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[本]のメルマガ vol.168
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■■ [本]のメルマガ     2004.2.15.発行
■■         vol.168
■■  mailmagazine of books         [秋幸がいない 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→今月は『飛田百番』を求めてさまよい歩きます。

★「虚実皮膜の書評」/キウ
→昨年最も話題になった作品への傑作書評です。必読!

★「次回連載は、まだ検討中」/掩耳
→ということで、出版に関する小ネタをいくつかお送りします。
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■トピックス
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●鵜飼哲×吉増剛造対談講演会
『応答する力 来るべき言葉たちへ』(青土社)をめぐって
日時:2月28日(土)16時〜18時
会場:三省堂書店神田本店8階 特設会場
参加費:500円(税込・当日回収させて頂きます)
定員:60名(先着順・要予約)
鵜飼哲氏の最新刊『応答する力 来るべき言葉たちへ』(青土社)の刊行を
記念して、鵜飼氏と詩人の吉増剛造氏による対談講演会を開催いたします。
戦争の影が世界を覆い、「傷」が蔓延する現在、「他者」の声に応えるため
の表現はいかにして可能か?注目の二人の対談にご期待ください。

お問い合わせ・ご予約
三省堂書店神田本店4階 電話03-3233-3312(代表)

●鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二の三人が揃いぶみ
3月上旬発売予定の新刊『戦争が遺したもの』(新曜社 2800円税別)では
今人気の鶴見俊輔・上野千鶴子・小熊英二の各氏が揃い踏み。以下、出版社
さんの案内文です。
《◆鶴見俊輔氏がすべてを語る!◆
『〈民主〉と〈愛国〉』で読書界の話題をさらった小熊氏が、今回はあの上
野千鶴子氏をさそって、戦後思想界の大御所・鶴見俊輔氏に、戦争体験を軸
に戦中から戦後にかけての経験をお聞きします。戦時中の捕虜虐殺、慰安婦
問題、戦後の『思想の科学』時代、「転向」研究、安保闘争、ベ平連と脱走
兵援助、など、これまで聞き手が遠慮してきたようなこともすべてお聞きし
ています。また、鶴見氏も「今回はすべて話します」と言って、洗いざらい
答えられています。鶴見ファンにとっては、はじめてお聞きするようなこと
がゴロゴロ出てきて、たまらない本になるでしょう。上野ファン、小熊ファ
ンにとっても、それぞれの鋭い切り込みによる鶴見氏の赤裸々な「告白」を
とおして戦後思想史の隠されていた部分が次々に明かされるスリルと、丁々
発止の対談の魅力を味わうことができるでしょう》◎新曜社<新刊の御案
内>メール版 第41号より 詳しくは、以下まで。
http://www.shin-yo-sha.co.jp/mokuroku/books/4-7885-0887-7.htm
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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第45回 『飛田百番』が見つかるまで

 今年1月の5日頃、「これから出る本」だったかを眺めていて、『飛田百
番 遊郭の残照』(橋爪紳也監修、創元社)という写真が出るコトを知った。
飛田百番といえば、昨年秋にぼくが大阪に行ったときに見た、飛田遊郭の中
にある元貸し座敷(いまは予約制の居酒屋)のことではないか。あのときは
ナカには入れなかったが、軍艦みたいな巨大な建物に圧倒された。この本は
百番の建築を細部にわたり撮ったものだとある。コレはすぐにでも欲しい。
 あわてて創元社のサイト(http://www.sogensha.co.jp/)を見ると、内容
紹介があって期待が高まる。数日後、TRCの「今日の新刊」にデータが載った
ので、書店に並びそうなタイミングを見計らって、探しにいった。しかし、
どこに行っても一冊も見つからない。建築や写真に強い店も覗いたが、平積
みどころか入荷もしていない気配だ。版元が大阪で、情報が行き渡ってない
からだろうか? それにしても見事にナイ。(あくまでも、個人の狭い見聞
なので、「あそこは発売直後に平積みしてたぞ」という書店があれば教えて
ください)
 結局、本文に書いたようにジュンク堂で見つけて買った。予想にたがわず、
すばらしい写真集だ。解説を後ろにまとめ、写真だけを大きく見せる構成が
いい。A4というサイズが活きている。ぼくが書店員だとしたら、この本を建
築コーナーに置くだけでなく、町歩きや東京本と一緒にしたり、セックス
ワーカーもののコーナーに置いたり、ちょっと前によく売れた『赤線跡を歩
く』(木村聡、ちくま文庫)と並べてみたりと、いろいろ遊んでみるだろう。
そういう手間をかけるに足る本と思う。
 いまからでも遅くない。ちょっと置いてみたいという書店さんは、ゼヒ創
元社にプッシュしてみてください。

