「市民からの問い合わせはほとんどなく、あったとしても目録で対応
 できる」が廃棄の理由として主張されています。これは利用されない資料を公
 共図書館で所蔵している必要はないとする『本をどう選ぶか』の主張に即した
 考え方である一方で,知識の蓄積を軽視し数字に現れる効果を重視する新自由
 主義の考え方とも一致しています。廃棄を主導した職員が司書有資格者だった
 のかどうかは存じ上げませんが,この職員の考え方は図書館関係者として誤っ
 た考え方とは受け止めていない向きもあり,現にSNSでは「公共図書館が資料
 を廃棄するのは間違いではない」と擁護する方もいらっしゃったようです。質
 が悪い論者になると「桑原武夫の蔵書への書き込みが研究対象になるというの
 はダメな学問」「桑原武夫の旧蔵書という理由で廃棄を非難するのはスノビズ
 ム」という意味のものまでありました。
 
 1934年にアメリカ合衆国のある街で偶然発見された3冊一組の『聖書』は,17
 世紀後半に印刷されたアブラハム・カーロフという神学者による注釈の付いた
 聖書(通称『カーロフ聖書』)でしたが,これが実はヨハン・セバスティアン
 ・バッハ(1685-1750)の「遺産目録」に掲載されていた旧蔵書でした。バッハ
 の息子たちは音楽家でしたが,楽譜は残したものの宗教書のたぐいはすべて売
 り払ってしまったと考えられています。発見後ある神学校図書室に寄贈された
 のちは,バッハによる多数の書き込みがあったということで現在はファクシミ
 リが出版され,世界中のバッハ研究者に供されています(03)。資料の残存は偶
 然に左右されるものですが,再発見の機会を得ることができたバッハ旧蔵『カ
 ーロフ聖書』に対して,京都市立図書館が廃棄した桑原武夫旧蔵書は,再発見
 の機会が永久に失われてしまったことになります。資料の保存がその機能のひ
 とつであるはずの図書館において,偏向した思考に基づいて資料が破棄されて
 しまったことを「資料の提供」という,別の機能に即して擁護してしまうひと
 が図書館に関係しているのが,図書館をめぐる現在の風景でもあるのです。
 
 資料の収集・提供・保存は図書館経営の三本の柱であるべきで,どれかひとつ
 の機能に偏向した図書館経営論は排されるべきでしょう。では,また次回。
 
 
 注記
 (01)以下の記事を参照のこと。
 1)桑原武夫氏の蔵書1万冊廃棄 京都の図書館、市職員処分 : 京都新聞
  
http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170427000086
 
 2)「先生の学問体系失った」 桑原武夫氏蔵書、無断廃棄 : 京都新聞

  http://www.kyoto-np.co.jp/top/article/20170428000026
 
 3)桑原氏蔵書を6年間放置、確認せず廃棄 京都市 : 京都新聞
  
http://www.kyoto-np.co.jp/politics/article/20170428000186
 
 4)桑原武夫蔵書:遺族に無断で1万冊廃棄 京都市が謝罪 - 毎日新聞

  https://mainichi.jp/articles/20170427/k00/00e/040/246000c
 
 5)桑原武夫さん蔵書1万冊を廃棄 寄贈された京都市教委:朝日新聞デジタル

  http://www.asahi.com/articles/ASK4W4VPHK4WPLZB00R.html
  
 (02)
  [本]のメルマガ vol.624 | [本]のメルマガバックナンバー

  http://back.honmaga.net/?eid=979231
 
 (03)
  バッハの聖書

  http://www.kyobunkwan.co.jp/bach-bible/
 
 バッハにおける宗教学的研究についてはこちらが参考になる。
 バッハの神学文庫 | これからのバッハ研究のために
  For the future of Bach research

  http://tokyo-ondai-lib.jp/collection/bacharchive/

 参考URLは2017年5月14日確認。 

 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第95回 命がけでぼんやりした人生
 
  松本亮さんが亡くなった。3月9日、生まれ故郷の和歌山で静かに息を引き取
 った。那智というところは、「生と死の境が判然としないところですよ」とい
 っていた松本さんは、あちらの世界にひらりと行ってしまったのかもしれない。
 1927年生まれ、享年90歳だった。天寿を全うしたといえるのかもしれない。で
 も、もっとオリジナルのワヤンを見たかったし、松本さんが書いた文章も読み
 たかった。今年もいっしょに桜を見られると思っていたので残念でしかたがな
 い。執筆中と聞いていた金子光晴の本は刊行を予定されていると聞いてホッと
 している。
 
