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[本]のメルマガ vol.304
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□■[本]のメルマガ【vol.304】2007年11月25日発行 http://honmaga.net/
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□■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は6464名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→各種トークイベント情報。「水に学ぶ」ってなに?

★特別掲載「アンダーソン『想像の共同体』との20年」/ 早山隆邦
→長編一挙掲載! 名著に伴走して20年、担当編集者が明かす「本の歴史」。

★特別掲載「著者が語る新刊書を視聴しよう」/ 中野真紀子
→独立系ニュースメディア「デモクラシー・ナウ!日本語版」をご紹介。

★「ユートピアの探求」/ 五月
→今月の注目新刊:07年10月末〜11月下旬、をお届けします。

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■トピックス
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◆萱野稔人×仲俣暁生トークショー「百年「と」権力 〜権力と運動〜」

日時:2007年12月8日(土) 20:00〜22:00 (開場19:30)
場所:百年 (〒180-0004 武蔵野市吉祥寺本町2-2-10MURATAビル2F)
料金:1,000円(1ドリンク付)

※店頭、メール mail@100hyakunen.com 、電話0422-27-6885 、FAX0422-27-
6885 で予約のお客様先着60名に限ります。
※学生(学生証提示)もしくはお二人の著書を百年で購入の方は800円になり
ます。

問い合わせ先:百年 http://www.100hyakunen.com/

内容:権力がわからなければ、世界はわからない。「権力」を知ることは私た
ちの暮らしている社会を知ることにほかならない。国家権力の源泉は暴力の行
使である。このときの暴力は物理的力のことである。圧倒的な暴力の前では
人々は従うしかない。だから結果として、国家が至上の権力として君臨する。
国家権力の構造を読み解いた『権力の読みかた』(青土社刊)の著者萱野稔人
氏と文芸評論家の仲俣暁生氏が、「権力」について、また、いまの日本におい
てどのような事態が起こっているのか、今後どのようなことが起こりうるのか、
そして私たちの生活にどのような影響があるのか、を具体的な状況を挙げなが
ら、さまざまな同時代のカルチャーを参照しつつ、「権力」と「運動」につい
て語る。


◆21_21 DESIGN SIGHTと青山ブックセンターの共同トークイベント

六本木・東京ミッドタウン内の21_21 DESIGN SIGHTで現在開催中の第2回企画
展、佐藤卓ディレクション「water」と、青山ブックセンターがコラボした連
続トークイベントが以下の通り来月開催される。

◎21_21 DESIGN SIGHT EXHIBITION 2 "water"×ABCコラボレーション企画
トークイベント「水に学ぶ」

1)藤井保×佐藤卓トークショー:「水を撮る」ということ。

日時:07年12月8日(土)13:00〜15:00(開場12:30〜)
会場:青山ブックセンター本店内・カルチャーサロン青山
内容:「藤井保さんの写真には、いつも湿度を感じる。沙漠を撮っても湿度を
感じる。つねに風景の中に潜む本質が、湿度をともなって見えてくる。
「water」展に参加いただくことになったのも、その独特な写真から感じられ
る湿度が繋いだのかもしれない。見る側を誘い入れる藤井さんの写真は、どん
なものも溶かす水のようなものだ。それは液体の水ではなく、目に見えない気
体の水。水の見えないところに水を見に行く試みだったサハラ沙漠へのフィー
ルドワークについて、その他、地球の僻地へ行って風景と向き合うことが多い
藤井保さんに、水と写真についてお聞きします」(佐藤卓)。

2)浅葉克己×松岡正剛×佐藤卓トークショー:「水と書と日本」

日時:07年12月9日(日)14:00〜16:00(開場13:30〜)
会場:東京ウィメンズプラザホール(青山ブックセンター本店隣)
内容:「書は、墨を水の毛細管現象により筆から紙へ届け、文字として定着さ
せること。その後、役目を果たすと水は蒸発して消える。つまり水の流れにゆ
だねる行為といえる。そこに表れる「ぼかし」や「にじみ」そして「消える」
という言葉には輪郭を曖昧にした日本文化が垣間見える。人に関わるあらゆる
ことを「編集」としてとらえ、日本の新しい見方を常に提示される松岡正剛さ
んと、書に新たな道を見出すアートディレクター・浅葉克己さんに、水を通し
て、書、文字そして日本について語っていただきます」(佐藤卓)。

3)野田岳仁(Waterscape)×佐藤卓トークショー@ABC六本木店
日時:07年12月13日(木)19:00〜
会場:青山ブックセンター六本木店店内
内容:世界の水問題解決に挑戦するNPO「Waterscape」代表・野田岳仁と佐藤
卓によるトークショー。

4)福岡伸一×竹村真一×佐藤卓トークショー@ABC本店
日時:12月17日(月)19:00〜
会場:青山ブックセンター本店 カルチャーサロン
内容:第29回サントリー学芸賞(社会・風俗部門)受賞『生物と無生物のあい
だ』著者の福岡伸一と、文化人類学者でありwater展コンセプト・スーパーバ
イザーの竹村真一と佐藤卓によるトークショー。

※上記イベントについての日時、入場料、申し込み方法等で詳細未定のものは、
決定次第、青山ブックセンターのウェブサイトにて告知いたします。
http://aoyamabc.co.jp