一月三日
◎セブン・イレブン(逗子駅前店)
『音楽誌が書かないJポップ批評33 バンドブーム・クロニクル』宝島社、
1200円+税(以下同じ)
【ひとこと】年末から新刊書店に行ってなかったので、本が置いてあるとフ
ラフラ寄ってしまう。

一月六日
◎三省堂書店(神保町本店)
『中日辞典  第二版』小学館、6300円
五味文彦『書物の中世史』みすず書房、6400円
松田京子『帝国の視線 博覧会と異文化表象』吉川弘文館、6000円
【ひとこと】4階の人文書売り場、なかなか良くなっている。「2003年話題
の人文書」コーナー(だったかな?)は、面出しや立てかけてあるので、ま
ず表紙デザインの面白さに惹かれる。向かいの三省堂経営「自遊時間」では、
今度はCDなどを扱うらしい。どんどん書店じゃなくなっていくなあ。さらに、
すずらん通りの「ふくろうブックステーション」の前を通りがかったら、棚
の本が消えていた。なんでも一時閉店するらしい。書店として復活するらし
いが、いったいどうなることか。

◎書肆アクセス(神保町)
川崎ゆきお『夢伝説』幻堂出版、1429円
『紙魚の手帳』第24号、東京エディトリアルセンター、500円

◎リブロ・ブックス(池袋本店)
アンドレ・バーナード『まことに残念ですが…』徳間文庫、514円

◎ジュンク堂書店(池袋店)
東直己『悲鳴』角川春樹事務所、1900円
スガ(糸へんに圭)秀実『JUNKの逆襲』作品社、1800円
【ひとこと】ネットで在庫確認できるが、メールでの返事を待っていると翌
日になりそうなので、電話で取り置いてもらう。どの階の本でも一階カウン
ターで受け取れるのが便利。

一月八日
◎ブックス高田馬場
狐『水曜日は狐の書評 日刊ゲンダイ匿名コラム』ちくま文庫、880円

一月九日
◎往来堂書店(千駄木)
オイゲン・ヘリゲル『日本の弓術』岩波文庫、400円
鈴木みそ『銭』第1巻、エンターブレイン、620円
『地獄を見た男 蛭子能収コレクション・地獄編』マガジン・ファイブ、
1400円
『本の雑誌』2月号、505円
【ひとこと】この前日から、神保町や池袋で、『飛田百番』を探してみるが、
見つからず。いつもカンのいい往来堂さえ、まだ入ってなかった。これは見
つけるまで時間かかるかなー。(この時点ではbk1などオンライン書店には
データが載っていなかった)

一月十日
◎パルコ・ブックセンター(渋谷店)
福満しげゆき『カワイコちゃんを2度見る』青林工藝舎、1200円
『パチンコ屋はインテリを嫌う 蛭子能収コレクション・ギャンブル編』マ
ガジン・ファイブ、1400円
『雪と女とラーメンと 蛭子能収コレクション・グルメ編』マガジン・ファ
イブ、1400円
清原なつの『ワンダフルライフ』ハヤカワ文庫、840円
『噂の真相』2月号、448円
【ひとこと】内田百間のコーナーができていたが、POPに百間の写真があり、
その脇に「こんな顔でトボケたことを」などと書かれていた。あれ、百間を
知らないヒトもちょっと手にとって見たくなるのでは。ココでも『飛田百番』
見つからず。余談だが、いつの間に「歴史学」よりも「カルチュラル・スタ
ディーズ」コーナーの方が大きくなったんだろう?

