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[本]のメルマガ vol.633


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 ■■ [本]のメルマガ                 2017.1.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book              [雪と冬晴れ号]
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 ★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/
 
 『東大VS京大 入試文芸頂上決戦』
 
 永江朗著
 四六判 304ページ 本体価格1800円+税 ISBN:9784562053681
 
 戦後教育がはじまった年から約70年分、東大と京大の国語入試問題を読んでみ
 た。どんな文芸作品が選ばれるのか? 問題の違いは校風の違い? どちらの
 問題が面白い? 世相と教育と国語との関係をさぐる文芸エッセイ。

【連載】………………………………………………………………………………

 ★「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人 
 → 第41回「2016年この3冊」

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 → 第91回 ていねいに生きる

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長 
 → 明治維新150年!この機会にもう一度「明治維新」について
  考えてみませんか?
 
 ★新連載!「小さな本屋の小さな話」 / のん 
 → 見知らぬ客

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 ■トピックス
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 3つのイベントをご紹介します。
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 ■「散慮逍遥月記」 /  停雲荘主人
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 第41回「2016年この3冊」
 
 あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
 昨年12月の連載で触れた,「全国大学ビブリオバトル京都決戦2016」の京都で
 の本戦に出場した勤務先の学生は,残念ながらファイナリストには残れません
 でしたが,それなりにビブリオバトルの土俵を楽しんで来たようです。よかっ
 たよかった。
 
 さて,2017年も初っ端からきな臭い話題が引きも切らない状況ですが,今回は
 2016年に読んだ本から「2016年この3冊」を挙げていきます。僕の専門である
 図書館情報学関連の書籍は除きます。2016年も購入が169冊に対して読了が
 58冊と,積ん読が増える結果に終わりました。2017年は購入を抑えて読了本を
 増やさねばいけません。
 
 
  1)『「ウルトラQ」の誕生』白石雅彦著,双葉社,2016年1月刊行
 この本は『洲崎球場のポール際』(森田創著,講談社)や『五色の虹』(三浦
 英之著,集英社)などと同様に,関係者の証言を得ることができる,ほとんど
 最期の機会に成し遂げられた貴重な仕事です。勃興する創成期のテレビ業界と,
 斜陽になり始めた映画業界の状況を背景に,「ウルトラQ」という稀代の特撮
 テレビドラマの誕生を,これまで明らかにされてきた資料に加えて,関係者へ
 の新たなインタビューを通して描き出します。
 「ウルトラQ」の前身であるTBSでの企画「UNBALANCE」だけではなく,フジテ
 レビで企画が進行していた「WoO」の消滅を取り上げ,このふたつの企画が
 「ウルトラQ」に流れ込む様を明らかにしています。出来上がった作品として
 の「ウルトラQ」に対して絶賛一辺倒ではなく,各回に対する評価がシビアな
 ところがまたよかったですね。ダメなものをダメと言えないのがファン心理な
 のですが,歴史の評価として作品を突き放しています。この記事を書くために
 改めて確認してみたら,著者の白石氏は同じく双葉社から出版されていた『円
 谷一:ウルトラQと“テレビ映画”の時代』(2006年7月刊行)の著者だったの
 ですね。
 
 
 2)『バイエルの謎:日本文化になった教則本』(新潮文庫)安田寛著,新潮
      社,2016年2月刊行
 単行本は音楽之友社から2012年に刊行されたものの文庫化です。単行本とは異
 なる文庫本の表紙は,実は全音楽譜出版社から刊行されている「赤バイエル」
 こと『子供のバイエル』上巻の表紙へのオマージュです。ここからすでに素晴
 らしい(笑)。
 かの「バイエル教則本」で名前を残したものの実態は謎に包まれていた「バイ
 エル」が,フェルディナンド・バイエル(1806-1863)としてその実態を著者の
 前に明らかにする,その過程をノンフィクションなタッチで描きだした快著で
 す。文章がギクシャクして執筆に手慣れていない(ように思える)ところが,
 「謎のバイエル」っぽい微妙な雰囲気を醸し出していて,読み終わってみれば
 何やら可笑しいです。読んでる時はイライラさせられるところがありましたが
 (苦笑)。
 それにしても,一見道楽のようにも思える,何の役に立つのかわからない行程
 が,実は歴史の「研究」と紙一重なのだと,しみじみ思わされました。この謎
 解きにかけられた年月を許容できなければ文化系,それも歴史の研究をこの国
 がこれからも稔りあるものとしていくのは難しいのではないかしらと考えさせ
 られます。 
 
