2004.02.05 Thursday
[本]のメルマガ vol.167
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■■ [本]のメルマガ 2004.02.05.発行
■■ vol.167
■■ mailmagazine of books [キモは読み聞かせ? 号]
■■-----------------------------------------------------------------
■■ 創刊は1999年5月10日、現在の読者数は6615名です
■■ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました
■CONTENTS-----------------------------------------------------------
★「脱書脳記3」/aguni(あぐに)
→ 書店はメディアになっているか?(その2)
★「出版☆広告批評」/グッドスピード
→ 加藤典洋氏の新刊
★マエストロ鏡玉のメディア・ジャーナル
→ ヤフーのオークションのことなど
---------------------------------------------------------------------
■トピックス
---------------------------------------------------------------------
■山本義隆著『磁力と重力の発見』全3巻 (みすず書房)
が、今年度第30回大佛次郎賞受賞後、さらに売行きが加速。全巻計で10万部
を越えようとするほどの売行きだそうです。御存知の方には今更という情報で
しょうが。著者の山本氏が元東大全共闘会議代表だったことから、世代のノス
タルジーで売れているという記事もみましたが、一番の理由はその読みやすさ
と、なにより本書は読む者の好奇心をかきたてるからではなかろうか。
→ http://www.msz.co.jp/
---<新刊情報>---------------------------------------------------------
2004年3月発売予定!!
鶴見俊輔 小熊英二 上野千鶴子 著
『戦争が遺したもの------鶴見俊輔に戦後世代が聞く』
新曜社刊 404頁 本体2800円 ISBN 4-7885-0887-7 C1028
→ http://www.shin-yo-sha.co.jp/
-----------------------------------------------------<新刊情報>-------
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■【脱書脳記3】/aguni(あぐに)
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その7 書店はメディアになっているか?(その2)
昨日、丸善ユーザー会システム部会主催のオープンセミナーに参加させてい
ただいた。内容の詳細は以下のURLをご覧いただきたい。
・[新たな出版ビジネスモデルの創出]〜オープンセミナー
http://www.cd.maruzen.co.jp/events/event0204.html
特に後半、『出版ルネサンス』の著者でもある四元氏のお話は非常に面白か
った。マーケッターをお仕事としているだけあって、書籍というものをきちん
と明確に商品として捉え、普通のマーケティングの考え方をあてはめたらどう
なるか、というお話だった。出版業界とIT業界の狭間で揺れてきた私の関心
事にはぴたっとはまるお話で面白かったのだけれども、時限再販の拡大などと
いった「提言」に、参加されていた方々の反応はいかがなものだったのだろう
か? 興味のある方はこちらをご覧くださると良いかと思います。
・参考)『出版ルネサンス』
http://www.aguni.com/bookshelf/p-aguni00047/02332651_c/
さて、そのお話の中でもあったのだけれど、私が書店がメディアにならなけ
ればいけない、と言っている理由のひとつに、本を並べておいているだけで売
れると思っている時代はとーの昔に終わりましたよ、という言い方もできるの
かもしれない、と思った。イトーヨーカドー会長の伊藤雅俊氏もよく商売の基
本について、