※佐藤卓(さとう・たく):グラフィックデザイナー。株式会社電通を経て、
1984年に佐藤卓デザイン事務所設立。「ニッカ・ピュアモルト」の商品開発、
「ロッテ・ミントガムシリーズ」「ロッテ・キシリトールガム」「明治おいし
い牛乳」などの商品デザイン、BS朝日や金沢21世紀美術館、首都大学東京など
のビジュアル・アイデンティティーデザインを手がける。NHK教育テレビ
「にほんごであそぼ」ではアートディレクションのみならず企画メンバーの一
員としても活動。また、大量生産品をデザインの視点から探求した展覧会『デ
ザインの解剖』プロジェクトを発表し話題を呼ぶ。著書に『デザインの解剖』
シリーズ(美術出版社)、共著に『SKELETON』(六耀社)など。
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★PR★平 凡 社 の 新 刊★ http://www.heibonsha.co.jp

『馮友蘭自伝――中国現代哲学者の回想(2)』(東洋文庫 768)

吾妻重二:訳注 定価3150円 全書判360頁 ISBN978-4-582-80768-4

清末に生まれ、20世紀中国を生き抜いた哲学者、馮友蘭(ふゆうらん)による
貴重な記録。その歩みは中国の近代学術の歩みとぴったり重なる。第2巻には
「哲学」「大学」「展望」の部を収め、解説と人名索引を付す。全2巻完結。

※次回配本は12月→『中国とインドの諸情報(2)』
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『評伝 観世榮夫』 

船木拓生:著 定価3150円 四六判440頁 ISBN978-4-582-24607-0

名家に生まれながら、60年代劇団運動の先頭に立ち、他分野との果敢なコラボ
レーションを経て70年代末に能界に復帰、演出家・役者・舞人として、生涯を
多様な試みに捧げた舞台人の生涯を描く、初の本格的評伝。
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『〔普及版〕新訂 字訓』 

白川静:著 定価6300円 A5判992頁 ISBN978-4-582-12814-7

記紀・万葉にみえる古代語1821語について、それらが漢字と出会い国語の表記
としてどう定着していったかを探った画期的な古語辞典。2005年に刊行した新
訂版の普及版、ついに登場。
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『〔新版〕対日関係を知る事典』

平野健一郎・牧田東一:監修 定価4410円 A5判440頁 ISBN978-4-582-12637-2

日本とおよそ200の国との交流と外交について、その歴史と最新情報をまとめ
たユニークな事典。21世紀の世界変動と日本の11のグローバルな課題を増補。
この一冊で世界の中の日本がわかる。
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■特別掲載「アンダーソン『想像の共同体』との20年」/ 早山隆邦
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 お会いしたことはないが、令名、有名は私でも存じている小林さんから、
ネット越しに「貴方は、3つの会社を流れながら、ベネディクト・アンダーソ
ン著、白石隆・白石さや訳『想像の共同体』の編集担当を20年続けているそう
ではないか。珍しい例だ。20年もあれば、エピソードの1つや2つあるだろう、
語ってみては」と丁重なご慫慂をいただきました。

 たしかに、私は、1987年、西武傘下のリブロポートと言う今はなき出版社で、
『想像の共同体』初版を、1997年、NTT出版で二章加筆された『増補 想像
の共同体』を、そして今回2007年、個人出版社書籍工房早山から、原著の3回
目の改訂版(「旅と交通」が加筆)の刊行と、それぞれ編集担当として関わり
ました。(途中2001年〜2006年は、営業部に所属していたり、退社してフリー
であったりして携わっていない期間がありますが)ほぼ20年に3回、編集担当
として本書(以下ICと略記)のリリースに関わってきた事になります。

 小林さんにその点をお目とめいただいたことは、本当に光栄なこととおひき
うけしたものの、改めて愚考するまでもなく、そのようなことが可能だったの
は、ひとえにも二重にも翻訳者白石隆・白石さや両先生の異例のご好意、そし
て今回の「旅と交通」にも明言されているように、原著者アンダーソン氏のか
つての教え子白石隆、白石さや両先生への無限の信頼があったからであり、そ
れ以外の何ものでもないのです。(ひとり付け加えるべきは初版出版社リブロ
ポートの当時の編集局長及川明雄氏のフェアさ、寛容さでしょう。) さらに
は、本書が、辞書でもないのに、10余年にわたって同じパターンの売れ方をし
続け、1年間に同じ数の読者に迎えられているという書物であった、この2つ
を語ればもう何も申し上げることはないのです。あとは私が、この本に、しが
みついてきただけのことです。しかしそういってしまえば、終わってしまうの
で、少しの間、思いつくままの昔話におつきあい下さい。

◆きっかけはこの一言

「(僕のアメリカでの先生である)アンダーソンが本を書いたのです。白石さ
やと2人で翻訳しようと思うのだけど、早山さんのリブロポートで出版してく
れますか」。まったくさらりと白石隆先生が声をかけて下さったのは、通称リ
ブロ研(★)と呼んでいた研究会の席上でした。1983年、原著が出版された後
ほど無くしてだったように思います。「ご自分の先生のものじゃあ、しょうが
ないかあ」――もしかしたら、そんな失礼な感じで、「はい」と即答した記憶
があります。海外での売れ行きとか、翻訳権の価格を調査した上のことではな
かったことは確かです。
  
