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[本]のメルマガ vol.213
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■■ [本]のメルマガ     2005.5.15.発行
■■         vol.213
■■  mailmagazine of books    [7月からビンボーになる 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→なんと次回で最終回! 南陀楼さんがこれまでの感想などをお待ちしてお
ります、kawakami@honco.net まで、ぜひ。

★「図書館の壁の穴」/田圃兎
→図書館を立ち上げるには、はてさて、どんなポリシーで行きましょう……

★ひよっこ行政書士のRock'n'law(ロッケンロー)相談室/うすいまき
→今月はお休みの月でーす。

★「出版・流通業界へのミニ提言集」/掩耳
→書店員って潰しが利きにくい職業なんでしょうか、やっぱり……

★「虚実皮膜の書評」/キウ
→今回から、復帰! 渋い純文学&人文書路線は健在です。
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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第60回 5年間をふり返って

「本のメルマガ」で2000年5月からはじまったこの連載だが、今回でまる5
年、60回を迎えた。書店名と書名が並ぶリストが中心のそっけない内容なの
に、ココまで続くとは思わなかった。
 第一回で書いたように、「ぼく個人の本の買い方を記録しつつも、新刊書
店の魅力が具体的に伝わればいい」という狙い(というか希望)がどこまで
実現したかは判らないけれど、読者の方からは「私と同じ本の買い方をして
いますね」「あの本屋さんは私も好きです」という感想から、書店の現場に
いるヒトからの鋭い意見まで、さまざまな反応があり、励みになった。
 しかし、しばらく前から考えていたのだが、5年を終わったところで、こ
の連載は終了します。その理由をいくつか挙げてみよう。
(1)書店の変化を観察して、それに自分なりのコメントを付け加えるとい
う行為に疲れてきた。似たようなことを書くことになってしまうので、書店
について書くのなら、別のアプローチを考えたい。
(2)書物関係のブログでは、自分が買った本について報告するのがごくフ
ツーのことになりつつある。もっと熱心なヒトのブログに任せたい。
(3)自分の日記「ナンダロウアヤシゲな日々」
(http://d.hatena.ne.jp/kawasusu/)で先に書いてしまうことが多く、ネ
タがかぶるのが気になる。
(4)7月からビンボーになる。もちろんどんな生活でも本は買い続けるだ
ろうが、新刊書の購入冊数はたぶん減るだろうし、こういう連載していると
ネタになりそうだという理由でつい買ってしまうので……。
 直接的には、最後の理由が大きいかな。以前も書いたけど、(仕事でも私
事でも)本の世界に関わる限り、可能な限り本を買い続けるコトはやめない
だろう。でも、収入に合わせて、これまでだったらスグに新刊で買っていた
本を古本屋で買うこともあるだろうし、図書館で読むこともあるだろう。そ
うすると、「月に50冊以上本を買っている変わり者の記録」というこの連載
のウリが消えてしまう。
 また、(2)に挙げたように、毎月多くの本を買っているヒトがそのこと
をブログで書いているし、アフィリエートの導入、他のブログとの連携など
によって、本のススメかたも様変わりしつつあるようだ。だから、「もうそ
ろそろイイかな……」と思ったのだ。
 5年間お付き合いくださった読者の皆さん、ありがとうございます。勝手
なコメントを付けた書店・出版社の方々、すみませんでした。そして毎回、
発行日当日まで原稿を待ってくれていた「本のメルマガ」の守屋淳さんに感
謝します。
 ……これで終わりじゃありません。次回、ホントの最終回では、総まとめ
として、6年間で買ってきた冊数の総計、書店の数、さらには行ったり買っ
たりから見えてきたことを書かせていただきます。
 では、最後のリストです。

四月一日
◎往来堂書店(千駄木)
菊池直恵『鉄子の旅』第3巻、小学館、562円+税(以下同)
小田扉『団地ともお』第4巻、小学館、505円
西原理恵子『毎日かあさん2 お入学編』毎日新聞社、838円
『本の街 神保町古書店案内』ピエ・ブックス、1800円
『ロック画報』第19号、ブルース・インターアクションズ、1700円
『THE DIG』第40号、シンコーミュージック、1400円