「お客様は買ってくださらないもの、取引先は商品を出していただけないもの」
という言葉で語ってらっしゃるが、普通の商品ですらこうなのだから、もっと
「なくても困らない」商材である書籍は、もっともっと、買ってもらえない前
提で物事を考えた方が良い。だいたい書店というのは何がなんでも手ぶらでは
帰しませんぜ、という勢いがない。それは並んでいる本から「買え!」という
オーラがにじみ出てないところに問題があるのだな、と思った。ドンキホーテ
やマツキヨ、ビックカメラのような勢いが、本屋にも欲しいのである。
書籍は情報のパッケージ商品だから、つまりは本屋そのものがひとつの世界
を形作っている、とみることもできる。昔、ミクロコスモスという表現でこの
ことについて書いたので、ここでは詳しくは書きませんが。
・参考)第18回 棚とポータルサイトとミクロコスモスと
http://www.aguni.com/hon/back/49.html
狂牛病だとか学歴詐称とか、円高とか株安とか、大統領選とか。そういった
世の中の動き(=マクロコスモス)に合わせて書店という場(=ミクロコスモ
ス)も変化していく。そんな本屋が「演出」できたら、きっとお客はもっと足
を運ぶんではないだろうか。そんなに棚に余裕がないって? 何を言っている。
Yahoo! Japan なんぞはたった7行で世界の今を伝えておりますぞ。
ただし、これは一書店の努力だけでなんとかするのは無理。日々の仕事も忙
しいだろうし、なによりニュースソースから遠い存在だからだ。(しかしまあ
日経ぐらいは読んでおいて欲しいが。)しかし例えば週刊誌で取上げられると
か、今朝のニュースにはこんな関連書がありますよ、などという話は、出版社
の編集サイドからばんばん書店にダイレクトに情報を提供してって欲しいと思
う。
さて、このメディアとしての出版流通についてもそろそろ全体像が見えてき
た。つまりは出版社サイドがサイトやメルマガ、雑誌の記事などで自社の書籍
に情報付加価値を与えるべき、というのがそもそものスタート。そしてその作
戦が功を奏した場合には必ず、小売りの店先にまでその情報価値が伝えなけれ
ばならない、ということだ。FAXやレターを用いて、几帳面にそういうこと
をしている版元さんもいくつか知っているが、きちんとそれがシステム化され
ているところはまだまだ少ない。もったいないことだ。これから始めるのであ
れば、FAXは電話代がかかるから、できればメールを活用すると良いだろう。
例えばプリントアウトすればそのまま使えそうなPOPなども、デジタルデー
タで添付して送ってしまえもするだろう。などと、アイデアはいくらでも浮か
んでくる。
忘れてはならないことは、常に、お店という誌面を作るのはお客さんだとい
うことだ。どんなにすばやいニュースでも、どんなにインパクトのある内容で
も、書店員がおおーっと思っても本は売れない。情報価値が消費者に届いて始
めて、売上という結果につながるのである。
だから書店からはもっとデータの吸い上げが必要だろう。そのデータを元に
実際に売ることのできる数に反映させることができるようにするべきだろう。
そのために書店は売上分析のスキルをもっと磨いていくべきだろう。それは視
聴率調査でもあり、アクセス解析でもある。もっと大量のデータを川上である
出版社の、できれば編集者に逆流させる、そんなメディアであるべきだろう。
こういうことを言うと、いや何を言うか、編集者は努力している、真剣に考
えている、などと反論をいただくが、売れることを前提に作る編集者はやはり、
「売れない」時代の感覚とはちょっとずれているのだと思うし、それは悪いこ
とではないと思う。むしろ営業サイド・経営サイドの人間が、いかに「売れな
い」ことを前提に考えて部数を「判断」し、店頭での展開の際に、いかにその
本に付加価値を与えられるか、その手腕が問われている。
そして店頭では、出版社・本部・新聞などの情報からいかにメディアとして
の書店を組み立てるのか、その手腕が問われている。参考になるのはヴィレッ
ジ・ヴァンガードやTOWER RECORD、などの小売店などだろうか。
本を手に取り、買う理由をきちんと示してあげることで、お客さんとのコミュ
ニケーションを取る。これが売るために必要な努力なんだと思う。
最後にもう一度、引用しよう。「お客様は買ってくださらないもの」その前
提に立ったときに、一体、何ができるかということを考えれば、やることはい
くらでも見えてくるんではないかな、と思う。