 
 3)『重版未定』川崎昌平著/河出書房新社,2016年12月刊行
 僕はマンガを読まなく/買わなくなって久しいのですが,この『重版未定』は
 Webにて誰かが紹介しているのを読んでWebを探したところ,これが実に面白く,
 連載ページでの出版予告を見て楽しみにしていたものです。
 単行本は,Web連載の1話から13話に加えて,描き下ろし2話と同人誌からの転
 載1話からなっています。多少の修正が施されていますが,本から読み始めた
 読者には違和感はないのではないかと(僕は異同を見つけて楽しんでました)。
 僕が知らない,中小規模の出版社における「出版」の世界を赤裸々に描き出し
 ているところが何より魅力ですが,絵柄と話の内容がミスマッチなところがま
 たいいのです。「出版」という,現状ではシビアで重いテーマを,不思議なキ
 ャラクターと乾いたユーモアで描くことにより,必要以上の湿り気や悲壮感を
 かわすことに成功しているのが,僕がこのマンガに惹きつけられた理由のひと
 つでした。これからも連載と単行本が楽しみです。
 
 
 では,改めて2017年もよろしくお願いします。図書館業界に,ひとつでも明る
 い話題が増えて,その明るい話題をこの連載でご紹介できれば幸甚です。
 
 
 1)株式会社双葉社 | 「ウルトラQ」の誕生(ウルトラキュー ノタンジョウ)
     | ISBN:978-4-575-30988-1
   http://www.futabasha.co.jp/booksdb/book
                              /bookview/978-4-575-30988-1.html
 
 2)安田寛 『バイエルの謎―日本文化になったピアノ教則本―』 | 新潮社
   http://www.shinchosha.co.jp/book/120286/
 
 3)重版未定 - DOTPLACE
   http://dotplace.jp/archives/category
                       /column/%E9%87%8D%E7%89%88%E6%9C%AA%E5%AE%9A
   重版未定 :川崎 昌平|河出書房新社
   
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309277882/


 ◎停雲荘主人
 大学図書館の中の人。南東北在住。好きな音楽は交響曲。座右の銘は「行蔵は
 我に存す,毀誉は他人の主張,我に与らず我に関せずと存候。」(勝海舟)。
 
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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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 第91回 ていねいに生きる
 
  今年は酉年。ぼくは年男、ということで、ついに還暦を迎えた。60歳ですよ、
 正真正銘の爺ですね。でも60歳にもなれば、迷いもなく落ち着いた人間になれ
 るかと思ったが、いまだに迷いっぱなし、惑いっぱなしの正月です。少しは大
 人にならなくちゃ!

  暮れに肺炎になるし、喘息と診断されるなど、さえない正月なのですが、本
 だけは買っていて、今年も積ん読病は治まりそうもない。こちらのほうが重症
 かもしれません。家から五分ほど行ったところ六義園のそば、東洋文庫並びに
 古本屋がオープンした。「BOOKS 青いカバ」(@hippopotbase)といって、
 店主さんはは池袋リブロの海外文学棚を担当していたそうだ。町の本屋さんが
 つぎつぎとなくなっていく中で、新しい店が出来るなんてうれしい!
  さっそく長田弘の『風のある生活』(講談社)『メイド・イン・オキュパイ
 ド・ジャパン』(小坂一也 河出書房新社)を買う。古書店なのに、本に
 カバーをつけてくれた。かわいいカバのロゴのはんこを押してある。まだだい
 ぶ棚に余裕があるので、これからどんな書店に育っていくのか、とても楽しみ
 だ。
 
