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[本]のメルマガ vol.129
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■■ [本]のメルマガ     2003.01.15.発行
■■         vol.129
■■  mailmagazine of books    [現代思想とカツオくん 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→大掃除と年賀状が終らなくても、書店まわりは欠かせません(笑)

★「虚実皮膜の書評」/キウ
→今回は、著者お得意のインド思想に関する本を取り上げます

★「書店を面白くするためノウハウ」/掩耳
→情報と思い入れの濃度を鍵に、POPを考えます
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■トピックス
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●宮台センセの講演記録が面白いです
宮台真司センセのホームページ「MIYADAI.COM」で公開されている、「米国
中心型のグローバライゼーションに抗う為の智恵」という講演記録、さすが
の切れ味で滅茶面白いです。特に日本の北朝鮮外交に対する論評は、幾多の
論客の論考の中でももっとも正鵠を得たものでしょう(蛇足ですが、正鵠は
射るものではなく、得るもの――原典を読む限り――と判断して使っていま
す。ちなみに「的」も「得る」ほうが実は原典的により的外れではないよう
な気も《笑》)
http://www.miyadai.com/message/?msg_date=20030106

●ブックフェアの紹介です。
リブロ池袋店書籍館3階にて「コンパッションの扉をひらく」を開催中です
「祈るように、《断絶》の対岸から聞こえてくる細い声に、耳を傾けてみる」
(徐京植氏「フェアに寄せて」より)とのことで、『〈コンパッション〉は
可能か?』(影書房刊)収録のブックガイドより50点を厳選したフェアです。
『イラク湾岸戦争の子どもたち』(森住卓著、高文研)、『高等学校 琉球
・沖縄史』(東洋企画)などが特に売れているとのこと。2003年2月5日ごろ
まで
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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第33回 ワリと平均的な買いっぷり

 前回、掩耳さんとやり取りがあった、書店のPOPについてもう少し書きた
いのだが、考えがまとまらず、また次の機会に書きます。12月は、神保町と
地元の書店、それにオンライン書店を併用した、ワリと平均的な買いっぷり
でした。今年もこのペースで行くんでしょうか。そして、飽和状態が続くわ
が部屋の運命は。今年もよろしくお願いします。

二〇〇二年十二月三日
◎アマゾン・コム(オンライン)
ジョージ朝倉『ハートを打ちのめせ!』第1巻、祥伝社、933円+税
(以下同じ)

十二月六日
◎東京堂書店(神保町)
スティーヴン・ヤング『本の虫 その生態と病理、絶滅から守るために』
アートン、1500円
『山口昌男山脈』第2号、めいけい出版、2000円
『論座』1月号、朝日新聞社、743円
『東京人』1月号、都市出版、857円
【ひとこと】12月末に新店舗が完成し、一年前からの仮店舗営業は終わりと
なる。なかなか慣れないと思っていたが、終わりの頃になって、配置になじ
みはじめたコトに気づく。だから、東京堂の新店舗は、この仮店舗とそれ以
前の店舗という二店の記憶との比較になるので、しばらくの間は、どうして
も点が辛くなるだろうと思っている。

十二月六日
◎書泉グランデ(神保町)
横山秀夫『深追い』実業之日本社、1700円
三羽省吾『太陽がイッパイいっぱい』新潮社、1300円

◎岩波ブックセンター(神保町)
桂英史『[新版]インタラクティヴ・マインド 近代図書館からコンピュー
タ・ネットワークへ』NTT出版、2500円
日本出版学会・出版教育研究所編『日本出版史料』7、
日本エディタースクール出版部、1600円
『阿佐田哲也麻雀小説自選集』文春文庫、971円