一月十二日
◎町田市立国際版画館(通販)
『描かれた明治ニッポン 石版画〔リトグラフ〕の時代』図録・研究篇、
町田市立国際版画館、2600円
『版画 大正から昭和へ』図録、町田市立国際版画館、200円
『若山八十氏展』図録、町田市立国際版画館、200円

◎大分市立美術館(通販)
『ネオ・ダダJAPAN 1958-1998』大分市教育委員会美術館建設準備室、
2940円
【ひとこと】正月に鎌倉近代美術館・葉山館の図書室で見た図録を、電話し
て在庫を確かめて、通販で購入。現金書留での送金は面倒くさいけど、数年
前の図録が手に入る醍醐味は捨てがたい。

一月十五日
◎文教堂書店(市ヶ谷店)
横山秀夫『看守眼』新潮社、1700円
松美里瑛子『無料空間』モデラート、1400円

一月十六日
◎リブロ・ブックス(外苑前店)
桑原茂一2『これ、なんですか? スネークマンショー』新潮社、1300円
チャペック兄弟2004年日記、650円


【ひとこと】去年からチャペックもののカレンダーや絵葉書が出ているなあ
とは思っていたが、こんなにいろんな商品が出ているとは。ココでも『飛田
百番』見つからず。

一月十七日
◎東京堂書店(神保町)
谷沢永一『本はこうして選ぶ買う』東洋経済新報社、1400円
河内紀『ラジオの学校』筑摩書房、1600円
【ひとこと】一階の地味本コーナー(勝手にそう呼んでいる)に『飛田百番』
があるかと探すが、見つからず。

◎書肆アクセス(神保町)
東直己『ススキノハードボイルドナイト』寿郎社、1800円
【ひとこと】東直己のエッセイ集。大手ではなく地方出版のこの本がアクセ
スで買えてよかった。

一月二十一日
◎書泉グランデ(神保町)
大西巨人『深淵』上・下、光文社、各1800円

◎三省堂書店(神保町本店)
伊藤理佐『チューネン娘。』第1巻、祥伝社、667円
島本和彦『吼えろペン』第10巻、小学館、533円
【ひとこと】『飛田百番』、神保町では全滅。そろそろ諦めてオンライン書
店か版元に注文しようかなあ。

一月二十三日
◎マツノ書店(直販)
『宮本常一 同時代の証言』正・続、マツノ書店、5000円
【ひとこと】発売前に予約していた本が届く。ずっしりと厚い2冊。書店で置
いても売れそうだが。

一月二十四日
◎旭屋書店(渋谷店)
横田順彌『古書ワンダーランド1』平凡社、2400円
黒川博行『八号古墳に消えて』創元推理文庫、680円

◎ブックファースト(渋谷店)
高平哲郎『ぼくたちの七〇年代』晶文社、1700円
野崎正幸『駆け出しネット古書店日記』晶文社、1800円
谷沢永一『本は私にすべてのことを教えてくれた』PHP研究所、1300円
遠藤寛子『「少女の友」とその時代 編集者の勇気・内山基』本の泉社、
1800円
市村弘正『増補 「名づけ」の精神史』平凡社ライブラリー、854円
『ビックリハウス』131号、PARCO出版、800円
【ひとこと】三階の書物関係のコーナーの平積みから、4冊新刊を買ってし
まった。前の日に電話して、『飛田百番』が品切れだということは判ってい
たが、ココでも探してみる。でも、見つからなかった。旭屋もブックファー
ストも関西系の書店なのにねェ。そのあと、松濤美術館で谷中安規展を見る
が、図録は品切れ。

