2012.07.25 Wednesday
[本]のメルマガ Vol.472
■□------------------------------------------------------------------
□■[本]のメルマガ【vol.472】12年7月25日発行
[執筆陣がすごすぎる 号]
http://honmaga.net/
■□------------------------------------------------------------------
□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は5207名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
□■------------------------------------------------------------------
★トピックス
→ユニークな著書も多い音楽家?のアルバム発売記念リサイタル
★特集
→ふたたび土曜社豊田剛氏にインタビューする理由とは
★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→離婚と出会いとバカンス
★「今月のこの一冊」 小谷敏
→アメコミはなぜダメになったのか
★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→それを忘れたら、いかんでしょう(笑)
★「はてな?現代美術編」 koko
→現代美術からちょっと外れて、バンドデシネ作家、メビウス
★「ケープ周郵記」内藤陽介
→大洋がぶつかって渦をまく場所
----------------------------------------------------------------------
★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp
『戦争と科学者:世界史を変えた25人の発明と生涯』
トマス・J・クローウェル著 藤原多伽夫訳
四六判 432頁 定価2520円 ISBN:9784562048489
機関銃、ロケット、戦車、ダイナマイト、毒ガス、レーダー、手榴弾、生物兵
器、原子爆弾…。戦争で使われた兵器は誰がどのように開発したのか。科学者
の人物像、発明の経緯、世の中に与えた影響を臨場感たっぷりに描写する。
----------------------------------------------------------------------
■トピックス
----------------------------------------------------------------------
■坂口恭平アルバム『Practice for a Revolution』
発売記念リサイタル&渡欧壮行会
日 時 2012年8月4日(土)19:30〜21:00(開場19:00)
会 場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 渋谷区桜丘町23-21
出 演 坂口恭平(建築家、新政府初代内閣総理大臣)
主 催 ゼロセンター、土曜社
入場料 前売り1,000円(来場特典付き)、当日2,000円
- 前売りは、土曜社ウェブサイト(www.doyosha.com)・大盛堂書店渋谷駅前で
販売中。
- 739席すべて自由席。
- 終演後、坂口恭平さんサイン会をおこないます。
●アフターパーティ決定!
- 日 時 8/4(土)22:30-24:00
- 会 場 KATA/Time Out Cafe & Diner(恵比寿リキッドルーム2F)渋谷区東
3-16-6
- 内 容 坂口恭平さんによるスペシャル DJ
※リサイタル来場者は入場無料(ワンドリンク500円)
※会場スペースに限りがありまして、150名さま限定になります。
※アフターパーティの参加方法は、リサイタル終演後、さくらホールでご案内
します。
■トピックス募集中です!
----------------------------------------------------------------------
■特集 「混乱の本質」発売記念、土曜社豊田剛氏twitterインタビュー
----------------------------------------------------------------------
代官山の一人出版社、土曜社よりとんでもない新刊が出る。タイトルは「混乱
の本質」である。
http://www.doyosha.com/8-10発売ソロスほか-混乱の本質/
リンク先をご覧になればわかるように、ちょっとこれ、執筆陣がすごすぎる。
細々やってる一人出版社から出るような本じゃないぞというか、一人出版社で
もこんな本が出せるんだということで、再び土曜社の豊田剛代表に、お話を伺っ
た。
ちなみにこのインタビューは、相談の上twitter上で21日から24日にかけて行っ
た。冒頭にある@xxxxxは、twitterで相手を指定するコマンドである。
___________________
@06fong 豊田さま、お久しぶりです。インタビューを始めさせていただきます。
大杉栄三部作の後、ラトビアの「リガ案内」と来て、左で行かれるのかなぁと
思っていたら、ジョージ・ソロス他世界の賢人の主張てんこ盛りの「混乱の本
質」にと来たのは、豊田氏の混乱を示しているのですかw?
@asahi_yama1 遅くなってすみません。/混乱というより、いよいよ尻に火がつ
いて、なりふりかまわず突き進むことにしたというところです。年に3冊の新刊
で売上が足りなければ、独り身だし、食わずにじっとしてればいいやという思
い込みからようやく抜け出せそうなんです。
@06fong なりふり構わずと仰いますが、プロジェクト・シンジケートという団
体から翻訳権を、訳者に徳川19代将軍(違うかw)を起用するなど、なりふり構
わずと言うにはすごすぎるんですけど、どんなきっかけから企画がはじまった
のでしょうか?
@asahi_yama1 きっかけは、2010年の竹森俊平著『中央銀行は闘う』なんです。
この本でプラハに本拠を置く世界的な言論シンジケート団の存在を知り、まも
なくジョージ・ソロス氏が背景にいることも分かってきて、これは面白そうだ
なと。そこから2年かかりました。
@06fong ハリーポッターみたいに大手版元との版権獲得競争なんかはなかった
んですか?
@asahi_yama1 そこはまさに、恐れるところでした。資金力では太刀打ちできま
せんから。すでに朝日・読売・日経・ダイヤモンド・東洋経済など主要紙誌が
シンジケート団に加盟していました。個別の交渉については、相手があること
なので、はっきり言うのがためらわれるところです。
@06fong この本も大杉栄シリーズと同様、価格は税込み1000円のペーパーパッ
クになります。著者の顔ぶれを見ると、ソフトカバーで1980円で売っても安い
と思えます。豊田さんは1000円のペーパーバックで売ることに何かこだわりを
お持ちのように見えるのですが?