四月二日
◎書泉グランデ(神保町)
『東京人』5月号、857円

四月六日
◎高岡書店(神保町)
押切蓮介『でろでろ』第4巻、講談社、514円
押切蓮介『マサシ!!うしろだ!! 押切蓮介劇場』講談社、838円
岡本健太郎『愛斜堂』第1巻、講談社、514円
きら たかし『赤灯えれじい』第3巻、講談社、514円

四月八日
◎海文堂書店(店長からの手渡し)
中村よお『洋楽ROCK関西実況70’s』幻堂出版、1500円
オヤジ芝田『神戸ハレルヤ! グルめし屋』幻堂出版、1200円
【ひとこと】関西の出版関係者の勉強会「勁版会」で発表することになり、
大阪会館へ。大阪、京都の出版社の方々と話せて、オモシロかった。幻堂出
版の2冊は東京ではまだ並んでおらず、会に出席した店長自らに持ってきて
いただいた。

四月九日
◎柳々堂(京町堀) http://www4.osk.3web.ne.jp/~ryuryudo/
ジョヴァンニ・バッティスタ・ピラネージ『ピラネージ建築論 対話』アセ
テート、1400円
『いつかの、だれかに 阪神大震災・記憶の〈分有〉のためのミュージアム
構想展』[記憶・歴史・表現]フォーラム、1300円
『風景・記憶・建築 建築家宮本佳明氏に聞く』震災・まちのアーカイブ、
300円(税込)
『Ahaus アーハウス』第1号(特集・前川國男と弘前)、
アーハウス編集部(青森市)、933円
【ひとこと】前日、何人かからその名前を聞いた、建築専門の新刊書店。明
治27年創業というから、110年以上の歴史がある。見た目は普通の街の本屋
さんなのだが、ナカに入ると、95パーセントが建築関係の書籍と雑誌で占め
られている。翌日インタビューするアセテートの本があるか訊いたら、パッ
と一冊出てきて、品切れだというもう一冊は見本を見せてくれた。松村さん
という女性と立ち話したが、「あの建築家については◎◎◎(建築雑誌)の
◎年◎月号で特集が組まれています」などと即答してくれるので驚いた。建
築事務所のヒトや、建築学の研究者、学生に信頼されているというのも、当
然だろう。

◎calo Bookshop & Cafe(肥後橋)
『ミス・ペテン 鴨居羊子の世界』カタログ、1200円
『四月と十月』12号、500円

四月十日
◎アセテート(大阪市立大学) http://www.acetate-ed.net/jp_top.html
中谷礼仁・中谷ゼミナール『近世建築論集』アセテート、2400円
ビリー・クルーヴァー『ビリーのグッド・アドヴァイス』アセテート、
660円
【ひとこと】アセテートは出版社という形態を取らず、「編集出版組織体」
と名乗っている。ココの出版物はまだ少しの書店にしか置いてないので、取
材に行ったときに何冊か買った。6月10日発売の「本とコンピュータ」第16
号(最終号)に、ぼくが書いた記事が載るので、よかったら見てください。

四月十一日
◎タコシェ(中野)
松本正彦『たばこ屋の娘 70年代短編傑作選』劇画史研究会・ひよこ書房、
700円
『たのしい中央線』太田出版、952円

◎トムズボックス(吉祥寺)
『堀内さん』堀内事務所(私家版)、3500円
片山健『犬、猫、魚、その他』トムズボックス、1200円
片山健『夜の水 朝の水』架空社、1600円