・『伊藤雅俊の商いのこころ』
http://www.aguni.com/bookshelf/p-aguni00047/02393896_0000281868/
* * *
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ご興味があればぜひご購読ください。
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メルマガ:ニュースがもっとよくわかるビジネス書紹介
http://www.aguni.com/bookshelf/mag2.html
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■「出版☆広告批評」第2回/グッドスピード
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文芸評論家の加藤典洋氏が1月、新刊を2冊同時刊行した。『テクストか
ら遠く離れて』(講談社)と『小説の未来』(朝日新聞社)である。書店の
店頭で驚いたのは、出版社が異なるにもかかわらず、2冊とも南伸坊氏の装
丁で、両者とも統一デザインなのである。前者は緑、後者は紫。しかも、価
格も同じ本体1800円。事情を知らない読者は、村上某のあの『ノルウェイの
森』のように、同じ著者による上下本だと思うのではないだろうか。
内容としても、関連する文芸批評で、前者は「理論編」、後者は「実践編」
と銘うっている。こうした出版のスタイルは珍しいし、なによりユニークだ。
朝日新聞1月25日付読書欄(東京では)では、講談社の新刊広告が掲載さ
れ、その片隅に加藤氏の『テクストから遠く離れて』が宣伝されている。そ
の宣伝文句の末尾に「同時刊行●実践編『小説の未来』(朝日新聞社)」と
ある。今回のケースでは、他社の刊行物の情報が広告内に掲示されるのは、
たしかに気が利いているといえる。しかし、どうせなら、2冊の表紙写真な
ども並べて、もっと大胆に宣伝すればいいのにと感じる。朝日新聞社の広告
のほうはどうなっているのか、見ていないのでわからないが、いずれにせよ、
大手出版社の太っ腹を見せてほしいね。
読者はたいてい、本屋で買うのだから(インターネットであっても、同一
著者で内容も関連するものだから)、今回のケースはこの2冊で広告をつく
るべきだと思う次第である。当然、書店ではこの2冊は並べられているだろ
うし。さらに、もしかすると、2冊合わせた書評なんかも出てくることが予
想される。著者を介して出版社が共同=恊働することがあってもいいのでは
ないだろうか。
こうした場合、書店が広告を出せば実現できるかもしれない。と、思いつ
つも、そんなことをできる書店はいまほとんどないかもしれない。一読者と
しては残念である。そんなことをつらつら考えていると、いろんなアイデア
が湧いてくる。たいしたアイデアではないけれど、書店の広告について考え
ると、たとえば新刊広告ではなく(そんなもんは出版社にまかせておけばい
い)、書店の「棚」の広告を写真付で掲載すること。そんなことはできない
だろうか。それを見て、読者はその書店に駆け付ける。あるいはその書店の
ひいきになったりする。当然その棚の写真には、新刊だけでなく既刊本も写
っている。書店が読者にアピールできるのは、やはり「棚」だろう。そんな
広告、出てこないかな。
(隔月掲載)
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
---------------------------------------------------------------------
締切日だというのに、帰宅するやいなや今日山陰沖から直送されたアンコウ
を苦労しながらさばく。卵が入っているから、旬はすぎ、味も落ちるかしら。
春を感じる。これ、ヤフーのオークションで手に入れました。さすがに3キロ
クラスだと肝も小さく鍋に入れるほどではないから、半分をホイル焼き、半分
は湯通ししたものをスライスしてポン酢をつけて食す。焼酎も少々飲みます。
と、優雅な生活をよそおっていますが、実際は血と汗にまみれていたりする。
ヤフーのオークションといえば、このまえ家電製品コーナーを見ていて、そ
こに「家電製品ひきとり」という商品が出ていたのにはえらく感心してしまっ
た。例えばネットで冷蔵庫を安く買ったはいいが、今あるやつはどないしま