★注――リブロ研は、原洋之介(のち東京大学東洋文化研究所長、現政策研究
大学院大学教授)、斎藤修(のち一橋大学経済研究所長・教授)が語らって19
80年7月19日、第1回を行ない、以降90年代にはいるまで、70回強続いた、
まったく出版の義務など無い自由なものでした。参加されたメンバーは多少の
時期のずれがありますが、清水元、大西健夫、川勝平太(当時早稲田大学)、
浜下武志、関本照夫、宮島博史、鈴木菫(当時東京大学東洋文化研究所)、大
沼保昭(東京大学法学部)、皆当時30歳代の気鋭の研究者でした。(83年には、
原先生の引率で、滅んでいこうとする、タイの浮き稲を見学にでかけたりもし
ました。)

 この会のざっくばらんでかつ意欲にあふれた雰囲気が、白石さんに、ICを
この会社で、と選んで下さった要因だと言っていいと思います。

◆初版3500部――4年間地味に

 お二人の翻訳のご苦労は、訳者あとがきにあるとおりで、あとで少しふれさ
せてもらいますが、ともかく1987年の11月末に、日本語版は刊行の運びになり
ます。訳者は、この年の1月に、アンダーソンのもとへ、准教授、研究員とし
て出発しておられ、日本にはいらっしゃいませんでした。初版は3500部、当時
の社会科学書は現在よりもずっと売れている時代でしたから、ごく並の部数で
した。これも不明を恥じるばかりです。しかも、その初版はそれ以後、89〜91
年までの4年間動きが少なく、ようやく1991年11月に再版になります、それも
1000部。その1000部も、はけるのに1年かかります。

 ところが、1993年の4月に作った4刷が4ヶ月でなくなり、この1993年1年
間で、2000部が売れます。IC(「想像の共同体」)は動きはじめるのです。

 以来、5月を大ピーク、11月、1月を小ピークにコンスタントに3000部強が
動いていくというリブロポートでのパターンが確立していきます。書籍工房早
山での今回の原著改訂版(定本IC)でもほぼそのパターンは変わらず、若干
違うとすれば、刊行月が8月という変則時期であったため8月の売れ行きが突
出し、その分9月の返品がおそらく多いのではないかと、感じています。IC
に何か特徴的な事があるかというと、総売れ部数などでいえば、もっとすごい
他社本がたくさんあるわけで、強いて申せば、この一五年間じわじわ同じペー
スで売れ続け、落ちてこない、という所にあるように思います。(教科書なの
だから、当然だろう、と言われそうですし、実際、白石先生も、従ってアン
ダーソン氏も、私のかつての報告から、そのように思われているのですが、私
自身は、さいきん少し疑問をもってきました。大型書店、一般書店で売って頂
く数が、かなり多いのです。社会科学の古典的書籍というのは、こういう売れ
方をしているのでしょうか、その末席に入りつつあるということでしょうか。)

 さて、なぜ、1993年からか? 担当編集者として、何か明確な意見を言わね
ばならないのですが、実は、私には今もってよくわからないのです。

 まず、当時の世界の政治社会、思想界に何か原因があるでしょうか? もち
ろん、1989年のベルリンの壁崩壊、1991年の東西ドイツ統一、1992年のソビエ
ト解体と冷戦体制の終結という最大の出来事は、大きな影響をもたらしている
はずです。しかし、それから2年間ICの売上げに激変は起きなかったのです。
(さらに世界史年表を羅列すれば、1991年の湾岸戦争でのイラク敗北、韓国と
北朝鮮の国連同時加盟、1992年のECのマーストリヒト条約加盟と続きはしま
すが。)
 
 では、日本の政治社会に、何か大きな転換があったでしょうか? 思想界、
読書界では、この1993年とはどういう年であったのでしょうか? この辺にな
ると、これという理由が見つけられないのです。ポストモダン系書籍の売上げ
や、この年の人文書、思想書の売上げ傾向を見て何か言えるか、是非教えてい
ただきたいと思います。(「担当編集者に、必ずしもその本の価値や意義が分
かっているとは言えない」という事を一般の読者はごぞんじないことが多いと
思うのですが、私はその典型のようです。)

◆苦心の翻訳

 訳者あとがきにもあるように、白石さや、白石隆両氏の翻訳を巡っての議論
は厳しく妥協のないものだったようで、そこへ、私のような何も考えていない
第三者が入り、軍配をでたらめに上げていると、何となくお二人がおさまって
こう着状態が動き出す感じでした。ICのあとがきで、「このままであったら、
五校、六校と果てしなく続いていたろう」と書いていらっしゃるのは、きっと
本音です。翻訳にかんして私の最大の貢献はこの「無理解な第三者の口出し」
だったと思います。かなりの無理解度だった証拠に、のちに、研究会後のある
飲み会で白石先生は、「早山さんには、読者の目でいろいろコメントをもらっ
てありがたかったけど、マルクスの『ブリュメール十八日』の文章をもじって
作った訳語に「こんな日本語はない」と言うコメントがついていたのには参っ
た」とやんわり抗議されたことで、明らかですが、すかさず原先生が「白石、
甘いよ、早山がマルクスを読んでる奴かどうか見抜けないのか」と返され、酒
席は爆笑となりました。白石さんは、まだ、小声で「誰でも1冊くらいは読む
んじゃないのかなあ」とつぶやかれ、あれはきつかったという思いがあります。

