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[本]のメルマガ vol.486

 
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 ■■ [本]のメルマガ                2012.12.15.発行
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 ■■  mailmagazine of book           [ついに今年も秒読み号]
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 『ジャニ研! ジャニーズ文化論』
 
 大谷能生/速水健朗/矢野利裕著
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 ジャニーズ事務所から繰り出されるミラクルな文化の歴史、意味、元ネタ、社
 会への影響を、SMAP・嵐世代の批評家たちが徹底考察!
 50年の偉業に限りないリスペクトを込めて、ジャニーズ文化の根源に迫る。

 【連載】………………………………………………………………………………

 ★「虚実皮膜の書評」 / キウ
 → 安土桃山時代を代表する画家・長谷川等伯の生涯を描く時代小説をご紹介
  します。

 ★「ひよっこ行政書士 Rock’n’law相談室」 / いそむらまき
 → 子ども手当?児童手当?編

 ★「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
 →  第42回 ライブハウスで思ったこと

 ★「本棚つまみ食い」 / 副隊長
 → [マナー]とは?マッツァリーノ氏の『怒る!日本文化論』

 ★「知るは楽しみ」 / 立木 菜
 →『羊の歌』を読む

  今月のお休みは……………………………………………………………………

 ★「図書館の壁の穴」 /  田圃兎


  またの回をお楽しみに!

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 ■トピックス
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 2つのイベントをご紹介します。
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 ■「虚実皮膜の書評」 / キウ
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 『等伯』 上・下 安部龍太郎 日本経済新聞出版社 2012.9
 
  安土桃山時代を代表する画家・長谷川等伯の生涯を描く。
 
  能登・七尾を拠点とした北陸の絵仏師である信春(等伯)が養父母の死を境
 に激動の人生を歩み始める。絵師として己の画境を極めようと、文化の中心地
 である京へ強い憧れを抱き、その思いのあまりの純粋さ故に、多くの親しい人
 たちを傷つけてしまう。それらの業を背負いながら、様々な困難を乗り越えつ
 つ、絵師としての頂点を極めてゆく物語は、最後は深い感動を呼ぶ。
 
  主家の畠山氏再興の謀略に巻き込まれたり、上京した時に織田信長の比叡山
 焼き打ちに遭遇して織田家から睨まれたり、秀吉の時代になってようやく落ち
 着いてきたかと思えば、当時の画壇の中心にある永徳率いる狩野派との抗争に
 明け暮れたりと、激動の時代にふさわしく、安寧の時は訪れない。大徳寺三門
 壁画の成功、仙洞御所対屋の障壁画を巡る狩野派の妨害、利休自害後の窮状か
 ら祥雲寺障壁画の成功。時代の主流に疎外され、また権力に反発しながら、己
 の画境を高みへと誘ってゆく。
 
  陰に陽に等伯の画業の邪魔をする狩野永徳や石田三成、能登・畠山氏再興の
 ために奔走しそのために等伯に迷惑がかかることも顧みない兄の奥村武之丞や
 夕姫、一見主人公の生涯から見ると悪役になる登場人物たちも、何かしらの苦
 悩を抱えていて、そういったところにも作家の目が届いていて優しい。

  しかしなんといっても、この作品は家族小説といった側面が濃い。先妻の静
 子、後妻の清子に、等伯が絵師としての志を優先するあまりに多大な迷惑をか
 けるのだけれど、そのような業を呪い彼女たちに申し訳ないと思いながら、そ
 れでも画業や自分の志を優先してしまう等伯は、そういった人たちの思いを背
 負って生きてゆくことで、新しい境地へと上り詰めてゆく。
 
  特に息子の久蔵との関係の描き方がよい。能登・七尾から離れざるを得なく
 なり京へと向かう頃まだ母・静子にまとわりついていた幼い久蔵は、やがては
 父の片腕として、また狩野永徳からもその才能を認められた若い俊英の絵師と
 して、その頭角を現し始める。等伯の子・久蔵への愛情が、永徳との確執を通
 してよく描かれている。亡き母・静子の遺骨を能登の菩提寺に納骨するために
 22年ぶりに能登へと帰る親子旅もいい。その旅を通して等伯は「松林図屏風」
 の着想を得る。そのきっかけとなる能登の松林の風景を、親子で見つめるシー
 ンは、心に残った。

