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[本]のメルマガ vol.517
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□■[本]のメルマガ【vol.517】13年10月25日発行
[おトクにフランス留学する 号]
http://honmaga.net/ 
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□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は4875名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→SONYのiOSブラウザがひどい

★「フランス留学は安いのか?」金刺護
→日本の学費が高いからフランスに避難できるか検討してみる

★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→休載です。

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→アルコール中毒にはならない方がいい。

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→もっと早く原稿送ってくれたらよかったのに・・

★「はてな?現代美術編」 koko
→休載です

★「岩のドームの郵便学」内藤陽介
→エジプト、シリアの思惑とPLO

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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp

『大戦前夜のベーブ・ルース:野球と戦争と暗殺者』

ロバート・K・フィッツ著 山田美明訳 四六判 本体2800円+税

昭和9年、国際的に孤立を深める日本に、戦争回避へ一縷の望みを託した大リー
グ親善選抜チームが来日した……。正力松太郎の思惑、ベーブ・ルースらの活
躍、極右テロリストの暗躍、沢村栄治の悲運などを重ね合わせて描く、野球と
戦争の知られざる昭和史。【ロバート・ホワイティング氏絶賛】

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■トピックス
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■ソニーのReaderストアiOS対応ブラウザがひどい
SONYのReaderストアが全面改装になり、待望のiPhone iPad用ブラウザが出たの
だが、このブラウザ、あまりに評判が悪い。

というのはEpub3のコミックと雑誌にしか対応していないのに、知らずにダウン
ロードして「書籍が読めない」「欠陥品だ」と思われたためだ。

「将来的にEpubの書籍にも対応」するようだが、Readerストアには、Epub以外
のフォーマットの書籍がどっさりある。Epubだけ対応しても意味がない。

こんなブラウザを出すくらいなら、出さない方がよほどいい。早急に使えるレ
ベルにしないと、ユーザーが離れていく。

■トピックス募集中です!
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■フランス留学は安いのか?  /金刺護
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「フランスの学費タダ」という世間の噂は嘘

よくオジサンが若者に「俺はなぁ、自分で学費稼いでこの会社に入ったんだ。
それが奨学金棒引きにしろとか虫が良すぎ!」とSNSで呟いているのを目にする
ことがある。オイオイ・・。私が日本の大学に在籍していたのは、日本がバブ
ル時代の末期にあたる。あの時代との差を思うと、若い世代の苦労を思いリス
ペクトしこそすれ、説教はできない。

学費を見てみよう。授業料は国立大、私立大ともに高い伸びを示している。
しかし、世帯あたりの所得の伸びはこれに追い付いていないのが現状だ。実際、
学生自身が働こうにも学費等を稼いでいたら学位を取得できるか甚だ疑問であ
る。

                      平成3年  平成15年  平成21年
______________________________________________________________________
国立大授業料平均     37万5千    52万    53万5千
私立大授業料平均    64万1千    80万7千     ------
世帯年収            602万       579万7千   549万6千
______________________________________________________________________
(「国民生活基礎調査」及び「国立大学と私立大学の授業料等の推移」より)

というわけで(笑)、フランス留学が学生さんや親御さんにとっての福音たり
得るか否かを検証しよう。

学費に限っていうなら安い。フランスの国立大学の登録料は最も高額な教育
施設でも600euros(現在1ユーロ約135円)程度。世間で言われている「フラ
ンスの学費は無料」というのは不正確な情報だが、日本と比較したら相当に安
い。

「返済は計画的にね」ってサラ金も言ってますでしょ?

但し、学費とともに考えなければいけないのは生活費。日本は物価が高いと
言われるが、パリは東京並に物価が高い。リヨンなどでも家賃相場は最低
420eurosは見ておかないと危険。食費は安いのでは?と聞かれるが、外食をす
ると日本より高い。結局、地方中核都市でも生活費トータルで850eurosくらい
かかるものである。これに飛行機代と語学学校代がかかる。学資&生活資金計
画はしっかりと。どっかのサラ金のおせっかいアドバイスみたいでヤだが重要
である。