  松本亮さんは、日本ワヤン協会主宰として日本に、インドネシアの影絵芝居
 ワヤンを紹介してきた。もともと詩人だった松本さんはオリジナルのワヤンを
 創作していて、自らダラン(人形遣い)として30年にもわたって上演を続けて
 きた。インドネシアでも高く評価されて文化功労勲章を受章している。ぼくは
 20年前に初めてワヤンを見てから、光と影が生み出す不思議で、時間を超越し
 たスケールの大きな世界観、なによりも松本亮さんという、おおらかさときび
 しさを持った人物に魅了された。自身を海に漂うくらげにたとえた松本さん、
 「わたしは命がけでぼんやりしている」という言葉どおりの人生だったのでは
 ないか。
 
  松本亮さん自身が演出した創作ワヤンは、昨年7月9日に日暮里サニーホール
 で行われた『恋多きアルジュノの恋の終わり』が最後になってしまった。松本
 さんに公演の感想を求められて書いた文章がある。松本さんに「よく書けてい
 ます」と褒めてもらった文章なので、ここに再録したい。「松本亮の創作ワヤ
 ン」の魅力が少しでも伝わればいいのだけど。
 
 
 「恋多きアルジュノの恋の終わり」を見ながら考えたこと
 
  クリルにグヌンガンの影が浮き上がり、チリンチリンと涼やかな鈴の音色が
 響いてきた。すると一転、突然の雷鳴とともに激しい戦いが始まった。矢が飛
 び交い、戦闘の雄叫びが起こる。影絵詩劇「恋多きアルジュノの恋の終わり」
 はこのように始まった。
 
  七月九日土曜日の夕方、朝からの強い雨はやんで、日暮里サニーホールは、
 もう30年になるという創作ワヤンを楽しみにした観客でうまっていた。
 
  ワヤンは静かに始まるものと思い込んでいたぼくは、この激しいオープニン
 グに意表を突かれた。いつもだったら語りを聞きながら、静かに物語りの世界
 に入っていくのだが、銅鑼やシンバルが鳴り響き、戦士たちの影が舞う中、ク
 リルの裏で人形を操っている松本亮さんの息づかいも伝わってきて、いっきに
 ワヤンの世界に連れて行かれてしまった。
 
  そしてバラタユダの大戦争が終わり、この物語の主人公、ワヤンきっての美
 丈夫アルジュノが登場する。不吉な太鼓の音とともに。最愛の女性バヌアティ
 を追い求める旅、世界中の女の心を奪うというアルジュノの、叶わぬ恋の物語
 が始まる。先を急ぐアルジュノに従者であるスマルが忠告する。
 
 「まっすぐ、一直線に、というのは間違いだということが多いのです。ときに
 は左、右ななめ上といったふうに」。
 
 『恋多きアルジュノの恋の終わり』の初演は1989年10月27日(新宿文化センタ
 ー小ホール)とあるが、ぼくは初めて見る。松本亮さんの作品でもっとも抽象
 的な表現をしているのではないかと感じた。各場面でクリルに現れる色鮮やか
 なイメージの美しさがとても印象的だった。インドネシアでは、ダランが人形
 を操作する姿を楽しむというが、今回は影の美しさを見せることに重きをおい
 ている。また影の動きとのシンクロが素晴らしい音楽も楽しく、まさにワヤン
 とは総合芸術なのだなあ、と実感した。アルジュノが恋した女性の象徴である
 かのように場面ごとに現れる花たちも美しかった。アルジュノ最愛の女性バヌ
 アティは深紅の花に彩られていた。
 