しょ、という疑問は当然あるわけで、そうしたニーズを逃さない素晴らしいア
イディアだと思いました。トラブルがいろいろ報道されていますが、人間のい
ろいろな欲望が垣間見えて、オークションは面白い。
------------------------------------------------
数年前から福音館書店書店の月刊予約絵本「こどものとも」を定期購読して
いる。これには0歳から2歳を対象にした「ゼロ イチ ニ」と、3歳以上を
対象にした年少版があって、子どもが2歳になろうかというときに、深く考え
ずに年少版を買って与えていたらほとんど興味を示さない。「ゼロ イチ ニ」
にかえてやると、すごい興味を示す。3歳をすぎると、「あじのひらきひらひ
らおよぐ」といった、年少版のことばのひびきにえらく感心を示すようになっ
た。服や靴と違って、大き目を買うというわけにはいかないようで。
さて今回の第130回芥川賞。最年少受賞などの話題で本が売れているのは喜
ばしいことです。受賞者の一人、金原ひとみさんの名前を見つつ、彼女のお父
さんが金原瑞人さんと聞いて、「へえー」と思った次第。というのは、はるか
むかし、大学の4年の時に外国語購読の授業をうけたことがありまして、その
ときの先生が金原氏でした。ジーパン姿の若さに似合わない厳しい授業態度。
その授業というのが印象的なもので、一冊の本をワンパラグラフずつ生徒が順
番に訳していくというもの。訳せなかったら次の人に問答無用で即交代「ハイ、
次」。
そんな感じでいつどこがあたるかわからないので、かなりの頁を通読すること
が要求されました。ヒアリングマラソンならぬ、リーディングマラソン。いや
リーディングリレーでしょうか。田舎三流私大の学生に一年間に洋書1冊、2
冊読ませるというのは、大したことだと思います。
その時のテキストはアメリカのジュマーク・ハイウォーターという人の、小説
と評論だった。ハイウォーターはお父さんが先住民族の血をひいていて、お母
さんがフランス人という人と記憶している。小説はやはりインディオの親子が
主人公の話しで、細部は忘れました。その評論は文化的混血性とは何かを問う、
ハイブラウなもので、まあ非常に刺激的な時間でした。氏のゼミでは未邦訳の
スプラッター小説を読むとか説明にあり、どれだけ人が集まるのか興味深かっ
たんですが、よく知らない。
その後、有名翻訳家となられ、今回また名前を拝見して、懐かしくなった次第。
ホームページを作られているのですね。
金原瑞人オフィシャルホームページ
→ http://www.kanehara.jp/
娘さんのことを聞かれるのは嫌かもしれないが、金原先生は、娘さんに読み
聞かせなんかしたのだろうか、したのなら「どんな本を」と聞いてみたい気が
する。
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
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うーん、風邪ひいて発熱。みなさまもご自愛くださいませ。 (鏡玉)
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り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。
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■ 掲載された内容を小会の許可無く転載することはご遠慮ください。
■ COPYRIGHTはそれぞれの記事の記者が有します。
■ ご意見・ご質問は5日号編集同人「鏡玉」までkyo_gyoku@yahoo.co.jp
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★マエストロ鏡玉のメディア・ジャーナル
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■山本義隆著『磁力と重力の発見』全3巻 (みすず書房)
が、今年度第30回大佛次郎賞受賞後、さらに売行きが加速。全巻計で10万部
を越えようとするほどの売行きだそうです。御存知の方には今更という情報で
しょうが。著者の山本氏が元東大全共闘会議代表だったことから、世代のノス
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2004年3月発売予定!!
