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[本]のメルマガ vol.363
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■■ [本]のメルマガ                2009.07.15.発行
■■                             vol.363
■■  mailmagazine of books        [梅雨も終わって夏本番 号]
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■CONTENTS------------------------------------------------------------

★トピックス
→ 〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガ イベントの告知です!ヨロシク!

→ 「東京堂書店 トークショー」2連発!
   桐野夏生先生×高山文彦先生トーク&サイン会
   島 利栄子さん トーク&サイン会

→ 第2回『本の楽市』@座・高円寺 開催

【連載】・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★ 「虚実皮膜の書評」/ キウ 
→ 伊藤計劃の遺作、『ハーモニー』をとりあげます。 

★ 「図書館の壁の穴」/ 田圃兎 
→ 図書館システムの現状と問題点、可能性について熱く語ります。

新連載開始です!

★ 「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
→ 堀内誠一さんとの思い出を語ります。

★ 「本棚つまみ食い」 / 副隊長
→ 幻の鳥、ミヤコショウビンとは??
   絶滅危惧種の野鳥の本の紹介です。

★ 「知るは楽しみ」 / 立木 菜
→ 本は誰のものなのか、
   日々本に触れながら感じる、書店員の本音を綴ります。

★ 「今月の***」/ 畠中理恵子
→ このひと月に出会った気になった本を紹介します。

今月のお休みは… ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

★ 「育児と書」 /柳瀬徹 
→ もうすこしお待ちくださいね! 

★ 「ひよっこ行政書士 Rock’n’law相談室」/ いそむらまき 
→ 今月はお休みです。来月にご期待ください!

★ 「舐めるように読んでみる」/ たまこ
→ 今月はお休みです。偶数月によろしくお願いします。

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■トピックス
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■〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガ
 10周年記念 読者&執筆者感謝イベント詳細決定!
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 〔本〕のメルマガ&〔書評〕のメルマガ10周年記念 読者&執筆者感謝イベ
ントですが、会場と日程、時間が決まりました。

 お申込みは、
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

 パーティ形式で、縁とゆかりのある方入れ替わり立ち替わりその場のノリで
トークしていただくという、トークセッション方式です。

 日時:8月28日(金)19:00-21:00(途中入退OK)
 会場:ビジョンセンター秋葉原
    東京都千代田区神田淡路町2-10-6 OAK PLAZA 2F
    http://www.visioncenter.jp/location/index.html

 会費:(※飲み放題・食べ放題つき)
     メルマガ読者   2000円
     過去の執筆者 1000円
     それ以外の方  3000円

 詳細はHPまで。ぜひご参加くださいませ。
 http://www.honmaga.net/modules/eguide/event.php?eid=1

■桐野夏生先生×高山文彦先生トーク&サイン会
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高山文彦 父を葬るちちをおくる(幻戯書房刊)の 刊行を記念して
桐野夏生先生×高山文彦先生トーク&サイン会 創作する重み を開催いたし
ます。

◆日時:7月21日(火)午後6時より(開場17:45)
◆場所:東京堂書店本店6階(東京都千代田区神田神保町1-17)
    http://www.tokyodoshoten.co.jp/
◆参加費:500円
ご予約、お問い合わせは東京堂書店1階カウンターで。お電話(03-3291-5181)
でも承ります。

■島 利栄子さん トーク&サイン会
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「手紙が語る戦争」(みずのわ出版)刊行を記念し「女性の日記から学ぶ会」
代表、島 利栄子さんが講演されます。
会の活動のなかで寄せられた戦時下の書簡、日記を読み解き、時代の波に呑ま
れながらも真摯に生きぬいた庶民の実像に迫ります。

◆日時:7月25日(土)午後3時より(開場14:45)
◆場所:東京堂書店本店6階(東京都千代田区神田神保町1-17)
    http://www.tokyodoshoten.co.jp/
◆参加費:500円
ご予約、お問い合わせは東京堂書店1階カウンターで。お電話(03-3291-5181)
でも承ります。

■第2回『本の楽市』@座・高円寺 が開催されます!
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■第2回『本の楽市』

座・高円寺主催の夏の劇場にあわせて、新刊書店や古書店ら様々なお店が
参加する、たのしい本をそろえた『本の楽市』がはじまります。

■期間:7月18日〜8月2日
■場所:座・高円寺
  〒166-0002 東京都杉並区高円寺北2-1-2 tel 03-3223-7500
   http://za-koenji.jp/

新刊・古書店のコラボレーション本の市がにぎやかに展開します!