  体調が悪いと、あまり、というかまったく本が読めない。積ん読の山脈から
 本を取り出すのだが、すぐに疲れてしまう。やっぱり読書家ではないのだなあ。

  そんなときに救いの手をさしのべてくれたのが、『月刊佐藤純子』(佐藤ジ
 ュンコ ちくま文庫)だった。寝転びながら、ぱらぱらとめくり、開いたペー
 ジを読む。いい具合に力のぬけた絵と会話が遠いところにいる友人からの手紙
 を読んでいるようで、心が安らいでいく。そしてだんだんまぶたが重くなり、
 いつのまにか眠りについている。ああ、この本を持って温泉に行けたらどんな
 にいいだろう!
 
  イラストレーターの佐藤ジュンコさんがジュンク堂仙台ロフト店の書店員だ
 ったころから、友人知人に配っていた手描きマンガのフリーペーパーをまとめ
 た文庫。ページ数が464もあってけっこう厚くて、どっしりしている。もとも
 とイラストもマンガも描いたことがなかったのに、年賀状を書きそびれた言い
 訳をマンガに描いたのがきっかけというから、人生ってわからない。いまでは
 イラストレーターだものなあ。フリーペーパー月刊佐藤純子を描き始めたのが
 2009年の1月というから、もう8年になる。月刊といっても、一月に1回発行と
 いうわけではなかったみたいだけど、日々の積み重ねってすごいなあ。絵もど
 んどんうまくなっていくのも面白い。
 
  もともと友人に向けたものだから、ジュンコさんが思ったこと、こまってい
 ること、面白く思ったことが描かれている。「このあいだ、こんなことがあっ
 て」とジュンコさんが話している口調がそのままだ。ジュンコさんに会ったこ
 とがない人もこの本を読めば、すぐに友だちになった気分になるだろう。人懐
 こいジュンコさん、そのままの人懐こい本です。それにしても、よくけがをし
 たり、病気になるなあ。ちょっと心配になってしまう。ペットボトルで工作し
 ようと思って手をざっくりやって、病院で外科医に「ロケットを作ろうと思っ
 たの?」としつこく聞かれるエピソードなんか、痛そうなのに腹を抱えて笑っ
 てしまった。
 
  なにげない一日一日、日常の大切さが伝わってくるのがいい。もちろん東日
 本大震災のことも。仙台市内の日常が克明に描かれていて、テレビや新聞の
 “情報”ではない当時の生活ぶりがよくわかる。ジュンコさんと友人たちが支
 え合っているすがたに胸が熱くなる。読みながら、こうやって当時のことを思
 い出すって、大切だなあと思う。暖房を止めて、湯たんぽを抱きながら過ごし
 た日々を。どうして人間って、こんなに大事なことを忘れてしまうのだろうか?
 
  ジュンコさんは本が大好きで書店員をやっていたから、本の話題はもちろん、
 食いしんぼで飲んべえだから、登場するグルメではないふつうの食べ物がとて
 も美味しそうだ。なによりもたくさんの友人に囲まれているのがいいなあ。き
 っとジュンコさんの垣根を作らないニコニコした表情が人を呼ぶにちがいない。
 
  ぼくが佐藤ジュンコさんと会ったのは、2011年5月、一箱古本市の打ち上げの
 会でだった。もちろん、それまで本のイベントなどでお話を聞いたことはあっ
 たけれど。あの日は、南陀楼綾繁さんにギターを持って来て欲しいといわれた
 のだけど、結局、プログラムの中では出番がなかったんだっけ。酒を飲めない
 ぼくは、なんとなく手持ちぶさたになって、ぽろぽろとギターを弾いていたら、
 ジュンコさんがボサノヴァを弾いてほしいとリクエストをしてくれた。それで
 何曲か弾いたんだ。気をつかってくれたのか、ジュンコさんはとても熱心に聴
 いてくれた。ジュンコさんのお気に入りは「ソ・ダンソ・サンバ」だった。
 ジョビンが作ったボサノヴァのスタンダードだけど、なかなかセンスのいい好
 みだなあ、と思ったのを覚えている。そのときのことが255ページに載ってい
 ます。

