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[本]のメルマガ vol.126
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■■ [本]のメルマガ     2002.12.15.発行
■■         vol.126
■■  mailmagazine of books     [若かりし頃を「再読」号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→前回の「書店を面白くするためノウハウ」に対して、スルドイ突込みをい
れています。メルマガで内紛勃発か!(笑)

★「書店を面白くするためノウハウ」/掩耳
→南陀楼氏にほころびを突っ込まれたあげく……

★「虚実皮膜の書評」/キウ
→ノーベル賞作家の最新作の出来映えは??
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■トピックス
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●ブックファーストの面白い配りもの
阪急ブックファーストの京都店と渋谷店で「ROLL OVER&DIE!」
(月刊を努力中のようです)という無茶苦茶面白い無料の配りものを配って
います(僕は渋谷店2階の文庫のところで手に入れました)。書評などとと
もに、《瞑想のための47冊》といった紙上フェアなどもあって、楽しめる
一冊です。

●みすず書房の強力新刊
『夜と霧』の新版が絶好調のみすず書房が、一月にも強力新刊を出してきま
す。まず、
・『友愛のポリティクス』全2巻 J・デリダ 鵜飼哲 大西雅一郎 松葉
祥一訳 各4,200円
最近のデリダを代表する一冊の待望の翻訳がいよいよ刊行です。
・『イスラエル・イラク・アメリカ』E.W.サイード 中野真紀子訳 
1,600円
アメリカのイラク攻撃の動向に世界の耳目があつまる昨今、注目の一冊です。
・『クローン人間の倫理』上村芳郎 2,800円
タイミングを計ったかのように、イタリアで一月にクローン赤ちゃんが誕生
すると言われていますね……
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知 の 贈 り も の――文系の基礎知識         12/10刊行
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 神戸女学院大総合文化学科 編 288頁/ISBN4-925220-08-X/本体1300円
 発行:冬弓舎 http://www.thought.ne.jp/html/adv/basic_kn/
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勉強から学問へ、学問から知恵へ。やっと大学生になれる(た)あなたに、
私たちから、知のギフトです。 【12/22「朝日新聞」読書欄広告掲載予定】
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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第32回 POPについて

 だいぶ前になるが(「[本]のメルマガ」123号)、掩耳さんの連載「書
店を面白くするためノウハウ」で、POPという販売手段に対して、レコー
ド屋と書店では違いがあると書かれていた。曰く「それは、ずばりCDなら
全部書く本人が聞いた上で書いていること。だからこそ自分の感動なり思い
入れなりをPOPに表現ができ、とても説得力があるものができるのです。
(略)ところが書店のPOPは違います。もちろん、中身を読んで書かれた
ものもありますが、多くは目次くらいをパラパラっとめくって適当に宣伝文
句を捻り出して書いたものだったりします。宣伝文句が思い浮かばなければ、
書名と帯の文句をそのまま写しただけのもよくあるパターンです。(略)つ
まり、書店のものは多くが宣伝臭さ丸出しなのです。このようなPOPは店
頭の賑やかしや、書店員が自分で何かやったという気休めを感じるだけで、
余り実効はありません。」
 うーん、おっしゃりたいコトは判るのだが、あまりにレコード屋(直接に
は「タワーレコード」)のPOPに対する姿勢を美化しすぎてはいないかな
? いくらサンプル盤を聴けると云っても時間が無限にあるワケではなし、
何曲か聴いてみてチャッチャッと書くものがホトンドのはずだ。それに店員
は「自分の感動なり思い入れ」を、タダのリスナーとしてPOPに書くので
はなく、どうすればナニと組み合わせれば売れるかを考えながら書いている
ハズだ。リスナーが「このPOP書いたヒト、私の感覚に近い」と思ったと
しても、それはそういう風に演出して書いた店員さんの勝利というコトでは
ないでしょうか。
 だから、ぼくはレコード店だけでなく、書店でもプロの販売員であれば、
うまいとこ「読んだフリ」をしながら感動を売り込めるハズだと思うんで
す。書評家じゃあるまいし、全部読んだらイイ売り文句が浮かぶワケでもな
いでしょうしね。
 で、いまさらナンでこんなことを書いているかと云えば、ぼくが千駄木の
往来堂書店でやっている「コレが売りたい!」という自腹企画(まったく売
れなければ買い取り)が、初のピンチを迎えているのです。しかも、今回は
1万2千円という高い本だ。サイトの紹介文でも、持ち込みのPOPでも、一
生懸命ススメたつもりなのに、タダの一人も「高いけどハナシの種に買って
やろう」という気にさせられなかったのは、ワタシメの売込みが下手なせい
でありましょう。反省。
 しかし、このママだと年の瀬に、すでに一冊持ってる本を1万2千円払って
もう一冊買うコトになりそうです。高いけど、貴重な缶詰ラベルの図版が満
載で、しかも日本缶詰協会が監修しているこの本、『缶詰ラベル博物館』
(東方出版)。バカな企画をやってるワタシメを哀れんで、ゼヒとも往来堂
で買ってください。なお、現在棚から引っ込められてストッカー(補充の引
き出し)にしまわれていますので、店員さんに頼んで出してもらって、つい
でにそのママ買ってくださいませ。おかげでナンとか貧乏夫婦の正月のモチ
代が……。こうゆうのを「泣きバイ」と云います(笑)。

