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[本]のメルマガ vol.322.5
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□■[本]のメルマガ【vol.322.5】08年5月30日発行 http://honmaga.net/
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□■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は6663名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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    ★祝・中央公論新社『哲学の歴史』本巻完結臨時増刊号★

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中央公論新社の創業120周年記念出版である『哲学の歴史』全12巻+別巻1が読
書界で大きな話題を呼んでいます。07年4月の第1回配本に始まり、先月25日の
第12回配本で、本篇が完結。7月10日発売予定の「別巻◆哲学史年表/総索引」
で全巻完結となります。当臨時増刊号では、『哲学の歴史』の編集に携わられ
た二宮隆洋さんにご寄稿頂き、現場の熱気を伝えていただきました。【五月】
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◎刊行に寄せられた識者の言葉

木田元(中央大学名誉教授)
橋爪大三郎(東京工業大学教授)
池田晶子(文筆家)
今道友信(東京大学名誉教授)
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/kankouniyosete.html

◎『第4巻◆15-16世紀』書評
高山宏(明治大学国際日本学部教授)
http://booklog.kinokuniya.co.jp/takayama/archives/2007/09/4_1516.html

◎『第11巻◆20世紀II』書評
野矢茂樹(東京大学総合文化研究科教授)
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/shohyo01.html
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■「「哲学の歴史」完結に寄せて」/ 二宮隆洋
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 中央公論新社版「哲学の歴史」(全12巻・別巻1)の本巻が、去る4月25日に
完結した。原稿総量15000枚、執筆者総数200名。7月早々に別巻が出る予定で、
これをもって本プロジェクトは終了する。すでに3分の2が重版しており、全巻
の増刷も遠くはあるまい。荒涼たる人文書の世界で近年まれに見る大成功と
言ってよいだろう。この機会に、いささか編集作業に合力した者として、心覚
えを記しておきたい。

 旧知の編集者松室徹から企画の概要を示されたのは、2005年の晩春だったと
思う。同年暮れ、あつかましくもみずから助力を申し出、翌06年3月以降京橋
に通うことになった。郡司典夫(企画提案者)、松本佳代子、私のトロイカ体
制である。事典や続き物は下ごしらえが予想以上に大変だ。用字・用語・固有
名の統一、注や文献指示の体裁の規格化といった基礎作業をしっかりしておか
ないと、先々支障が出る。筆者が書いてきたままに印字するだけでよいのなら、
編集者はいらない。この年は地味な仕事に終始したが、企画の組み立てに関し、
当初の高定価・少部数路線を劇的にシフトしたのは、結果的に正しい判断だっ
た。

 2007年からは原稿やゲラが高速回転することになった。1000枚超の物量で要
素も多様な本を月刊ペースで出すのは、口で言うほど易しくない。この点、郡
司・松本両君の精勤は特筆に値する。本業の新書を作りながらのかけもち仕事
だから、なおさらだ。いまの業界にかほどの情熱を傾けられる編集者がいると
は思ってもいなかった。彼らに一昔前の自分の姿を見るのは嬉しくもあり、痛
ましくもある。年に4、5冊ばかり毒にも薬にもならない本を出して満足してい
る編集者、あるいは他人に指図しているだけの管理職は、深く恥じ入りたまえ。
われわれの職業はハード・ワークを宿命づけられている。

 幸い、書かない/ゲラを返さない悪質な筆者はほとんどおらず、作業はほぼ
順調に推移した。配本が遅れたのは1回のみ。内容的にも、原稿を没としたの
は1人だけで、それぞれの書き手が研究の現在的水準を示してくれたように思
う。この点、編集委員各位のご鞭撻を多としたい。とくに以下の記事は力作で
あり、一読をお奨めする(数字は巻数、括弧内は執筆者)。

 1「アリストテレス」(畑中正志)/2「エピクロスと初期エピクロス学派」
(小池澄夫)/3「アウグスティヌス」(中川純男+松崎一平)/4「総論」
(伊藤博明)/5「ライプニッツ」(松田毅)/6「バークリ」(一ノ瀬正樹)
/7「カント」(福谷茂)/8「ホワイトヘッド」(中釜浩一)/9「新カン
ト学派」(大橋容一郎)/10「ハイデガー」(後藤嘉也)/11「フレーゲ」
(金子洋之)/12「ドゥルーズ」(鈴木泉)。また、村井則夫(快著『ニー
チェ』中公新書の著者でもある)は、巻頭の図版構成「イメージの回廊」の解
説を全巻にわたって書いてくれた。大きな手術を挟んでの献身である。特記し
てお礼申し上げたい。

 書物は道具だとあらためて思う。見かけ倒しのヤワな得物で、どうやってリ
ヴァイアサンに立ち向かえるのか。知名度が高い(と業界内で思われている)
書き手を麗々しく並べるだけの「顔見世興行」企画は、版元のいわば独り芝居
であり、しばしば道具としての本の使い勝手や精度を高めることがおざなりに
なるから、タレント執筆者ともども今後没落にいっそう拍車がかかるだろう。
使えない書物は消え、性能のない道具は錆びる。文献目録だけ見ても、「哲学
の歴史」は近年の類書にはない充実を示している。珠玉の論文ばかりが集まる
わけではない以上、せめて高い資料的価値を付与することが、この種の企画で
は肝腎だ。