@asahi_yama1 覚えやすいかなと。稼働点数が増えてくると、版元の社員ですら、
価格表をいちいち確認するようになってきますから、極力そこは省力化したほ
うがよいと考えてやっています。白状すれば、6畳一間の作業場に、A5判ハード
カバーの在庫は置き切れないという事情もあります。
@06fong これが最後です。創業二年にそろそろ近づいてきていますが、自分も
一人出版社をやりたいと思っておられる方に、一言お願いします。
@asahi_yama1 土曜社は当初、直取引でやろうとして、第一弾に半年かかりまし
たけど、人文書であればJRCの後藤さん、あるいは八木書店の川瀬さん(も
しくは地方・小出版流通センターでしょうか)に相談してみると展望がひらけ
るかもしれません。
@asahi_yama1 そんなことも含めて、書店が情報をもっていますから、ドシドシ
書店の人に相談してみてください。ぼくも見知った範囲で、お伝えできること
がありますので、情報交換させてもらえるとうれしいです。
@06fong ありがとうございました
----------------------------------------------------------------------
■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
----------------------------------------------------------------------
第33回 40代、離婚に踏み込むか?の懊悩
この10年で、別居そして離婚、が増えた。60代以上では別居ブーム。結婚が続
くのは平均で15年間。離婚は85.5%が合意で行われている。
こんな現象が最新の平均的情勢として公表された(2010年度のIstat調査)。
イタリア人は現在でも平均的に20代で結婚し、そのうち、30%のカップルは40
代で離婚している。
男性なら45歳、女性なら42歳が、結婚生活にひびが入って、破綻が来る平均年
齢。15年間続いた結婚生活を解消することに決め、法的に別居を開始すると、
それぞれ47歳と44歳で離婚となる。
別居は南部では全国平均より高い。それだけ南部では夫婦間のいさかいも多い
ということなのか。結婚の縛りがゆるくなったということなのか。
子供は90%の場合、双方が育て、子供の養育費または生活費の支払いはほとん
どの場合夫が妻に支払っている。その額が一か月幾らぐらいかというと、全国
平均は約42,500円(447.40ユーロ)で、北部では約50,000円と少し高い。
さて、住んでいた家はどうなるのか。妻が住む場合が56.2%、夫の場合が21.5
%で、残りの20%近い場合は夫婦それぞれが独自の家か、住んでいた家とは別
の家に住むようだ。たしかに家がなくては別居はできない。
たとえ銀婚式が過ぎ、早婚の場合は金婚式が近くなったとしても、ここ10年で
倍に増えたのが、60歳以上の夫婦の別居だという。とくにこの年代の男性がもっ
と若い結婚生活に突入したいからなのかは知らないが、2010年の別居件数の約
10%、8,726件を占めている。
1975年に比較すると離婚は3倍に増えており、結婚が続く期間も短くなってきた。
最近は左派内で同性間の結婚を法的に認証するか否かで内部対立している。い
わゆるゲイの結婚が認証されるとしたら、現状の離婚傾向がさらに進むかもし
れない、などといったらゲイの人から怒られるかも。
ところで、恋人を作るにも友だちを増やすにもフェイスXXXなどが使われる昨今、
見かけに見栄をはるイタリア男はプロフィールをよりスマートにでっちあげる
ようだから、ご注意。(って、必要ない方もおられるだろうが。)
だいたい多くの人は“ベッラ・フィグーラ”(格好をつける)に弱い。嘘と真
実の境がいまいち分からない人もいるらしい。プロフィールの写真は知的でかっ
こいいように加工し、面白いとか教養ありそうと思わせたり、羨ましがらせる
ような場所や状況で自分を見せるようにする、と告白している。
これでオンラインで何もコンタクトがないとなれば、孤立を感じたり、負け組
と思ったりするだろうけれど、コメントを書くために好奇心をもったり本を読
んだり、筋トレをしたり、服の着こなしに気を遣ったり、要するによく見せた
い見栄のおかげで実際のパーソナリティも改良されることもあるとか。
就業が厳しいのも世界的な傾向だが、イタリアはさらなる深刻な状態にある。
定職に就くのはほとんど“幻想”といわれるほどになり、10人のうちほぼ2人し
か確定した職につけない。あとの8人強は“プレカーリ”(不安定)な一時雇い
の状況だ。
そこへ持ち家への固定資産税導入や消費税増税(1%)を始めとする圧迫も加わ
り、長いヴァカンスは権利としてあっても、多くの人はそれを消費するのに、
さぞ頭をつかい、知恵を絞っているだろう。
同じコンドミニアムの住人の夫婦は、年金生活者の旦那さんがプーリア州に実
家があるので、1か月以上もそこで過ごしに出発した。南部は、なにしろ、物価
も安い。
◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
フィレンツェ在住のフリーランス。著書に『メディチ家 ルネサンス・美の遺
産を旅する』(世界文化社)。メルマガ『イタリア猫の小言と夢』は、melmaの
2007年メルマガ・オブ・ ザ ・イヤー受賞。
http://www.melma.com/backnumber_86333/
----------------------------------------------------------------------
■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
----------------------------------------------------------------------
デヴィッド・ハジュー 小野耕世 中山ゆかり訳『有害コミック撲滅』岩波書
店 4800円+税
スーパーマン、バットマン、スパイダーマン。ブロンディ、スヌーピー、ポパ
イにトムとジェリー。アメリカンコミックの人気者を数えればきりがありませ
ん。コミックは、音楽やハリウッド映画、そしてテレビドラマと並ぶアメリカ
を代表するポピュラー文化の一つでした。しかし、いまマンガといえば日本の
もの。冒頭に列挙した人気者たちも、その多くは1950年代までに生まれて
います。何故アメリカのコミックは「消えた」のか。その謎に著者ハジューは、
数多くの関係者へのインタビューを重ねながら迫っていきます。
コミックの起源は、19世紀の末に大衆的な日曜新聞に掲載されていたマンガ
にあります。1920年代に入ると多くのコミック雑誌が生まれました。コミッ
クが扱う領域は犯罪やホラー、恋愛ものに社会風刺と多岐にわたります。公序
良俗を嘲笑うコミックは、大人の世界に反発する10代の若者たちから圧倒的
な支持を受けていました。正規の教育ルートから落ちこぼれた才能たちが、コ
ミックという新しいジャンルを立ち上げていく場面の描写には、1960年代
の日本の少年マンガの黄金時代を彷彿とさせるものがあります。
コミックへの識者の批判は、誕生当時から絶えることがありませんでした。1
940年代の末にはアメリカ各地の高校で、コミックの「焚書」が行われまし
た。高校生たちが「自発的」にコミックを持ち寄り、校庭でそれらを燃やしま
した。1950年代には、少年非行が増大した原因はコミックにあるという心
理学者の本が強い影響力をもちました。コミックについての連邦議会の公聴会
が開かれ、その模様はテレビで全米に中継されます。公聴会の中継が、コミッ
クは有害であるという大人たちの認識を決定的なものにしたのです。
1950年代のアメリカ社会には、マッカーシズムにみられるように、異質な
ものに対する不寛容さと、過剰同調を求める空気が支配していました。そうし
た空気のなかで「コミック狩り」は行われたのです。コミックの業界団体は、
この公聴会の後、性や暴力や大人を嘲笑うかのような表現を一切排除する自主
規制案を打ち出し、それを厳密に履行します。コミックは毒にも薬にもならな
い、お子様向けの代物になり下がってしまいました。アメリカのコミックから、
かつてのような文化的創造性が完全に失われてしまったのです。
コミックが少年非行を激増させている。当時、コミックが悪玉にされた理由で
す。しかし、この時代に少年非行は減少していました。朝鮮戦争下の不安心理
が、少年非行急増の幻影を生んだのです。90年代末の日本でも、少年犯罪が
実際には減っているのに急増しているかのように語られ、ゲームや携帯電話の
ような新しいメディアへの依存がその原因であるという議論が影響力をふるっ
ていました。「失われた10年」と呼ばれる長期不況がこの幻影を生んだので
す。洋の東西と時代とを問わず、「大人」の考えることは同じです。
◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「若者は日本を変えるか-世代間断絶の社会学」世界思想社
----------------------------------------------------------------------
■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
----------------------------------------------------------------------
今回は「笑えない記憶」の話
ここのメルマガエッセーで結構何度も書いて来た「年寄りお約束の」物忘れの
話。
俳優の名前が出てこない、とか、同じ本の2度買い3度買い、とか、何かを忘
れ家に取りに戻ったものの何を忘れたのか忘れてしまった、とか、ウインカー
を動かすつもりでワイパーが動いてしまった_、とか……それぐらいなら「ほん
ま、困ってしまいますわ〜」で済ませられたのだが、最近「本当に脳の病気な
んじゃないか?」と考えてしまう程のことが起こった。
「キャッシュカードの暗証番号」が出て来なくなったのだ。
さすがにこれは笑い事では_すまない。
暗証番号は「セキュリティの為。第三者の推測されるような数字は使わない」
とされているから、なんの脈絡もないランダムな数字配列を設定している。そ
れでもちゃんと覚えていて使えて来ていた……今までは。
それがいきなり出てこなくなった。
何の脈絡もない数字の羅列と言うのは一度忘れるとテコでも出てこない。
そんな時に限ってプリペイドカードを忘れていて電車に乗る為には何としてで
も現金をおろさなければならない。時間は迫っている。暗唱番号は3回間違え
ると取引が出来なくなってしまうから銀行の隅で不審者のごとく1から9まで
の数字を反芻しつつ思い出そうと試みること5分。
「出た!」やっと思い出しなんとか現金もおろして電車に飛び乗った。
「何を食べたか忘れるのは老化現象、食べたかどうか覚えてないのは痴呆の症
状」だと言われている。
そのセオリーから考えると「暗証番号の存在を知っている」から老化現象の一
つだと考えても構わないのかもしれないが、この現象は本当に心臓に悪い。座
席についてからも本当に冷や汗が出てドキドキが止まらなかった。
その時はなんとか数字が出て来たから良かったものの、次に忘れた時思い出せ
るかどうかの保証はない。第三者へのセキュリティよりは自分の脳の危機管理
のほうが大切なんじゃないだろうか?