鶴見俊輔 小熊英二 上野千鶴子 著
『戦争が遺したもの------鶴見俊輔に戦後世代が聞く』
新曜社刊 404頁 本体2800円 ISBN 4-7885-0887-7 C1028
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昨日、丸善ユーザー会システム部会主催のオープンセミナーに参加させてい
ただいた。内容の詳細は以下のURLをご覧いただきたい。
・[新たな出版ビジネスモデルの創出]〜オープンセミナー
http://www.cd.maruzen.co.jp/events/event0204.html
特に後半、『出版ルネサンス』の著者でもある四元氏のお話は非常に面白か
った。マーケッターをお仕事としているだけあって、書籍というものをきちん
と明確に商品として捉え、普通のマーケティングの考え方をあてはめたらどう
なるか、というお話だった。出版業界とIT業界の狭間で揺れてきた私の関心
事にはぴたっとはまるお話で面白かったのだけれども、時限再販の拡大などと
いった「提言」に、参加されていた方々の反応はいかがなものだったのだろう
か? 興味のある方はこちらをご覧くださると良いかと思います。
・参考)『出版ルネサンス』
http://www.aguni.com/bookshelf/p-aguni00047/02332651_c/
さて、そのお話の中でもあったのだけれど、私が書店がメディアにならなけ
ればいけない、と言っている理由のひとつに、本を並べておいているだけで売
れると思っている時代はとーの昔に終わりましたよ、という言い方もできるの
かもしれない、と思った。イトーヨーカドー会長の伊藤雅俊氏もよく商売の基
本について、
「お客様は買ってくださらないもの、取引先は商品を出していただけないもの」
という言葉で語ってらっしゃるが、普通の商品ですらこうなのだから、もっと
「なくても困らない」商材である書籍は、もっともっと、買ってもらえない前
提で物事を考えた方が良い。だいたい書店というのは何がなんでも手ぶらでは
帰しませんぜ、という勢いがない。それは並んでいる本から「買え!」という
オーラがにじみ出てないところに問題があるのだな、と思った。ドンキホーテ
やマツキヨ、ビックカメラのような勢いが、本屋にも欲しいのである。
書籍は情報のパッケージ商品だから、つまりは本屋そのものがひとつの世界
を形作っている、とみることもできる。昔、ミクロコスモスという表現でこの
ことについて書いたので、ここでは詳しくは書きませんが。
・参考)第18回 棚とポータルサイトとミクロコスモスと
http://www.aguni.com/hon/back/49.html
狂牛病だとか学歴詐称とか、円高とか株安とか、大統領選とか。そういった
世の中の動き(=マクロコスモス)に合わせて書店という場(=ミクロコスモ
ス)も変化していく。そんな本屋が「演出」できたら、きっとお客はもっと足
を運ぶんではないだろうか。そんなに棚に余裕がないって? 何を言っている。
Yahoo! Japan なんぞはたった7行で世界の今を伝えておりますぞ。
ただし、これは一書店の努力だけでなんとかするのは無理。日々の仕事も忙
しいだろうし、なによりニュースソースから遠い存在だからだ。(しかしまあ
日経ぐらいは読んでおいて欲しいが。)しかし例えば週刊誌で取上げられると
か、今朝のニュースにはこんな関連書がありますよ、などという話は、出版社
の編集サイドからばんばん書店にダイレクトに情報を提供してって欲しいと思
う。
さて、このメディアとしての出版流通についてもそろそろ全体像が見えてき
た。つまりは出版社サイドがサイトやメルマガ、雑誌の記事などで自社の書籍
に情報付加価値を与えるべき、というのがそもそものスタート。そしてその作
戦が功を奏した場合には必ず、小売りの店先にまでその情報価値が伝えなけれ
ばならない、ということだ。FAXやレターを用いて、几帳面にそういうこと
をしている版元さんもいくつか知っているが、きちんとそれがシステム化され
ているところはまだまだ少ない。もったいないことだ。これから始めるのであ
れば、FAXは電話代がかかるから、できればメールを活用すると良いだろう。
例えばプリントアウトすればそのまま使えそうなPOPなども、デジタルデー
タで添付して送ってしまえもするだろう。などと、アイデアはいくらでも浮か
んでくる。
忘れてはならないことは、常に、お店という誌面を作るのはお客さんだとい