紹介文はコチラ↓
http://www.ohraido.com/column/koreuri/index.html

十一月一日
◎岩波ブックセンター(神保町)
松田哲夫・内澤旬子『印刷に恋して』晶文社、2600円+税(以下同じ)
【ひとこと】身内の出した本だが、もう手持ちがなく、中国からのお客さん
に差し上げるために買う。

十一月二日
◎高円寺文庫センター(高円寺)
大月隆寛編『田口ランディ その「盗作=万引き」の研究』鹿砦社、1600円

◎リブロ(池袋店)
フレッド・ミラー・ロビンソン『山高帽の男 歴史とイコノグラフィー』
水声社、4000円
香山リカ『テクノスタルジア 死とメディアの精神医学』青土社、1800円
香山リカ『多重化するリアル 心と社会の解離論』廣済堂出版、1000円
香山リカ『ぷちナショナリズム症候群 若者たちのニッポン主義』
中公新書ラクレ、680円
永江朗『インタビュー術!』講談社現代新書、700円
和田春樹『朝鮮有事を望むのか 不審船・拉致疑惑・有事立法を考える』
彩流社、1500円
リービ英雄『ヘンリーたけしレウィツキーの夏の紀行』講談社、1600円
『現代詩手帖』11月号(特集・北園克衛)、思潮社、1143円
【ひとこと】仕事に使う本は、必要な日までに手に入らなければ意味がない。
そういう時は、オンライン書店で発送時間が短いものを選んで買うか、大書
店でまとめ買いするコトにしている。資料本は量がナイと使えないからなあ。
以上、香山リカ本を三冊も買った言い訳。

十一月三日
◎東京堂書店(神保町)
ヴィクトール・E・フランクル、池田香代子(訳)『夜と霧 新版』
みすず書房、1500円
真保裕一『誘拐の果実』集英社、1900円
島村匠『上海禁書(ノアール)』祥伝社(ノンブックス)、933円
【ひとこと】すずらん通りは神保町ブックフェスティバルで人だかり。とく
に各社の自由価格本販売はもう定番となりつつある。しかし、新刊書店はど
こも静か。2階でみすず書房フェアのコーナーを見る。神保町の新刊書店5
店(岩波ブックセンター、三省堂、グランデ、ブックマート、東京堂)で
ジャンルを分担して、みすず書房の既刊全点を置くもの。この店では文芸書
だ。1956年初版以来みすずのドル箱となってきた『夜と霧』が、『世界がも
し100人の村だったら』で知られるドイツ文学の池田香代子の新訳として刊
行されるというので、手に取る。読んだコトのないぼくでさえ知っているあ
の表紙を変えたのは、新版だからアタリマエとはいえ、大胆だ。