 「歴史」という縛りをかけたのも成功の一因ではないか。大きなコンテクス
トをつかむには、時系列を追うにしくはない。言うまでもなくその遠近法自体
が大きな哲学的問題だが、散漫・恣意に陥りがちな「主題別」編集に比べれば、
「歴史/物語」は安定した理解の準拠枠となりうる。大鉈ではあるが、切れ味
が悪いわけではない。遊び心に欠けていないことも、わかる人にはわかるだろ
う。このように、「哲学の歴史」は本/道具として水準以上の完成度をもった。
図版構成やダイアグラム、版面天のキーターム、年表など、ある意味愚直なま
でに教科書的・啓蒙的な作りにしたことも、かえってよかったのかもしれない。
版型、本文組、書体、装丁といった点にも繊細な配慮が窺えるはずだ。

 もちろん課題がないわけではない。中世にはもう1巻必要だったのではない
か。ビザンツやイスラーム、ユダヤの哲学を充分に論じる巻である。女性の哲
学者がほとんど出てこない、という批判もあろう。東洋哲学あるいは日本哲学
は? だが、断念せざるをえなかったテーマが何か、わかったこと自体が収穫
だと思いたい。閉じないから書物は美しく連環する。学問や芸術もまた未完成
を宿命づけられている。

 コンテクストへの無知を棚に上げて、神経症的にテクストに拘泥する風儀が
この15年ほど人文学全般を貧しくしてきたように思う。「個別なるものはなべ
て厭わしい」(ゲーテ)。大きくしかも精緻な総合をこそ目指したいものだ。
真善美のうち善(宗教)と美(芸術)が残っている。続いて「宗教の歴史」
「芸術の歴史」を出す版元はないだろうか。さる知人から示唆を受けた「論争
の歴史」もじっくり練りたい企画だ。不肖私にはいくばくか具体的なイメージ
があり、どこであれお話があれば喜んで協力したい。「包丁一本さらしに巻い
て……」――行方定めぬエディター稼業、最後に図々しく宣伝をして筆を擱く。


◎二宮隆洋(にのみや・たかひろ):1951年生まれ。編集者。
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■「『哲学の歴史』全12巻の章立て
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◎『哲学の歴史』http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/

第1巻◆古代I:哲学誕生 始まりとしてのギリシア
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/1.html

総論:始まりとしてのギリシア
最初の哲学者たち
エレア学派と多元論者たち
ソフィスト思潮
ソクラテス
小ソクラテス学派
プラトン
アリストテレス
テオプラストスと初期ペリパトス学派

第2巻◆古代II:帝国と賢者 地中海世界の叡知
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/2.html

総論:地中海世界の叡知
エピクロスと初期エピクロス学派
ゼノンと初期ストア学派
古代懐疑主義
中期ストア学派
|パナイティオス
|ポセイドニオス
ヘレニズム期の科学思想
|ギリシアの数学
|ギリシアの天文学
|アレクサンドリアとローマの医学
帝国ローマの哲人たち 1
|キケロとギリシア学芸の受容
|セネカ
帝国ローマの哲人たち 2
|エピクテトス
|マルクス・アウレリウス
プラトン哲学・アリストテレス哲学の復興
プロティノスと新プラトン主義
ボエティウスと古代世界の終焉

第3巻◆中世:神との対話 信仰と知の調和
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/3.html

総論:信仰と知の調和
アレクサンドリアの神学
アウグスティヌス
継承される古代
|ボエティウス
|偽ディオニュシオス・アレオパギテス
|エウリゲナ
アンセルムス
ビザンティンの哲学
一二世紀の哲学
古典イスラームの哲学
|イブン・シーナー
|イブン・ルシュド
スコラ哲学とアリストテレス
トマス・アクィナス
ボナヴェントゥラ
ラテン・アヴェロエス主義
ガンのヘンリクス
ドゥンス・スコトゥス
オッカム
エックハルト

第4巻◆15-16世紀:ルネサンス 世界と人間の再発見
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/4.html

総論:世界と人間の再発見
ペトラルカ
市民的人文主義者
|ブルーニ
|アルベルティ
|パルミエーリ
ニコラウス・クザーヌス
フィチーノ
ピーコ・デッラ・ミランドラ
ポンポナッツィ
マキアヴェッリ
エラスムス
トマス・モア
ルター
ジャン・ボダン
モンテーニュ
自然哲学者
|カルダーノ
|テレージオ
|パトリッツィ
ブルーノ
スアレス
カンパネッラ
ガリレオ
フランシス・ベイコン

第5巻◆17世紀:デカルト革命 神・人間・自然
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/5.html

総論:神・人間・自然
ホッブズ
メルセンヌ
ガッサンディ
デカルト
アルノー
デカルト主義の発展
パスカル
スピノザ
マルブランシュ
ライプニッツ
ベール
フォントネル
ニュートン