社会科学系、理工学系について言うなら、まず日本で学士号を取得したほう
が賢明。学費+生活費が日本と大きく違わない上に。言葉の障壁や落第、退学
のリスクを考えるとDEUG(教養課程)から入るべきではない。毎年、半分以上
の学生がここで消えるほどに選抜が厳しい。

ではどういう専攻ならお薦めか?ズバリ日仏の授業料の差の大きい芸術関係、
さらに言うなら音楽系である。一例としてリヨン国立高等音楽学院(CNSM)の
登録料も含めた学費を挙げておくと578euros/年である(基本3年間同額)が、
日本の東京音楽大学の初年度納入金は231万円、国立の東京芸大でも82万円。

難易度はどうか?国立高等音楽学院は少数激戦だが、国立地方音楽院(CNR)
や国立音楽学校(CRD)は各地にある。日本式にソルフェージュを機械的に叩き
こまれていて、実技もソコソコなら、ピアノ科でもさほど難しくはないだろう。
実技がモノをいう世界だけに、言葉の障壁も極めて少ない。音楽用語や楽典は
万国共通である。楽理や音楽美学を専攻したいなら国立大学の音楽学科もある。

但し、何度も言うが、かかるのは音楽学校の学費だけではない。諸々の生活
費に加え、語学学校を半年〜1年半通う為の費用、それにピアノ科であればピ
アノレンタル料75euros/月程度も算入して考えよう。逆に、収入はどうか?学
生身分で取得した滞在許可証でアルバイトは20時間以上はNGだから、
400euros稼げれば上出来。多くは期待できない。

学生の本分は「学位を取得すること」である。実現までの計画はしっかりと。
どっかのサラ金のおせっかいアドバイスみたいでヤだが、重要である。

だけど雪庇を飛ぶ気がないヤツには一生無理なんですよ

そうは言っても熱意があれば、社会科学だろうが音楽だろうが希望する専攻
に関わらず9000eurosほど用意出来たら飛んでしまったらどうか?なんとか1年
半はイケる。意思ある者に道はあるが、そうでない者には金があっても道なし。

そう、スキーで新雪コブや雪庇を前にして、踏み出せる者とそうでない者との
差のようなもの。
    
ワインが日本とフランスで違う味わいを楽しめるように、ヴァイオリンでも
フランスの古い小さな石造りの教会の中で弾く音は日本とは違う。また、オペ
ラやコンサートの切符は驚くほど安い。「ホンモノ」体験してみたら?

ある程度コースや着地点計算したら
グチャグチャ考えてないで飛んでみな!

金刺護(かなさし まもる)
石川県生まれ。フランスのリヨン第2大学、リヨン・カトリック大学、ポワティ
エ大学に学ぶ。専攻は法哲学、国際機構論。その傍らで趣味でジボール市立音
楽院、ブルゴワン・ジャリュー国立音楽院でも学んだ経験を持つ。
友人曰く、さいとう・たかを先生の劇画「毒ダネ特派員カスガ」みたいなオッ
サン。イケてないな〜。

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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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吾妻ひでお 『アル中病棟 失踪日記2』イーストプレス 1300円+税

本書は評判を呼んだ『失踪日記』の続編。1998年ごろから著者は、明けて
も暮れても酒を飲み続ける連続飲酒の状態に陥り精神病院のアルコール病棟に
家族の手によって入院させられています。本書は入院から退院に至るまでの病
腕での著者の体験が描かれています。アルコール依存症治療の実態と院内の人
間模様が、ユーモラスにしかしリアルに描かれています。自らのアルコール依
存症体験をもとにした作品といえば中島らもの『今夜すべてのバーで』があり
ますが、本書はそれに比肩する傑作と述べて過言ではありません。

『今夜すべてのバーで』のような劇的なことは『アル中病棟』のなかでは起こ
りません。アルコール病棟の日常が淡々と描かれているだけです。嘘つきで病
棟の鼻つまみ者の浅野さん。毎夜「茶会」を催す謎の女性御木本さん。魅力的
なキャラが満載です。入院患者の多くがお酒が入らなければ普通の人であるこ
とがわかります。病棟内部の人間関係も普通の社会と何ら変わりのないもので
す。しかし酒の誘惑が溢れる社会に戻って断酒を続けることは容易ではありま
せん。何人もの患者たちが、再飲酒をして病棟に舞い戻ってきます。