十二月九日
◎bk1(オンライン)
安達哲『バカ姉弟』第2巻、講談社、900円

十二月十日
◎bk1(オンライン)
米川明彦編著『明治・大正・昭和の新語・流行語辞典』三省堂、2200円
今和次郎『野暮天先生講義録』ドメス出版、1800円

十二月十一日
◎往来堂書店(千駄木)
角田光代『空中庭園』文藝春秋、1600円
宮本常一『イザベラ・バードの「日本奥地紀行」を読む』
平凡社ライブラリーoffシリーズ、1200円
上村一夫『蛇の辻』ソフトマジック、1500円
『本の雑誌』1月号、648円
『噂の真相』1月号、448円
【ひとこと】この平凡社ライブラリーの「offシリーズ」ってなんじゃらほ
い。「新しい『名著』のかたち。onからoffへのキックオフ!」というコ
ピーも、意味不明な上にダサい。ムリしてシリーズをつくる必要あるんだろ
うか。

十二月十二日
◎bk1(オンライン)
島本和彦『吼えろペン』第6巻、小学館、533円

◎岩波ブックセンター(神保町)
樋口覚『「の」の音幻論』五柳書院、1650円
武田雅哉『よいこの文化大革命 紅小兵の世界』廣済堂出版(廣済堂ライブ
ラリー)、1800円
舟越健之輔『黒枠広告物語』文春新書、750円

十二月十四日
◎高円寺文庫センター(高円寺)
藤木TDC・ブラボー川上『東京裏路地〈懐〉食紀行 まぼろし闇市をゆく』
ミリオン出版、1600円
ナンシー関・リリー・フランキー『リリー&ナンシーの小さなスナック』
文藝春秋、1429円
【ひとこと】『東京裏路地〈懐〉食紀行』はココにならあるだろうと思って
覗いたら、ホントにある。マイナーな本に関しては、つねに期待を裏切らな
い店だ。ちなみに、この本、ぼくのなかではスデに2003年ベスト3入りが決
定している。目下、全力で友人にオススメ中。本を眺めていたら、ライター
でオンライン古書店「杉並北尾堂」の北尾トロさんにばったり会う。書店で
知り合いに会うと、思わず手にしている本を隠したくなるのはナゼだろう。
北尾さんは、この店に「杉並北尾堂コーナー」を設置して古本を委託販売し
ているのだが、タトゥー雑誌『バースト』の初期の号がよく売れるというの
が、イカニモっぽい。

◎信愛書店(西荻窪)  
三浦展『大人のための東京散歩案内』洋泉社新書、720円
『酒とつまみ』創刊号、酒とつまみ社(仮)、334円

十二月十八日
◎三省堂書店(神保町本店)
カルステン・ラクヴァ『ミッキー・マウス ディズニーとドイツ』
現代思潮新社、2800円
小倉孝誠・菅野賢治編訳『時代を読む 1870-1900』
(「ゾラ・セレクション」第10巻)藤原書店、3200円
宮下志朗・小倉孝誠編『いま、なぜゾラか ゾラ入門』藤原書店、2800円
都新聞愛読者会編著『忘れられた明治人 都新聞で読む百年前の東京』
柏書房、2400円
【ひとこと】一階入り口すぐの新刊コーナーに、『大きな古時計の謎 みん
な知ってる"あの歌"に隠された意外なストーリー15』(飛鳥新社)がどー
んと積んであり、身も蓋もない便乗本と、ヤケクソのようにそれを売ってい
る様子になんだか楽しくなる。本は文化だって云うけど、こういう本だって
なきゃ困るのだから。四階レジのヨコには、「国立博物館公認」と書かれた
埴輪ぬいぐるみが数種類置いてあった。一緒に置いてあった「埴輪本」のナ
カに、小沼丹『埴輪の馬』(講談社文芸文庫)があったのにも心の中で笑う。
今日の三省堂は、妙にふっきれたカンジがするなァ。

◎書肆アクセス(神保町)
佐藤浩二『2002年ソウルスタイルその後・普通の生活  李さん一家の3200
点』INAX出版(INAX BOOKLET)、1500円
【ひとこと】韓国のある一家の生活用具すべて(家電、服から、エンピツや
爪切りまでの数万点)を記録した展覧会を、どうやって実現させたかのド
キュメント。連動した展覧会は3月3日(月)〜5月23日(金)に、銀座のINAX
ギャラリーで開催。