 今回、白石さや先生をお訪ねし、どの訳語に一番苦労されたか、抜き打ちイ
ンタビューをしました。

「え? そうですねえ、すぐには出てこないけれど、1つは、nationalismを
「ナショナリズム」とカタカナで表記したり、nationを「国民」「ネイション」
と訳したことですかねえ。当時、判で押したように、nationalism=民族主義
でしたから。たしか、猪口邦子さんが、朝日新聞だったかに好意的な書評を載
せてくださったけれど、全編、民族主義という語がおどっていたような記憶が。
「西川祐子さんは、当時から、フランス革命史分野では、ネイションは国民と
訳していたとおっしゃるんだけど……
「それから、official nationalismを「公定ナショナリズム」と訳したのは、
今でも、落ち着かない気がして……」
「でもあれから20年、定着しておりますよ」
「そうねえ、あれでいいのかしらねえ」
「とにかくそう言う時代だったのですねえ」
「ときに、早山さん、何もおぼえてないの?」 
「……(沈黙)」

◆翻訳刊行後の反応

 いま、猪口書評の話がでましたが、最初の書評は、1988年1月25日の毎日新
聞の「日時計」に無署名で、「ナショナリズム研究にコペルニクス的転回を生
ぜしめる」ものであり、同時に、「ナショナリズムと戦争との結合を内部から
切断する可能性を提供する名著といってよい」という好意的なものでした。後
段の部分はちょっと私の理解がついて行けなかったとはいえ、とても実践的な
意義を持つととらえていただいて光栄でした。が、やはり、マルクス主義国間
に戦争が勃発し始めたことをどう捉えるか、という、マルクス主義思想内部の
緊急の問題に役立つ書物というニュアンスがあるように思え、こういう雰囲気
は今の読者には伝わらないだろうなあ、と思います。うまく言えませんが、実
際ICに対しては、マルクス主義の一枚岩的国家観に冷水を浴びせるような書
物、というとらえ方が、好意的見解、批判的見解の両方にあったような記憶が
あります。ただ、このころ、白石隆先生はアメリカから一時帰国されると「ナ
ショナリズム研究の本なのに、日本では国家論だと捉える人が多いなあ」と口
にされていました。

◆刊行当時の様々な波紋(1)吉本隆明氏は、パクられたのか?

 このころ、巷というか、編集者の知人達のあいだで、「吉本が、こんなこと
とっくに俺が言ってただろう、今頃、西欧で言い始めたのかと笑ってる(怒っ
てる?)そうだ」という「伝説」「風評」が流れました。これはあながち冗談
ではなく、さや先生も「今でも学生が、ICを読む前あるいは後に、『共同幻
想論』を読んだほうがいいのでしょうか、と問い合わせてきますよ」とおっ
しゃっていました。また、もう1つの証拠として、鶴見俊輔『戦争が遺したも
の』(新曜社、2004年)にも、上野千鶴子さんの、こんな発言が出てきます。
言うまでもなくこの本は、鶴見俊輔氏をまえに、小熊英二、上野千鶴子という、
やがて鶴見俊輔先生クラスの(?)思想家になろうという俊才お二人が、聞き
書きをしながら、互いに火花を散らすという、必読の名著のように思いました
が、その312ページにこうあります。(引用が長くてすみません)

 上野「だから、ベネディクト・アンダーソンのICが出たときには、既視感
がありました。アンダーソンの本は80年代末に日本でも翻訳されましたけど、
外国の輸入思想を今どきもてはやすよりも、10年も20年も前に日本では吉本と
いう思想家がこんなことを言ってたぜという感じが一部の人たちにありました
ね。」

「一部の人」とおっしゃって「自分」と言わないところが、上野先生の凄いと
ころですが、この証言によって当時、かなりの人がそんな感じを持ったのかも
しれないと推察できます。この本の面白いところは、この発言に対して、小熊
先生が次のように切り込んでいるところです。

 小熊「私に言わせれば、国家や民族は近代資本主義の産物だというのはマル
クス主義の常識だったわけで、(中略)アンダーソンのICも、どちらかとい
えば、そういった常識的理解の延長で出てきたと思います。(中略)私からみ
れば、ナショナリズムを近代の産物とみなすアンダーソンと、古代にこだわる
吉本さんの『共同幻想論』が、どうして上野さんにとっては並列に評価できる
のか理解に苦しみますね。」

 私などの門前の小僧以下の読者にとって、まさに、ICの持つ最も面白い部
分で激突しているように思うのですが、このあとは、「きょうは、ここでやめ
といてやろう、またいつかな」という上野流のすごみで終わってしまいます。
残念! ともかく、当時、飛ぶ鳥を落とす勢いだった吉本さんが本当はどう
思っていたのかはついに私にはわかりませんでした。