最終日8月2日には『一箱市』も予定しています。
エントランスホール内で開催するので猛暑・雨天でもOK!
参加希望は先着30名まで、メールでお申し込みください。
  →kouenjirakuichi@gmail.com

フリーペーパー”こ・ら・ぼん”発行。楽しい内容盛りだくさんです。

◆『本の楽市』 参加店舗 〈順不同)
・茶房 高円寺書林 〈新刊〉・古楽房・トムズボックス 〈新刊〉
・えほんやるすばんばんするかいしゃ・アジアンドッグ
・モダン・クラシック・にわとり文庫・藤井書店・ポラン書房・常田書店
・コクテイル書房・ZQ・ナワ・プラサード (新刊)
・旅の本屋のまど (新刊)・ハチマクラ (紙モノ)
・銚子BMT企画 (木工細工)

楽市会場では絵本の朗読やじゃんけんゲームなど
お楽しみを用意しています!中央線の底力!ぜひご来場ください。

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■ 「虚実皮膜の書評」/ キウ
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『ハーモニー』 伊藤計劃 早川書房 08.12

 21世紀後半、世界は多くの人命を失った「大災禍」を経て、大きく変貌を
遂げている。国家は解体され、人々は各地に林立する生府と呼ばれる医療合
意共同体に所属している。テクノロジーの進化により、病気はほぼ消滅し
て、人間は事故か老衰以外ではほとんど死ななくなった。人々はWatchMeと
呼ばれる恒常的体内監視システムを身体にインストールすることで、自身の
健康を体内から常に監視している、いや監視されている。家庭にはメディケ
アという医療薬精製システムがあり、体内の病原を叩くための医療分子(メ
ディモル)を精製している。「大災禍」以降、人間の身体は個人のものでは
なく「社会的に稀少なリソース」として大事にされる。社会は生命主義を掲
げ、健康社会を構築し、その中で身体は「公共物としての身体」となる。

 このような社会に耐えられない人間がいる。真綿で首を絞められるような
「慈母によるファシズム」。自分の身体は自分のものだ。子供にはまだ
WatchMeをインストールすることが出来ない。主人公たち女子高生3人は
WatchMeをインストールされる前に自殺を試みる。自分の身体を社会へ明け
渡す前に、社会の大事なリソースでありインフラである自分の身体を破壊す
る。反社会的な言動でカリスマ的な魅力を発する御冷ミァハはメディケアで
精製した栄養の吸収を拒絶する錠剤を、友人の霧慧トァン、零下堂キアンと
ともに飲む。そして御冷ミァハだけが自殺に成功する…

 主人公・霧慧トァンは自殺未遂から13年経って、世界保健機構(WHO)の
監察官を務める。トゥンは基本的には反社会的なスタンスを放棄してはいな
い。世界各地の紛争地域に行って和平交渉をこなす仕事の傍ら、健康社会が
排除してしまった嗜好品(煙草やアルコール)を、紛争相手の一方から取引
をして入手し、楽しんでいたりする。しかし、それは社会の枠組みの中での
ちょっとした逸脱に過ぎない。自殺に成功したミァハのようなラディカルさ
はない。

 物語は動き出す。突然起こった世界同時多発自殺によって、目の前で友人
の零下堂キアンが自殺を遂げたことから、この事件の背後に13年前に自殺し
たはずの御冷ミァハの影を感じ取り、トゥンは捜査に乗り出す…

 事件の謎を追及してゆく過程で、ハーモニー(調和)というタイトルにあ
るとおり、究極の調和とは何かを突き詰めていったときに現れる世界が、ど
のようなものであるのか、それは人間の尊厳を損なうものであるのか、その
究極の形態といえるものなのか、といったことをめぐる争いが、物語の主題
として浮かび上がってくる。それは、人間の意識をめぐる議論となる。