十二月二十一日
◎bk1(オンライン)
倉多江美『続・お父さんは急がない』小学館、562円

◎南天堂書店(白山)
東野圭吾『ゲームの名は誘拐』光文社、1600円
『サイゾー』1月号、インフォバーン、657円
【ひとこと】白山にはあんまり来ないけど、前を通ると、かならず覗く店。
本の量は少ないけど、単行本の新刊にオモシロイものが見つかる。この店の
ブックカバーは、欧米の昔の広告イラストを使っていて、なかなかイイ。

十二月二十二日
◎bk1(オンライン)
いましろたかし『ぼくトンちゃん』エンターブレイン、1280円
いましろたかし『クール井上 いましろたかし傑作短編集』エンターブレイ
ン、1200円

十二月二十三日
◎bk1(オンライン)
黒田硫黄『茄子』第3巻、講談社、524円

◎青山ブックセンター(新宿ルミネ2店)
辛酸なめ子『自立日記』洋泉社、1500円
飯沢耕太郎編著『「写真時代」の時代!』白水社、2800円
小林信彦『コラムの逆襲 エンタテインメント時評1999-2002』新潮社、
1600円
関川夏央・谷口ジロー『事件屋稼業』第3巻、双葉社、924円
【ひとこと】神保町では発売後数日経ってもとうとう一冊も見つけられな
かった、辛酸なめ子の新刊。青山ブックセンターでは前著のときに自由が丘
店でサイン会まで開いたというのに、エッセイなどの新刊コーナーでは発見
できず。「辛酸なめ子の『自立日記』ありますか?」とレジで聞きにくく、
念のためマンガ売り場を覗くと、そこに大々的に積んであった。そこに行く
と、書店員はエライよなあ。どんな妙な著者名でも恥ずかしい書名でも、き
ちんと電話で注文するんだろうから。いつの日かぼくが本を出すことがあっ
たら、そこでもクールに「ナンダロウアヤシゲの『◎◎』100冊よろしく」
と注文してくれるのだろうか。

◎書原(阿佐ヶ谷店)
渡辺裕『日本文化モダン・ラプソディ』春秋社、2800円
樋口覚『グレン・グールドを聴く夏目漱石』五柳書院、2200円
長山靖生『怪獣はなぜ日本を襲うのか?』筑摩書房、1900円

十二月二十四日
◎CLOVER BOOKS(通販) http://www.cloverbooks.com/
『アートマニア』創刊号、CLOVER BOOKS、1200円(税込み・送料込み)

十二月二十六日
◎あおい書店(大塚店)
山本マサユキ『ガタピシ車でいこう!!』第3巻、講談社、505円
山本マサユキ『六本木リサイクルショップ・シーサー』講談社、514円

十二月二十七日
◎bk1(オンライン)
ロドリゲス井之介『リーマン戦記 独身3』第2巻、双葉社、552円

十二月二十九日
◎砂子屋書房(版元直販) http://www2.ocn.ne.jp/~sunagoya/
山崎剛平『老作家の印象 砂子屋書房記』砂子屋書房、3000円
【ひとこと】この版元のサイトはたまたま見つけたのだが、そこに15年以上
前に出された本を発見して注文。すでに在庫切れなのではないかと危ぶんで
いたが、倉庫に眠っている本を引っ張り出して送ってくれた。ちなみに山崎
剛平は、昭和初期に砂子屋書房を設立した人物で、いまの砂子屋書房は戦後
だいぶ後になって、山崎から社名を譲り受けたようだ。