◎ヴィレッジ・ヴァンガード(御茶ノ水店)
三本美治『順風』青林工藝舎、1100円
ジョージ朝倉『カラオケバカ一代』祥伝社、933円
【ひとこと】明治大学の裏あたりの判りにくいビルの地下に先月オープンし
ていたらしい。神保町のヒトが誰一人知らなかったのがオモシロイ。下北沢
と違って、グッズに埋め尽くされていないので、本をゆっくり見ることがで
きる。マンガの品揃えが、神保町の大書店ともマンガ専門店とも違うので、
この手のマンガ(あえて云えば青山ブックセンター系とでもいうか)が欲し
いときには便利だと思う。近くに三軒茶屋にあった「ラマ舎」(文字見つか
らず)も引っ越してきた。

十一月九日
◎往来堂書店(千駄木)
初田亨『職人たちの西洋建築』ちくま学芸文庫、1200円
ジェフリー・ディヴァー『青い虚空』文春文庫、829円
佐々木洋『カラスは偉い』光文社知恵の森文庫、552円
大場秀章『道端植物園』平凡社新書、760円
『暮しの手帖』300号記念特別号、暮しの手帖社、1524円
『噂の真相』11月号、448円
【ひとこと】前文で触れたとおり、行くたびに『缶詰ラベル博物館』が残っ
てるので、ユウウツになる。

十一月十日
◎リブロ(池袋店)
末延芳晴『荷風とニューヨーク』青土社、2800円
正宗白鳥『自然主義文学盛衰史』講談社文芸文庫、1100円
開高健『地球はグラスのふちを回る』新潮社、438円
【ひとこと】一ヶ月間続いた「sumus」フェア、ついに最終日。今日で終わ
りなのに、まだワリとこのコーナーに立っているヒトを見かけた。終了記念
に『地球はグラスのふちを回る』を購入。フェアに関わってみて、準備は大
変だったが、とても楽しかった。

十一月十一日
◎武藤書店(谷中)
『新潮』12月号、859円

十一月十三日
◎岩波ブックセンター(神保町)
山崎浩一『危険な文章講座』ちくま新書、660円
大谷晃一『大阪学 文学編』新潮文庫、476円
中野三敏『読切講談 大学改革』岩波ブックレット、400円
『本の雑誌』12月号、505円
【ひとこと】レジ前に市販のホワイトボードが掛けられた。そこに新刊告知
や新聞書評の切り抜きが無造作に貼られている。コレ、アナログで単純だけ
ど、けっこう効果ありそう。

◎栄松堂書店(東京駅八重洲地下街店)
大谷晃一『大阪学』新潮文庫、400円
大谷晃一『続大阪学』新潮文庫、476円
大谷晃一『大阪学 世相編』新潮文庫、400円

十一月十九日
◎高岡書店(神保町)
みなもと太郎『風雲児たち 幕末編』第2巻、リイド社、524円
島本和彦『燃えよペン』小学館、571円
【ひとこと】名作『燃えよペン』はここ数年で何回も再刊されている。それ
はイイことなのだが、そのたびにちょっとずつ違う「あとがき」が付くので
全部買ってしまっている。次に出たときには、もう買うまい。

十一月二十一日
◎文教堂書店(市ヶ谷店)
宝泉薫+ファッシネイション編『歌謡曲という快楽 雑誌「よい子の歌謡曲」
とその時代』彩流社(オフサイド・ブックス)、1600円
【ひとこと】ネットオークションで1980年代の歌謡ミニコミ『よい子の歌謡
曲』をまとめて手に入れ、時代を反映する雑誌としてのオモシロさに狂喜し
ている、まさにそのタイミングでこの本が出ることを知り、彩流社のサイト
まで行って発売日を確かめて、手に入れた。しかし、ちょっとイヤな予感が
当たって、中身は『よい子の歌謡曲』に掲載された歌謡曲論の再録がホトン
ドで、ぼくにはまったく興味ナシ。ラストに申し訳程度に当時関わったス
タッフの座談会が入っているだけだった。この座談会の内容はオモシロイの
だけど、いかんせん短すぎる。「◎◎とその時代」と名乗るからには、時代
背景を意識した本にして欲しかったなァ。

十一月二十二日
◎新東京ブックサービス(銀座)
丸山明日果『歌声喫茶「灯」の青春』集英社新書、700円
橋本治解題『「明星」50年 601枚の表紙』集英社新書、1000円(オールカ
ラー版)
『サイゾー』12月号、インフォバーン、657円
【ひとこと】マガジンハウスの真横にある書店。ココでいまは無き『平凡』
のライバル誌『明星』の本を買ったのは、グーゼンです。