  このシーンは、ラストに向かって、とても効果的だ。息子・久蔵の名誉を回
 復すべく、命がけで仕上げた「松林図」を、秀吉ほか諸侯の前に示した時の、
 あの静寂と感動が、読み手にも強く共有される。等伯は多くの人間との因縁深
 い関わりを正面から引き受け、その無念を背負い、この境地へとたどり着いた
 のだ。
 
  この小説を読みながら別冊太陽の「長谷川等伯」を随時参照した。

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 ■「ひよっこ行政書士 Rock’n’law相談室」 / いそむらまき
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  月並みですが、もう12月!1年は本当にあっという間に過ぎますね。師走と
 いうことで、きっとこれを読んでいただいているみなさまもお忙しいことと思
 いますので、今回は(今回も?)雑談のようなお話にしたいと思います。とい
 っても、いつものごとく愚痴っぽいですけれど…
 
  世の中は選挙一色な感じの今日この頃ですが、今回の選挙ではまったく話に
 も上がらない子ども手当をみなさまは覚えていらっしゃるでしょうか?
 もちろん、中学生以下のお子様がいる方は覚えてはいると思いますが、正直
 受け取っているわたしでも、何時までいくらが支給され、何をしなければいけ
 ないのかなどがいまいち理解できません。なので、自分の頭を整理する意味で
 もここでまとめて(笑)、へぇそうなったんだという風に豆知識としていただ
 ければ幸いです。
 
  まず子ども手当は2010年の4月からスタートしました。なので、わたくしご
 とですが、2010年の4月生まれのわが子は子ども手当とともに誕生しました
 (笑)。世の中的には子ども手当ができる前は児童手当というものがありまし
 たが、子ども手当より金額が少ないものでした。スタートから紆余曲折ありま
 したが、月額1万3千円が4か月分まとめて支給されていました。
 
  これがいろいろなつなぎ法によって、2011年10月から現在においては、3歳
 未満は月額1万5千円に、それ以上の子は月額1万円となり、この際には改めて
 書類で申請しないともらえないことになりました。原則的な金額は2011年10月
 から変わっていませんが、2012年3月までは子ども手当、それ以降は児童手当
 に戻り、かつ2013年6月からは所得制限がつきました。
 
  金額を細かくおさらいすると、
   3歳未満 1万5千円
   3歳以上小学校修了前(第一子、第二子) 1万円
     3歳以上小学校修了前(第三子以降) 1万5千円
     中学生 1万円

    所得制限以上 5千円

 ということらしいです。しかしいつまでこうなのかはあいかわらずなぞのまま…
 
  そして、この所得制限がついたことで手続きが面倒なことになりました。基
 本的に毎年6月に現況届を出し、この際に所得額を記載するのですが、記載す
 るのは夫婦であれば所得が高い方にしなければならないため、受給を申請する
 主体が所得によって変わってくることになります。我が家では最初の現況届提
 出の際に夫から私に主体が変わることになったので、区役所から送られてきた
 書類に赤線を引きまくって、全部変更して提出しました。
 
  それだけでも面倒だなぁと思っていたところ、数か月後に、変更する場合は
 変更届ではなく、前の受給者については受給できなくなります的な書類を出し、
 後の受給者については新たに受給を開始します的な書類を別々に出さなければ
 いけないというのです。あまりないのかもしれませんが、夫婦の所得がほぼ同
 じで、年によって多い少ないがコロコロ変わるような場合は非常に面倒だと思
 うのですけど…
 
  そしてそれにも増して、いつまでいくらがいつもらえるのかが非常に不透明
 でわかりにくいお金を、行き当たりばったりではすまない子育てに活用すると
 いうのはとっても無理があると思うのです。金額ももちろん重要ですが、子育
 てに活用してほしいというのなら、それを家計の一部として計画できるような
 確実性や不変性があるほうが大事なのではないかと思った次第です。
  
  ではでは、また最後は苦言になってしまいましたが、少しは子ども手当につ
 いての頭の整理に役立てば嬉しいなと思います。そして今年もわたくしのくだ
 らん話をお読みいただきありがとうございました。みなさまよいお年を!
 