 『月刊佐藤純子』を読みながら、還暦になった我が身を振り返って、日々を無
 為に過ごしてしまっていることが恥ずかしくなってきた。もっともっと一日一
 日をていねいに生きなければいけないなあ。

 ◎吉上恭太 
 文筆業。仕事よりギターを弾いていることが多い。初めてのエッセイ集『とき
 には積ん読の日々』がトマソン社から出ました。詳しくはトマソン社のサイト
 を見てください。http://tomasonsha.com/ 。
 セカンドアルバム「ある日の続き」、近日リリース予定です。
  
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  なんだか年明け早々来年の話が出てきたりして恐縮ですが、来年は明治維新
 150年らしいですよ。そんなこと耳にするまですっかり忘れてました。何でも
 かんでも○○周年とやればめでたくなるのでしょうか。そもそも東京出身の私
 は危うく地元を火の海にされそうになった側なので、なんにもめでたくありま
 せん。まあ細かく言えば江戸市中ではないので炎上はしなかったと思いますが。
 
  というわけで今月はこちら。
 
 『明治維新という幻想』、森田健司、洋泉社歴史新書y、2016
 
   まあタイトルを見ていただければ、およその内容は想像がつくのではないかと
 思いますが。副題は「暴虐の限りを尽くした新政府軍の実像」ということで、明
 治新政府の面々が明治維新でどれだけあくどいことをしたかということがあれこ
 れ書かれています。
 
  それでも大久保利通・西郷隆盛・伊藤博文など「偉人」といわれる人々が明治
 新政府には沢山いますし、本当にそうなのかな?と思う方もいるでしょう。しか
 しそれは明治政府に作られたイメージが大きく作用していると著者は述べていま
 す。
 
  たとえば「正史」を作ること。明治5年に政府は『復古記』という歴史書の編
 纂を開始します。この書物は明治維新の際の記録を残すべく作られたものですが、
 明治政府自身が編纂したものなので、自ずと都合の悪いことはあまり書かれない
 ことになります。
 
  そして教育。明治政府は学制を整え、中央集権的な教育システムで上記のよう
 な歴史を教えます。そのため明治維新は良いものだったという価値観が広まって
 いくことになります。そもそも「維新」ということば自体が何か新しい・よいこ
 とというイメージを作るべく、明治政府によって選び取られたことばであると著
 者は述べています。
 
  それでも実際のところ江戸幕府はダメだったのではないか。という疑問もある
 かと思います。しかし必ずしもそうとも言えません。例えば外交においても、幕
 末に欧米列強から多くの使者がやってくるのに対し、言われっぱなしであったわ
 けではありません。本書にはペリーに応対した林復斎の堂々とした態度も紹介さ
 れています。
 
  明治新政府の急進的欧化政策でも、一部に見られた過激な攘夷思想でもなく、
 なかなか江戸幕府の外交政策ははっきりしないようにも見えます。しかし日本を
 「弱国」と冷静に認識して、列強の争いに巻き込まれるのを避けようとしたとい
 うのは確かです。そしてゆるゆると外国との交渉を進めていくところでした(詳
 しくは井上勝生、『開国と幕末変革』、講談社学術文庫、2009など参照してくだ
 さい。)
 
  あと忘れてはならないこと。江戸幕府は250年近く平和な社会を保ったという
 実績があります。これは本書の序盤でも指摘されていることですが、重要なこと
 でしょう。それに対して明治新政府は幕府が政権を返上したのに東に攻めてきま
 すし、血の気が多いというか人命軽視というか…。
 
  本書は当時の錦絵を解読することによって、庶民の新政府への見方を推理して
 いますが、とても不人気です。もっとも公平を期していうなら、鳥羽・伏見の戦
 い等で戦場になった上方では江戸幕府も新政府同様に揶揄されています。ただ新
 政府への期待を読み取ることはできません。
 