 近未来小説としての様々な小道具もたくみに描かれているし、提示される
世界像も違和感なく上手に描かれていると思う。何よりもそのような細部が
読んでいてすごく面白い。細部がしっかりとしているSF小説はやはりすご
い。その反面、人物描写が平板な感じもするけれど、この小説のテーマでも
ある人間の意志・意識の究極の調和(消滅)といったことを考え合わせる
と、これでいいようにも思う。ラストのカタストロフィははかなくも美しさ
さえ感じさせる。これが著者の三作目にして遺作になるのだけれど、残念な
ことと思うとともに、遺作にふさわしい「白鳥の歌」とも言うべき繊細さに
溢れているように思う。

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■ 「図書館の壁の穴」/ 田圃兎
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第27回 システムを突破口に

先日ある出版社の座談会で、Project Next-Lという、みんなで集まって新し
い図書館システムを作ろうというグループのコアメンバーの方々にお会いし、
話を聞く機会があった。

Project Next-Lと聞いて、はたしてどれくらいの方がご存知なのだろう?
図書館関係者でも、名前は聞いたことがあるけれど、内容は良くわからなく
て、他人事だと思っている人が多いんじゃないかと思う。

現に僕自身もそうで、図書館システムを実際にプログラムを組んでつくりあ
げるグループという大雑把な理解をしていた。
プログラム言語は15年以上前に仕事で使っていたCOBOLとPL/1なら少しは書け
るけれど、javaやらperlやらRubyといった新しい言語はあまり自信がないか
ら、自分には縁遠い話だと思いずっとスルーし続けてきた。

2006年にNext-Lが発表された時に「図書館員が集まってシステムをつくる」
というイメージが一気に浸透し、去年「プロトタイプができました」という
情報が流れたので、僕と同様の勘違いをしていた人も多いのではないだろう
か?

座談会に誘われたのを機に、改めてNext-Lのホームページをよく読んでみた
ところ、図書館システムの仕様書を作りましょうという趣旨の団体であるこ
とがわかった。
莫大な費用がかかっているにもかかわらず、現状の図書館システムはあまり
にも世の中の進歩から取り残されている。図書館員・利用者のニーズにもっ
と沿うような形で、臨機応変な対応ができ、コストも今より押さえたものが
できないかという考えから、図書館員が集まって、新しい図書館システムの
仕様書を作ろうと立ち上げた団体である。

プロジェクトでは、仕様を検討するのと並行して、実際にRubyという言語で
プログラムを組める人材が内部にいたからプロトタイプを作ることになり、
そのプロトタイプの出来が良かったので、仕様書だけでなく、実際に動くモ
ノも作ってみようという流れになって、現在まで進んできたらしい。

仕様を考えるだけならば、もちろんプログラミング能力なんて関係ない。
例えば、貸出処理のときは、バーコードを読み込んだら即座に貸出という方
式と、読み込んだ後で実行ボタンを押して処理が確定する方式と、どっちが
いいでしょう?という実務レベルの話ができる場だったわけだ。
それならば、貸出・返却・受入といった作業をしている図書館なら誰でも参
加できる。
そんなわけで、喜んで座談会に参加させてもらった。

実際のところ、今回の座談会でプロジェクトのメンバーは、もっと多くの現

場の司書の声を聞きたいと思っていることが、よくわかった。
このプロジェクトでは、まず最初に学校図書室や小規模公共図書館、あるい
はこれまで図書館システムを導入していなかった館などを対象としたシステ
ムをリリースするのだという。
それならば尚更、対象となる図書館で働いている方々の意見を、早いうちに
取り入れた方がいいだろうと思う。

だが、プロジェクトの先頭に立って情報を発信しているコアメンバーは、最
新技術に造詣の深い優秀な方々なので、Next-Lの先進的な機能ばかりが
知られる結果となり、ますます現場の図書館員から見ると縁遠い印象となっ
ている感じがする。
また現在のプロジェクトのコミュニティにも、WEBの技術に関する知識がな
い人は、ちょっと発言しにくい雰囲気があるように感じる。