 みなさまのご相談やご意見、または、それは違うぞ!などというおしかりもお
 待ちしています。そのほかにも法律にからんで何か知りたいことなどあればお
 寄せください。もちろん、仕事依頼、メール相談(初回無料)もお待ちしており
 ます。

 いそむらまき行政書士事務所
 rockandlaw@yahoo.co.jp

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 ■「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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   第42回 ライブハウスで思ったこと
 
  2012年もあと残りわずかになった。ああ、今年も積ん読になってしまった本
 ばかりだなあ。布団の横だけでなく、テーブルの上、いや、下にも…、ありと
 あらゆるところに本が積んであるのに、性懲りもなく、ついふらふらと書店、
 古書店に寄って、また積ん読予備軍を買ってきてしまう。もう反省する気にも
 なれない。それに加えてCDの数も半端じゃなくなってきた。

  そういえば、今年は(いや、今年もか)音楽三昧の1年だったな。レコーデ
 ィングも始めたし…。
 
  今月のはじめ、高円寺のペンギンハウスというライブハウスに出演した。ライ
 ブを企画した若いバンド「ゆるさ」(http://www.yurusa.com)が呼んでくれた
 のだ。50歳半ばになってから、若い人といっしょに音楽が出来るなんて幸せ者
 だと思う。いや、能天気で太平楽の変わり者ともいえるか。

  とはいっても、共演したもうひとつのバンド「mori ha ikiteiru」(こちらも
 注目の若手バンド!)のリーダーのお父さんが僕と同い年だと知ったときは軽い
 ショックを覚えたけれど。ついに“息子”と共演することになってしまったか!

  リハーサル、本番を通じて、ふたつのバンドとも、僕のようなおじさんも共感
 出来るサウンドを出していて、うれしくなってくる。なによりも音楽が出来る喜
 びが伝わってくるのだ。ステージにこぼれる笑顔、笑い声を聴きながら、ぼくは
 ぼんやりと考えごとをしていた。

 「ああ、“あの人たち”は、この若い人たちを徴兵して、戦争に巻き込みたいと
 思っているんだなあ」

  そして、だんだん腹が立ってきた。ぼくは流れてくる心地よい音を聴きながら、
 ステージの上にいる、この人たちにずっと、ずっと、ぼくのように年寄りになる
 まで音楽を続けてほしいと祈っていた。

  ちょうど選挙戦の真っ最中、新聞やテレビから、やたら勇ましい演説が聞こえ
 てくる。改憲、軍隊…、いったい、国を愛することは、若者に死ねということな
 のか? “あの人たち”は若い人たちをそんなに憎んでいるのだろうか? 

  昔(いや、今もかもしれないが)優れた小説を書いていた人たちは、今の若い
 人たちの生き方が気に入らないらしい。自由に闊歩している若者たちを苦々しく
 思っているようだ。だから徴兵して、軍隊で精神を鍛え直すというのか?
  でも軍隊や戦争は、お仕置きに押し入れに閉じ込めるのとはわけがちがうだろ
 う。

  そんなことを思いついたのは、いま、『ブラッドベリ、自作を語る』(レイ・
 ブラッドベリ、サム・ウェラー著 小川高義 訳 晶文社)を読んでいるせいか
 もしれない。今年6月に亡くなったSF作家レイ・ブラッドベリのインタビュー集。
 400ページもある分厚い本でかばんに入れて持ち歩くのが大変なのだが、これが
 面白いのだ。