こうなったら暗証番号を「自分だけが判る暗号」の数字配列にし、もしもの時
はそのヒントに基づいて数字が推測出来るようにするのはどうだろう?
いや……この作戦はネットのパスワードを忘れた時用に使って失敗したのだっ
た。
「結婚記念日はいつですか?」
覚えてなかった。
◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
----------------------------------------------------------------------
■はてな?現代美術編 koko
----------------------------------------------------------------------
第31回 『 フランス・ベルギーBD市場事情 ─ Moebius(メビウス) 』
夏なので、というわけでもないのですが、今回は少し現代美術作家から離れて
みようと思います。
実は今年3月になくなったフランスのバンドデシネ(以下 BD)作家、メビウス
の代表作の一つである『Bleuberry』シリーズの表紙の原画が73.000ユーロで落
札されたのをきっかけに、少しフランスの漫画にあたるBDのオークション事情
をご紹介できればいいなと思いました。
実はこのメビウスにはもう一つ実名Jean Giraudというネームがあります。
どちらかというと伝統的BD作品がこの実名で描かれ、彼のSF作品にメビウスと
いう名が使われています。
彼を今の作風に導いたのは、1960年代のメキシコの風土だったそうです。
何か奥深いところで彼の心に変化がおきたとインタヴューで述べています。
まずは下のYoutube画像をご覧ください。
□短編BD『The Long Tomorrow』イメージ
http://www.youtube.com/watch?v=8QozLSpjQc0
この画像を見てある映画を思い浮かべた方はSF映画通です。
実はこれってリドリー・スコット監督作品『ブレードランナー』の基本イメー
ジとなったBDなんです。それまでキラキラ光る未来都市という映像はよく見ら
れたのですが、汚くてスラム化された未来都市というのはメビウスのオリジナ
ルです。
メビウスはスコットの『エイリアン』の初期コンセプトや衣装デザインにも関
わり、また大友克洋作品『AKIRA』にも影響を与えるなど、多くのアニメーター
に尊敬されるフランスBD界の巨匠です。
2004年には『宮崎駿ーメビウス』と題されるエキスポがパリで行われました。
その際に二人が対談している画像と訳を見つけましたので、ご興味のある方は
http://moebius.exblog.jp/1569749/#1
をご覧ください。
宮崎さえもメビウスの作品に大きな影響を受けたということがおわかりになる
と思います。
□メビウスの作家活動ダイジェスト
http://matome.naver.jp/odai/2133138958532083701
フランスでは2005年あたりからBD専門のオークションが開催されはじめ、今年
の落札価格は目を見張るほどの高額になっています。とくにフランス語を話す
ものなら誰でも小さい頃に世話になる『Tintin』などのベルギーBDの原画の値
ではうなぎ昇りです。
例えば、Herg? (1907-1943)作品。今年6月のオークションで世界記録を出しま
した。
Tintin en Am?rique, 1932
32 x 32 cm
1 338 509 ユーロで落札。
これはヘルジェが最初に出版したアルバムなのでこの値がついたのだと思いま
す。巨匠ルノワールも吃驚の落札価格!ファンを世界中に持つというのは凄い
ことですね。
でも世界観の構築という意味において、メビウスのSF世界は私を魅了しつづけ
ます。ブレードランナーの映画では、2019年ぐらいの設定だったと記憶してい
ますが、私たちの世界はまだ随分とクリーンでよかった、よかった。
□他の作品の落札結果参照ページ
http://www.artcurial.com/fr/departements/bandes_dessinees/
とにもかくにも、フランスでのBD人気は健在で、日本の漫画もフランス人の心
をがっちり掴んで話しません。これからの動向も見逃せませんね。
◎koko
苦節10年、円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」(通常は隔
週、この夏は不定期発行) 発行中。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html
----------------------------------------------------------------------
■ケープ周郵記 内藤陽介
----------------------------------------------------------------------
ケープ周郵記(5) ケープ・ポイントと喜望峰
半島を南下してきた車は、喜望峰自然保護区の料金所に到着した。
ケープ半島観光のハイライトともいうべき喜望峰とケープ・ポイントを含む自
然保護区は植物の宝庫としても知られ、ガイドブックによれば、フィンボス、
プロテア、エリカなどが楽しめるという。
はたして、車窓からはところどころで、岩場に花が咲いているのが見えたが、
悲しいかな、植物についてはとんと疎いので、その名前などは全く分からない
のが、いささか情けない。
保護区内の道路終点の駐車場で車を降りて、ケーブル・カーに乗り、燈台が立
つ展望台へ向かう。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072401150033a.jpg
は展望台へ向かうケーブル・カー
ケープ半島の先端は二つに割れていて
(ケープ半島の地図は
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072400505518b.jpg を
ご覧いただきたい)、
その西側が喜望峰、東側がケープ・ポイントと呼ばれており、南北の位置関係
でいうと、ケープ・ポイントがわずかに南にある。そのケープ・ポイントの真
上にあり、遠くに喜望峰も見える場所ということで、展望台はルック・アウト・
ポイントと呼ばれている。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072423242733a.jpg
はルック・アウト・ポイントから見た喜望峰)
ルック・アウト・ポイントは海抜248m。かつて、ここには燈台が置かれていた
が、霧が発生して肝心の灯りが見えなくなることもしばしばあったため、1919
年、半島先端の海抜87mの地点に新しい燈台が建てられた。ただし、その後も旧
燈台の建物は取り壊されず、跡地は展望台として世界中の観光客を集めるよう
になったというわけだ。
ルック・アウト・ポイントには、教師に引率された中高生と思しき団体の先客
があった。このため、ただでさえ広くはない展望スペースは大混雑。2若者た
ちは、ワイワイガヤガヤ騒いでおり、とても「ここが教科書に出てきた喜望峰
か」などと感傷に浸れるような環境ではない。
おまけに、展望スペースに設置された、世界各都市の方向と距離を示した案内
板には、ロンドン、北京、アムステルダム、シドニー、リオデジャネイロ、エ
ルサレム、ニューヨーク、ニューデリーはあるものの、日本の都市はなかった。
よりによって北京なんかが入っているのに…。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724013320df4.jpg
は展望スペースの観光客と案内板)
なんとなく釈然としない気分だが、それでも気を取り直して、ケープ・ポイン
トを見下ろす場所に進む。
厳密にいうと、アフリカの最南端でインド洋と大西洋がぶつかるのは、喜望峰
でもケープ・ポイントでもなく、アガラス岬で、そこにはそのことを示す看板
もあるのだが、ケープ・ポイントの沖合でも、時として二つの大洋がぶつかっ
て渦を巻くようすが見られるという。
そういう話を聞くと、ケープ・ポイントの沖合では、あたかも、鳴門の渦潮の
ように荒れ狂う海の勇壮な風景が見られるように思ってしまうのだが、現実に
は、波の穏やかな場合も少なくないようだ。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724015734798.jpg
は1905年に差し出された絵葉書で、ケープ・ポイントの断崖に打ち寄せる波の
写真が取り上げられているのだが、沖合の波は静かで渦巻は全く見えない。
実際、僕が中学生の頃にバカ売れした寺尾聰のアルバム「Reflections」に収録
されている「喜望峰」という曲にも、「灰色の空と荒れ狂う海 そいつが見た
いから心が騒ぐ」という一節があって、30年ぶりにそのことを思い出した僕も、
心を騒がせながら展望台へと向かったのだが、眼下に広がる海はいたって静か
で、いささか拍子抜けだ。
もっとも、1905年のモノクロの絵葉書とは異なり、目の前に広がる原色の海は
左右で明らかに色が違っており、どうやら、その境目が二つの海が交わるとこ
ろと見て間違いあるまい。そういうことなら、とりあえずはそれで良しとしよ
う。ちなみに、崖の上に建つ小さな小屋は大気観測所で、1919年に建てられた
燈台はその先にあるというのだが、展望台からは死角になっていて見えない。
(http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724020422235.jpg
は2010年に撮影したケープ・ポイント)
ルック・アウト・ポイントから喜望峰の先端までは、トレッキング・コースに
なっていて、その気になれば、1時間ほどで歩いていくことも可能だというの
だが、僕たちツアー客は駐車場に戻って、車で喜望峰へと向かう。
ここで、いまさらながら、喜望峰“発見”のストーリーをおさらいしておこ
う。
1487年10月、バルトロメウ・ディアスひきいるポルトガル艦隊は、国王ジョア