僕をはじめ、現場で働く多くの図書館員達が関心を持つようになるには、プ
ロジェクトのコアメンバーも、気軽に通りすがりの司書が参加したくなるよ
うな雰囲気作りをする必要があるのではないかという気がする。
メンバーの真意が正しく理解されれば、意欲的な人はどんどん集まるはずだ。

僕と同じような誤解をしていた方々は、ぜひNext-Lのサイトを覗いてみて欲
しいと思う。
そこで興味を持った人は、とりあえずメーリングリストに参加することをお
薦めする。(もちろん僕もすぐに入りました。)
また、図書館員に限らず図書館利用者の方も、このコミュニティでは自由に
発言ができるので、OPACはもっとこうなれば便利だ、などの意見をどんどん
出してみると良いのではないかと思う。

○Project Next-L


             *  *  *

Project Next-Lが最終的に目指しているところを、まだ正確に理解できたと
いう自信はないので、一概に何とも言えない気もするのだが、以前から僕は
各図書館がシステムを共有できればいいと思っていた。

例えば、僕の勤務先のシステムと同じものを導入している図書館は、同県内
だけで10館以上もある。
各館が個別に数千万円もかけてシステムを導入するよりは、代表館にシステ
ムを入れて、それを参加館が共同利用して、使用料を支払うような方式にし
た方が、ずっと安上がりだろう。
一本化してコストを抑え、その分だけ本を買った方がいいと僕は思っている。

既に海外では、米国の大規模書誌ユーティリティであるOCLCが、システムの
共同利用を目的とした図書館業務管理システムの構築を表明している。

日本でも、国立国会図書館がシステムを用意して、すべての公共図書館がそ
のシステムを共同利用するという形が実現できないものだろうか?

各館の事情や個性的なサービスという点は、外付けの機能を各館が開発して
もいいだろうし、仮にProject Next-Lのシステムや、まちづくり三鷹のオー
プンソースのシステムのようなものが採用されれば、Rubyを習得した各館の
司書たちの手で、継続的にシステムを成長させることもできる。

現在多くの図書館がそうであるように、メーカーのパッケージシステムをリ
ース契約で導入した場合、契約期間内はどんなに時代遅れの機能になろうと
も我慢せざるを得ない。それを考えると、この点でオープンソースのシステ
ムは大いに魅力的だ。

ともかくシステムが一本化できれば、複数の図書館が一体となって動ける可
能性が開けてくる。
そんなところを突破口に、各図書館間の人事交流を進めていけば、司書のキ
ャリアパスを確立できるかもしれない。

             *  *  *

公共図書館で働く正職員の司書は、専門職として採用されるケースは少なく、
数年ごとに異動してしまう場合が多い。
図書館で働きたくて公務員になったのに、ほんの数年間だけしか図書館に勤
務できなかったなどという話を聞くことも少なくない。
その逆に、図書館勤務を望んでいなくても人事異動で図書館に回される場合
もある。

意欲があり長期的に図書館で働きたいと思っている職員に対しては、例えば
市民課だとか水道課だとかに異動させるのではなく、他の自治体の図書館や、
学校図書館、もしくは書店や大学など、業界や現行制度の枠を越えた人事交
流で、トータルで本に関わる仕事をする人を育てる体制をつくれないだろう
か。
もちろん役所がそれを簡単に容認するとは思わないが、もはや自治体直営ば
かりが公共図書館ではない。いろいろ可能性はあると思う。

◎田圃兎
 『みんなの図書館』9月号(図書館問題研究会)に原稿書きました。

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■ 「ときには積ん読の日々」 / 吉上恭太
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第1回  誠一さんの思い出

 いざ原稿を書こうと思って、キーボードに向かったものの、さてこまった。
ぼくは評論家ではないし、読書家といえるほど本を読んでいるわけでもな
い。だから書評なんて出来ないし、難しいことも書けません。
 とはいうものの部屋には本がうずたかく積まれ、ときおり枕元の本がくず
れて痛い思いをしている。(本の角がおでこに当たり傷を作ること数回あり)。
だから本が好きなことは間違いないようだ。
 そういえば幼い頃から、本とレコード、楽器に囲まれて生活したいと思って
いた。その願いは確かに叶っているのだが、それがよかったのかどうか?
 疑問に思い始めている今日この頃です。