  生まれた日のことを覚えているという驚異的な記憶力や、映画狂ぶり、有名人
 との交遊、もちろん創作のことなどかなり詳しく話していて面白い。意外とミー
 ハーなところがあるのも可愛い。それにしてもブラッドベリが語る、彼の人生は
 ひとつひとつの出来事がキラキラと輝いていて、まるで作品を読んでいるようだ。
 とくに幼少時代のことが面白い。

  そこに書かれていた、たった数行の文章が狭いステージで楽しそうに演奏をす
 る「ゆるさ」を見ながら浮かんできた。

  日本の真珠湾攻撃のとき、ブラッドベリは21歳だった。徴兵検査を受けて、視力
 が弱いため失格になったことが書いてあった。

 「ほんとうに入隊したいのか?」と検査官に問われ、「いやあ、あんまり」と答え
 るブラッドベリ。検査官の「だめだな」というひとことで徴兵検査に落ちた。

 「つまり、僕は国のために生きることになった。たしかに国のために死ぬのは大変
 なことだ。じゃあ国のために生きるってのはどうだ?
  もしぼくが50年前に死んでたら、どこかに大きな穴があいたこともまた確かじゃ
 ないのかな?」
  そうなのだ。あの人たちの言っていることは、未来の財産を失うことにつながる
 んじゃないか。

  自分の出番の前にこんなことを考えていた。“息子たち”と演奏をともにして、
 彼らに迫る危機をより感じたのかもしれない。

  こんなことを書いていたら、“息子たち”のひとりがツイッターで「武力により
 世が治まった事など人類の歴史で一度もない」とつぶやいていた。
 シンクロニシティ! 

  あっという間に過ぎてしまった2012年、このままだと来年もあっという間に過ぎ
 てしまうんだろうな。

  いまさら生き方は変えられないけれど、積ん読の本の量はもうちょっと減らして
 いこう。
  そうだ、ちゃんと読むのだ。
 
 ◎吉上恭太 文筆業。仕事よりギターを弾いていることが多い。
 
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 ■「本棚つまみ食い」 / 副隊長
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  例えば電車の中でマナーの良くない人を見かけて、ひとこと注意しようと思
 ったけど出来なかった。そういった経験はわりと多くの人があるのではないで
 しょうか。私も混雑した電車でゴツゴツと肩掛け鞄が体に当たったりして、嫌
 だなあと思いつつ何も言えなかった冬の朝の思い出があります。リュックサッ
 クじゃなくても邪魔なんですが…と言いたかった…。
 
  そんなあなた(私?)にうってつけの本が登場しました。
 
 『怒る!日本文化論』、パオロ・マッツァリーノ、技術評論社、2012
 
  著者は『反社会学講座』などで知られていますが、今までの著作では史料を
 駆使して巷で言われているあれやこれやを覆すというのが中心でした。しかし
 今回は少し異なり、自らの経験に基いた、他人への注意の仕方という実践的な
 部分に重点が置かれています。ただ後半には電車内マナーの近現代史というテ
 ーマで、今までの作品の読者にもなじみの手捌きを見ることが出来ます。
 
  なんだか唐突なテーマ設定で来たなという印象もありますが、実はそういう
 わけではないらしい。なぜなら、著者はいろいろと注意することを長年実践し
 てきていたのでした。公園でうるさく遊ぶ子供らに注意し、バスの中でゲーム
 で遊ぶ兄ちゃんに注意し、図書館でケータイをうるさく鳴らすオッサンに注意
 する。本当に頭が下がります。
 
  けど私も思うのですが、あまりマナーが…な人を街で見かけても、そんなに
 注意している人は見かけないような気がします。私自身もなかなか注意できな
 いんですよね。このあいだも映画館で、予告編が始まっても隣で携帯ゲーム機
 をいじっている子供がいまして、何とか本編が始まるまでに止めてくれと切に
 祈っていました。そのときは本編が始まるとその子供もようやくゲームは止め
 たのですが、危うく注意せざるを得なくなるところでした。いや、別にしても
 いいんですけどね、本当は。
 