一月二十五日
◎ジュンク堂書店(池袋店)
橋爪紳也監修『飛田百番 遊郭の残照』創元社、2000円
大西祥平(作)・高橋のぼる(画)『警視正大門寺さくら子』第6巻、小学館、
505円
【ひとこと】『飛田百番』、今日見つからなかったらオンライン書店で注文
しようと、青山ブックセンターなどに電話するも、在庫なし。関西系のジュ
ンク堂ならと思い、電話したらなんと一冊在庫があった。カウンターに取り
置きしてもらって取りにいく。そこまで苦労して手に入れた本が、思ったと
おり素晴らしい内容だったので、とてもウレシイ。ジュンク堂、万歳。

一月二十七日
◎旭屋書店(銀座店)
興梠一郎『現代中国 グローバル化のなかで』岩波新書、700円
柳本通彦『台湾革命 緊迫!台湾海峡の21世紀』集英社新書、680円
朱建栄『中国2020年への道』NHKブックス、920円
曽憲義・小口彦太編『中国の政治 開かれた社会主義への道程』
早稲田大学出版部、3000円
松枝到『奪われぬ声に耳傾けて ことばと歴遊』書肆山田、2800円

一月三十一日
◎紀伊國屋書店(新宿本店)
ヘンリー・ペトロスキー『本棚の歴史』白水社、3000円
カルロ・ギンズブルグ『歴史を逆なでに読む』みすず書房、3600円
松井直『絵本のよろこび』NHK出版、1600円
スガ(糸へんに圭)秀実『革命的な、あまりに革命的な 「1968年の革命」
史論』作品社、3200円
『新潮』2月号、905円
【ひとこと】5階には数年ぶりに上がった。文芸評論と歴史が一緒のフロア
なので、使いやすい。「ifeel」の古本特集にあわせて、古本関係の本のフェ
アをやっていた。待ち合わせまで10分あったので、本を数冊レジに持ってい
くと、お姉さんが風邪でもひいてるのか異様に動作がのろく(こっちがカー
ドで払って、領収書までもらったせいもあるが)、7、8分かかってしまい、
待ち合わせに遅れるかとヒヤヒヤした。

今月の購入本 計56冊(『飛田百番』を求めて書店通いしたため、冊数多し)
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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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『シンセミア』 上・下 阿部和重 朝日新聞社 03.10

 2000年夏、山形県の神町。戦後から脈打ってきた人間関係をベースにした
群像劇のようなものなのだけれど、なにか、物語という構造のなかに閉じこ
められた人物たちの活劇でも見ているような、読み手が小説世界に入り込ん
で追体験するような作品とはまったく違う、妙な距離感が常につきまとう作
品だと感じられた。

 読み進めるうちに、中上健次のことをずっと思っていた。似ていると言え
ば言えると思う。中上健次が熊野・新宮といった物語世界を構築したように
山形県の神町という物語世界を構築しえているし、星谷影生というオリュウ
ノオバのような語り手もいる。路地はないが、盗撮というモチーフを媒介に
それぞれの登場人物たちのゆがんだ裏面を描写し尽くすことで、物語世界内
部でいわばメインストリートではない世界を押し広げている。その世界の底
を流れ続けてきた歴史も語られる。

 ただ、秋幸がいない。それら共同体の産物に対置される秋幸のような個性
は見あたらない。戦後から街の実力者として君臨した「パンの田宮」の三代
目にあたる田宮博徳がそうであるのかもしれないが、秋幸のような強い存在
感はない。小説世界のなかでも影が薄いし(敢えて主人公を言うのであれば
彼であるのだろうけれど、そのような読まれ方は著者の意図からずれるであ
ろう)、母・祖母の復讐を果たすために町を訪れた隈元光博も小説のなかで
は隠れた存在だ。秋幸のような共同体に対して屹立しえる個性の不在は、も
ちろん作品の善し悪しとは関係がないだろう。事実面白いのだし、引き込ま
れるようにして読み終えたのだ。しかし強烈なストーリー展開の割には人物
たちがみんな卑小に見えるのだ。