アルコール依存症に対する治療は、嫌酒剤(シアナマイド)を毎日服用する他
は、基本的に「洗脳」。毎日のように病棟では、アルコールの身体的・精神的・
社会的害悪についての講義があります。治療がある段階に達すると患者たちは
院外の「断酒会」や依存症患者が相互に匿名で語らう「アルコーリック・アノ
ニマス(AA)」に通います。「断酒会」や「AA」で語られる依存症患者たちの
体験談には興味深いものがあります。「断酒会」と「AA」の仲が悪いという話
には笑ってしまいました。派閥抗争は、人間(日本人?)の常のようです。

本書ではアルコール依存症に陥る人たちの心理についての詳細な説明があり
ます。自己愛の弱い人たちが、アルコールによって誇大な自己像を得ることで
それを補償する。しかし、酒から醒めれば卑小な自分と向き合わなければなら
ないのでまた酒に逃避し、最後には連続飲酒に至り破滅する…。アルコール依
存症とは、傷ついた心をもつ人たちの陥る病のようです。そして吾妻ひでおや
中島らものように、アクロバティックな発想力を売り物にしている人たちが、
アルコールによる万能感の助けを得ようとするのもよくわかります。

アルコール依存症は、治ることのない病気です。酒によって気分の高揚を得
て倒れるように寝ていた人が酒を断てば、抗鬱剤や睡眠薬の助けが常に必要に
なります。退院後の吾妻の断酒生活は続いているようです。当然、昔のように
作品を量産することはできません。しかし薬に頼りながら無理のないペースで
『失踪日記』シリーズを描き継いで、かつてのようなマンガ家としての高い評
価を取り戻しました。適切な自己愛を取り戻した彼がアルコール病棟に舞い戻
ることはない。らものように酒で命を落とすことはないと信じます。

◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「ジェラシーが支配する国」高文研
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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「あたりまえと思うな」の話

最近、聞くと「イラッとする」単語が「LINE」だ。

「LINE作ったんでそれで連絡します」とか「LINE入れました」とか。

すみませんね、こちらガラケーで!と、居直りたくなる。
確かに便利なツールなんだろう。
なにせ無料ってところが学生たちには(学生でなくとも)有難い話だしそれを否
定するつもりはない。
ただ…先生への「本日休みます」の連絡が「LINE入れたのに」とか言うバカが
いると蹴りの一つも入れたくなるのは私だけか?
ちょっと前までは「××さん、今日、体調悪いんで休むってTwitterに書いてま
した」と言う学生には書いたヤツも報告しに来たヤツも「Twitterはトイレの落
書きと同んなじじゃ!アホか!」と心優しいアドバイスが出来たが…
問題は「LINE」は確かに一定のグループのみの連絡ツール(良いように言えばだ
が)なのでトイレの落書きではない。
でもあくまで「仲間内の」授業中に密かに廻す回覧板?(この辺の表現が前期高
齢者ですが…)に近い存在なんじゃないだろうか。
事実「私はそこには参加していない」

「本日、課題の締め切りです」
それに間に合わない、これを直接先生に伝えるのは「勇気」のいる事だ。でも
そこは頑張って電話を入れるべきだろ?

新入社員の一番のハードルは「会社にかかって来た電話を取る事」らしい。
物心ついてから個人宛の電話しか知らない彼らは、自分以外の人にかかって来
る電話を取る事が困難なのだ。
と記事で読んでひどく納得してしまった。
Twitterへの書き込みで済ます、LINEへの投稿で済ます、これは全て「直接連絡
に際して発生する」であろう「トラブル(怒られる)」を回避する手段なのだ。

トラブルは歓迎すべきモノでは無い。
だがどうやって切り抜けるかが生活力なんだと思う。

学生達が頻繁に使う「コミ障」だが、どうやら自分で作っているところもあり
そうだな。

ともかく…
ガラケーの私はLINEには「入りません」
何度も言わすな!