◆刊行当時の様々な波紋(2)柄谷行人氏の支援

 当時の日本思想界の一方の雄、柄谷行人氏は、ご当人が、アンダーソンと同
じコーネル大学で講義をされていたせいもあるか、刊行当初から、大変にIC
に好意的であったと思います。よい読者でない私は、年少の友人に教わって、
いま手頃なものとして『日本精神分析』(講談社学術文庫、2007年)所収の
「言語と国家」(初出『文學界』2000年10月号)を読み直しましたが、46頁に
はこんなことが書かれています。民族問題などは階級問題がなくなれば消える
はずなのに、当のマルクス主義者の国家において民族問題が噴き出す。この20
世紀後半の状況の中で、「アンダーソン氏はどうしたか。いわば彼は、マルク
スに戻って考えたのです」。「アンダーソン氏の「想像された共同体」という
概念は、若いマルクスが国家を幻想的な共同性と見たことから来ています。吉
本隆明の「共同幻想」も同様です」――こうした要約は、とても明快で勉強に
なります。

 すごいことに柄谷先生は、このエセー「言語と国家」の冒頭(同書11頁)で、
80年代の終わりに自分はICを読んだが、ICと同じ事を自分は1980年刊行の
『日本近代文学の起源』で言っていたのだ、ただ、ナショナリズムの議論に触
れなかっただけなのだ、と主張しておられます。「ネーションとは、むしろ近
代文学の産物だ、というより近代文学なのだといってもいいのです。」 ここ
からは、がっちり、二人は手を握る構図が出てきます。アンダーソン氏も、光
文社新書の中ででしたか、自分への評価に関し、文化人類学者に受け入れられ
ることはじつは想定内だった、しかし、文芸批評の分野からいち早く支持され
るとは、少々意外だった、と相好を崩しています。

 以上まとまり無く述べた、吉本先生に関する風評、柄谷先生の支持は、担当
編集者としては、ただただ有難く思っています。こういう予想外の支援の風を
受けつつICが、地味ではあってもなかなか落ちてこない凧のように、この20
年を生き抜いてきたのだろうと思います。勿論、本自身の力が、そして翻訳者
の大胆な苦労(原著の一部を、『平家物語』にかえて、日本の読者に分かりや
すくする試み等)が第一の要素であることは言うまでもありません。

 ここからは、ICが本来の政治学の書籍としてではなく、何故かポストモダ
ンの必読書の1冊として(誤って)むかえられたのではないか、そしてブーム
が終わっても本来の強みを生かして読者にむかえられているのではないか、と
言う図々しい仮説を考えなくてはいけないのですが、とても私の手に負えるも
のではなく、どうか、どなたかにご教示頂きたく思います。拙稿に長い間おつ
きあい頂き、有難うございました。

 追記兼宣伝……「アンダーソン氏ってうまいなあ」と担当編集者として感服
するのは、増補、定本と追加してくる新章、新原稿が、実によく仕組まれてい
ることで、あ、これはやはり読んでおいた方がいいなあ、と思わせる内容だと
思います(だから旧版をお持ちでも買って下さい、定価も安くしましたし、と
言っているわけで、眉唾で聞いて下さい)。それから、翻訳者の白石隆さんが、
ただいちどだけ、アンダーソンのこの本について論じた事があります。『大航
海』28号(1999年)特集「知の先端の18人」「ベネディクト・アンダーソン」)


もしご興味があれば、ぜひお読み下さい。


◎早山隆邦(はやま・りゅうほう):1945年生まれ。有限会社書籍工房早山・
代表取締役。http://shosekikobo.cocolog-nifty.com/blog/

* * *

『定本 想像の共同体――ナショナリズムの起源と流行』

ベネディクト・アンダーソン:著 白石隆・白石さや:訳
書籍工房早山:発行 図書新聞:発売 定価2,100円(税込)
四六判上製カバー装396頁 2007年8月発売 ISBN978-4-88611-508-9 

ナショナリズム研究の今や新古典。増補版(1991年)にさらに書き下ろし新稿
「旅と交通」を加えた待望のNew Edition(2006年)。翻訳完成!
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■特別掲載「著者が語る新刊書を視聴しよう――DN!日本語版」/ 中野真紀子
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 こんにちは、翻訳をやっている中野真紀子と申します。ネット三昧が嵩じて
デモクラシー・ナウ!というニューヨークの独立放送局の番組を日本語で紹介
しています。仲間と一緒に日本語版のサイトを立ち上げ、今年4月からで字幕
つきの動画配信をしています。

http://democracynow.jp/

 毎週末に更新され、30〜45分相当の動画が新しく追加されます。主なテーマ
は、グローバリゼーションと戦争、民営化の進展、マイノリティと人権問題、
メディア、環境です。またCSケーブル放送チャンネルの朝日ニュースターでも、
毎週一時間の番組に編集して流しています。

http://asahi-newstar.com/program/democracy/

 この番組は、ジャーナリストで司会役のエイミー・グッドマンを中心に制作
され、PBSやPBRなどの公共放送局や、衛星を利用した地域ケーブルのパブリッ
ク・アクセス・チャンネルのネットワークを通じて全米500局に配信されてい
ます。またインターネットを通じた配信は世界中で受信できます。もとはパシ
フィカというコミュニティ・ラジオ局の中の人気番組でしたが、今では独立し
て、ダウンタウンにある元消防署ビルのスタジオから毎朝一時間の番組を流し
ています。

 番組の特徴は、ゲストを招いて話を聞く、インタビュー中心の構成です。も
ともとラジオ番組であり、それに映像をつけてテレビ放送にも載せられるよう
にしたものなので、映像を中心に作る番組とは一味違います。トークラジオさ
ながらに内容が充実していて、多くを学ぶことができます。ゲストとして登場
する人々の多くは、アメリカや世界でよく知られた世界各地のジャーナリスト
やアクティビスト、文化人です。