 主人公の不在や登場人物の卑小さは、読み手に物語への感情移入を許さな
い。次々と登場人物が現れ、そのゆがんだ裏生活が語られ流れすぎてゆく。
それらのバラバラな話がもつれ絡まり、トラックでの大量殺戮や洪水といっ
た災害を経て、ラストのカタルシスへとなだれ込んでゆく。そこにはこの作
者特有の殺伐とした心象風景があり、悪意すら感じるのだけれど、そのよう
な虚構がとてもリアルで、読み手を引き込んでゆく。

 中上健次との類似ということはやはり多く語られているようで、高橋源一
郎は朝日新聞の書評や広告批評(04.1)での阿部和重との対談で言及してい
る。中上健次を日本近代文学の「正当な嫡子」として捉える高橋源一郎は、
『枯木灘』において「日本の近代文学がやってきたことを、全部自分で追体
験して書いている」し「いわゆる言文一致以降の文章を使った小説の中で、
一番完成度が高い。主人公である私がいて、その共同体の話もあり、親子関
係もあって、日本独特の、ある種ジメッとした共同体を書いたものとして、
完璧」だという。『地の果て 至上の時』ではさらにその世界を広げていっ
た。

 その後、どう書いてゆくのか、「完成度の高い日本語の散文はもうすでに
ある」、その後はどう書いていったらいいのか。中上健次は「言葉を変えな
きゃダメだろう」と口語を小説の文体として新しく発見してゆく作業にはい
るのだけれど未完・中途半端なままで終わってしまった、と高橋源一郎は見
ている。

 高橋源一郎が『シンセミア』を高く評価するのは、中上健次が取り組んで
失敗に終わった「言葉の問題」を、継承して取り組んでいる作品だと位置づ
けているからだ。確かに『シンセミア』の文章は独特だ。基本的には歴史を
叙述をするような素っ気ない文章なのだけれど、ふっと口語が混じったり、
通常使われなくなった漢熟語が登場したりする。女子高生のホームページ掲
載の日記の文章が挿入されたり、「阿部和重」を名乗る謎の男からのメール
が紹介されたり、「聖書偽典」や「祓詞」の言葉が東北訛りで述べられたり
する。それらの「言葉」を通して果たして新しい物語世界が形成されえてい
るのかは分からない。少なくとも高橋源一郎は、この作品を中上健次が読め
ばショックを受けただろうといい、評価する。

 しかし、そのような賛辞には少し戸惑うのだ。小説の問題はすべて「言葉
の問題」であるのだろうかと、ふと立ち止まる。確かに近代文学の結晶のよ
うにして『枯木灘』はあるのだろうけれど、また、その作品を形成している
言葉はもはや現代の社会を写し取る能力を失ってしまっているのかもしれな
いけれど、それだけが小説が生産されることの意味でもないように思う。確
かに阿部和重の作品は現代社会ときちんと切り結んでいるだろし、それらを
描写しうる叙述文章を獲得しているようにも見えるのだけれど、それだけが
小説のある意義ではないと思うし、それだけではないものを中上健次の前半
の作品は持っていたと思うのだ。