第6巻◆18世紀:知識・経験・啓蒙 人間の科学に向かって
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/6.html

総論「人間の科学に向かって」
ヴィーコ
ロック
バークリ
ヒューム
アダム・スミス
イギリス道徳哲学
リード
モンテスキュー
ヴォルテール
ルソー
ディドロ/ダランベール
コンディヤック
観念学派とその周辺
メーヌ・ド・ビラン

第7巻◆18-19世紀:理性の劇場 カントとドイツ観念論
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/7.html

総論:カントとドイツ観念論
ヴォルフとドイツ啓蒙主義の暁
カント
ハーマン
ヤコービ/ヘルダー
ラインホルト/シュルツェ
フィヒテ
ヘーゲル
ドイツ自然哲学
シェリング
シュライエルマハー
ドイツ・ロマン主義
ヘルダーリン

第8巻◆18-20世紀:社会の哲学 進歩・進化・プラグマティズム
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/8.html

総論:進歩・進化・プラグマティズム
フランスの社会主義
トクヴィル
コント
一九世紀フランス哲学の潮流
デュルケム
ベンサム
ミル/スペンサー
アメリカン・プラグマティズム 1
アメリカン・プラグマティズム 2
ホワイトヘッド

第9巻◆19-20世紀:反哲学と世紀末 マルクス・ニーチェ・フロイト
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/9.html

総論:マルクス・ニーチェ・フロイト
フォイエルバハ
マルクス/エンゲルス
ショーペンハウアー
キルケゴール
ニーチェ
新カント学派
カッシーラー
ディルタイ
ジンメル
ヴェーバー
シャルコー/ジャネ
フロイト

第10巻◆20世紀I:危機の時代の哲学 現象学と社会批判
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/10.html

総論:現象学と社会批判
ブレンターノ
フッサール
シェーラー
ヤスパース
ハイデガー
ガーダマー
ベンヤミン
クローチェ
西欧マルクス主義
│ルカーチ
|グラムシ
│アルチュセール/ルフォール
フランクフルト学派
│ホルクハイマー
│アドルノ
│ハーバーマス

第11巻◆20世紀II:論理・数学・言語 科学の世紀と哲学
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/11.html

総論:科学の世紀と哲学
自然科学の哲学
|ドイツ語圏における展開
|フランスにおける展開
フレーゲ
ラッセル
数学基礎論の展開とその哲学
ウィトゲンシュタイン
|前期
|後期
ウィーン学団とカルナップ
科学哲学
エピステモロジー
日常言語の哲学 分析哲学1
クワインとクワイン以後 分析哲学2

第12巻◆20世紀III:実存・構造・他者 モダンとポストモダン
http://www.chuko.co.jp/zenshu/tetsugaku/12.html

総論:モダンとポストモダン
ベルクソン
反省哲学
マルセル
サルトル
構造主義
│ソシュール
│レヴィ=ストロース
│ラカン
メルロ=ポンティ
レヴィナス
リクール
アンリ
フーコー
ドゥルーズ
デリダ
ヴュイユマン/グランジェ

※記号|は章に従属する節を表わす。
※各巻には以上に記した各章のほか、巻頭には図版「イメージの回廊」、章の
合間に各種の「コラム」、巻末に「参考文献」「索引」「関連地図」「哲学史
年表」、そして、登場する哲学者の生没年を図示した「クロノロジカル・チャ
ート」がそれぞれ掲載されている。
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◎「佐野繁次郎の装幀モダニズム」展

古書好きで佐野繁次郎のあのユニークな手書き文字を知らない人はいないで
しょう。2005年に開かれた佐野繁次郎の回顧展以来、その画業とともに、装幀
本に対する評価もますます高まっています。そこで今回はその全体像を知るた
めに西村義孝氏のコレクションによる「佐野繁次郎の装幀モダニズム」展を開
催いたします。初期から晩年までつねにモダンな作風を展開している佐野繁次
郎の装幀をこの機会にぜひご高覧ください。

08年6月1日(日)-3日(火)10〜18時
東京古書会館 2階展示室
企画・出品:林哲夫、西村義孝
後援:アンダーグラウンド・ブック・カフェ

詳細は下記サイトにて
「アンダーグラウンド・ブック・カフェ 地下室の古書展」サイト
http://underg.cocolog-nifty.com/tikasitu/
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◎キャリル・フィリップス来日公演(入場無料)

Writing "Home": Caryl Phillips and Contemporary British Literature

日時:2008年6月16日(月)16:35-18:05
場所:東京女子大学 24号館 24202教室(杉並区善福寺2-6-1)
http://office.twcu.ac.jp/o-board/TWCU/access.html
形式:対談(聞き手 溝口昭子) 言語:英語(通訳なし)

Caryl Phillips、自作を語る――From Distant Shores to Home

日時:2008年6月17日(火)18:00-19:30
場所:青山学院大学 11号館7階 1173教室(渋谷区渋谷4-4-25)
http://www.aoyama.ac.jp/
司会:西本あづさ(青山学院大学准教授)
解説:富山太佳夫(青山学院大学教授)解説
インタビュー:上野直子(獨協大学教授・A New World Order訳者)
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