  と、江戸幕府を持ち上げて明治維新に冷や水をかけるかたちなのですが。別に
 江戸時代を礼賛しているわけではありませんよ、念のため。それでも江戸幕府を
 全否定して、相手が政権を返上しているのに、東北地方を蹂躙するような戦争を
 仕掛けて、多くの血を流して新政権を作る必要があったのか?と考えると明治新
 政府のやり口は素直に納得できるものではありません。
 
  さて、明治維新というと冒頭に紹介した「偉人」も人気がありますよね。し
 かし幕府側の人間に人物なしというわけではありません。本書にも長岡藩の河
 合継之助・庄内藩の酒井玄蕃あるいは「三舟」と言われる勝海舟・山岡鉄舟・
 高橋泥舟などが紹介されています。それぞれに個性的かつ優れた面々ですので、
 よく知らないという方はぜひ本書で彼らの事績を知っていただきたいと思いま
 す。
 
  それに対して本書では新政府側の人間として所謂「維新三傑」と呼ばれる木戸
 孝允・大久保利通・西郷隆盛と伊藤博文を取り上げています。これまた読んで
 いただくとこれまでのイメージが変わるのではないかと思います。
 
  詳しくは読んでのお楽しみ(?)ですが、以下のことだけ書いておきます。早
 くに病死した木戸を除くと、大久保は紀尾井坂で暗殺、西郷は政権内の抗争で
 下野→武装蜂起して敗北し自刃、伊藤はハルビン駅で暗殺と言う最期をそれぞ
 れ遂げています。これだけでも明治新政府の政権の運営やその指向に寒々とし
 たものを感じざるを得ません。
 
  というわけで明治維新150年とか言う前に、本書を読んで明治維新は本当に
 「維新」の名に値するものだったのか、冷静に考えるのが良いのではないかと思
 います。250年ほぼずっと平和だったのに、明治維新からこっちこの国は自国
 民にも他国民にもずいぶん多くの血を流させたのではないだろうか…とか。

 
 ◎副隊長 
 鉄道とペンギンの好きな元書店員。
 
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 ■「小さな本屋の小さな話」 / のん
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  よく晴れた日のお昼過ぎ。11時に開店してから、まだひとりもお客が来ない。
 ぼんやり外を見る。店の前の通りには車やバスが行き交い、歩道には歩いてい
 る人、自転車の人、犬の散歩の人・・・世の中の時間が着々と進んでいるなか、
 この店の中はじっと動かない本たちと私だけだ。ここだけ世の中とは違う時間
 が流れているようだった。
 
  なんだか私はちょっと気分が沈み、こんな毎日で店は大丈夫だろうかなどど
 考えていたそのとき、ふらりとお客が入ってきた。お年を召した女性。雰囲気
 は若々しいが70才前後か。

 「いらっしゃいませ」私はなるべく明るく声をかけると、女性はほんのりほほ
 笑んで楽しそうに棚を見はじめた。なんとなくどこかで会ったことがあるよう
 な気がしたが、いやでもたぶん、うちの店に来るのは初めての人だろう。じっ
 と見るわけにいかないので、視界の隅に入れてそれとなく観察する。私の選び
 そうな柄のシャツにゆったりしたスカート、そしてこれまた私の選びそうな色
 のスニーカー。年配女性にしては、軽やかないでたちだった。
  
 気に入る本があるだろうか、どんな本が好きなんだろう、聞いてみようか、と
 あれこれ考えていたら、
 
 「本屋さんをするのは楽しいでしょう」

 すっと向こうから声をかけてきてくれた。そうですね、でも・・・と言おうと
 すると、また向こうから、
 
 「本に囲まれるのはしあわせなことよ」

 にっこりと言い、こちらを見た。「まあ、小さくてもひとつの店を維持するの
 は大変なことだけどね」
 
  そうなんです、そこが悩みのタネなんですと思わず私は本音を言ってしまっ
 た。女性は優しくほほ笑み、こう続けた。
 
 「ずいぶん昔に読んだ本の中に、書物の中には小さな世界があるって書いてあ
 ったわ。書き手が通り過ぎてきた山や谷や出会った人が、小さな豆粒になって
 本に籠められているって。宿泊した土地もね。それからは本を読むときに目に
 見えない豆粒を感じるのが楽しくてね」
 