 ぼくは今まで児童書の翻訳や編集をしたり、本や雑誌の周辺の仕事をして
きたので、個人的な本や雑誌との関わりを書いていこうと思います。

 今回はちょうど世田谷文学館で展覧会をしている「堀内誠一」のことを。

 もうかなり前のことだけど、堀内誠一と師走の下町を歩いたことがある。
 誠一さんは母の妹の夫であり、ぼくにとっては義理の叔父だ。といっても、
忙しい人だったし、たまに叔母の家に行っても、仕事をしていて、話をする
ことはめったになかった。無口で、いつも怒っているように見えて、気楽に
話しかけられなかった。それに、ぼくが編集の仕事を始めてからは、
なんだか雲の上の人という感じでこちらが気後れしてしまい、会っても妙に
緊張してしまう。
 それでもほんの少しだけだけれど、堀内誠一の世界に連れて行って
もらったことがある。
亡くなるちょっと前のことだと思う。どういうわけか、コンサートに誘って
もらったことがあった。チェリストの翠川敬基さんといっしょに当時売り出
し中だった女性チェリスト、オーフラ・ハーノイを聴きに行った。コンサー
トが終わったあと、マガジンハウスのうらにあるいきつけの店に行ったと思
う。
ふたりは、その日のコンサート評を話していたけれど、 誠一さんと翠川さん
の評はかなり辛口だった。ぼくには彼女の演奏の善し悪しはよくわからなかっ
た。ビートルズナンバーを演奏したのは覚えている。飲み屋のカウンターで
ぼそりぼ そりと話す誠一さんたちは、なんだか大人だなーとボーッと見てい
ただけだった。
 その年の師走、たぶん12月30日だったと思う。浅草あたりを歩くから、
と誘ってもらった。子供の頃、遊んだ場所を数人でぶらぶらと歩きまわった。
全部は回らなかったけれど七福神巡り、花やしきにも行った。お化け屋敷
に行ったのを覚えている。
 大晦日はにぎやかだけれど、30日はたいていの店がしまっていて、町は
静かだった。年越しそばを食べようということになったのだが、どこの店も
翌日に備えて休業していた。結局、みんなで堀内家に戻り、カップ麺を食べ
たような気がする。
 町を歩く堀内誠一は、じつに軽やかだった。「こっちよ」といってせまい
路地に入り、テクテクと歩いていく。その歩調は速すぎず、遅すぎず、ちょ
うどよいスピードだったのが印象的だった。
 ぼくの堀内誠一の思い出は、あの師走の町をいっしょに歩いた“軽やかさ”
なのだった。

「堀内誠一 旅と絵本とデザインと」
 世田谷文学館(http://www.setabun.or.jp/)
2009年7月4日(土)〜9月6日
(日) 開館時間:10:00〜18:00
 休館日:毎週月曜日 ただし、7月20日
(月)、8月31日(月)は開館。7月
21日(火)、8月30日(日)は休館。

 これまでのどの展覧会よりも、堀内誠一ワールドを見渡せる展示になって
いると思います。雑誌が好きな人、絵本が好きな人、旅が好きな人に
おすすめ。とくに若い人に見て欲しいです。

 この展覧会に合わせて発行された平凡社コロナ・ブックス
『堀内誠一 旅と絵本とデザインと』は、
写真、図版も豊富で楽しく、堀内誠一ガイドブックとして、
とてもよく出来ている。
展覧会を見てから、この本を読み、 また再び展覧会に行くというのが
堀内誠一ワールドツアーの基本かもしれない。

◎吉上恭太 文筆業。仕事よりギターを弾いていることが多い。

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■ 「本棚つまみ食い」/ 副隊長
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 初めてお目にかかります。副隊長と申します。
 色々と本を紹介しつつ、あれこれ書いて参りますので、未熟者ですがよろ
しくお付き合いください。

 今回は 『絶滅危惧の野鳥事典』 川上洋一、東京堂出版、2008 です。
 
 この本は環境省のレッドデータブックから100種類の鳥類を取り上げて
編纂された事典で、トキやハヤブサのような皆が知っているような鳥から、
ダイトウミソサザイのような無名な鳥までイラストつきで載っていて、興味
を引かれた鳥から読んでいっても面白く読めます。