 広告批評での対談で、高橋源一郎は阿部和重に私小説を書いてみることを
勧めている。「だから次はやっぱり阿部和重の私小説を、ぜひ読みたいです
ね。いまでも、自分のやり方で私小説書けそうな気がするでしょ?」阿部和
重はこの問いかけをどう受け止めているのだろうか。『シンセミア』で完全
に抜け落ちているものは、他ならぬこの「私」であるのだけれど、中上健次
の前半の作品にはこの「私」は濃厚にあった。『岬』や『枯木灘』は物語で
あるけれど、同時に私小説でもあるのだ。そのような「私」を獲得していく
ことは、『シンセミア』のような大作を完成させた著者の次なるステップと
なるのではないだろうか。中上健次は『地の果て 至上の時』あたりを境に
この「私」を物語世界の中に解体していくようになった。そのために私はそ
れ以降の作品をそれほど好きになれなかった。阿部和重は逆にこの「私」と
いう不可解なるものを獲得してゆくことで、新しい小説世界を切り開いてゆ
けるのではないだろうか。
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■「次回連載は、まだ検討中」/掩耳
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>一応連載は前回で終わっちゃんですけど
>はあはあ
>今回は、連載から漏れたネタを補遺みたいな感じで単発で書いてみようか
と……
>しかし、これ、なんで「あとがき」みたいな書き方なんですが?
>いや、他意はないんですが、雑駁なネタ書くのには向いた形式ではないか
と思いまして(笑)で、さっそく本題なんですが、昔から書店でやったら面
白いだろうなーと思っていたことが二つあるんです。
>ほうほう
>一つは、深夜の書店をお客さん一人だけに開放して、その変わり三十万円
以上買ってもらうとかやったら、結構希望者が来るのではないかと。実は、
椎名誠さんのエッセイから思い付いたんですが……
>ああ、千坪クラスの書店一人で独占できたら、さぞかし楽しいでしょうね。
僕の昔部下だった書店員の女性は、残業で一人になったとき、嬉しくて売場
中を走りまわったとか言ってましたしねー(笑)
>そういうディープなファン層って結構いると思うんですけどね……。で、
付添ってもらう書店員は、事前に指名が出来て、男女ともに見栄えの良い店
員揃えておくの(笑)
>おいおい、それじゃ何だか違う店になっちゃいますよ(笑)
>あとね、もう一つあるんです
>ほうほう
>いや、これから団塊の世代が定年を迎えて、史上最も裕福な引退層ができ
るじゃないですか
>なんか、食い逃げ世代とか揶揄もされてますけど
>それで、年金を受け取れる数年前から、年金での分割払いOKということ
で、先払いの形でどしどし本を買ってもらうシステムを作れないものかと。
これは旅行会社の知人が、その昔「年金ツアー」というのがヒットしたとい
うのにヒントを得たんですが。
>年金ツアー?
>そうそう、旅行代金は年金からの分割払いでOKですっていうのやったら
スゴク人が集まったんだって。それで団塊世代は本を凄く読むし、ある意味、
その世代の良いお客さんって既存の書店業界にとっては取り合いだとも思う
んです。指くわえて見ているだけの所は、さっさと手を打った所に負けるの
ではないかと……
>おお、お得意の戦略的な話になってきましたね(笑)いっそのこと、深夜
の書店を、年金分割払いで三十万以上買うという人に開放してはいかがで
しょうね。
>うーん、それは良い考えかも。どっかの書店で実現してくれないかなー。
>もしやったらアイデア料寄越せとかいうんでしょう。
>う、バレたか(笑)
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------
>アメリカが狂牛病の調査打ち切っちゃいましたねー
>はあはあ
>しかし、これは余りにヒドイのではないかと……
>え、何でですか?
>だって、アメリカがイラクに攻め込んだ理由って、イラクが自らの大量破
壊兵器疑惑を晴らせなかったからって理由じゃないですか。
>そりゃそうですねー。朝まで生TVで自民党の議員もそんなこと叫んでま
したねー。
>でも、自分のとこの狂牛病疑惑は、一ヶ月ちょいで調査打ち切って、しか
も追跡し切れない牛さんを大量に残したままですからね……。それで、日本
には安全だから輸入再開しろって、そりゃご無体な(笑)
>ううむ、そうすると、アメリカの理屈を認めてアメリカの開戦を容認した
政府は、同じ理屈でアメリカ牛肉の輸入再開ができないってことになります
ね。何せイラク攻撃は、「大量破壊兵器の疑惑はゼロではない」とかいう理
由で相変わらず正当化してますからねー。狂牛病の牛さんだって、そりゃゼ
ロと断定は出来ないでしょうし……(笑)
>そうそう。まあ、しかし強いモノには媚びがちですから、結局、輸入再開
するのかもしれませんけどね……
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