ン2世の命を受け、アジアにいたる交易路を確保するとともに、アフリカにある
キリスト教徒の王、プレスター・ジョンの国を探し出し、友好関係を樹立する
ため、リスボンを出港した。
ディアスの船団は、まずコンゴ川の河口に向かい、そこから南下して、ウォ
ルヴィス・ベイ(現ナミビア領)に入港。さらに南下してポート・ノロス(現
南アフリカ共和国領)付近に達したが、嵐に遭遇し、沖に流されてしまう。こ
のため、陸地に近づこうと東へ向かったが、陸地に到達できなかったため、北
上してみると西側に陸地が見えたという。彼らは、漂流しているうちに、いつ
の間にかアフリカの南端を通過していたというわけだ。
その後、彼らは1488年2月3日にモッセル・ベイ(ケープ・タウンとポート・
エリザベスの中間より、やや西側の港町)に上陸。これが、後の歴史書に「ディ
アスのアフリカ南端到達」として記されることになる出来事である。ちなみに、
モッセル・ベイという地名は、1601年にこの地に上陸したオランダ人航海士が、
ムール貝(=mussel)が大量にとれることから命名したもので、ディアスとは直
接の関係はない。
さらに、一行は海岸沿いにアガラス岬をまわり、このまま航海を進めればイン
ドに到達できるとの見通しが立ったことで帰路につき、その途中で1488年5月
に喜望峰を“発見”し、同年末、リスボンに帰還した。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724232836edb.jpg
は、南アで発行された喜望峰発見500年の記念切手のうち、喜望峰の鳥瞰図をディ
アスの肖像を組み合わせた16セント切手)
当初、ディアスはリスボンへの帰途で発見した岬を“嵐の岬”と命名して国
王ジョアン2世に報告したが、国王は、アフリカ南端を廻って東方への航路を
拓いたことをいたく喜び、“喜望峰”と改名させた。この改名が結果的に大成
功だったことは、実際のアフリカ大陸最南端のアガラス岬よりも、喜望峰=ア
フリカ南端の地というメージが人々の間に深く浸透していることからも明らか
であろう。
さて、喜望峰へは5分ほどで着いた。
海岸には岩がごろごろしていて、その間に、流れ着いた海藻や丈の低い植物が
顔を出している。波頭の向こうの大きめの岩の上には海鳥の群れが留まってい
たりして、南の果てという風情が感じられるのが良い感じだ。かつては、強風
で遭難する船が多く、“さまよえるオランダ人”と呼ばれた幽霊船の目撃談も
あったというが、たしかに、そういう雰囲気はある。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072509390903d.jpg
殺風景な海岸には、“アフリカ大陸の最南西端”を意味する英語とアフリカー
ンス語の標識が立っており、その前には記念撮影をしようとする観光客が列を
なしている(http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/
20120725095645a2b.jpg )が、それ以外は、世界的な観光地という雰囲気はほ
とんど感じられない。
時間が許せば、こういう場所でビールでも飲みながらのんびりと昼飯を食って、
昼寝をしたいところだが、ツアーでの滞在時間は30分ほど。次の目的地となっ
ているペンギンの保護区、ボルダーズ・ビーチを目指すべく、僕たちは再び車
に乗り込んだ。
◎内藤陽介(ないとう・ようすけ)
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
年賀状の戦後史』角川Oneテーマ21
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------
■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在5207名の読者の皆さんに配信してお
り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
----------------------------------------------------------------------
■編集後記
来月、「はてな?現代美術編」は休載です。
楽天がKoboという電子書籍端末を出し、そろそろAmazonがKindle日本語版を出
しそうな今日この頃、そろそろ真剣に一つくらい端末を持とうかなと考えてい
る。
買うとしたらiPadのようなカラーではなく、Eインクのモノクロ端末を買いたい
と思うのだが、やっぱり思うのは、端末に縛られたくないなと言うこと。
電子書籍端末は、顧客をロックオン(端末を買ったら、定められた電子書店で
しか本を買えない)するのが当たり前になっている。もちろんPDFなど定められ
た書店にない本も読めるようにはしてあるが、やっぱロックオンされるのは気
分のいいものではない。
そうなると、iPadのようないろんなアプリケーションで電子書店を使い分けら
れるタイプの端末がいいと思うが、電池があまり持たないし・・・。
なんか、Kindle日本語版が出ても、ああでもない、こうでもないと悩んで買わ
ないような気がする・・・。
====================================================
■ 電子メールマガジン「[本]のメルマガ 」(毎月5・15・25日発行)
■ 発行:[本]のメルマガ発行委員会
■ 掲載されたコンテンツを小会の許可無く転載することはご遠慮ください。
■ copyrightはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・ご質問は25日号編集同人「朝日山」まで
メールアドレス asahi_yama@nifty.com
(あっとまーくは、全角ですので半角にしてください)
■ バックナンバーurl http://back.honmaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を通じて発行しています。
■ メールマガジンidナンバー:13315
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行えます。
====================================================
◎[本]のメルマガ
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000013315/index.html
◎[本]のメルマガ
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000013315/index.html
□■[本]のメルマガ【vol.472】12年7月25日発行
[執筆陣がすごすぎる 号]
http://honmaga.net/
■□------------------------------------------------------------------
□■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は5207名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
□■------------------------------------------------------------------
★トピックス
→ユニークな著書も多い音楽家?のアルバム発売記念リサイタル
★特集
→ふたたび土曜社豊田剛氏にインタビューする理由とは
★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→離婚と出会いとバカンス
★「今月のこの一冊」 小谷敏
→アメコミはなぜダメになったのか
★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→それを忘れたら、いかんでしょう(笑)
★「はてな?現代美術編」 koko
→現代美術からちょっと外れて、バンドデシネ作家、メビウス
★「ケープ周郵記」内藤陽介
→大洋がぶつかって渦をまく場所
----------------------------------------------------------------------
★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp
『戦争と科学者:世界史を変えた25人の発明と生涯』
トマス・J・クローウェル著 藤原多伽夫訳
四六判 432頁 定価2520円 ISBN:9784562048489
機関銃、ロケット、戦車、ダイナマイト、毒ガス、レーダー、手榴弾、生物兵
器、原子爆弾…。戦争で使われた兵器は誰がどのように開発したのか。科学者
の人物像、発明の経緯、世の中に与えた影響を臨場感たっぷりに描写する。
----------------------------------------------------------------------
■トピックス
----------------------------------------------------------------------
■坂口恭平アルバム『Practice for a Revolution』
発売記念リサイタル&渡欧壮行会
日 時 2012年8月4日(土)19:30〜21:00(開場19:00)
会 場 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール 渋谷区桜丘町23-21
出 演 坂口恭平(建築家、新政府初代内閣総理大臣)
主 催 ゼロセンター、土曜社
入場料 前売り1,000円(来場特典付き)、当日2,000円
- 前売りは、土曜社ウェブサイト(www.doyosha.com)・大盛堂書店渋谷駅前で
販売中。
- 739席すべて自由席。
- 終演後、坂口恭平さんサイン会をおこないます。
●アフターパーティ決定!