 私はこの本に二種類ほどお目当ての鳥があって、この本を手にとりました。
その一つが、かつて新聞の片隅で見た、ミヤコショウビンという鳥。標本が
一つしか残っていないというこの幻の鳥について、詳しいことが知りたかっ
たからでした。そして「幻の鳥の正体が今ここに!!」と思って、パラパラ
とページをめくっていくと、ミヤコショウビンの見出しとその下に「絶滅」
の二文字が。やはり絶滅していたのかと少しガッカリして本文を読むと、実
はこの鳥は100年以上前の曖昧なラベル貼りによって未だにその正体が分から
ない鳥で、ミヤコショウビンという鳥がいるのかどうかさえまだ分からない
というのが真相なのでした。幻は幻のままでした。しかし、本当にいたとし
ても100年前の標本ひとつきりというのでは絶滅は確定的でしょうが。

 そこで他に「絶滅」と区分されている鳥はどんな鳥がいるのかと探してい
くと、100種中13種もいて、意外と多いという印象を持ちました(レッドデー
タブックでも絶滅は13種)。絶滅・鳥といった言葉からはトキ・コウノトリ
・アホウドリなど今まさに危機にある鳥たちや、ドードー・リョコウバトと
いった海外の鳥が思い起こされます。けれども日本にも地球上から消え去っ
た鳥がかなりいたことを教えられます。これらはほとんどが大東諸島と小笠
原諸島に集中しています。島に固有の鳥が多く、天敵のいなかったところに
人間によってほかの生物が持ち込まれたり、森林の伐採、あるいは狩猟など
が原因と考えられているようです。

 既に絶滅した鳥の一方では、今まさに絶滅しつつある鳥たちがいます。生
息環境が無くなってきたというのが主な原因ではありますが、それだけとい
うわけでもありません。原生林の伐採、干潟の埋め立てなどは想像がつきや
すいところですが、漁業による混獲・交通事故なども深刻な影響を与えてい
るようです。さらには越冬地(海外)の森林伐採が原因だけれども、その伐採
された木材が資源として日本へ運ばれていたということもあったり、そこに
はいろいろな理由が存在していたのでした。

 あとがきで著者自身が述べているように、鳥の生態より、どう鳥たちが追
い込まれてきた(または絶滅に至った)のかという点を詳しく書いているの
がこの事典の特徴なのです。そしてそれにより私たちの経済・社会がどう鳥
たちに影響を与えているかを教えてくれます。例えば風力発電は二酸化炭素
を出さないけれど、衝突や設置の際の環境破壊を考えると鳥にとっては優し
くない(「オジロワシ」の項)とか。世の中を見つめるときに、鳥の視点だ
とどうかという点を考えさせてくれるのです。そういった社会との関わりに
記述が多く割かれているので、生物の本は普段読まない方でも興味を持って
いただけるのではないかと思います。

 ところでもう一つのお目当ては、この本の表紙に描かれているエトピリカ
という鳥でした。私のとても好きな鳥で、葛西臨海水族館にいるのでお立ち
寄りの際にはぜひご覧になってください。とてもかわいいですよ。しかし区
分は「絶滅の危機に瀕している」ということで、国内の繁殖地は二ヶ所しか
残っていないのです。なぜそんな貴重な鳥が水族館で普通に見られるかにつ
いては本書の「ウミスズメ」・「カンムリウミスズメ」・「エトピリカ」の
項をご覧になってください。

◎副隊長 鉄道とペンギンの好きな書店員
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■ 「知るは楽しみ」 / 立木 菜
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 梅雨なのにあまり雨が降っていないように思うのですが、動き回るとじっと
りと汗ばんでいます。曇りの日が続いていても、日に日に緑が濃くなっていく
のを、通勤途中の車窓から眺めています。

もうすぐ暑い毎日がやってきます。

今回から書かせていただくことになりました、立木菜です。

どうぞよろしくお願いします。

本を手に取るとき、私は書名を見ている。著者名を見ている。帯に書かれた
言葉を見、描かれている表紙に集中し、手にしているそのものに五官を総動員
している。ただし、味は求めない。そうして、書かれていることを想像し、
表紙を開く。