片山健(画)・千野栄一(訳)『3びきのくま』ミキハウス、1500円
近藤みわ子『私家版 成瀬巳喜男映画絵読本』トムズボックス、500円
【ひとこと】たまたま片山健さんの展覧会をやっていたので、絵本に手が伸
びる。それから、なんと、堀内誠一の追悼文集『堀内さん』があるではない
か! 1997年刊の私家版で、〈青猫書房〉の目録で注文したがハズレてし
まった。それがまっさらの新本として買えるのだ。店のヒトに聞くと、最近
何冊か預かったとのこと。こういう出会いが、本屋の店頭ならではの醍醐味
だよなァ。

四月十三日
◎往来堂書店(千駄木)
吉見俊哉・若林幹夫編著『東京スタディーズ』紀伊國屋書店、2000円
伊藤理佐『チューネン娘。』第2巻、祥伝社、667円

四月十五日
◎丸善(羽田空港店)
『マンガの道 私はなぜマンガ家になったのか』ロッキング・オン、1300円

四月十六日
◎リブロ(金沢店)
朝日新聞編著『ほくりく文学散歩』能登印刷出版部、1600円
【ひとこと】〈リファーレ〉という大きなビル(オフィスや住宅、ショッピ
ングモール)の1、2階にある〈リブロ〉に入る。前は別の書店チェーンだっ
たが、昨年リブロに代ったという。店のレイアウト、置いてある本が、東京
のリブロっぽいことに驚き、その一方で、せっかくこれだけ広いのだからも
うちょっと手を入れればイイのになあと思う。しかし、児童書コーナーに行
くと、様子が違う。「阪田寛夫追悼」というPOPの、上下にひしゃげたよう
な独特の文字、コレは明らかに、以前池袋のリブロにいた荒木幸葉さんの手
になるもの。彼女はいまココで、アルバイトとして児童書を担当している。
隣には、堀内誠一の絵本が復刊されたのを機に、堀内コーナーが。ちゃんと
選んで置いているのが判る(しかし、堀内レタリングによる絵本『しずくの
ぼうけん』は別の場所に置かれていた。まだアマイな、アラキ)。

四月十八日
◎往来堂書店(千駄木)
多川精一『焼跡のグラフィズム 「FRONT』から「週刊サンニュース」へ』
平凡社新書、720円

四月十九日
◎あゆみブックス(早稲田店)
『宮本常一 旅する民俗学者』河出書房新社(KAWADE道の手帖)、1500円
『60年代「燃える東京」を歩く』JTB、1500円
『早稲田文学』5月号、1143円
島本和彦『逆境ナイン』第1、2巻、小学館、各533円
【ひとこと】入ってスグの平台と左側の棚が、いかにも大学のある街の本屋
さんという感じでイイ。しかし、ここで面白そうだと思って買った本はかた
い内容が多く、積ん読になる傾向がうかがえる(オレだけか)。『早稲田文
学』は商業ベースでの最後の号。次からフリーペーパーとして発行されると
いう。

四月二十一日
◎良文堂書店(綾瀬)
『映画秘宝』5月号、洋泉社、1000円

四月二十二日
◎あゆみブックス(大塚店)
かんべむさし『理屈は理屈 神は神』講談社、1500円

四月二十三日
◎芳林堂書店コミックプラザ(池袋)
田中圭一『鬼堂龍太郎・その生き様』第1巻、集英社、648円
サラ イネス『誰も寝てはならぬ』第3巻、講談社、533円
『comic新現実』第4号、角川書店、933円
【ひとこと】芳林堂の本店は閉店したが、向いのビルの地下にあるココだけ
は残っている。マンガの点数は池袋一といってもイイほど多いのだが、客は
少ないし、フシギと静かな店である。西口に出るといつも寄ってしまう。

四月二十六日
◎日本特価書籍(神保町)
仁木悦子『探偵三影潤全集2 青の巻』出版芸術社、1600円

今月の購入本 計45冊(積ん読防止のため、マンガと文庫ばかり買ってま
す!?)
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■「図書館の壁の穴」/田圃兎
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第2回 図書館をつくるときに考えたこと