- 日 時 8/4(土)22:30-24:00
- 会 場 KATA/Time Out Cafe & Diner(恵比寿リキッドルーム2F)渋谷区東
3-16-6
- 内 容 坂口恭平さんによるスペシャル DJ
※リサイタル来場者は入場無料(ワンドリンク500円)
※会場スペースに限りがありまして、150名さま限定になります。
※アフターパーティの参加方法は、リサイタル終演後、さくらホールでご案内
します。
■トピックス募集中です!
----------------------------------------------------------------------
■特集 「混乱の本質」発売記念、土曜社豊田剛氏twitterインタビュー
----------------------------------------------------------------------
代官山の一人出版社、土曜社よりとんでもない新刊が出る。タイトルは「混乱
の本質」である。
http://www.doyosha.com/8-10発売ソロスほか-混乱の本質/
リンク先をご覧になればわかるように、ちょっとこれ、執筆陣がすごすぎる。
細々やってる一人出版社から出るような本じゃないぞというか、一人出版社で
もこんな本が出せるんだということで、再び土曜社の豊田剛代表に、お話を伺っ
た。
ちなみにこのインタビューは、相談の上twitter上で21日から24日にかけて行っ
た。冒頭にある@xxxxxは、twitterで相手を指定するコマンドである。
___________________
@06fong 豊田さま、お久しぶりです。インタビューを始めさせていただきます。
大杉栄三部作の後、ラトビアの「リガ案内」と来て、左で行かれるのかなぁと
思っていたら、ジョージ・ソロス他世界の賢人の主張てんこ盛りの「混乱の本
質」にと来たのは、豊田氏の混乱を示しているのですかw?
@asahi_yama1 遅くなってすみません。/混乱というより、いよいよ尻に火がつ
いて、なりふりかまわず突き進むことにしたというところです。年に3冊の新刊
で売上が足りなければ、独り身だし、食わずにじっとしてればいいやという思
い込みからようやく抜け出せそうなんです。
@06fong なりふり構わずと仰いますが、プロジェクト・シンジケートという団
体から翻訳権を、訳者に徳川19代将軍(違うかw)を起用するなど、なりふり構
わずと言うにはすごすぎるんですけど、どんなきっかけから企画がはじまった
のでしょうか?
@asahi_yama1 きっかけは、2010年の竹森俊平著『中央銀行は闘う』なんです。
この本でプラハに本拠を置く世界的な言論シンジケート団の存在を知り、まも
なくジョージ・ソロス氏が背景にいることも分かってきて、これは面白そうだ
なと。そこから2年かかりました。
@06fong ハリーポッターみたいに大手版元との版権獲得競争なんかはなかった
んですか?
@asahi_yama1 そこはまさに、恐れるところでした。資金力では太刀打ちできま
せんから。すでに朝日・読売・日経・ダイヤモンド・東洋経済など主要紙誌が
シンジケート団に加盟していました。個別の交渉については、相手があること
なので、はっきり言うのがためらわれるところです。
@06fong この本も大杉栄シリーズと同様、価格は税込み1000円のペーパーパッ
クになります。著者の顔ぶれを見ると、ソフトカバーで1980円で売っても安い
と思えます。豊田さんは1000円のペーパーバックで売ることに何かこだわりを
お持ちのように見えるのですが?
@asahi_yama1 覚えやすいかなと。稼働点数が増えてくると、版元の社員ですら、
価格表をいちいち確認するようになってきますから、極力そこは省力化したほ
うがよいと考えてやっています。白状すれば、6畳一間の作業場に、A5判ハード
カバーの在庫は置き切れないという事情もあります。
@06fong これが最後です。創業二年にそろそろ近づいてきていますが、自分も
一人出版社をやりたいと思っておられる方に、一言お願いします。
@asahi_yama1 土曜社は当初、直取引でやろうとして、第一弾に半年かかりまし
たけど、人文書であればJRCの後藤さん、あるいは八木書店の川瀬さん(も
しくは地方・小出版流通センターでしょうか)に相談してみると展望がひらけ
るかもしれません。
@asahi_yama1 そんなことも含めて、書店が情報をもっていますから、ドシドシ
書店の人に相談してみてください。ぼくも見知った範囲で、お伝えできること
がありますので、情報交換させてもらえるとうれしいです。
@06fong ありがとうございました
----------------------------------------------------------------------
■Italia dolce e amara: 甘くて苦いイタリア / 雨宮紀子
----------------------------------------------------------------------
第33回 40代、離婚に踏み込むか?の懊悩
この10年で、別居そして離婚、が増えた。60代以上では別居ブーム。結婚が続
くのは平均で15年間。離婚は85.5%が合意で行われている。
こんな現象が最新の平均的情勢として公表された(2010年度のIstat調査)。
イタリア人は現在でも平均的に20代で結婚し、そのうち、30%のカップルは40
代で離婚している。
男性なら45歳、女性なら42歳が、結婚生活にひびが入って、破綻が来る平均年
齢。15年間続いた結婚生活を解消することに決め、法的に別居を開始すると、
それぞれ47歳と44歳で離婚となる。
別居は南部では全国平均より高い。それだけ南部では夫婦間のいさかいも多い
ということなのか。結婚の縛りがゆるくなったということなのか。
子供は90%の場合、双方が育て、子供の養育費または生活費の支払いはほとん
どの場合夫が妻に支払っている。その額が一か月幾らぐらいかというと、全国
平均は約42,500円(447.40ユーロ)で、北部では約50,000円と少し高い。
さて、住んでいた家はどうなるのか。妻が住む場合が56.2%、夫の場合が21.5
%で、残りの20%近い場合は夫婦それぞれが独自の家か、住んでいた家とは別
の家に住むようだ。たしかに家がなくては別居はできない。
たとえ銀婚式が過ぎ、早婚の場合は金婚式が近くなったとしても、ここ10年で
倍に増えたのが、60歳以上の夫婦の別居だという。とくにこの年代の男性がもっ
と若い結婚生活に突入したいからなのかは知らないが、2010年の別居件数の約
10%、8,726件を占めている。
1975年に比較すると離婚は3倍に増えており、結婚が続く期間も短くなってきた。
最近は左派内で同性間の結婚を法的に認証するか否かで内部対立している。い
わゆるゲイの結婚が認証されるとしたら、現状の離婚傾向がさらに進むかもし
れない、などといったらゲイの人から怒られるかも。
ところで、恋人を作るにも友だちを増やすにもフェイスXXXなどが使われる昨今、
見かけに見栄をはるイタリア男はプロフィールをよりスマートにでっちあげる
ようだから、ご注意。(って、必要ない方もおられるだろうが。)
だいたい多くの人は“ベッラ・フィグーラ”(格好をつける)に弱い。嘘と真
実の境がいまいち分からない人もいるらしい。プロフィールの写真は知的でかっ
こいいように加工し、面白いとか教養ありそうと思わせたり、羨ましがらせる