 「え!それ、私がこのまえ読んだ本に書いてありました!吉本隆明の『読書の
 方法』ですよね!」私はうれしくなり女性の後ろの棚にまわり本を抜き出した。
 
 「これ!これですよね!」
 
  私が渡すと、そうこれこれ、と女性は受け取り、しばらく目を細めて表紙を
 なでていた。私はとてもうれしかった。
 
  やがて「じゃあ今日はこれをいただこうかな」そう言ってその本を差し出し
 た。

 「ありがとうございます。私も“豆粒”っていう表現がとても印象に残ったん
 です。ぼんやりと感じていたことを吉本隆明が言葉にしてくれたような、今ま
 でに本を読んだとき、ページの奥に何か含まれている気がしたのはこういうこ
 とだったのかってすっきりしたような、もやが晴れたような、そんな感じなん
 です」
 
  ついベラベラとしゃべってしまった私に、女性はにっこりして財布からお金
 を出そうとした。そのとき、ハラリとカードらしきものが落ちた。私はとっさ
 にそれを拾って女性に渡した。
 
 「ありがとう。ここにお代をちょうど置いておくわね。久しぶりに読むのが楽
 しみだわ」
 
  そのとき、私は言葉が出なかったように思う。心臓がバクバクしていたかも
 しれない。かすれた声でありがとうございましたとやっと言い、袋に入れた本
 を渡した。女性は本を受け取ると、入ってきたときと同じようにほんのりほほ
 笑んでふらりと出て行った。私は、焦点が合わないまましばらく立ちつくして
 いた。
 
  女性の財布からハラリと落ちたのは、どこにでもあるようなありふれた診察
 券か何かだった。しかし、拾ったときに一瞬見えたそれには、日付のところに
 聞いたこともない元号が、氏名欄には私の名前が書いてあった。
 
 ◎古書五車堂 のん
 2016年7月から古書五車堂店主になりました。

 古書五車堂 http://www.gosyado.com/

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 ■トピックス
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 ■ 東洋大学学術研究推進センター 講演会
    東洋大学男女共学100周年記念

                      野溝七生子の青春――文学少女、白山に学ぶ――
 └─────────────────────────────────
 
 野溝七生子の生涯・作品を通じて、東洋大学―白山の地で育まれ、開かれてい
 った近代女性像を解き明かす。東洋大学男女共学100周年を記念する年に、
 東洋大学で学び、教鞭をとった、明治・大正・昭和と激動の時代を生き抜いた
 ひとりの女性の生涯を、白山の地から考えたい。
 
 ◆日時:平成29年1月28日(土) 14時〜15時30分 (13時30分開場) 


 ◇場所:東洋大学白山キャンパス8号館7階 125記念ホール

     東京都文京区白山5-28-20 
     都営三田線白山駅・東京メトロ南北線本駒込駅から徒歩5分

 ★入場無料 予約不要

  ⇒ 問合せ先:東洋大学研究推進部研究推進課

    ml-gkk@toyo.jp


 【講師】 小泉京美

 武庫川女子大学日本語文化学科専任講師。東洋大学大学院文学研究科国文学専
 攻博士後期課程単位取得満期退学。博士(文学)。


 野溝七生子(のみぞなおこ)
 
 大正10年(1921)東洋大学入学、大正13年(1924)卒業。昭和26年(1951)か
 ら昭和42年まで、東洋大学文学部で教鞭をとる。大正13年(1924)「福岡日日
 新聞」懸賞小説に『山梔』(くちなし)が入賞しデビュー。その後数々の小説
 を生み出した。代表作は『女獣心理』、『南天屋敷』、『月影』など。