うことだ。どんなにすばやいニュースでも、どんなにインパクトのある内容で
も、書店員がおおーっと思っても本は売れない。情報価値が消費者に届いて始
めて、売上という結果につながるのである。
だから書店からはもっとデータの吸い上げが必要だろう。そのデータを元に
実際に売ることのできる数に反映させることができるようにするべきだろう。
そのために書店は売上分析のスキルをもっと磨いていくべきだろう。それは視
聴率調査でもあり、アクセス解析でもある。もっと大量のデータを川上である
出版社の、できれば編集者に逆流させる、そんなメディアであるべきだろう。
こういうことを言うと、いや何を言うか、編集者は努力している、真剣に考
えている、などと反論をいただくが、売れることを前提に作る編集者はやはり、
「売れない」時代の感覚とはちょっとずれているのだと思うし、それは悪いこ
とではないと思う。むしろ営業サイド・経営サイドの人間が、いかに「売れな
い」ことを前提に考えて部数を「判断」し、店頭での展開の際に、いかにその
本に付加価値を与えられるか、その手腕が問われている。
そして店頭では、出版社・本部・新聞などの情報からいかにメディアとして
の書店を組み立てるのか、その手腕が問われている。参考になるのはヴィレッ
ジ・ヴァンガードやTOWER RECORD、などの小売店などだろうか。
本を手に取り、買う理由をきちんと示してあげることで、お客さんとのコミュ
ニケーションを取る。これが売るために必要な努力なんだと思う。
最後にもう一度、引用しよう。「お客様は買ってくださらないもの」その前
提に立ったときに、一体、何ができるかということを考えれば、やることはい
くらでも見えてくるんではないかな、と思う。
・『伊藤雅俊の商いのこころ』
http://www.aguni.com/bookshelf/p-aguni00047/02393896_0000281868/
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■「出版☆広告批評」第2回/グッドスピード
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文芸評論家の加藤典洋氏が1月、新刊を2冊同時刊行した。『テクストか
ら遠く離れて』(講談社)と『小説の未来』(朝日新聞社)である。書店の
店頭で驚いたのは、出版社が異なるにもかかわらず、2冊とも南伸坊氏の装
丁で、両者とも統一デザインなのである。前者は緑、後者は紫。しかも、価
格も同じ本体1800円。事情を知らない読者は、村上某のあの『ノルウェイの
森』のように、同じ著者による上下本だと思うのではないだろうか。
内容としても、関連する文芸批評で、前者は「理論編」、後者は「実践編」
と銘うっている。こうした出版のスタイルは珍しいし、なによりユニークだ。
朝日新聞1月25日付読書欄(東京では)では、講談社の新刊広告が掲載さ
れ、その片隅に加藤氏の『テクストから遠く離れて』が宣伝されている。そ
の宣伝文句の末尾に「同時刊行●実践編『小説の未来』(朝日新聞社)」と
ある。今回のケースでは、他社の刊行物の情報が広告内に掲示されるのは、
たしかに気が利いているといえる。しかし、どうせなら、2冊の表紙写真な
ども並べて、もっと大胆に宣伝すればいいのにと感じる。朝日新聞社の広告
のほうはどうなっているのか、見ていないのでわからないが、いずれにせよ、
大手出版社の太っ腹を見せてほしいね。
読者はたいてい、本屋で買うのだから(インターネットであっても、同一
著者で内容も関連するものだから)、今回のケースはこの2冊で広告をつく
るべきだと思う次第である。当然、書店ではこの2冊は並べられているだろ
うし。さらに、もしかすると、2冊合わせた書評なんかも出てくることが予
想される。著者を介して出版社が共同=恊働することがあってもいいのでは
ないだろうか。
こうした場合、書店が広告を出せば実現できるかもしれない。と、思いつ
つも、そんなことをできる書店はいまほとんどないかもしれない。一読者と
しては残念である。そんなことをつらつら考えていると、いろんなアイデア
が湧いてくる。たいしたアイデアではないけれど、書店の広告について考え
ると、たとえば新刊広告ではなく(そんなもんは出版社にまかせておけばい
い)、書店の「棚」の広告を写真付で掲載すること。そんなことはできない
だろうか。それを見て、読者はその書店に駆け付ける。あるいはその書店の