ような場所や状況で自分を見せるようにする、と告白している。
これでオンラインで何もコンタクトがないとなれば、孤立を感じたり、負け組
と思ったりするだろうけれど、コメントを書くために好奇心をもったり本を読
んだり、筋トレをしたり、服の着こなしに気を遣ったり、要するによく見せた
い見栄のおかげで実際のパーソナリティも改良されることもあるとか。
就業が厳しいのも世界的な傾向だが、イタリアはさらなる深刻な状態にある。
定職に就くのはほとんど“幻想”といわれるほどになり、10人のうちほぼ2人し
か確定した職につけない。あとの8人強は“プレカーリ”(不安定)な一時雇い
の状況だ。
そこへ持ち家への固定資産税導入や消費税増税(1%)を始めとする圧迫も加わ
り、長いヴァカンスは権利としてあっても、多くの人はそれを消費するのに、
さぞ頭をつかい、知恵を絞っているだろう。
同じコンドミニアムの住人の夫婦は、年金生活者の旦那さんがプーリア州に実
家があるので、1か月以上もそこで過ごしに出発した。南部は、なにしろ、物価
も安い。
◎雨宮紀子(Gatta Italiana)
フィレンツェ在住のフリーランス。著書に『メディチ家 ルネサンス・美の遺
産を旅する』(世界文化社)。メルマガ『イタリア猫の小言と夢』は、melmaの
2007年メルマガ・オブ・ ザ ・イヤー受賞。
http://www.melma.com/backnumber_86333/
----------------------------------------------------------------------
■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
----------------------------------------------------------------------
デヴィッド・ハジュー 小野耕世 中山ゆかり訳『有害コミック撲滅』岩波書
店 4800円+税
スーパーマン、バットマン、スパイダーマン。ブロンディ、スヌーピー、ポパ
イにトムとジェリー。アメリカンコミックの人気者を数えればきりがありませ
ん。コミックは、音楽やハリウッド映画、そしてテレビドラマと並ぶアメリカ
を代表するポピュラー文化の一つでした。しかし、いまマンガといえば日本の
もの。冒頭に列挙した人気者たちも、その多くは1950年代までに生まれて
います。何故アメリカのコミックは「消えた」のか。その謎に著者ハジューは、
数多くの関係者へのインタビューを重ねながら迫っていきます。
コミックの起源は、19世紀の末に大衆的な日曜新聞に掲載されていたマンガ
にあります。1920年代に入ると多くのコミック雑誌が生まれました。コミッ
クが扱う領域は犯罪やホラー、恋愛ものに社会風刺と多岐にわたります。公序
良俗を嘲笑うコミックは、大人の世界に反発する10代の若者たちから圧倒的
な支持を受けていました。正規の教育ルートから落ちこぼれた才能たちが、コ
ミックという新しいジャンルを立ち上げていく場面の描写には、1960年代
の日本の少年マンガの黄金時代を彷彿とさせるものがあります。
コミックへの識者の批判は、誕生当時から絶えることがありませんでした。1
940年代の末にはアメリカ各地の高校で、コミックの「焚書」が行われまし
た。高校生たちが「自発的」にコミックを持ち寄り、校庭でそれらを燃やしま
した。1950年代には、少年非行が増大した原因はコミックにあるという心
理学者の本が強い影響力をもちました。コミックについての連邦議会の公聴会
が開かれ、その模様はテレビで全米に中継されます。公聴会の中継が、コミッ
クは有害であるという大人たちの認識を決定的なものにしたのです。
1950年代のアメリカ社会には、マッカーシズムにみられるように、異質な
ものに対する不寛容さと、過剰同調を求める空気が支配していました。そうし
た空気のなかで「コミック狩り」は行われたのです。コミックの業界団体は、
この公聴会の後、性や暴力や大人を嘲笑うかのような表現を一切排除する自主
規制案を打ち出し、それを厳密に履行します。コミックは毒にも薬にもならな
い、お子様向けの代物になり下がってしまいました。アメリカのコミックから、
かつてのような文化的創造性が完全に失われてしまったのです。
コミックが少年非行を激増させている。当時、コミックが悪玉にされた理由で
す。しかし、この時代に少年非行は減少していました。朝鮮戦争下の不安心理
が、少年非行急増の幻影を生んだのです。90年代末の日本でも、少年犯罪が
実際には減っているのに急増しているかのように語られ、ゲームや携帯電話の
ような新しいメディアへの依存がその原因であるという議論が影響力をふるっ
ていました。「失われた10年」と呼ばれる長期不況がこの幻影を生んだので
す。洋の東西と時代とを問わず、「大人」の考えることは同じです。
◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けることに感謝。
最新刊「若者は日本を変えるか-世代間断絶の社会学」世界思想社
----------------------------------------------------------------------
■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
----------------------------------------------------------------------
今回は「笑えない記憶」の話
ここのメルマガエッセーで結構何度も書いて来た「年寄りお約束の」物忘れの
話。
俳優の名前が出てこない、とか、同じ本の2度買い3度買い、とか、何かを忘
れ家に取りに戻ったものの何を忘れたのか忘れてしまった、とか、ウインカー
を動かすつもりでワイパーが動いてしまった_、とか……それぐらいなら「ほん
ま、困ってしまいますわ〜」で済ませられたのだが、最近「本当に脳の病気な
んじゃないか?」と考えてしまう程のことが起こった。
「キャッシュカードの暗証番号」が出て来なくなったのだ。
さすがにこれは笑い事では_すまない。
暗証番号は「セキュリティの為。第三者の推測されるような数字は使わない」
とされているから、なんの脈絡もないランダムな数字配列を設定している。そ
れでもちゃんと覚えていて使えて来ていた……今までは。
それがいきなり出てこなくなった。
何の脈絡もない数字の羅列と言うのは一度忘れるとテコでも出てこない。
そんな時に限ってプリペイドカードを忘れていて電車に乗る為には何としてで
も現金をおろさなければならない。時間は迫っている。暗唱番号は3回間違え
ると取引が出来なくなってしまうから銀行の隅で不審者のごとく1から9まで
の数字を反芻しつつ思い出そうと試みること5分。
「出た!」やっと思い出しなんとか現金もおろして電車に飛び乗った。
「何を食べたか忘れるのは老化現象、食べたかどうか覚えてないのは痴呆の症
状」だと言われている。
そのセオリーから考えると「暗証番号の存在を知っている」から老化現象の一
つだと考えても構わないのかもしれないが、この現象は本当に心臓に悪い。座
席についてからも本当に冷や汗が出てドキドキが止まらなかった。
その時はなんとか数字が出て来たから良かったものの、次に忘れた時思い出せ
るかどうかの保証はない。第三者へのセキュリティよりは自分の脳の危機管理
のほうが大切なんじゃないだろうか?