と今日25日に書いて原稿送ったら、悪魔の編集人が「ガラケーでもLINEできま
すよ」と返事をよこした。

うわぁ、一から書き直してる体力がないよぉ。時間がないよう。ごめんなさい
ごめんなさい。

◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html

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■岩のドームの郵便学11 内藤陽介
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第3次中東戦争前夜

前回の本連載で取り上げたローマ教皇パウロ6世のエルサレム訪問は1964年
1月4日のことだったが、その直後の1月13日、カイロでは第一回アラブ連盟
首脳会議が開催された。

http://blog-imgs-55.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20131025010346dfc.jpg

はエジプト郵政が会議の開催に合わせて発行した記念切手)


この結果、連盟として、対イスラエル闘争の統一司令部を設置するという方
針が決定された。この方針に従って、同年5月、ナセルの肝いりによりヨルダ
ン統治下の東エルサレムで第1回パレスチナ民族評議会が開催され、パレスチ
ナ解放機構(PLO)の結成が宣言された。

1956年の第2次中東戦争(スエズ動乱)は、英仏の侵攻に屈せず耐え抜いたと
いう点で、エジプトは政治的に勝利を収め、ナセルの権威は絶頂に達した。し
かし、純粋に軍事的な見地から見ると、英仏との密約によりエジプト領内に侵
攻したイスラエル軍は、いともたやすくシナイ半島を横断してスエズ運河地帯
まで進軍し、エジプト軍はそれを阻止することができず、惨敗に等しい状況だっ
た。

当然のことながら、イスラエルとの全面戦争になればエジプトには勝ち目はな
いことをナセルも思い知り、イスラエル打倒の勇ましいスローガンとは裏腹に、
本音では、イスラエルとの戦争を回避しなければならないと考えるようになる。

さらに、アラブ民族主義の理想を体現するものとして華々しく行われた1958
年のエジプト・シリアの合邦は1961年9月にはシリアの離反であっけなく崩壊。
さらに、1962年にイエメンで民族主義革命が発生。革命政権がエジプトに支援
を求めると、王党派はサウジアラビアに支援を要請し、“内戦”という名の代
理戦争に発展し、戦況は一進一退の状況が続き、エジプト経済も疲弊していっ
た。

PLOの創設は、こうした状況の中で、追い詰められつつあったナセルが起
死回生の切り札として持ち出したものだった。

すなわち、アラブ諸国としては、さまざまな立場の違いはあっても、「イス
ラエル国家を打倒してパレスチナを解放する」という原則論には反対できない。
したがって、曲がりなりにも、アラブの盟主ということになっているエジプト
が、対イスラエル闘争の統一司令部を作るということになれば、賛同・協力せ
ざるをえないから、ナセルにとっては、シリアとの合邦失敗やイエメン内戦へ
の介入などで傷ついた自らの権威を回復する格好の機会であった。

また、統一司令部の傘下にパレスチナ人の武装組織を組み込んでコントロー
ルできれば、強硬派の暴走を抑え、イスラエルを決して本気で怒らせない(=
全面戦争には突入しない)程度に“抵抗運動”を継続して、アラブ世論のガス
抜きをするという、微妙な調整も可能になるはずだから、まさに、一石二鳥で
あるというのが、ナセルの本音である。

ところで、PLOが東エルサレムで産声を上げた頃、岩のドームでは、外壁
の修復作業がほぼ大詰めを迎えていた。

岩のドームの外壁には、1561—62年、オスマン帝国のスルターン、スレイマ
ン1世によってタイル装飾が施されたが、傷みが激しくなったため、新たにエ
ルサレムの管理者となったヨルダン政府は、1955年以降、アラブ諸国ならびに
トルコからの資金援助を得て、大規模な修復作業を行っていた。そのメインの
工事にあたる外壁の修復は1964年8月に完成。続いて、ドーム屋根部分の改修
工事が行われ、1965年には、オリジナルの屋根を覆うように、イタリア製の銅
アルミニウム合金の覆いがかぶせられ、一連の修復工事は完了した。

http://blog-imgs-55.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20131025145713f35.jpg

は、岩のドームの修復工事が完了し、一般公開が再開されたのに合わせて、
1965年11月20日、ヨルダンが発行した記念切手で、岩のドームの全景を大きく
描き、国王フサインの肖像を左側に配している。エルサレムがヨルダンの支配
下にあり、それゆえ、ヨルダン国王が岩のドームを行ったことを誇示するよう
なデザインである。