一瞬の間に、それこそ日常、反射的に行っていることなので、書き表そうと
すると拙い表現になってしまうのだけれど、老若男女を問わず、言葉の違いも
超えて、本を手にしたほぼ全ての人がそんな時を刻んでいるはずだ。

あ、幼子は味覚も求めていますね、触覚の一部として。かつては私もそうだっ
たはず。あの様子はなんとも、まぁ、楽しそうです。本と触れ合うことの始ま
りなのだと思う。そうやって本になじみ、生活の一部になって、そのうち違う
意味で本を味わうようになるのだろう。

味覚対象としての本の話は置いておくとして、興味の対象は本自体であり、書
かれている内容である。その後にくるのが、値段であり、出版社名。

百年に一度と言われるこの不況下、私自身も野口英世に連れ立って去られる
のはなんとも心苦しいし、やりくりする知恵や余裕を持ち合わせていないので、
どうしても本を手にしながら頭の中を数字が駆け巡る。傍から見ると怪しい人。
最後に¥が付いて、棚へ戻るか、会計に向かうか決めなくてはならない。以前、
好きなだけ本が買えたらいいのにね、と話したら、でもそんなことをしたらも
う普通の生活はできませんよ、と冷静な返答をされたことがあったような。た
しかにそうだ。積読ばかりになってしまったら肝の小さい私は平静ではいられ
そうにない。今ですら居心地が悪いのに。

出版社名には気付かないままでいることも多い。文庫や新書は別だけれど、
単行本はほとんど気にしていなかった。後から、あの本はどこから出てい
たっけ、と思い出せなくて話の腰が折れてしまう。装丁で出版社がわかったり
もするけれど、普段は気にしないまますごしてしまった。


さしたる知識もない上、読書人であるという気負いもないのであまり大きな口
はたたけないけれど、それでも不思議で仕方のないことがあった。


本は誰のものなのか?


出版される本やその案内を見ていて、誰に伝えたいのか、が見えない。本を
身近に感じている人にだけしか届いていない気がしてならない。それは自分
にも向かってくることなのだけれど。

一冊の雑誌、一冊の本に話題となり売れる「強さ」があっても、褪せない強さ
をもつものはあまりない。そして、並べる中で強さを持たせる力量がない。
「既刊本が売れない」要因の一つはそこにあるように思えてならない。ひとま
ず時代に合わせたようなにび色や玉虫色しかあつまらなければ、それはさ
ながら迷彩模様の世界だろう。信頼や期待が失せれば、不安で手を伸ばす
こともできない。

様々に交じり合うのなら、せめて点描画のように、主張するのとは違う強さと
鮮やかさを持つような、全体を彩る一部とはなれないのか。それが、時代を
超えて受け継がれる文化となっていくのではないのだろうか。


なんだかとても壮大なことを書いてしまって、まとまりのなさに焦りを感じて
いる。ただ、言い訳をさせていただけるのなら、普段からこんなことを考えて
いるわけではなくて、柄谷行人の「日本近代文学の起源」を読む機会があった
からです。講談社文芸文庫から出ていたものが再版されて「日本近代文学の起
源 原本」となり、岩波現代文庫からも「定本 日本近代文学の起源」が出版
されました。

そこからは、「起源」を見ること、近代化の中でそれがどうネジレていったの
かを考えること、そしてそれを知った私はどうするのか、を考えるきっかけと
なりました。難解であったり、ときに説明の物足りなさを感じながらも、明治
以降の近代化のなかで作り上げられていった「文学」を追う過程はスリリング
なものを感じました。

伝説も苦労話も成功秘話もいらない。必要なのは、「どうありたいか」と考え
続けることなのではないか、ではないか、と自分に突きつけながら、今日も明
日も明後日も、本とかかかわっていきたい。

◎立木 菜 (たちき さい)
書店での勤続年数は片手で済んでしまう数。最近、昭和家族ものに惹かれ、
向田邦子とアニメ「サザエさん」に浸る日々。

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■ 「今月の***」 / 畠中理恵子
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 いやぁ、すごかったですね『1Q84』。よく売れました。