こうなったら暗証番号を「自分だけが判る暗号」の数字配列にし、もしもの時
はそのヒントに基づいて数字が推測出来るようにするのはどうだろう?
いや……この作戦はネットのパスワードを忘れた時用に使って失敗したのだっ
た。
「結婚記念日はいつですか?」
覚えてなかった。
◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html
----------------------------------------------------------------------
■はてな?現代美術編 koko
----------------------------------------------------------------------
第31回 『 フランス・ベルギーBD市場事情 ─ Moebius(メビウス) 』
夏なので、というわけでもないのですが、今回は少し現代美術作家から離れて
みようと思います。
実は今年3月になくなったフランスのバンドデシネ(以下 BD)作家、メビウス
の代表作の一つである『Bleuberry』シリーズの表紙の原画が73.000ユーロで落
札されたのをきっかけに、少しフランスの漫画にあたるBDのオークション事情
をご紹介できればいいなと思いました。
実はこのメビウスにはもう一つ実名Jean Giraudというネームがあります。
どちらかというと伝統的BD作品がこの実名で描かれ、彼のSF作品にメビウスと
いう名が使われています。
彼を今の作風に導いたのは、1960年代のメキシコの風土だったそうです。
何か奥深いところで彼の心に変化がおきたとインタヴューで述べています。
まずは下のYoutube画像をご覧ください。
□短編BD『The Long Tomorrow』イメージ
http://www.youtube.com/watch?v=8QozLSpjQc0
この画像を見てある映画を思い浮かべた方はSF映画通です。
実はこれってリドリー・スコット監督作品『ブレードランナー』の基本イメー
ジとなったBDなんです。それまでキラキラ光る未来都市という映像はよく見ら
れたのですが、汚くてスラム化された未来都市というのはメビウスのオリジナ
ルです。
メビウスはスコットの『エイリアン』の初期コンセプトや衣装デザインにも関
わり、また大友克洋作品『AKIRA』にも影響を与えるなど、多くのアニメーター
に尊敬されるフランスBD界の巨匠です。
2004年には『宮崎駿ーメビウス』と題されるエキスポがパリで行われました。
その際に二人が対談している画像と訳を見つけましたので、ご興味のある方は
http://moebius.exblog.jp/1569749/#1
をご覧ください。
宮崎さえもメビウスの作品に大きな影響を受けたということがおわかりになる
と思います。
□メビウスの作家活動ダイジェスト
http://matome.naver.jp/odai/2133138958532083701
フランスでは2005年あたりからBD専門のオークションが開催されはじめ、今年
の落札価格は目を見張るほどの高額になっています。とくにフランス語を話す
ものなら誰でも小さい頃に世話になる『Tintin』などのベルギーBDの原画の値
ではうなぎ昇りです。
例えば、Herg? (1907-1943)作品。今年6月のオークションで世界記録を出しま
した。
Tintin en Am?rique, 1932
32 x 32 cm
1 338 509 ユーロで落札。
これはヘルジェが最初に出版したアルバムなのでこの値がついたのだと思いま
す。巨匠ルノワールも吃驚の落札価格!ファンを世界中に持つというのは凄い
ことですね。
でも世界観の構築という意味において、メビウスのSF世界は私を魅了しつづけ
ます。ブレードランナーの映画では、2019年ぐらいの設定だったと記憶してい
ますが、私たちの世界はまだ随分とクリーンでよかった、よかった。
□他の作品の落札結果参照ページ
http://www.artcurial.com/fr/departements/bandes_dessinees/
とにもかくにも、フランスでのBD人気は健在で、日本の漫画もフランス人の心
をがっちり掴んで話しません。これからの動向も見逃せませんね。
◎koko
苦節10年、円とユーロとドルの間で翻弄されるアートセールコーディネーター。
まぐまぐメルマガ「Sacres Francais!映画と美術とパリジャンと」(通常は隔
週、この夏は不定期発行) 発行中。
http://www.mag2.com/m/0000191817.html
----------------------------------------------------------------------
■ケープ周郵記 内藤陽介
----------------------------------------------------------------------
ケープ周郵記(5) ケープ・ポイントと喜望峰
半島を南下してきた車は、喜望峰自然保護区の料金所に到着した。
ケープ半島観光のハイライトともいうべき喜望峰とケープ・ポイントを含む自
然保護区は植物の宝庫としても知られ、ガイドブックによれば、フィンボス、
プロテア、エリカなどが楽しめるという。
はたして、車窓からはところどころで、岩場に花が咲いているのが見えたが、
悲しいかな、植物についてはとんと疎いので、その名前などは全く分からない
のが、いささか情けない。
保護区内の道路終点の駐車場で車を降りて、ケーブル・カーに乗り、燈台が立
つ展望台へ向かう。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072401150033a.jpg
は展望台へ向かうケーブル・カー
ケープ半島の先端は二つに割れていて
(ケープ半島の地図は
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072400505518b.jpg を
ご覧いただきたい)、
その西側が喜望峰、東側がケープ・ポイントと呼ばれており、南北の位置関係
でいうと、ケープ・ポイントがわずかに南にある。そのケープ・ポイントの真
上にあり、遠くに喜望峰も見える場所ということで、展望台はルック・アウト・
ポイントと呼ばれている。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072423242733a.jpg
はルック・アウト・ポイントから見た喜望峰)
ルック・アウト・ポイントは海抜248m。かつて、ここには燈台が置かれていた
が、霧が発生して肝心の灯りが見えなくなることもしばしばあったため、1919
年、半島先端の海抜87mの地点に新しい燈台が建てられた。ただし、その後も旧
燈台の建物は取り壊されず、跡地は展望台として世界中の観光客を集めるよう
になったというわけだ。
ルック・アウト・ポイントには、教師に引率された中高生と思しき団体の先客
があった。このため、ただでさえ広くはない展望スペースは大混雑。2若者た
ちは、ワイワイガヤガヤ騒いでおり、とても「ここが教科書に出てきた喜望峰
か」などと感傷に浸れるような環境ではない。
おまけに、展望スペースに設置された、世界各都市の方向と距離を示した案内
板には、ロンドン、北京、アムステルダム、シドニー、リオデジャネイロ、エ
ルサレム、ニューヨーク、ニューデリーはあるものの、日本の都市はなかった。
よりによって北京なんかが入っているのに…。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724013320df4.jpg
は展望スペースの観光客と案内板)
なんとなく釈然としない気分だが、それでも気を取り直して、ケープ・ポイン
トを見下ろす場所に進む。
厳密にいうと、アフリカの最南端でインド洋と大西洋がぶつかるのは、喜望峰
でもケープ・ポイントでもなく、アガラス岬で、そこにはそのことを示す看板
もあるのだが、ケープ・ポイントの沖合でも、時として二つの大洋がぶつかっ
て渦を巻くようすが見られるという。
そういう話を聞くと、ケープ・ポイントの沖合では、あたかも、鳴門の渦潮の
ように荒れ狂う海の勇壮な風景が見られるように思ってしまうのだが、現実に
は、波の穏やかな場合も少なくないようだ。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724015734798.jpg