  そこでこの本の出番となるわけです。著者は小さな不満を我慢せずに声に出
 して注意していこうと呼びかけます。
 
  しかし実際には上に書いたように、ためらってしまう人も多いはず。やはり
 そこには注意することに伴うあれこれのリスクを考えてしまうということがあ
 るでしょう。無視されたり、反論されたり、はたまた暴力を振るわれたりとい
 うことに対する不安など。
 
  もちろんこうした不安は考慮されています。もちろん不安を全部解消するの
 は無理です。例えば不幸にして暴力を受ける可能性などは完全に排除すること
 は出来ません。
 
  それでも、仮に無視されたとしても公衆の面前で注意すること自体が相手に
 ダメージを与えていると著者は言います。受け入れられなくても注意すること
 自体に意味があるわけです。
 
  そしてそれ以上に重要だと私が感じたのが、権利の交渉と言う感覚で注意を
 するということです。自分が正しいことを言っているので、相手は無条件でそ
 れをのむべきであると考えてしまうと、無視されたり反論されたらどうしよう
 と思ってしまいますよね。そうではなくて、あくまで「自分はこうして欲しい」
 という意思を伝えることに徹するのです。それに加えて、気が向いたときだけ
 するということ。要するに完璧をめざしてはいけないし、交渉ごとだから上手
 く行かない事もあると最初から思っておこうということです。
 
  実際著者が注意しても、相手に聞き入れられるのは三〜五割というので、完
 璧はめざさないのが吉でしょう。
 
  だからといって何もしないのは良くありません。我慢する事にはメリットは
 殆どないと著者も言っています。不愉快に思ったら言った方がいい。むしろ怒
 りやすい人というのは、共感する能力が高いのかもしれず、逆に何についても
 怒らない人は、もしかすると周りのことに無関心なだけなのかもしれないのだ
 から。…私なんかは結構このクチかも知れません。ちょっと自分の心を見透か
 された気分です。
 
  実践編の後は理論編。電車の車内マナーや喫煙マナー、あるいは車内での化
 粧に関する歴史を辿ります。こちらの方は従来の著者のスタイルに近いものに
 なっています。
 
  本当にマナーが低下したのは最近のことなのか。車内での化粧は昔の人はし
 なかったのかという点などにスポットを当てていきます。西洋では車内で化粧
 をする人は売春婦だと思われる、という噂についても探りを入れていきます。
 マナーをめぐる言説が如何に怪しい感じになっているかもよくわかります。
 
  著者の言うところの「むかしはよかった症候群」(p,166)に罹らないよう
 に、私たちも気をつけていかないといけませんね。
 
 ◎副隊長 鉄道とペンギンの好きな元書店員。

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 ■「知るは楽しみ」 / 立木 菜
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 『羊の歌』を読む

 街頭を走りゆく拡声器が焼芋を積んでいる旨の長閑な宣伝だけではない今年
 の冬は、紙面もなにやら騒々しく、やっと家へ入っても、口を一文字に閉め
 身を縮めて寒い往来を歩き続けているような気がしてくる。なんだかなあと
 思ったのでレンタル屋で『コクリコ坂から』を借り、テキパキと朝ごはんを
 作るヒロインに魅了された。この映画の時代設定の頃のものを読みたくなり
 書店に捜しに行こうかと思っていたところ、家の本棚にグラシン紙のかかっ
 た、加藤周一著『羊の歌』を見つけた。不勉強で恥ずかしいのですが、昔の
 岩波新書にはスピンが付いていたんですね、驚きました。そして、著者では
 なく読んだ人のサインが書いてある。赤線もところどころに引いてある。痕
 跡本として読むとまた面白く読めそうですが、そのサインおよび赤線の主が
 自分の親であるというのはとても感慨深く、さて、文句を言わずに読むこと
 にします。