 扱う話題はいろいろですが、たぶん「本のメルマガ」を読んでいる方に興味
があるのは、新刊書を基にした著者へのインタビューでしょう。多くの場合は
番組の時間枠いっぱいを使って、重要ポイントについてじっくりと話を聞きき
ます。エイミー・グッドマンの質問は鋭く簡潔で、その時々の出来事と関連さ
せながら的確に要所を抑えています。

 過去2年ぐらいのなかから作家だけざっと拾っても、ナオミ・クライン、
ポール・クルーグマン、バーバラ・エーレンライク、ボブ・マチェスニー、
チャルマーズ・ジョンソン、タリク・アリ、アルンダティ・ロイ、ヴァンダナ・
シヴァ、ラルフ・ネーダー、ジョージ・モンビオ、アンジェラ・デイビス、
アリス・ウォーカー、イザベル・アジェンデ、ヴォール・ソインカ、サルマン・
ラシュディなど、そうそうたるメンバーが並んでいます。ここで知って購入し
た本も少なくありませんが、予備知識があると読むのもぐっと楽ですし、少な
くとも買って損したってことはないです。

 長年インターネットで視聴してきたこの番組を、多くの人たちと共有できた
らどんなにすばらしいだろうというのが、これを始めた個人的な動機です。
911は日本にいても大事件でした。報復戦争の予感や国内監視体制の強化に対
する懸念などが一気に高まり、世界はこれまでとは違った段階に入るのだと漠
とした不安にとらわれたのを思い出します。そういう危機感のもとで、世界の
情報や注目すべき意見を即時に日本語でつたえることができるように、イン
ターネットの中で有志による注目記事の翻訳が自然発生的に起りました。私も
たまたまそれができる位置にいたので、すでに翻訳をしたことのあるパレスチ
ナ出身の思想家エドワード・サイードやノーム・チョムスキーなどの最新の
エッセイの抄訳をサイトを通じて配信することをはじめました。思えばこれが
メディアらしい活動の始まりでした。

 それをつづける中で、情報源としてのデモクラシー・ナウ!の重要性にきづ
くようになりました。この番組をチェックすることが、今世界で何が起ってい
るかを知るための非常に重要なツールの一つとなっていったのです。それと同
時に、この番組を通じて得られる情報や文化が、日本語圏ではほとんど通用し
ないことに、はがゆさを覚えました。英語圏では一定の支持層を持ち、認知さ
れているのに、メジャーなメディアで取り上げられないため、日本語の文脈で
は存在しないに等しい。CNNのような企業メディアの日本語版は登場しました
が、非営利の独立メディアの情報は伝わりません。「グローバリゼーション」
として世界中に輸出されているアメリカ流儀のネオリベ政策が、いかに民主主
義を企業独裁に変容させ、共同体としての国家を破壊してしまったか、なんて
テーマを執拗に追う番組は、待っていても日本語にはしてくれないでしょう。
うーん、自分でやるしかない、か。

 ちょうど今週は、ナオミ・クラインが話題の新著『ショックドクトリン』に
ついて、発売当日に語ったインタビューが、今週の新着動画として字幕つきで
紹介されます。

http://democracynow.jp/stream/070917-1/

 また、CS朝日ニュースターでも12月1日の土曜日夜9時から初回が放送され
ます。たいへんに興味深い内容ですので、ぜひご覧下さい。


◎中野真紀子(なかの・まきこ):翻訳家。訳書に、サイード『遠い場所の記
憶 自伝』(みすず書房、2001年)、『バレンボイム/サイード 音楽と社会』
(みすず書房、2004年)、ノーム・チョムスキー『中東 虚構の平和』(講談
社、2004年)など多数。http://www.k2.dion.ne.jp/~rur55/home.html
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■「ユートピアの探求」/ 五月
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◆今月の注目新刊:07年10月末〜11月下旬

今月刊行された和書新刊の「群像」を概観することで、一ヶ月を振り返ろうと
いう試みを始めてみようかと思います。このメルマガが創刊されてから、私は
人文系洋書の新刊の紹介をしばらくやり、それに続いて零細出版社の立場から
雑多な論説(めいたもの)を書いてきましたが、「本の紹介」に立ち戻ろうと
思い立ちました(あまりうまくいかないようだったらスパッと止めるつもり)。

一週間ごとの注目新刊は、「ウラゲツ☆ブログ」に掲載しています。その一ヶ
月分を総括してみたいのですが、一ヶ月単位で見てみると、「時代の流れ」と
は言わないまでも、何となく集合というか傾向性のようなものが見えてくる気
がします。前々からそう感じていたので、実行してみます。

私が主に拾っているのは、人文系書籍とその周辺の新刊です。「人文」と一口
に言っても、相当間口を広くとっています。好みで拾っていますので、公正公
平な情報ではありません。特定の情報について敬遠したり無視したり秘密にし
たりすることもあります。諸姉兄のご海容を乞う次第です。

07年10月末から11月下旬にかけて刊行された新刊を眺めますと、自伝や評伝に
注目すべきものが多かったことに気づきます。(価格はすべて税込)