十二月三十一日
◎往来堂書店(千駄木)
陳舜臣『三色の家』扶桑社文庫(昭和ミステリ秘宝)、820円
藤井康栄『松本清張の残像』文春新書、700円
『おすすめ文庫王国2002年度版』(『本の雑誌』増刊)、700円
【ひとこと】大晦日だというのに、大掃除も年賀状書きも終らず、ちょっと
だけ千駄木近辺を自転車で流す。年の最後に、お世話になった新刊書店に感
謝の意を表して。

◎bk1(オンライン)
鈴木徹造『出版人物辞典 明治−平成物故出版人』出版ニュース社、2800円

今月の購入本 計53冊(bk1は主にマンガの新刊予約として活用していま
す)
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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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 『インド哲学 七つの難問』 宮元啓一 講談社選書メチエ 02.11

 日本でインド思想というと、仏教が先に立ち、ヒンドゥー教系の論理学に
目がいかなくなりがちではないだろうか。仏教の生成した場を考えるとき、
六師外道として退けられてしまう、それら先行しまた同時代を生きた思想に
目を向けなければ、その生成発展した意味というものはちゃんと分からない
のではないだろうか。そう思いつつ、そのような手頃な入門書になりうるか
と思い、本書を手にした。

 「七つの難問」のその七つを並べてみる。

 第一問 ことばには世界を創る力があるのか?
 第二問 「有る」とは何か、「無い」とは何か?
 第三問 本当の「自己」とは何か?
 第四問 無我説は成り立つか?
 第五問 名付けの根拠は何か?
 第六問 知識は形をもつか?
 第七問 どのようにして、何が何の原因なのか?

 これらの問いを、実在論と唯名論、それぞれの立場からの主張を取り上げ
著者は実在論に軍配をあげてゆく。仏教は基本的には唯名論からの思想を展
開するので、本書は仏教批判の色彩が強くなる。著者が好意的に取り上げる
のは実在論のヴァイシェーシカ学派となる。

 もっとも強烈に仏教批判を展開している部分は、無我論に対する批判だと
思われる。ゴータマの説いたことは無我説ではなく、非我である。「ゴータ
マ・ブッダはいう。この世に生きてあるというのは苦である。なぜ苦が生ず
るかといえば、人は、この世の無常を忘れがちだからである。なぜ無常を忘
れるかというと、自己は常住だと思いこんでいるからである。ところが、ふ
つう人が自己だと思っているものは、身体と心にほかならない。しかるに、
身体と心のいずれをとっても無常なのであり、常住の自己ではない(我に非
ず)」(P53)そのゴータマの教えは「ことばや概念は実在の対象を持つと
する常識の域を出ない素朴実在論という生活感覚から離れることはなかった
ようである」「ところが、ゴータマ・ブッダの滅後、いつの頃からか、仏教
は、そもそも自己なるものは存在しないとする、きわめて形而上学的な色彩
の濃い「無我説」を主張するようになる」(P54)

 著者は、無我説が最初に理論として展開されたとされる『ミリンダ王の問
い』を取り上げながら、仏教の無我説を批判してゆくのだけれど、『ミリン
ダ王の問い』の理論を詭弁、がらくたと言い切ってしまっていて、なかなか
厳しい。そのような言い募りは分かるのだけれど、『ミリンダ王の問い』は
紀元前2世紀頃の初期文献であるし、その後の仏教の展開として唯識などに
も著者自身が触れているのだから、もう少し柔らかい物言いはできないもの
かと思った。唯識に触れている部分(P105-106)でも、結局は無我といい
ながら「自己」という言葉を使わないだけで「自己」の存在を認めているの
ではないか、「開祖ゴータマ・ブッダを飛び越えて、はるか昔へと先祖返り
してしまっている」と手厳しい。

 著者自身も触れてはいるのだけれど(P137)、仏教というのは結局のと
ころ宗教であって、理論としてではなく、無我なら無我と考えて生きること
の効用の方が大事であり、そのような実用的な発想から考えないと意味がな
いように思う。しかし実際のところ仏教内部では理論化の困難な無我説をめ
ぐってさまざな論理を編み出したのだろうし、その論理を無批判に賞賛する
ことはやはり問題ではあるのだろう。