 しばらく上巻が品切れで、仕方なく下巻から始めたんですが、
(そのくらい読みたかったんです…)登場人物設定がまったくわから
ず、(伝聞をたよりに)年齢とか勝手に想像して読んでました。
でも、あまりに物語を損なわせる行為なので中止、上巻を待ちました。
やらなきゃよかった。
 先日読了。
 途中はすごく読むのが楽しく、やっぱりうまいなあ、と久しぶりの村上節を
堪能しましたが、どうも…ラストが正直納得いかなかった。
 小説を終わらせるのってなんだか大変。
 ラストを読み解く力が私にはなかったのだと実感しました。…近況。

 このひと月で気になった地方出版物をご紹介します。

【兵庫】
『手紙が語る戦争』
女性の日記から学ぶ会編/島利栄子監修・みずのわ出版刊
978-4-944173-68-6 2415円

 「女性の日記から学ぶ会」は、1996年作家・島利栄子さんが中心となり
発足した会。聞き書きを中心に作家活動をされていた島氏は、日記の
大切さを人一倍感じていたといいます。 何とか「現存する日記の情報を
集め、保存し、活用しながら次代に伝えるべき女性文化の有り様を探り
たい」とスタートしたといいます。プライベートなものなので、当初はなか
なか理解されず、苦労されたとのことですが、地道で誠実な活動を続け
ることによって今では会員230人、提供された日記は3000冊にものぼる
といいます。
 本書は、十五年戦争時の日記を集め、書き手の検証とともに掲載。
「死を覚悟した兵士の最後の手紙、戦地と女学生をつないだ慰問文、
手紙に込めた妻の思い、軍需工場で交わした恋文、父母恋し学童疎
開先からの手紙」などを収め、庶民の本当のことばを探り、歴史の
真実を浮かび上がらせます。

「記録を父とし、記憶を母とし、教訓という子どもを生みだすことが、
歴史を伝える意味である」というある歴史学者のことばをひき、
個人の記録と記憶を丁寧に辿り、決して遠くはなっていない戦争を
描きます。

【福岡】
『満州・思い鎖-牛島春子の昭和史』
多田茂治著・弦書房刊・2310円
978-4-86329-024-2

 1941年、『祝といふ男』で芥川賞次席となった作家牛島春子−。
福岡に生まれ、女学校時代から文学に勤しみ、女工時代から
労働運動に参加、非合法活動で検挙逮捕される。保釈後、満州
官吏の夫とともに渡満。敗戦後帰国するまで、満州で文学活動
も行い、芥川賞次席にも選ばれる。帰国後も文学活動を続け、
2002年89歳で逝去。
 「満州」は傀儡国家として1932年建国するが、牛島のような
優秀な左翼運動家らも、新しい国家「満州」に「王道楽土」を求め、
自分たちの理想の国づくりを夢見て移住したといいます。しかし、
それはあくまでも中国民衆支配の上にあったものであり、敗戦後
それに気づく牛島は生涯「重い鎖」として「満州」を持ち続けました。
 著者は学生時代から50年間の牛島との交流を通して、牛島が
抱えた文学精神を探ります。

「終戦の詔勅を聞いたとき、私は声をあげて泣きだし、泣いてし
まうと、今度は笑い出した。(中略)
あの詔勅が終わった瞬間に、まるで”しんきろう”ででもあったよ
うに満州国が消え失せたのを私は悟り、その奇妙な感じがおかし
くてしかたがなかった。満州国民だと思って暮らしていた自分も
ついでにおかしかった。おかしがりながらこれでよいのだと感じ
ていた。」牛島春子「ある微笑」より抜粋

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■あとがき
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 発行が遅れ大変申し訳ありませんでした。
 さてさて、3人の新しい執筆同人が登場です。
 いかがでしたか?
今後も、それぞれ、独自に本へアプローチし、書いてくださることを期待
します。

 また、もう少し、情報面の充実を目指したいと思っています。
 皆様、イベントの告知などぜひお寄せください。
 よろしくお願いします。
 (畠中理恵子)

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