政治家・実業家系では、

『ゲバラ日記』チェ・ゲバラ(1928-1967)著、平岡緑訳、中公文庫、900円
『少年フィデル』フィデル・カストロ(1926-)著、柳原孝敦監訳、トランス
ワールドジャパン、1890円
『ロックフェラー回顧録』デイヴィッド・ロックフェラー(1915-)著、楡井
浩一訳、新潮社、2730円

などがありました。ゲバラの日記はこれまで幾度か翻訳されており、中公文庫
でも、以前は真木嘉徳訳がありました。ゲバラには、映画化された青春時代の
南米放浪記『モーターサイクル・ダイアリーズ』(棚橋加奈江訳、角川文庫、
2004年)などもありますが、快活な人柄がよく伝わってきて好感が持てます。

芸術家系では、

『イリヤ・カバコフ自伝』イリヤ・カバコフ(1933-)著、鴻英良訳、みすず
書房、5670円
『レイモン・サヴィニャック自伝』レイモン・サヴィニャック(1907-2002)
著、橋本順一訳、T・Oブックス、3600円
『アンリ・カルティエ=ブレッソン伝』柏倉康夫著、青土社、1,995円

などがありました。カバコフは画家、サヴィニャックはポスターデザイナー、
カルティエ=ブレッソンは写真家です。映画監督のペドロ・アルモドバルのイ
ンタビュー本『映画作家が自身を語る』(石原陽一郎訳、フィルムアート社、
2730円)というのも刊行されました。

科学者系では、

『ニールス・ボーアの時代(1)』アブラハム・パイス著、西尾成子ほか訳、
みすず書房、6,930円
『リーヴィット』ジョージ・ジョンソン著、槇原凛訳、WAVE出版、2520円
『毒ガス開発の父ハーバー』宮田親平著、朝日選書、1260円

などがありました。今月の自伝・評伝系で個人的にもっとも関心を惹いたのは、
『リーヴィット』と『毒ガス開発の父ハーバー』です。前者はハーヴァード大
学天文台の平凡な一職員でありながら、後世に残る大きな天文学的発見をした
ヘンリエッタ・リーヴィット(1868-1921) の伝記。後者はノーベル賞化学賞受
賞者で第一次世界大戦期の祖国ドイツに利用されたユダヤ人科学者フリッツ・
ハーバー(1868-1934)の評伝。二人の生涯に訪れた様々な苦難に心動かされ
ます。

文系の学者系では、

『誠実という悪徳』ジョナサン・ハスラム著、角田史幸ほか訳、現代思潮新社、
6720円
『ヒトラー、ゾルゲ、トーマス・マン』クラウス・H・プリングスハイム(19
23-2001)著、池内光久訳、彩流社、3675円
『パーシヴァル・ローエル』デイヴィッド・シュトラウス著、大西直樹ほか訳、

彩流社、3990円

などがありました。最初の本は歴史家E・H・カー(1892-1982)の評伝で、二
冊目は回想録です。後者はどちらかと言えば、本人よりは音楽家の父親や叔父
のトーマス・マンが有名なのかもしれませんが、カナダのマクマスター大学名
誉教授であり、オタワの日加貿易協議会理事長でもあった方です。三冊目は評
伝。ローエル(1855-1916)は日本研究家であり天文学者です。今月の自伝・
評伝系では一番の変り種かもしれません。

ローエル(もしくはローウェル)について一言補足しておくと、日本では『極
東の魂』(川西瑛子訳、公論社、1977年)、『日本と朝鮮の暗殺――ローエル・
レポート』(伊吹浄編、公論社、1979年)、『能登・人に知られぬ日本の辺境』
(宮崎正明訳、パブリケーション四季、1979年/十月社、1991年)などが訳さ
れています。このほかにも未訳ですが、『オカルト・ジャパン』(1894年)や
『生命の居住地としての火星』(1908年)などの著書があり、後者は「火星人」
の存在を示唆するものとして、SF作家に影響を与えたとか。

このほか、古典系としては、

『英雄伝(2)』プルタルコス著、柳沼重剛訳、京都大学学術出版会、3990円
『十字架の聖パウロの生涯』ポール・フランシス・スペンサー著、丸山ヒデ子
訳、ドン・ボスコ社、2100円

がありました。自伝・評伝系で今月もっとも大きかった話題は、間違いなく、
東京大学出版会のシリーズ「近代日本の思想家」全11巻が来春完結するという
ニュースだろうと思います。じつに半世紀かかったという企画です。当初の編
集者は引退し、筆者11名のうちすでに8名が逝去。同出版会のPR誌「UP」11月
号の冒頭に、同シリーズの執筆者の一人・色川大吉さんが「幻の企画、半世紀
ぶりに完結」という一文を寄せておられます。中絶しなかったのが本当に奇跡
のようですね。

http://www.utp.or.jp/series/sisouka.html

最後に、一冊ご紹介しておきたい本があります。東京堂書店外商部の部長を務
めておられた小島清孝さん(1947-2006)の『書店員の小出版社巡礼記』です。

出版メディアパルより今月刊行、税込2625円。03年から05年にかけて小島さん
が取材した32の出版社が紹介されています。後半には日本出版労働組合連合会
の機関紙『出版労連』に連載された「本の目利きNOTE」(1997-2006)を収録。
こちらでは62社の出版活動と発行する62点の本を紹介されています。

http://www.jcj.gr.jp/~shuppan/jcj0/jcj3004.html
http://www.murapal.com/books/ps006.html