ひいきになったりする。当然その棚の写真には、新刊だけでなく既刊本も写
っている。書店が読者にアピールできるのは、やはり「棚」だろう。そんな
広告、出てこないかな。
(隔月掲載)
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■「マエストロ鏡玉のメディアジャーナル」/マエストロ鏡玉
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締切日だというのに、帰宅するやいなや今日山陰沖から直送されたアンコウ
を苦労しながらさばく。卵が入っているから、旬はすぎ、味も落ちるかしら。
春を感じる。これ、ヤフーのオークションで手に入れました。さすがに3キロ
クラスだと肝も小さく鍋に入れるほどではないから、半分をホイル焼き、半分
は湯通ししたものをスライスしてポン酢をつけて食す。焼酎も少々飲みます。
と、優雅な生活をよそおっていますが、実際は血と汗にまみれていたりする。
ヤフーのオークションといえば、このまえ家電製品コーナーを見ていて、そ
こに「家電製品ひきとり」という商品が出ていたのにはえらく感心してしまっ
た。例えばネットで冷蔵庫を安く買ったはいいが、今あるやつはどないしま
しょ、という疑問は当然あるわけで、そうしたニーズを逃さない素晴らしいア
イディアだと思いました。トラブルがいろいろ報道されていますが、人間のい
ろいろな欲望が垣間見えて、オークションは面白い。
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数年前から福音館書店書店の月刊予約絵本「こどものとも」を定期購読して
いる。これには0歳から2歳を対象にした「ゼロ イチ ニ」と、3歳以上を
対象にした年少版があって、子どもが2歳になろうかというときに、深く考え
ずに年少版を買って与えていたらほとんど興味を示さない。「ゼロ イチ ニ」
にかえてやると、すごい興味を示す。3歳をすぎると、「あじのひらきひらひ
らおよぐ」といった、年少版のことばのひびきにえらく感心を示すようになっ
た。服や靴と違って、大き目を買うというわけにはいかないようで。
さて今回の第130回芥川賞。最年少受賞などの話題で本が売れているのは喜
ばしいことです。受賞者の一人、金原ひとみさんの名前を見つつ、彼女のお父
さんが金原瑞人さんと聞いて、「へえー」と思った次第。というのは、はるか
むかし、大学の4年の時に外国語購読の授業をうけたことがありまして、その
ときの先生が金原氏でした。ジーパン姿の若さに似合わない厳しい授業態度。
その授業というのが印象的なもので、一冊の本をワンパラグラフずつ生徒が順
番に訳していくというもの。訳せなかったら次の人に問答無用で即交代「ハイ、
次」。
そんな感じでいつどこがあたるかわからないので、かなりの頁を通読すること
が要求されました。ヒアリングマラソンならぬ、リーディングマラソン。いや
リーディングリレーでしょうか。田舎三流私大の学生に一年間に洋書1冊、2
冊読ませるというのは、大したことだと思います。
その時のテキストはアメリカのジュマーク・ハイウォーターという人の、小説
と評論だった。ハイウォーターはお父さんが先住民族の血をひいていて、お母
さんがフランス人という人と記憶している。小説はやはりインディオの親子が
主人公の話しで、細部は忘れました。その評論は文化的混血性とは何かを問う、
ハイブラウなもので、まあ非常に刺激的な時間でした。氏のゼミでは未邦訳の
スプラッター小説を読むとか説明にあり、どれだけ人が集まるのか興味深かっ
たんですが、よく知らない。
その後、有名翻訳家となられ、今回また名前を拝見して、懐かしくなった次第。
ホームページを作られているのですね。
金原瑞人オフィシャルホームページ
→ http://www.kanehara.jp/
娘さんのことを聞かれるのは嫌かもしれないが、金原先生は、娘さんに読み
聞かせなんかしたのだろうか、したのなら「どんな本を」と聞いてみたい気が
する。
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
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うーん、風邪ひいて発熱。みなさまもご自愛くださいませ。 (鏡玉)
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