 それにしても、本書はヴァイシェーシカ学派の論理を描きながら、その学
派が批判の対象とした仏教側の論理はあまり書かれていない。批判対象であ
るディグナーガの論理学の解説がなければ、片手落ちのように思った。実際
のところ仏教論理学(新因明)の入門書もなかなか見出せないので、期待し
ていたのだけれど、その期待は満たされなかった。

 しかしながら、元の問いに戻れば、仏教の生まれた思想の場を知る上で、
本書が読者によい鳥瞰図を与えてくれることは間違いないと思う。先月出た
岩波文庫の『インド思想史』(J.ゴンダ著)とあわせて読んでみたが、な
かなかいい読書体験だった。
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■「書店を面白くするためノウハウ」/掩耳
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「〈情報〉と〈思い入れ〉の濃度という問題」

「書店の商品」といって多くの本好きの人が思い浮かべるのが、小説やエッ
セイ、ノンフィクションといったジャンルの本になると思いますが(二十代
前後までの人だったらコミックに雑誌、ゲーム攻略本になるかもしれません
が、ちょっと脇に置いておきます)、POPについてここで想定しているの
も、まさに上記のジャンルだったりします。

しかし、大規模書店に買い物に行ったり、ましてや内部で働いている人なら
よくわかることですが、上記のジャンルは書店全体からすればごく一部でし
かありません。他にも実用書やビジネス、理工書、学習参考書などといった
数多くのジャンルがあります。

そして、POPに関していえば、特に専門書や学習参考書といったジャンル
においては、担当者にもともと興味がない限り、文学などに比べて「読んで
POPを書く」といったことは難しくなります。それらの本は、楽しみのた
めに読む、というより知識や情報を得る道具としての色合いが濃くなってく
るからだとも言えます。

そして、このようなジャンルで面白いPOPをたてるノウハウが、実は、文
学やノンフィクションで面白いPOPをつくる技術とも通底してくるのです。
僕は、学習参考書を三年ほど担当していたことがあるので、それを例に引い
て考えてみましょう。

例えば、あまり有名ではない出版社から英単語集の新刊が出たとします。こ
れが、売れるものかどうか、積極的にプッシュする価値があるか判断したい。
さらに、価値があれば良いPOPをつけたい――こんな時どうするか。

この場合、方法は二つあります。
まず、営業担当者に「他の同じような英単語集と比べて、どう違うのか、ど
ういう優れた部分があるのか」と聞きます。答えが返ってこなければ× 説
得力のある答が返ってくれば、それを情報としてPOPに書きます。つまり
道具である側面が強い本である以上、他と比べた性能の良さをアピールする
わけです。これは効きます。

次、営業担当者にPOP用紙を渡し、「〈他の英単語集と比べて優れた部分〉
〈思わず衝動買いしたくなるキャッチコピー〉をつけて書いて来てねー。自
分で書けなかったら担当編集者に書いてもらってねー」と頼むやり方です。
ある本に関する情報は、当たり前ですが、ほとんどの場合は著者が一番豊富
に持ち、担当編集者、営業担当と行くに従って薄まって行きます。つまり、
なるべく濃い情報を持っている人をたぐっていって、POPを書いてもらお
うというわけです。薄まった情報をもらって書店員が自分で書くよりも、余
ほど面白いものが出てくる場合があります。もちろん、そこに「衝動買いし
てもらうための枠」をはめことも必須の条件になります。

そして、後者の方法こそ、文学やノンフィクションなどにも適用できるやり
方になのです。

つまり、ある本に対する情報や思い入れは、例外も多々ありますが、著者→
編集者→営業担当→書店員へと行くに従って薄まりがちになります(例外的
に、書店員が異常に情熱を燃やしたというケースで、書店発信のベストセ
ラーが生まれるといったことも多々あります)。だからこそ思い入れや情報
量の高い方に出来るだけ遡り、そこに「衝動買いをさせる」ことを付与した
形でPOPを書いてもらうのが、一つの方法になるわけです。