さて、パレスチナ人武装勢力を取り込んで暴発を防ぐためにPLOを結成し
たナセルだったが、武装勢力の中には、ナセルの微温的な姿勢を拒否して、
PLOには参加せず、イスラエル領内での武装闘争をエスカレートさせるもの
も少なくなかった。その代表的な存在が、ヤーセル・アラファート(以下、ア
ラファト)ひきいるファタハである。

アラファトは、本人の語るところによれば、1929年8月4日、エルサレムで
生まれた。カイロとエルサレムを往来する少年時代を過ごした後、カイロ大学
工学部を卒業。1956年の第2次中東戦争では、エジプト軍の工兵大尉として従
軍。戦後は、技師としてクウェートで働きながら、1957年にパレスチナ解放闘
争の運動組織としてファタハを創設し、反イスラエルの武装闘争(イスラエル
側から見ればテロ活動)を展開した。

1963年、アラファトとファタハはシリアに迎えられる。当時のシリアは、エジ
プトとの合邦を解消して間もない時期で政治状況が安定せず、クーデターが頻
発していたが、いずれの政権も国民の支持を得るため、イスラエルとの対決姿
勢を鮮明にし、イスラエル領への砲撃を繰り返していた。

もっとも、シリア政府にしても、単独ではイスラエル軍に対して圧倒的な劣勢
にあることを十分に認識していたから、イスラエルとの戦争が勃発した場合に
は、“アラブの大義”に照らして、アラブ諸国はシリアを孤立させずに支援を
すべきだと主張していた。

したがって、シリアにしてみれば、自分たちに代わってファタハがイスラエル
を攻撃してくれれば好都合であり、ファタハを支援する代わりに、最悪の場合
は、ファタハに責任を押し付けて、イスラエルとの直接対決を回避したいとい
うのが本音であった。

これに対して、あくまでもパレスチナの解放とパレスチナ難民の帰還を目標
としていたファタハは、ナセルの微温的なPLO構想を拒否。イスラエルに対
するテロ活動をエスカレートさせていく。

当時のアラファトは、テロ活動をエスカレートさせてイスラエルの報復攻撃
を引き出せば、アラブ諸国も対イスラエル全面戦争に参加せざるを得なくなる
と考えていた。このため、ファタハはソ連、東欧はもとより、中国を含む反西
側諸国から武器を調達し、シリアの庇護下で戦闘能力を強化していった。

かくして、イスラエル国内の世論は次第に“パレスチナ・ゲリラ”への報復
を求める強硬論へと傾いていく。イスラエルの政府と国民にしてみれば、
PLO傘下の団体であろうとなかろうと、国内の治安を乱すテロリストは駆逐
すべき存在である。

ナセルをはじめ、アラブ諸国の指導者たちは、反イスラエル闘争が自分たち
の思惑を超えて動き始めたことに困惑を隠せなかったが、そこに、米ソの冷戦
がさらなる影を落とす。

すなわち、エジプトやシリアの民族主義政権は、手持ちの外貨が乏しいこと
もあって、ソ連からバーター取引で武器を購入していたが、イスラエルからの
要請を受けた米国は、1965年以降、イスラエルに大量の戦闘機や戦車を売却。
イスラエルの軍事的保護者としての立場を鮮明にしていった。
ちなみに、イスラエルの奇襲攻撃によって第3次中東戦争が勃発するのは
1967年6月5日。岩のドームの改修工事が終わって、善男善女の参詣が再開さ
れてから、およそ1年半後のことである。


◎内藤陽介(ないとう・ようすけ)
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
蘭印戦跡紀行』彩流社 電子書籍で「切手と戦争 もうひとつの昭和戦史」復

http://www.sairyusha.co.jp/bd/isbn978-4-7791-1910-1.html
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/blog-entry-2906.html
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■編集後記
今月は、雨宮紀子さんとkokoさんから早々に休載の申し出があったので、金刺
護氏に原稿をお願いした。最初、カントの話になる予定だったのだが、どうい
うわけかフランス留学ガイドになった(笑)

本業はよく知らないのだが、国際関係の話がものすごく面白い方なので、また
ちょくちょくお願いする予定である。

相変わらず、原稿料は出ないのだが(^^;)

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