 著者の祖父の生い立ちからその子どもたちの説明を経て幼い著者の視線が混
 じり、加藤家の成り立ちと経緯が綴られて始り、1945年の8月15日の記述で終
 わる。突き放したように淡々としていると感じたのは、40代後半となり逆に
 大人の側となった著者がかつての記憶を反芻し、周囲の人々の言動や視線、
 著者自身が放っていた視線も、もう一度忖度され咀嚼され、再び記されてい
 るからかもしれない。「何でも買ってやる」の「何でも」が馬だったときの
 祖父のひたむきな説得の思い出や、小学校の旧友や田舎の子どもたちの視線
 の記憶、学校を抜け出してパンを買いに走ったことを教師に咎められたとき
 の仲間を裏切ったという思いを1960年の本郷通りで思い出しているくだりを
 読んでいるとき、似たような感覚を思い出す人は少なくなかっただろうと思
 った。今はない風景とともに、疎外感や些細で取るに足らないような深い後
 悔、自責の念を、背景や思い至らなかった幼さも含めて書くことに、単純で
 はあるけれど、それらを言葉に出来ることやその言葉の勁さをあらためて思
 う。

 子供の著者は本のなかで、「世界を解釈することのよろこびを知った」とい
 う。その後長らく「世界が解釈することの出来るものだということ、世界の
 構造には秩序があるということを、決して疑ったことはなかった」という。
 そして、芥川龍之介を同時代人として読んだ著者は、芥川の時評的な一言に
 「同じ社会現象に、新聞や中学校や世間の全体がほどこしていた解釈とは、
 全く反対の解釈をほどこすことができるという可能性に、目をみはり、喜び
 のあまりほとんど手の舞い足の踏むところを知らなかった」そうだ。きっか
 けは、たいてい本から始まる。そしてまた、そのよろこびが綴られた本を通
 して、今度は私が「世界を解釈する」よろこびを見つけている、そんな気が
 している。

 1919年生まれの著者は空襲を間近に見、そして戦争で友人や知人と別れたと
 きのことを記している。「(略)しばらく茫然としていたが、我にかえると、
 悲しみではなくて、耐え難い怒りを感じた。太平洋戦争のすべてを許しても、
 中西の死を私が許すことはないだろうと思う。それはとりかえしのつかない
 罪であり、罪は償われなければならない。(中略)私が生きのこり、中西が
 死んだということに、なんらの正当な理由もありえないという考えである。
 (中略)私たちは、同じものを愛し、同じものを憎んでいた。同じことを理
 解し、同じことを軽蔑していた。同じように世間を知らず、また世間を知ら
 ないということを知っていた」。自身と時代を常に冷静に記しながらもとき
 に語気が強まり、青い炎のような怒りがこちらにも迫る。それが帯の「羊の
 歳に生れ、戦争とファシズムの荒れ狂う風土の中で、自立した精神を持ち、
 時世に埋没することなく生きつづけた決して平均でない力強い一個性」が見
 てきたものであり、多くの人が言葉に出来なかったものなのだなと思う。

 「必勝」を唱える集団に献身せず、一方で「抽象的で無慈悲な批判者であっ
 た」人の内省的文章は、いくつも引きたい言葉に溢れているのだけれど、最
 後にもうひとつだけ。

 「しかし秘密の情報というもの、いわんや『ここだけ』の内幕話というもの
 が、状況の判断そのものを―それがまちがっているにせよ、正確であるにせ
 よ―変えることはほとんどない。中学生の私に、日本国の行く方が全くわか
 らなかったのは、情報が不十分だったからではなく、情報を分析し総合する
 能力が私になかったからである。そういう能力を、私は父からも、身近の誰
 からも、習うことができなかった。中学校の教師も、親類の実業家も、海軍
 の高官も、医者も、商人も、男も女も、私の周囲では、だれひとりとして、
 その意味で中学生以上の能力を備えていたとは思われない。そうして私たち
 は平和に、のどかに、戦争の話をしながらもその意味を理解せず、「おそる
 べき重大な」内幕話をときどき聞きながらも、「おそるべき」ことがわが身
 に及ぶだろうとは決して考えず、要するに善良な市民として、1936年2月26日
 が次第に近づいてくるのを、それとは知らずに待っていたのである。」