は1905年に差し出された絵葉書で、ケープ・ポイントの断崖に打ち寄せる波の
写真が取り上げられているのだが、沖合の波は静かで渦巻は全く見えない。
実際、僕が中学生の頃にバカ売れした寺尾聰のアルバム「Reflections」に収録
されている「喜望峰」という曲にも、「灰色の空と荒れ狂う海 そいつが見た
いから心が騒ぐ」という一節があって、30年ぶりにそのことを思い出した僕も、
心を騒がせながら展望台へと向かったのだが、眼下に広がる海はいたって静か
で、いささか拍子抜けだ。
もっとも、1905年のモノクロの絵葉書とは異なり、目の前に広がる原色の海は
左右で明らかに色が違っており、どうやら、その境目が二つの海が交わるとこ
ろと見て間違いあるまい。そういうことなら、とりあえずはそれで良しとしよ
う。ちなみに、崖の上に建つ小さな小屋は大気観測所で、1919年に建てられた
燈台はその先にあるというのだが、展望台からは死角になっていて見えない。
(http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724020422235.jpg
は2010年に撮影したケープ・ポイント)
ルック・アウト・ポイントから喜望峰の先端までは、トレッキング・コースに
なっていて、その気になれば、1時間ほどで歩いていくことも可能だというの
だが、僕たちツアー客は駐車場に戻って、車で喜望峰へと向かう。
ここで、いまさらながら、喜望峰“発見”のストーリーをおさらいしておこ
う。
1487年10月、バルトロメウ・ディアスひきいるポルトガル艦隊は、国王ジョア
ン2世の命を受け、アジアにいたる交易路を確保するとともに、アフリカにある
キリスト教徒の王、プレスター・ジョンの国を探し出し、友好関係を樹立する
ため、リスボンを出港した。
ディアスの船団は、まずコンゴ川の河口に向かい、そこから南下して、ウォ
ルヴィス・ベイ(現ナミビア領)に入港。さらに南下してポート・ノロス(現
南アフリカ共和国領)付近に達したが、嵐に遭遇し、沖に流されてしまう。こ
のため、陸地に近づこうと東へ向かったが、陸地に到達できなかったため、北
上してみると西側に陸地が見えたという。彼らは、漂流しているうちに、いつ
の間にかアフリカの南端を通過していたというわけだ。
その後、彼らは1488年2月3日にモッセル・ベイ(ケープ・タウンとポート・
エリザベスの中間より、やや西側の港町)に上陸。これが、後の歴史書に「ディ
アスのアフリカ南端到達」として記されることになる出来事である。ちなみに、
モッセル・ベイという地名は、1601年にこの地に上陸したオランダ人航海士が、
ムール貝(=mussel)が大量にとれることから命名したもので、ディアスとは直
接の関係はない。
さらに、一行は海岸沿いにアガラス岬をまわり、このまま航海を進めればイン
ドに到達できるとの見通しが立ったことで帰路につき、その途中で1488年5月
に喜望峰を“発見”し、同年末、リスボンに帰還した。
( http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20120724232836edb.jpg
は、南アで発行された喜望峰発見500年の記念切手のうち、喜望峰の鳥瞰図をディ
アスの肖像を組み合わせた16セント切手)
当初、ディアスはリスボンへの帰途で発見した岬を“嵐の岬”と命名して国
王ジョアン2世に報告したが、国王は、アフリカ南端を廻って東方への航路を
拓いたことをいたく喜び、“喜望峰”と改名させた。この改名が結果的に大成
功だったことは、実際のアフリカ大陸最南端のアガラス岬よりも、喜望峰=ア
フリカ南端の地というメージが人々の間に深く浸透していることからも明らか
であろう。
さて、喜望峰へは5分ほどで着いた。
海岸には岩がごろごろしていて、その間に、流れ着いた海藻や丈の低い植物が
顔を出している。波頭の向こうの大きめの岩の上には海鳥の群れが留まってい
たりして、南の果てという風情が感じられるのが良い感じだ。かつては、強風
で遭難する船が多く、“さまよえるオランダ人”と呼ばれた幽霊船の目撃談も
あったというが、たしかに、そういう雰囲気はある。
http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/2012072509390903d.jpg
殺風景な海岸には、“アフリカ大陸の最南西端”を意味する英語とアフリカー
ンス語の標識が立っており、その前には記念撮影をしようとする観光客が列を
なしている(http://blog-imgs-44.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/
20120725095645a2b.jpg )が、それ以外は、世界的な観光地という雰囲気はほ
とんど感じられない。
時間が許せば、こういう場所でビールでも飲みながらのんびりと昼飯を食って、
昼寝をしたいところだが、ツアーでの滞在時間は30分ほど。次の目的地となっ
ているペンギンの保護区、ボルダーズ・ビーチを目指すべく、僕たちは再び車
に乗り込んだ。
◎内藤陽介(ないとう・ようすけ)
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。最新作『
年賀状の戦後史』角川Oneテーマ21
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/
----------------------------------------------------------------------
■広告募集のお知らせ:当メルマガは現在5207名の読者の皆さんに配信してお
り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
----------------------------------------------------------------------
■編集後記
来月、「はてな?現代美術編」は休載です。
楽天がKoboという電子書籍端末を出し、そろそろAmazonがKindle日本語版を出
しそうな今日この頃、そろそろ真剣に一つくらい端末を持とうかなと考えてい
る。
買うとしたらiPadのようなカラーではなく、Eインクのモノクロ端末を買いたい
と思うのだが、やっぱり思うのは、端末に縛られたくないなと言うこと。
電子書籍端末は、顧客をロックオン(端末を買ったら、定められた電子書店で
しか本を買えない)するのが当たり前になっている。もちろんPDFなど定められ
た書店にない本も読めるようにはしてあるが、やっぱロックオンされるのは気
分のいいものではない。
そうなると、iPadのようないろんなアプリケーションで電子書店を使い分けら
れるタイプの端末がいいと思うが、電池があまり持たないし・・・。
なんか、Kindle日本語版が出ても、ああでもない、こうでもないと悩んで買わ
ないような気がする・・・。
====================================================
■ 電子メールマガジン「[本]のメルマガ 」(毎月5・15・25日発行)
■ 発行:[本]のメルマガ発行委員会
■ 掲載されたコンテンツを小会の許可無く転載することはご遠慮ください。
■ copyrightはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・ご質問は25日号編集同人「朝日山」まで
メールアドレス asahi_yama@nifty.com
(あっとまーくは、全角ですので半角にしてください)
■ バックナンバーurl http://back.honmaga.net/
■ このメルマガは『まぐまぐ』を通じて発行しています。
■ メールマガジンidナンバー:13315
■ 購読・解除・変更手続きは http://www.mag2.com/ より行えます。
====================================================
◎[本]のメルマガ
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000013315/index.html
◎[本]のメルマガ
のバックナンバー・配信停止はこちら
⇒ http://archive.mag2.com/0000013315/index.html