十一月二十三日
◎青山ブックセンター(新宿ルミネ2店)
とがしやすたか『男のいろは』第1巻、講談社、850円
関川夏央・谷口ジロー『事件屋稼業』第1巻、双葉社、971円
谷口ジロー『地球氷解事紀』上・下、双葉社、1143円、1238円

十一月二十五日
◎紀伊國屋書店(新宿本店)
横山秀夫『動機』文春文庫、476円
車谷長吉『金輪際』文春文庫、524円
カーステン・ストラウド『ブラックウォーター・トランジット』文春文庫、
867円
五條瑛『スリー・アゲーツ 三つの瑪瑙』集英社文庫、952円
ミステリー文学資料館編『蘇る推理雑誌1 「ロック」傑作選』光文社文庫、
762円
ミステリー文学資料館編『蘇る推理雑誌2 「黒猫」傑作選』光文社文庫、
762円
『暮しの手帖』4世紀1号、857円
『現代思想』11月臨時増刊号(特集・日朝関係)、青土社、1143円
【ひとこと】3000円の図書券をいただいたので、ミステリの文庫本を何冊か
買おうと思ったが、タチマチ足が出た。

◎ディスクユニオン(新宿店)
『ロック画報』10号、ブルース・インター・アクションズ、1700円
【ひとこと】しばらく来ないウチに、ディスクユニオン、ヴァージンメガス
トアなど、この辺りのレコード屋が場所が移動したり、リニューアルオープ
ンしていてびっくり。地下のインディーズコーナーで買う。

十一月二十六日
◎書肆アクセス(神保町)
http://www.bekkoame.ne.jp/~much/access/shop/shoppage.html
秋吉誠二郎『版画家川瀬巴水と渡辺版初日カバー』三好企画、2800円
『幻燈』第4号、北冬書房、1800円
【ひとこと】『版画家川瀬巴水と……』というタイトルからどんな本か想像
できるヒトは少ないだろう。ぼくもアクセスのサイトを見なかったら、この
本が著名な版画家がオリジナルの初日カバー(説明は省くけど切手マニアの
コレクション対象)を描いたその画集だと気づかなかっただろう。それだけ、
アクセスのサイトには役に立つ情報が多いのだが、最近は一ヶ月に一回しか
更新されることも珍しくない。忙しいだろうし、ほとんど毎日更新という
「タコシェ」のサイトほどでなくてイイので、せめて隔週ペースでは更新し
てほしい。アレを見て買いに行くヒトは少ないかもしれないが確実にいるハ
ズなのだから。

十一月二十九日
◎日本特価書籍(神保町)
横山秀夫『半落ち』講談社、1700円
【ひとこと】毎回この店のことは説明抜きに書いているが、新刊書を一割引
で売っている書店だ。鹿島茂氏(フランス文学者)や塩山芳明氏(エロマン
ガ編集者)もごひいきの店。ただ、ぼくは彼らが云うほど、この店でいい
ゾッキ本には出会ってない。買うときは、もっぱらミステリの新刊あたりが
多い。

◎書泉グランデ(神保町)
『オール読物』12月号、800円

十一月三十日
◎青山ブックセンター(六本木店)
宮野力哉『絵とき百貨店文化誌』日本経済新聞社、3800円
エリック・ホッファー『現代という時代の気質』晶文社、1800円
花輪和一『刑務所の前』小学館、952円
辰巳ヨシヒロ『大発見』青林工藝舎、1600円
【ひとこと】奥のレジで、若い女性の店員が小学館の営業部に電話している
のを、思わず立ち聞き。「『IKKI』はいつものサイクルだと11月末には次が
出てないといけないのに、まだですよねえ。次はどうなるんですか?」とい
うやり取りがあったあと、「決まったら教えてください。『ナンバーファイ
ブ』(松本大洋の)楽しみにしていますから」と一言。前のレジ横の壁に、
エドワード・ケアリー『望楼館追想』(文藝春秋)が大量に面出ししてあり、
「都内ではこの店で一番売れている」というPOPが立っている。地味そう
な小説なのにと覗き込むと、ウェブなどでの書評をまとめたペーパーや、こ
の店で買った客の感想文が目に入る仕掛け。愉しみながら本を扱うというの
が、この六本木店のポリシーなのかもしれない。