 前回、新しく図書館を作る際には、行政職員主体ではなく、図書館づくり
のプロと呼ぶに値するような人が一貫してやらなければ難しい、と書いた。

 図書館をつくるには、地方自治や行政のこと、経営に関する一定の知識が
、図書館員にも必要であるし、その土地の歴史・産業・住民の図書館に対す
る期待なども踏まえた、地域性を考える必要がある。
 そして、その地域固有の情報を、それに適した形で扱って活かしていくこ
とも、図書館づくりにおいて、重要なことだと思っている。

 例えば、僕の勤務先は、東京から電車で2時間弱、人口は約5万人で、電
車が1時間に1本しか通らない地方都市だ。
 駅前に建てられた複合施設の中に、この市にとって初めての公共図書館が
設置された。面積のほぼ半分が図書館で、それ以外の部分は図書館を活用す
るためのスペース、という考え方で造られているので、全体が図書館といっ
ても差し支えないような建物となっている。

 大都市でたくさんの分館を持つ図書館と、本屋もないような地方の図書館
とでは、当然ながら予算規模も利用者も館の目的も異なる。
 もちろん、市立図書館は市民の税金でつくられているのだから、市民の趣
味や娯楽といったニーズに応えるべきだという考え方がある。
 けれども、多様化する嗜好に何でも応じられるような図書館を、つくるこ
とは出来ないし、地方の市町村にはそれを維持していける財力もない。

 そんな地方の市町村の事例として、今回は僕が図書館をつくるにあたって
考えてきたことについて、書いてみたい。
ひとつひとつの事例や、方法を書いていくと長くなるので、大まかに今回は
挙げていきたいと思う。
            *   *   *

 まず、図書館の本質は調べものの場なので、出来るだけ多くの種類の資料
を揃えておきたいと思う。
 目的をもった調べもの以外にも、様々な本や情報を知るきっかけの場とし
ての意義も大きい。そんな意味でも、資料の種類は出来るだけ多いほうがい
い。

 複本の購入は行わず、その分の予算は資料の種類を出来るだけ増やすため
に回したい。だから、ベストセラーを早く読みたい人は、自分で買ってくだ
さい、という方針で開館に向けて本を購入してきており、今後もその姿勢を
続けたいと思っている。

 また、入門書やHowToものの購入比率を抑えて、その分様々な調査や研究
に役立ちそうな資料を優先的に揃えていきたい。
 公共図書館が生涯学習の場であるならば、各学術分野の学術書も積極的に
買っておく必要があると思う。
 公共貸与権制度が導入され、資料の単価が上がったとしても、蔵書の質が
図書館の価値に直結すると思うので、高額書の買い控えなどに陥らないよう
注意し、その場で手軽に使われるような本の購入を抑え、長期保存して使用
に耐えるようなストックの構築を目指していきたい。

 新しい図書館は特に、どうしても最近の本を中心に買い揃えて開館するこ
とになる。開館前に、出来る限り古書店に足を運び、絶版本や展覧会の図録
などを購入したが、今後も定期的に探しに行く必要があると思っている。
 特に地元の歴史や美術、工芸品に関わりのある資料などは、新刊本から探
してもほとんど見当たらないので、古書店ルートは非常に重要である。

 また、どの公共図書館でも雑誌が極めて冷遇されている。比較的簡単に予
算がカットされて、購入誌数が激減している図書館が多いようだ。
 確かに、買うのは娯楽雑誌が中心で、受け入れてもすぐに廃棄してしまう
ならば、予算が削られても仕方ないと思う。

 そんな状況なので、雑誌のバックナンバーを見るには、国立国会図書館か
大宅壮一文庫などに頼るしかないのが実情である。
 それならば、自館で雑誌を保存していけば、それが長く続くほど強力なコ
ンテンツになるのではないか?と考えた。
 だから、僕の勤務先では、雑誌を極力永久保存することにしている。
 それに、都市部とは異なり地方の書店では手に入りにくい雑誌も数多いの
で、利用者の興味や知識が広がるように、タウン誌やミニコミ誌なども含め
た様々な情報をできるだけ数多く紹介するようにしている。