影書房の松本昌次さんは本書に寄せた序文「"小出版社"を勇気づけた人」の末
尾にこう記しておられます。「小島清孝さん、あなたの生涯がどんなに輝いて
いたか、本書が明らかに物語っています」。

私が初めて小島さんにお目にかかったのは未来社の営業部員だった94年のこと
だったと記憶しています。当時小島さんは2Fのフロア長でした。しばしば営業
マンというものは冷たくあしらわれるのを覚悟しなければならない役柄なので
すが、小島さんは嫌な顔ひとつせず、いつもにこやかに対応してくださったこ
とをよく憶えています。私はその後、作品社営業部に移るのですが、その頃は
小島さんは外商部に移られていました。異動後も、新刊の事前案内を待ちわび
てくださる方でした。

東京堂書店でお世話になった書店員さんを、出版界の営業マンは続けてお二方
失ってしまいました。文芸書販売の要だった林健二さんと、人文書販売の要
だった小島さんです。まだお若いお二人でした。つい先日まで私は下っ端の若
造気分が抜けなかったのですが、先輩を亡くすごとに、もう甘えてはいられな
いのだと気づきます。残された者の責務を抱きしめながら、また一歩踏み出そ
うと思います。


◎五月(ごがつ):1968年生まれ。某出版社取締役。http://urag.exblog.jp
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『存在と無――現象学的存在論の試み(I)』

ジャン=ポール・サルトル:著 松浪信三郎:訳
定価1890円 633頁 ISBN978-4-480-09106-2

人間の意識の在り方(実存)を精緻に分析し、存在と無の弁証法を問い究めた、
サルトルの哲学的主著。第I巻は、即自と対自が峻別される緒論から、対自と
しての意識の基本的在り方が論じられる第二部までを収録。全三巻。
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『否定弁証法講義』

T・W・アドルノ:著 細見和之・河原理・高安啓介訳
定価3360円 四六判376頁 ISBN978-4-86182-166-0

アウシュヴィッツ以降の哲学は「否定弁証法」としてのみ可能である! 批判
理論の頂点『否定弁証法』刊行に先立って行われたフランクフルト大学連続講
義。実証主義、ハイデガーなどとの対決の中に批判理論の要諦を解き明かす。
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『四次元主義の哲学――持続と時間の存在論』

セオドア・サイダー:著 中山康雄:監訳 小山虎・齋藤暢人・鈴木生郎:訳
定価3990円 四六判480頁 ISBN978-4-393-32313-7

「テセウスの船」や「粘土と像」など様々なパラドクスの考察から始めて、変
化と自己同一性、相対性理論、タイムトラベルなどの諸問題を探究、多彩な理
論を精査したうえで独自の時間論を提唱する、若き俊英の記念碑的作品。
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『イメージの帝国/映画の終り』

吉本光宏:著 定価2520円 四六変形判248頁 ISBN978-4-7531-0257-0

ハリウッド映画の世界戦略を、その作品群のみからではなく、資本主義・国家・
ナショナリズムの変貌を通して捉えなおす画期的な論考集。これまでの作家論
一辺倒に傾いていた映画批評に新しい視点を導入し、活性化を図る。
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『状況への発言――靖国そして教育』

高橋哲哉:著 定価1995円 4-6判284頁 ISBN978-4-7917-6371-9

靖国公式参拝・愛国心教育など国家主義的傾向の台頭著しい状況にあって我々
の言葉は封殺され、一つの価値観を強制される危機に瀕している。あるべき歴
史認識と精神の自由を見極めて現代に放つ、根源的疑問と批判。緊急出版。
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『わたしのリハビリ闘争――最弱者の生存権は守られたか』

多田富雄:著 定価1260円 4-6判172頁 ISBN978-4-7917-6362-7

脳梗塞を患って以来、リハビリによって障害と闘いながら、医療費削減政策の
暴走や弱者切り捨ての失政を指弾する著者の執筆・発言をまとめた、一年余に
わたる闘争の記録。病床と車椅子の上から発せられた命の叫び。
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『現代思想 07年11月臨時増刊号』定価1400円 ISBN978-4-7917-1172-7

総特集=マックス・ウェーバー  

山之内靖、姜尚中、三島憲一、亀嶋庸一、上野俊哉、小谷汪之、中野敏男、荒
川敏彦、内藤葉子、野口雅弘、三苫利幸、市野川容孝、梅津順一、小林純。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A5%DE%A5%C3%A5%AF%A5%B9%A1%A6%A5%A6%A5%A7%A1%BC%A5%D0%A1%BC
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『現代思想 07年12月号』11月27日発売 定価1300円 ISBN978-4-7917-1173-4

特集=量子力学の最前線――情報・脳・宇宙
討議:「量子宇宙の最前線」竹内薫×横山順一
論考:佐藤文隆、小澤正直、西野哲朗、松野孝一郎、港千尋、茂木健一郎、内
井惣七、郡司ペギオ幸夫、塩谷賢、原田雅樹、白井仁人、渡部鉄兵。
新連載:通天閣…酒井隆史
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%CE%CC%BB%D2%CE%CF%B3%D8%A4%CE%BA%C7%C1%B0%C0%FE

次号→12月臨時増刊号「戦後民衆精神史」/1月号「民意とは何か」
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