◎東京ランダムウォーク(六本木店)
工藤寛正『図説 東京お墓散歩』河出書房新社(ふくろうの本)、1800円
関川夏央・谷口ジロー『事件屋稼業』第2巻、双葉社、924円
Roger Fennings『The Book of Matchbox Labels』New Cavendish Books、
4790円

今月の購入本 計62冊(この時期ものすごく忙しかったんだけど、いつの
間にこんな……)
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■「書店を面白くするためノウハウ」/掩耳
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「自分では読んでいないのに、うまいPOPを立てるには」

今回は、15日号の目玉連載である南陀楼さんから、とっても鋭い突っ込みを
うけてしまってタジタジとしていますので(笑)、それを枕にしつつ、PO
Pのうまい作り方について考えてみたいと思います。

まず、南陀楼さんより《いくらサンプル盤を聴けると云っても時間が無限に
あるワケではなし、何曲か聴いてみてチャッチャッと書くものがホトンドの
はずだ》との、ご指摘を受けましたが、実は僕もこのタワレコのPOPにつ
いては取材をして書いた訳ではないので、ちょっと自信が薄い部分でした。
(ただし、僕が誉めているのはタワレコだけ、レコード店全般みたいな書き
方は一切していないのですが……)。いや、さすが南陀楼さん鋭いですぅぅ。

そこで二人で類推で書いていても仕方ないので(笑)、直接タワレコに取材
に出向いてみました。タワレコの店員さんに、お客さんの振りをしつつ、土
曜日の夕方頃に話を聞いて来たのです(忙しい中、ヘンな質問をしてしまっ
た店員さんありがとう&ゴメンナサイ)

まず、洋楽のコーナーの問い合わせカウンターににいたお兄ちゃん。
「このPOP、CD全部聞いてから書いているんですか?」と聞くと、「そ
うですよ」とのお答え。「ホントに全部ですか?」と聞くと、「ごくわずか
ですかレコード会社の紹介文とか参考にする場合もありますが、なんでしょ
う」。そこで、正直にライターをやっててみたいなこと言うと、え、じゃあ
そういうことは本部の広報に聞いて下さいといって後はノーコメントになっ
て逃げられてしまいました。

次、クラシック売り場の女性の店員の方。
同じ質問をすると、きっぱり「全部聞いて書いてますよ」との答え。本当に
全部ですかと聞くと、鬼のようにきっぱりと(笑)全部ですと断言されまし
た。

で、時間がなくて、いい加減極まりない取材はここで終ったのですが、僕の
感じから言うと、ジャンルによってややバラツキはあるにせよ95%〜98
%は間違いなくちゃんとCDを全部聞いてからPOPを書いているようなの
です。なので、前の号で《それは、ずばりCDなら全部書く本人が聞いた上
で書いていること》というのは、大きくはずれた表現ではないと思われるの
です。

現役の書店員の方なら、よくわかると思うのですが、仕事で疲れていると本
は極端に読めなくなってきます。一週間に一冊でも読めれば良い方でしょう
か。でもCDは違うんですね……。疲れていても音楽なら聞くことはできま
すし(逆に癒されたりもしますね)、通勤時にウォークマンを使って、家で
も趣味を兼ねて聞けば、一日CD2枚くらいは軽いもの、すると一月六十枚
になり、無限の時間なぞなくても、ということになるのです。ちなみにこれ、
社会人になって、僕がクラシックにはまり始めたときにやっていた聞き方で
した……

そして、このことは一つ面白い観点を示唆します。僕がタワレコのPOPを
《聞いて書いている》と記したのは、あくまでPOPから受ける内容と雰囲
気からだけでした。事前に取材したわけではありません。つまり、そのPO
Pを聞いて書いているのか否かはやはり、僕のように見る眼がない人間でも
ピンと来てしまう所、思わず買ってしまう妙な迫力があるのです。