 CDやビデオ、DVDといったAV資料については、一般的に利用者ニー
ズが非常に大きいようだが、民間のレンタルショップの商売を妨害するよう
な品揃えにはしたくない。
 だから、店で扱っていないような、教養や古典を中心とした図書館ならで
はの品揃えにこだわっていきたい。
 これは、娯楽志向ニーズを排除するというネガティブな意味ではなく、店
と異なる資料が揃っていれば、市民の選択肢が増えるという考え方でもある

 こんな考え方で集めた様々な資料を、まずは図書館利用者が、自在に探せ
るよう支援するのが、第一だと考えた。
 実際に提供したい情報は、物理的な資料ばかりとは限らない。
 そこで、商用データベースをはじめとしたネットワーク上の情報も、図書
館資料の延長と考え、調べもののために大いに活用できるような環境を構築
した。

 有効な情報サービスには、強力な情報インフラがあった方がいい。そこで
、必要な情報インフラを、その時点で考え付く限り盛り込んだネットワーク
環境の構築や、システムの導入を行った。

 インターネット閲覧用に100台以上の館内貸出用ノートPCを用意し、利用
者持込PC向けに無線LANのアクセスポイントを随所に設置するなど、利用者
向けの情報環境は、かなり強力な図書館になっている。

 こうした考えで開館準備を進めてきて、開館後約1年経った現在では、か
なり他の市町村立図書館とは違った雰囲気になっているように思う。

 もちろん、今回の図書館づくりで、納得いかなかった部分もある。
 僕を含む図書館メンバーが揃った時期があまりにも遅く、既に建物がほと
んど完成したような状態だった。そのため、建築に関して意見の通らない事
柄が多く、実際の運用に適さない部分が幾つも出来てしまった。
 例えば、密閉状態の書庫が存在しないため、温湿度管理の面から、資料の
永久保存に適したつくりではないということなどは、取り返しのつかない失
敗だと思っている。
 もちろん、それなりに保存する工夫は可能だが、せっかく新しい建物を建
てたのに、この点は惜しまれてならない。
 また、図書館業務システムの選定も、1か月程度で要求仕様を検討し、導
入システムを決定せざるを得なかったため、自館の運用に必ずしも最適なも
のを選べたとはいえないような気がしている。

 こうした経験から、中核となるスタッフの着任時期は、最低でも開館2年
以上前であることが望ましいように僕は思う。

            *   *   *

 僕の場合は、立地条件や、地域で初めての図書館であることから、かなり
思い切った割り切り方で、図書館という施設の機能を主張するような方法が
採れた。
 この手法が、どこでもそのまま通用するかといえば、そんなことはないし
、前回触れた、企業が作る金太郎飴的な図書館という話と関連付けて考えて
も、やはり地域に合ったやり方を考えることは重要だと思う。

 それと、どんな図書館にしたいのかという考えを明確に持った図書館員に
、かなり自由に計画を推進する権限が与えられるということが、方針を崩さ
ず一貫したものをつくれた要因として、非常に大きいように思う。