  芸術といってしまったが、もちろんお高くとまっているわけではない。ワヤ
 ンは庶民のエンターテイメントであるし、ユーモアにあふれている。とつぜん
 ブラジルのダンス音楽である「ランバダ」が鳴ったのには笑わされた。もっと
 も以前にもロックンロール「ジョニー・B・グッド」が使われたくらいだから、
 驚くにあたらないか……。
 
  ワヤンは影絵詩劇と訳されているが、たしかにこれは詩の世界だ。詩人・松
 本亮の世界が現実となって目の前に現れたようだ。クリルを見ているうちに、
 いつのまにか松本亮の夢の世界にまぎれこんでしまう。その夢は、美しくはあ
 っても決して甘いものではない。「この世の物語において、いい夢のあったた
 めしがない」という言葉どおり、それは不吉なムードをはらんでいる。ワヤン
 は生の世界と死の世界のはざまに迷い込んでしまうものだし、冒頭のナレーシ
 ョンのとおり、マハーバーラタの物語はどの部分を切り取っても、鮮血がほと
 ばしり血なまぐさい。常に「死」のイメージが離れない。そして、この世で人
 は定められた運命に従うしかないという諦観があるようにも思う。バヌアティ
 への愛を貫こうとしたアルジュノもやはり悲恋の運命に逆らえないように。
 
   この世に災いをまき散らしているというドンドンドンという不吉な太鼓の音
 が耳を離れない。それは、ぼくたちに迫っている軍靴の響きに似ていないか。
 
  公演が終わってからの帰り道、まだ夢から覚めていない気持ちで町を歩くの
 が好きだ。自分が生きているのか死んでいるのか、わからない生と死のはざま
 にいる気分。運命に身をまかせるしかないという気持ち、自分が壮大な物語の
 片隅にいるだけの存在に感じることは、ときには救いになるのかもしれない。
          
 
  先日、弟さんから、松本さんの第一詩集『運河の部分』(西川書房・1955年
 初版)を送っていただいた。詩人・松本亮の言葉はゆったりしたワヤンとは異
 なり、緊張感が漂い冬の空気を感じさせるものだった。松本亮のワヤンは、平
 易な言葉でもの静かに語られるが、きっとどこかに詩人のナイフのような感覚
 がひそんでいるにちがいない。松本亮さんがダランをすることはないけれど、
 松本さんの創作ワヤンはきっと次の世代に受け継がれて上演されるだろう。ど
 うか、そのときはたくさんの人に足を運んでもらいたい。
 
 ◎吉上恭太
 文筆業。仕事よりギターを弾いていることが多い。初めてのエッセイ集『とき
 には積ん読の日々』がトマソン社から出ました。詳しくはトマソン社のサイト
 を見てください。http://tomasonsha.com/ 。
 セカンドアルバム「ある日の続き」、6月にリリースの予定です。
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  以下の文章には文字化けの恐れのある漢字が含まれています。
  それらの漢字には[ ]をつけてそのあとの〈〉で字の説明を付してあります。
   御了承ください。
 
 
  時たま仕事で、この漢字がJIS水準の漢字かどうか調べることがあります。
 正直世の中には見たこともないような漢字が多々あり、自分の知識量のなさに
 ガッカリすることしばしばです。
 
  ふと書店の棚を見ると帯に不思議な漢字の写真が並んだ本があり、思わず手
 にとってしまいました。
 
 『謎の漢字』、笹原宏之、中公新書、2017
 
 [鯲]〈魚偏に於〉・[咾]〈口偏に老〉…、なんて読むのやらさっぱり分かりま
 せん。
 
  本書第一部ではそうした謎の漢字について見ていきます。
 
  そこで謎の根本のひとつになってくるのが冒頭にも出てきたJIS水準という
 ものです。これにより漢字にはひとつひとつコードが割り振ってあります。こ
 れがあるおかげでパソコンでの漢字変換も楽に行えるわけです。
 