僕が書店員をやっていたとき、最終的に「著者POP」まで行き付いたこと
には、実はこのような背景がありました。

そして、くり返しになりますが、そこには「思わず衝動買いしたくなる
キャッチコピー」が必要になってきます。そして、これに関しては、ある意
味でPOPを書く人の個性が多く反映してくる部分であり(自分なりの技法
を見つけてPOPを書くのが、書店員最大の楽しみの一つでもあると思って
いますし)、後ほど具体的なPOPを取り上げていくので、それを参考にし
て頂ければと思います。

一つ言えることは、「これなら他人が衝動買いしてくれるはず」というセン
スは、実は人によって非常に違うということです。

「[書評]のメルマガ 2002年11月20日号」で、現役書店員のオオウラウタコ
さんが、『黄色い目の魚』(佐藤多佳子 新潮社)の帯について次のように
記しています

《「マジになるのって、こわくない?自分の限界とか見えちゃいそうで。」
の部分なのですが、どうですか、コレ?
しかも、”木島悟16歳”。
この青さはもう、いいッス、遠慮ッス。ってなもんでさ、折角の、人と人が
関わろうと意思する時のためらいやら、飛躍の真剣さなんかがキッチリ
”物語の言葉”になっている素敵さってのは伝わりづらくなってないか?と
心配になってしまいます。
(ていうか、わたくし、実際、いくら佐藤多佳子大好きとはいえ、読んで
いいものかどうか不安になりましたよ)》

出版社の人はこれで良かれと思って、帯の文句を考えたのでしょうが、確実
に一人の読者兼書店員をひかせてしまっているわけです(ただし、別のセン
スの人を虜にしている可能性も、まあ、ないわけではないですが……)。も
ちろん、これは他山の石以外の何モノでもありません。僕も書店員時代、実
は顧客の方をひかせるPOPを書いて嬉々としていたりして、トホホ……。

だからこそ、書店員と営業担当者、さらには編集者まで交えて、ある意味で、
販売のノウハウやセンスを切磋琢磨していく機会が必要なのです。そして、
POPは、これに関する最良の機会の一つになったりもします。ちなみに、
僕は営業の方にPOPを書いてもらって、「こんなんじゃーダメだ」と海原
雄三みたいに突っ返したことが何回かあります。いやー極悪非道なイヤな奴
ですね(笑)。まあ、言い訳しますと、その本を本当に売りたかったんです
――ということでお許しを……

そうそう、ちなみに、文学やノンフィクションの中にも「思い入れの濃度の
高いPOP」を、あんまし頑張って立てなくて良いモノもあって……あ、こ
れは次回に書きます。
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■あとがき
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>先日、弊メルマガの新年会があったんです
>はあはあ
>そこで話題になったのが、「イマイチと思われる二代目声優」だったんで
す(笑)
>なんですか、それ
>いや、つまり例えば「サザエさん」の登場人物とか、声優さんがご高齢に
なったりして変わったりするじゃないですか。その変わった後が、ちょっと
イマイチなのは誰かという話なんです。
>まず、マエストロはやはり「ルパン三世」が、もうちょっとかなーと言っ
ていました
>ああ、前の山田さんがとにかく強烈でしたからねー。しかもルパンって
「ふーじこちゃーん」以外、案外キメ台詞もないから難しいのかも……
>それで、五月さんは、なんと「カツオくん」が許せないんだそうです(笑)
>へー、五月さん現代思想の権化みたいな人かと思っていたら、首尾範囲広
いんですねー(笑)。ところで、そういうアナタはどうなんですが?
>僕は、逆にうまくいった例を考えていたんですが、「刑事コロンボ」の声
なんてわりとうまくいったんじゃないでしょうかねー。みなさんは、なかな
か馴染めない二代目声優さんって、いますか?
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