            *   *   *

 今回、図書館をつくる上で考えてきたことを幾つか書いてみたが、それぞ
れについてもう少し具体的に、次回以降書いてみたい。

◎田圃兎:1969年生まれ。
     SE、大学図書館員、市立図書館設置準備室を経て、現在は
     2004年にオープンした市立図書館の職員。
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■「出版・流通業界へのミニ提言集」/掩耳
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>よく潰しの利く職業とか、利かない職業とか言うじゃないですか
>はあはあ
>書店とか出版社、取次って潰しの利きにくい職業かもしれませんねー
>ああ、そうかも。昔、マエストロ鏡玉さんが、「俺、潰し利かなくて、も
うコンビニのレジに立ち続ける体力もないし、どうしよう」とか言ってたこ
ともありましたっけね(笑)
>そういえば、知り合いの書店員の方で、凄く優秀だなーと思う人が、転職
しちゃうケースが最近たびたびあるんですが、みんな本に関わる業界内なん
ですよね。まあ、本が好きということもあるんでしょうが、マエストロが
言っていたように、なかなか他業界には転職にしくいのかな、と思うことは
ありますね。
>そういえば、このメルマガの執筆者のみなさんも、基本的には全員、転職
経験者じゃないんですか?
>そうそう、そうなんです。転職率が激しい業界になってきたなーって感じ
ですね。でも、潰しが利かないって、実は、専門的に特化しちゃってるとい
う意味合いも結構あると思うんです。職人とか専門家なんて、そのジャンル
が衰退しちゃえば、最も潰しが利かない人たちになっちゃう最右翼じゃない
ですか(笑)そうそう、それでちょっと話が変わるんですが、今って公営の
図書館で、管理の民間委託が始まっているって話は知ってますか?
>本の貸出とか相談とか、司書さんじゃない人がやるわけですか……
>そうらしいんです。で、それを受託している民間業者って、元書店員の人
材が集まってるらしいんですよ。
>へー、でもそれで収入そこそこで安定していれば、専門知識をきちんと活
かせるわけだし、悪くないかもですね。
>そうそう、書店員って意外な転職先もあるもんだな、と思いましたね。た
だ、そうはいってもやはり潰しが利きにくいのは事実なわけで、そこで、今
回の提案なんですが……
>ほうほう
>書店員の人材登録センターみたいのを、ネットで作ったらどうかな、と
思うんですよ。いや、実はライターの人って仕事欲しい人が集まって、「自
分はこんな技量があって、こんな仕事してきました」みたいなサイトを作っ
てる所があったんです。これは、書店員にも応用できるのではないかなー
と……
>求職している書店員が、どこかのサイトに集まるわけですか?
>そうそう。それで、自分はこんな規模のお店でこんな担当や役職をしまし
た、とか、こんな実績を挙げましたってアピールして、もしよかったら出版
社の営業の方に推薦文でもつけてもらって、サイトにずらっと置いておけば、
人の欲しい書店や出版社はアプローチするんじゃないかな、と。「うちは仕
入に強い人材探していたが、ちょうど良い人がいるよー」とか、「出版営業
を探してたけど、書店経験者は良さそうだな」とか……
>でも、それって今どこかの書店で働きながら、別の所に転職したい人は、
マズイですよね。そこを見て「なんだお前辞める気か」みたいになっちゃい
ますもんね(笑)
>そこは、それ、パスワードないと見られないような仕組み作って、そうい
う人は、他社の人事担当社でパスワードをもらった人だけ閲覧できるように
するとか……
>ああ、それなら大丈夫かもしれませんね。
>いや、中規模の店長やらせたら抜群とか、新刊の目利きは凄いとか、いろ
んな個性の人がいて、失職してたりミスマッチな人事で悩んでいる状況は、
書店業界のためにも勿体無いと思うんです。で、なんとかならないのかな、
と……。それに、この業界、けっして景気が良いわけではないので、いつ何
時リストラの嵐が再燃するのかわかったもんじゃない、とも思うわけなんで
す。
>格好良く言うと、業界におけるセーフティネットつくって、適材適所を実
現したいってことなんですかねー?
>まあ、そうですね。POSだのなんだの言ってますが、結局この業界って
マンパワーありきじゃないですか。各々の人材が、最も自分の能力発揮でき
る所で働いてもらうのが――それは悲しいかな、自分の会社ではなく、他の
会社ということもあり得るわけですが、全体から見ると絶対必要だと思いま
すよー。メルマガのメンバー全員転職経験者だし、もう一つの会社にしがみ
つくような時代も終わっちゃったのかな、という気もしますし……
>しかし、あなたのように「自称・文筆業」になった人は本当に転職といえ
るんでしょうねー(笑)
>うう、それは痛いとこつきすぎです、シクシク(笑)
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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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『河岸忘日抄』 堀江敏幸 新潮社 05.2