  [嫐]〈女男女で並べた字〉という字があります。嬲という字の男と女を反転
 させた字ですが、こんな字もJISコード(第2水準)に含まれているというのだ
 から驚きです。一般的な「嬲る」ですらほとんど日常で使うことのない漢字なの
 に、さらにそれのバリエーションのような漢字まで何故にJISコードに採録さ
 れているのでしょうか。現に今使っているパソコンでもIMEパッドで手書きす
 ると表示されます。
 
  実はこれがJIS水準に採録された理由は、熊本県某所の地名にこの字が使用
 されているからであるというのだから驚きです。まさにそれだけの理由で。
 
  [嫐]〈女男女で並べた字〉は最近では嬲と対になる字として漢字雑学的なネ
 タになることもありますし。採録された時に比べると知名度もそれなりに高ま
 ってきているように思います。かろうじて生き残ったところから新しい可能性
 が生まれつつあります。
 
  強引に何かを押し通すことの意の「ごり押し」の「ごり」を漢字で書くと
 [鮴]〈魚偏に休〉 となるそうです。ゴリという魚を私はよく知らないのです
 が金沢の方では有名な淡水魚らしいです。
 
  この字もIMEパッドを使えば出てくるわけですが、それも地名に使われてい
 たのでJISコードに採録されたということになります。
 
  その場所は広島県豊田郡大崎上島町。と書くと灯台マニアならピンと来るか
 もしれません。「[鮴]崎」〈魚偏に休〉という地名があり、ここには有名な石
 造りの灯台がありました(残念ながら現在は廃止)。
 
  だけどあの灯台の名前は「めばるざき」だったような…。とお思いになられ
 た方もいるかもしれません。そう、大崎上島の地名は「めばる」と読みます。
 「めばる」は私も名前は知っていますが、あれは海の魚です。ちなみに念のた
 め新明解国語辞典で漢字を見たら「眼張」と書いてありました。ついでに「美味」
 とも書いてあります(国語辞典なのに…)。
 
  [鮴]〈魚偏に休〉という字は地域によって全く違う魚を指し示していたわけ
 です。それでいいのかという気もしますが、それで問題がなかったから通用し
 ていたのでしょう。
 
  JIS水準に残ったことで新しい意味が出てきたり、もとから全く別のものを
 同じ字で指し示していたり、思いのほか漢字の世界も時代と場所によって移り
 変わりがあるようです。
 
  本書後半の第三部では「科挙と字体の謎」ということで、中国の官僚登用試
 験の科挙と漢字の関係を見ていきます。試験と漢字なんて組み合わせは、結構
 嫌な記憶をお持ちの方もいるのではないでしょうか。
 
  しかしながら、結構イメージとは違う実態が浮かび上がってきます。例えば

 どの筆画を一画と数えるか、そしてどの順番にそれを書いていくかという判断
 に、絶対的なものは実はない。(p,127)

 もちろん形の似たような別の字に認識されてしまってはダメなわけですが、そ
 の字がその字であると認識できれば些細なところにはこだわらないというのが、
 科挙の採点における漢字の扱いだったようです。
 
  漢字の書き順に苦しめられた昔が嘘のようです。「右」と「左」の書き順
 違うとか懐かしいですね。一体あれはなんだったんでしょうか。中学時代に通
 っていた学習塾で、手偏と刀(りっとう)は絶対にはねないと×だと言われて
 いたのも懐かしく思い出しました。
 
  そのほか本書に収められた漢字のエピソードを読んでいけば、時代ごとに字
 にこめられたイメージがあったり、色んな異体字が存在したり、漢字の世界の
 融通無碍さが伝わってくるようです。
 
  あやふやな出所をもつ漢字にとっての正しさは、ほとんどの場合、それぞれ
 の時空において相対的なものにすぎない。(p,iii)
 
 と著者も述べています。学校であれこれ細かく指導されてきた漢字ですが、実
 はその正しさは絶対的なものではないということがよく分かります。不思議な
 漢字たちを追っていくうちに漢字の自由さが見えてきます。
 
  
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■トピックス
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 ■ 猫毛祭りin太田2017 
 └─────────────────────────────────
 http://nekokematsuri.blog.shinobi.jp/nekoke-matsuri/oota2017
 
 今年も太田市の老舗蔵元「今井酒造店」さんで「猫毛祭りin太田」開催です。
 今年は沖縄から「むぎ(猫)」ちゃんを迎えてのライブや、動物愛グループ
 「アニマルフレンド」さんのトーク、そして「猫毛フェルト」教室やバザー
 ルも、あれこれ行います!