 この言葉を、遠い過去の記録として見ることは、私には、しばらくできそう
 にない。
 
 
 
 ・加藤周一著『羊の歌―わが回想―』(岩波新書689、1968年8月)

 ○立木菜

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 ■トピックス
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 ■内記稔夫--- 日本初のマンガ図書館をつくった男 --- 展
 └─────────────────────────────────
 
 ◆日時 : 2012年10月5日(金)〜2013年1月27日(日)
     ※毎週火・水・木曜/年末年始(12月27日〜1月4日)休館(祝日開館)
 
 ◇場所 : <明治大学 米沢嘉博記念図書館> 
       http://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/ 
       101−8301 千代田区猿楽町1−7−1 電話03-3296-4554
 ★参加費:無料
 
 |----------------------------------------------------------------------
 
 |◎会期中にはマンガ/マンガ文化研究者や貸本/貸本文化研究者によるトーク
     ・イベント〜12/15(土)&2013年1/14(月・祝) もある
 
 |
 
 |日本初のマンガ図書館は、内記稔夫によって1978年に設立された私設の図書
  館でした。
 |マンガ少年だった内記は、1955年、高校在学中に貸本屋「山吹文庫」を開店。
  貸本屋運営中から、
 |マンガ専門の図書館や、マンガアーカイブの必要性を感じ、賛同する方たち
  の協力を得て施設を設立。30年以上もの長きにわたって運営しました。
 
 |現在18万点もの膨大なコレクションを有しています。内記は2012年6月惜しま
   れつつこの世を去りましたが、彼の創ったマンガ図書館や、その精神は、後続
 |の図書館機能をもつマンガ関連施設や、マンガを愛する人々に受け継がれて
   います。本展では多くの貴重な資料をもとに、内記の業績や交友関係、彼の
 | 創った「現代マンガ図書館」の成り立ちや概要などを紹介します。

 |※特別整理などで休館する場合があります。当館HP、もしくは開館日に電話に
   てご確認ください。

 └------------------
 ■ 第15回 海文堂の古本市
 └─────────────────────────────────
 *元町・古書波止場は開港二周年を迎えました*

 ◆日時 : 2012年12月28日(金)〜2013年1月9日(水)

 ◇ : <Sea Space> 海文堂書店2階ギャラリースペース

         http://www.kaibundo.co.jp/  電話078-331-6501

       650-0022 兵庫県神戸市中央区元町通3丁目5−10

 ★参加費 : 無料

 ----------------------------------------------------------------------
 
 □参加古書店 やまだ書店/一栄堂書店/イマヨシ書店/図研/つのぶえ/
 
 カラト書房/マルダイ書店/ブックス・カルボ/音無書店
 
 *****年末からの年越し古書市です。どなたもお運びください
 
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  以上、アース・インテグレート川口 正氏の
  <関西・業界トピックス>12・12・01より抜粋掲載させて頂きました。
 いつもありがとうございます。

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 ■あとがき
 ----------------------------------------------------------------------
  2012年最後の15日号です。最後まで期日遅れで恐縮です。申し訳ありません。
  衆議院議員と都知事の選挙結果が出ました。大方の新聞予想通り自民党圧勝
 です。この混乱した今の日本をつくった政党がまた政権をとったということ。
 それも何だか歯止めのない感じ。ますます混乱した世の中になる予感が…。
  もうずっとこういう風に進んでいくのでしょうか。
 
  今年の書店は本当に厳しかった。来年もますます不安ですが、一冊一冊の本
 を今まで以上に見つめて行けたらと思います。
 個人的にもなかなかキツかった一年でしたが、局面局面で随分読書に支えて
 もらった実感があります。やっぱり本は面白いですよね!
  今年も「<本>のメルマガ」をご購読頂き本当にありがとうございました。
  来年もどうぞよろしくお願いします。畠中理恵子
 ----------------------------------------------------------------------
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 おり、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
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