 300頁を超える長編小説だが、説明すべきストーリーらしきものはほとん
どない。状況と思念だけがあるといっていいかもしれない。

 主人公「彼」は河岸に繋留された動かない船の中に住んでいる。日本での
仕事から遠く離れ、再出発に備え、日を忘れるかのように日常の中に泥んで
いる。日本で仕事をしていた「彼」の身に何事かがあり、国外へ出てこのよ
うな半隠遁生活を送らざるを得ない、といったような説明はないし、そう
いった差し迫った緊張感は描かれる思念の中からは浮かび上がってこない。
彼はただ判断保留をする時間がほしいのだといったことしか窺えない。

 しかしそこに描かれる「彼」の思考は、決して脆弱でも後ろ向きでもな
い。強い信念に貫かれた判断保留であり、「彼」自身が言うところの<弱さ
>でもあるようなのだ。

 作品中、さまざまな「作品」が引用される。小説はもちろん、映画、音
楽、トライアスロンまで。それらを通して「彼」の生きる命の形のようなも
のが浮き上がってくる。

 タルコフスキーの映画『ノスタルジア』を通して、タルコフスキーの言葉
を引用しながら、こう語りかけてくる。

 「『ノスタルジア』において追求したかったのは、<弱い>人間という私
 のテーマだった。<弱い>人間とは、外見的な特徴からは戦うひとのよう
 に見えないけれども、思うに、この人生の勝利者なのである。(中略)唯
 一まちがいのない価値であり人生の希望だとして、弱さを擁護していた。
 私は実際的な方法で現実に適応しえない人々を、つねに愛してきた。私の
 映画にけっして英雄は登場してこなかったが、強い精神的な信念を抱き、
 他者にたいする責任をみずから負う人物たちはいた」(アンドレイ・タル
 コフスキー『封印された時間』)

 (中略)弱さとは、映画の末尾近くで演説しながらおのれの身体に火を放っ
 たあの男のように、おそらく他者への思いやりが自分をほんの少し自分で
 ない方向へずらし、どこかべつのところへ追いやっていくような足場の組
 み方しかできないことではないだろうか。しかもそのずれは、ほとんど修
 復不可能である。弱さを引き受けた者は、たえず増幅するそのずれを取り
 込んで、なけなしの自分を支えていかなければならない。裏と表の使い分
 けをどうしても体得できなかったせいだろうか、灯油をかぶって火に包ま
 れるほど「他者にたいする責任」を引き受けるのも行き過ぎだとするのが
 彼の立場だった。なぜその中間に立つことができないのか。あいだに身を
 置くのは責任の回避では断じてなく、誰にもそうとはわからない微妙なし
 かたで責任を取ることなのだ。(P19-20)

 ここに表明されている著者の主張を理解し受け入れることのできる読者
に、この小説を読むことはきわめて有意義であるだろう。後はこの信念を表
現する、そのバリエーションであるからだ。

  霧のなかで自分の視力はどこまで届くだろうか、と彼は独語する。まっ
 たく届かなくてもかまいはしない。いま切実に欲しいと彼が念じているの
 は、闇の先を切り裂いてあたらしい光を浴びるような力ではなく、「ぼん
 やりと形にならないものを、不明瞭なまま見つづける力」なのだから。
(P84)

 ためらうことの贅沢について、彼はしぶとく考えつづけている。ためらう
 行為のなかに決断の不在を見るのは、しかしあまりにも浅はかだ、といま
 の彼は思うのだった。(中略)ためらいとは、二者択一、三者択一を甘んじ
 て受け入れ、なお身体に深く残留する疲労感のようなものだ。たった一度
 の決断がすべてを変える、そういう例は数こそ多くはないけれどまちがい
 なくあって、さまざまな粉飾をほどこされた物語として流布しているけれ
 ど、馬鹿を見るほどの正直者として言うならば、それが英断であるかどう
 かはともかく、ためらうことの贅沢とは、目のまえの道を選ぶための小さ
 な決断の総体を受け入れることにほかならないのである。決断の集積その
 ものがためらいを生かしている「あたりまえ」の状況に、なんの負い目も
 持たないこと。それがためらいの正体だとしたら、大鉈をふるう一大決心
 のいさぎよさを認めたうえできわめるべき、もうひとつのありかただと言
 っていいだろう。(P178-179)