 ◆日時:2017年5月19日(金)〜28日(日)※会期中 22日(月)・23日(火)休
     11:00〜17:00
    ★27日(土)は11〜14時・15〜17時
             (14〜15時はライブのため入場できません)
 ◇場所:株式会社 今井酒造店 喫茶室 サロンかぜくら
     〒373-0062 群馬県太田市鳥山中町746-2


 ■ 6月のお楽しみ会ー古本と食器とライブ in COCHI CAFE
 └─────────────────────────────────
  ちょうちょぼっこ、ちょっとだけ復活!ちょうちょぼっこの4人が集まる貴重
  なイベント!貸本はありませんが、古本あります。ブラウンブックスカフェ
  星川さんが北海道から、松原工房奥田さんが長崎から来てくださいます!
  そしてふちふなさんライブも! pic.twitter.com/DwgDzCernx
                         ツイッターより抜粋

 ◆日時:2017年6月14日(水)ー18日(日)
      ・平日 12:00〜18:00
      ・土日 10:00〜15:00
     (カフェは、平日9時〜18時、土曜日は9時〜15時)
 ◇場所:COCHI CAFE(コチカフェ)
     〒550-0001 大阪市住吉区粉浜1-22-17
                 http://ja-jp.facebook.com/CochiCafe/

 □ふちがみみなとライブ□□ 
  ・6月17日(土)16:30(開場) 17:00(スタート)
  ・前売り 1500円  ・当日 2000円
  ★予約・問い合わせは⇒ otanosimi0617@gmail.com

 ■ みちくさ市連続講座「作品」と「商品」のあいだ第10回

         中野君との想い出―紫川とライオン
                     牧野伊三夫/中野達仁
 └─────────────────────────────────

 ◆日時:2017年6月18日(日) 13:30−15:00(開場 13:10)

 ◇場所:雑司ヶ谷地域文化創造館第2会議室
     ⇒地下鉄・東京メトロ副都心線、雑司ヶ谷駅2番出口直結
 
 ★入場料:1000円(当日)
 
 ☆予約:wamezoevent1@gmail.com  
  問い合わせ⇒みちくさ市本部 090-8720-4241
 
  ・牧野伊三夫 画家、『雲のうえ』編集委員
  ・中野達仁  東北新社、CMディレクター    ・司会/武田俊
  
 ----------------------------------------------------------------------
 ■あとがき
   先月は25日に配信となりました。読者の皆さま、著者の皆さま、[本]のメル
 マガの方々、誠に申し訳ありませんでした。遅れましたこと、心よりお詫び申
 し上げます。

  『月刊ドライブイン』(橋本倫史)というリトルマガジンに出会いました。
 
 「(前略) ドライブインについて考えることで、たとえば日本の戦後の姿(のよ
 うなもの)が浮かび上がってくるのではないかと思った。 (後略)」
                              編集後記より抜粋
 
 今や消えつつあるドライブインをひとつひとつ丁寧に取材し、重ねた時間とひと、
 場所の歴史を丹念に描いています。vol.1は北海道・直別と熊本・阿蘇。vol.2
 は静岡・掛川と高知・唐浜。その土地土地の立体的な景色が浮かび上がり、確か
 に経てきた時代の断片を感じます。著者とドライブインの距離感がいいなあと思
 いました。こういう雑誌、大好きです。これからの展開がとても楽しみです。
                              畠中理恵子
 ----------------------------------------------------------------------
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 おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
 ■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
 ■ 今号のご意見・ご質問は
  15日号編集同人 「畠中理恵子」まで hatanaka3floor@jcom.home.ne.jp
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   ・15日号:畠中理恵子 hatanaka3floor@jcom.home.ne.jp
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