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 ■ 【勁版会】第393回  
                 荻窪の本屋 Titleのこと
                『本屋、はじめました』(苦楽堂 17/01刊)発売記念
 └─────────────────────────────────
 
 ◆日時:2017年1月20日(金) 19:00〜21:00
 
 ◇場所:<新大阪丸ビル> 本館511号室 電話06-6321-1516
 
           http://www.japan-life.co.jp/jp/conference/map.html
 
            〒533-0033 大阪市東淀川区東中島1丁目18番5号
 
 ★参加費:無料 *終了後懇親二次会を予定(会費:3000円程度)
 
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 東京・荻窪に、2016年1月に開店した新刊書店〔Title(タイトル)〕。
 その店主・辻山良雄さんが書き下ろした本、『本屋、はじめました』が1月に
 刊行れる! [※]発売を記念して、刊行元・苦楽堂の石井伸介さんにお話を
 うかがう。
 「著者の辻山さんは神戸のご出身。当日は、辻山さんとはどんな方なのか、
 なぜここまで具体的に開業の経緯を書かれたのか、そしてTitleとはどのよう
 な本屋なのか、皆さんにお伝えできればと思います。今回は、広く関西の書店
 の皆さまにもご参加戴ければ嬉しいです」(苦楽堂・石井)
 [※] 1/10にTitleにて先行販売開始、一般出荷開始は1/23(月)を予定。
 
 【講師】石井伸介(株式会社苦楽堂)
 1963年まれ。1982年、プレジデント社入社。2014年、苦楽堂設立。

 

 ■【イベント】オリジナルブックフェア「熟成人生」関連トークイベント
              
               
    これからが、じつは長いんだよ
 └─────────────────────────────────
 
 ◆日時:2017年1月21日(土) 18:30〜19:30

 ◇場所:<LIXIL GINZA>1F 電話03-5250-6543

       http://www1.lixil.co.jp/gallery/
  
       〒104-0031 東京都中央区京橋 3-6-18 東京建物京橋ビル1F

 ★参加費:無料 *定員になり次第締切;50名


 【講師】  岡戸絹枝(「つるとはな」編集長)

 雑誌「つるとはな」の編集長、岡戸絹枝さん。マガジンハウスにて様々な世代
 の流行を生み出す雑誌の編集を経験され、1998年に「Olive」編集長。2003年
 に「ku:nel」を創刊。2010年に退社されました。「つるとはな」は、年上のひ
 とのはなしをきくことをコンセプトに、2014年に株式会社つるとはなより創刊
 されました。岡戸さんの雑誌作りに対する思い、人生に対する考え方などをイ
 ンタヴュー形式で伺います。

 ※講演前後に雑誌「つるとはな」創刊号〜最新号(4号)と『須賀敦子の手紙』
   の販売を行います。

 □申込:1 氏名 2 住所 3 電話番号 4 FAX番号 5 メールアドレス
         6 勤務先 7 どちらでこのイベントをお知りになったか 
         8 ブックギャラリーからのDM送付を希望しますかを

         明記の上お申込みください。
         LIXILブックギャラリーEmail : book-gallery@lixil.com 
 
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   以上、アース・インテグレート川口 正氏の 
   <関西・業界トピックス>17・01・04−5より抜粋掲載させて頂き
  ました。
  いつもありがとうございます。
 
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 ■あとがき
 2017年初めての15日号です。年明けからきな臭い話題が多く、何だか不穏な始
 まりですが、こつこつ本の周辺のことを考えていければと思います。
 古書五車堂店長・のんさんの連載が新しいタイトルで始まりました。
 のんさん独特の「ほんのお話」を、楽しみにしてください。
 どうぞ本年もよろしくお願いします。             畠中理恵子
 
 
 《東北大震災支援 食堂アンチヘブリンガン・バザー 開催のお知らせ》
 
 ・日時→2017年1月21日土曜日 11時〜16時くらい
 ・場所→食堂アンチヘブリンガン 
                   東京都千代田区猿楽町2丁目7-11 ハマダビルヂング2F
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