 「強い弱さ」「水準の高い弱さ」(P278)といった表現も出てくる。彼は河
岸に繋留された船上での自身の生活を、隠遁生活を送っているかのように思
いなしながら、方丈記の著者を思い起こしつつ、こんなふうにも思い重ねる。

 かつて愛読したあの中世の書物の末尾を思い起こしながら彼は思う。しか
 るを、汝、姿は聖人にて、心は濁りに染めり。心清らかに俗事から逃れよ
 うとしてきたのに、とうとうそれがかなわなかったとする、あれはつまる
 ところ挫折の表明だった。どうもわたしのおこないは駄目らしいとの反省
 の弁は、韜晦でも謙遜でもなく、文字どおりの真率なものだったろう。出
 家の決断にまちがいはなかった。だが、庵を結んでいちおうの悟りを得た
 と満足げに書かれていたのならそれほどながく世に残らなかったはずで、
 じき六十歳に手がとどくほどの、当時としては長寿といっていい年齢に達
 した男が、いまだ煩悩のただなかにあると記しているからこそ説得力があ
 るのだ。(P132-133)

 隠遁生活など、できはしないのだ。どのようにあっても人は人とかかわ
る。そのことから逃れることなどできない。しかし人はこんなふうにも言っ
たりする。

 ぼくの周囲にいる阿呆たちには、たとえばきみの船上生活にはなくてぼく
 の古びた賃貸マンションの薄汚れた部屋や、幼い子どものいる若夫婦の団
 地暮らしにはある(と彼らが考える)ものがあって、それを生活臭と呼ん
 でいるのですが、ぼくにはこんな整理のしかたがどうしても耐えられない
 のです。現在の仕事はそれこそ生活のためにやらざるをえないものですし、
 隠遁、潜伏と、なんでもいいのですけれど、そして、きみだってようやく
 至り着いた仕切りなおしの機会を生きているだけのことだから察してくだ
 さると思いますが、それは塵ひとつない家具屋みたいな部屋を指している
 わけでも、日々のやりくりを表に出さない社会人としての顔の維持を指し
 ているわけでもないのです。生活臭がない、というときの彼らの目線が、
 無用ないくさを起こしている輩の節まわしと、どこかで似ているような気
 がしてならないのです。(P266-277)

 そのような「節まわし」に隠蔽されてしまう<生活>、どのようなあり方
をしていても人間にはついて回る<生活>というものに対する想像力の欠如、
「無用ないくさ」はそのような「生活臭がない」といった無神経なイメージ
付けによって可能となっているのだろう。それはためらいつつあり続ける
<弱さ>に対しての多くの人たちが抱くイメージでもあり、そのような<弱
さ>を抱えて生きることの豊穣さへの想像力の欠如でもあるのだろう。
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■あとがき
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>スミマセン、今回は個人的な話を少々
>はあはあ
>わたくしの奥さん妊娠していたんですが、この度、ゴールデンウィークの
ど真ん中で、無事に男の子を出産しました。いや、知人友人関係への連絡を
ここでかねまして、私用でスミマセン(笑)
>へー、あなたみたいな史上最弱の男がパパねぇ……
>そうなんです。しかし赤ちゃんって、体が赤色で生まれてくるから赤ちゃ
んって言うんですね、今回始めて知りました(笑)。ついでに、うんちは緑
色で、目は黄疸が出て黄色で、なんか信号機みたいだーと思いました。しか
し、可愛いもんですね。親ばかになる心境がわかった気がします……。
>まあ、あなたを反面教師にして、スクスク育って欲しいですね。
>そうそうって、そりゃ真実つき過ぎです、シクシク(笑)
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