これは書店でも同じ事が言えます。本を全部読まずにうまいPOPを書ける
場合ももちろんありますが、しかし、多くの場合読んでいないPOPはどこ
か薄っぺらく、一味足りない感じなのです。いまいち訴えかける力がないと
でもいうのでしょうか……そして、それは見る人が見れば(本が好きな人な
らおそらく)わかってしまう差なのです。顧客の方も、もちろん馬鹿ではあ
りません。それどころか売る側より何倍もスルドイ方揃いの場合ばかりです。
もちろん、小手先芸のPOPでも通じる状況・それで妥協しなければならな
い状況も多々ありますが、特にこの連載は、最初に断っているように大型書
店向けのノウハウを探究している以上、それだけでOKとは決していえない
――もしこのレベルで安住してしまったなら、さらに強力なライバル店が出
た場合、太刀打ちできず沈む一方になるでしょう。

ただ、もちろん「全部読んだ」とか「その本に熱い思い入れ」があるだけで
は、うまいPOPができない場合もあります。つまり、POPにはもう一つ
の面――POPを読んだ人がついその本を手に取りたくなる技巧的な仕掛け
も必要になってきます。つまり、理想的なPOPを考えると、
1)全部読んだことによる知識・情報や、その本への思い入れ
2)衝動買いしたくなる文面等の技巧的仕掛け
を高いレベルで両立したものになります。もちろん、仕事の忙しさ等で中々
両立は難しい部分もありますが、できるだけ手抜きして(笑)それを実現で
きないか考えるのが、この連載の趣旨でもあります。
そして、前にも書きましたが
3)手に取った後はその本の実力、ないしは衝動買いのし易さ
が顧客の財布を開かせるかを、最終的に決めるわけです。

そのため、南陀楼さんのいう《書店でもプロの販売員であれば、うまいとこ
「読んだフリ」をしながら感動を売り込めるハズだと思うんです》というレ
ベルでは不充分ではないかと考えます。もちろん、ぞれはそれで一つのレベ
ルには達していますが、そういう書店員が僕の部下であれば、僕は相手をも
う一段階上のレベルに導くよう指導していくことでしょう。このレベルで安
住されても、強力なライバル多いしそんなに商売甘くないよ、という感じで
しょうか。

しかし、書店員はなかなか本を読んでいる時間が取れない場合も多い。では、
どうするか。
一つには、その本を確実に読んでいる人――出版社の営業の方、さらには編
集の方まで巻き込んで、代わりにPOPを書いてもらう方法があります。も
ちろんただ「書いて」というだけではなく、そこにはある種のポイントがあ
るのですが……
次回は、これについて書いてみたいと思います。あ、今回はあやふやな所を
指摘して頂いた南陀楼さんに深く感謝します。
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■「虚実皮膜の書評」/キウ
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 『憂い顔の童子』 大江健三郎 講談社 02.9

 前作『取り替え子』の続編。

 前回に引き続き、著者自身を想像させる作家・長江古義人を中心に物語は
進められる。もちろん私小説ではないのだけれど、小説の楽しみ方として、
私小説的ではあるように思う。読者に既になじみのある人たちの話であるわ
けで、従来の読み手には安心して読み出すことができる。著者自身の過去の
作品をふまえての話の展開も多い。これは『懐かしい年への手紙』あたりか
ら顕著であると思われるけれど、読み返し・振り返り、という作業を新作を
読みながらおこなうので、著者の作品を追ってきた読者にはその関連を思い
浮かべながら読む楽しみともなるのであろう。

 しかし、はじめての読者にとって、このような作品はどう映るのだろう、
と考える。少なくとも前作の『取り替え子』は読んでおかないと辛いのでは
ないだろうか。そういう意味で、連作であるという表示をもっと鮮明に出し
ておくべきであるように思った。

 少年の頃からの友人であり義理の兄でもある映画監督・吾良の自殺。その
吾良と高校生の頃に経験した事件。超国家主義のグループの活動に巻き込ま
れて、アメリカ人の語学将校ピーターを誘いだし、武装蜂起のための武器の
調達、さらにはアメリカ人兵士殺害に手を貸したかも知れないという不安。
その超国家主義グループの拠点だった奥瀬という土地は、いまやリゾート・
ホテルとなって、その宿泊施設を利用し「シニア世代の知的再活性化セミナ
ー」を恒常的に開いてゆく、その企画の中心に長江古義人を迎えたいとの動
きに巻き込まれてゆく。

 古義人は脳に障害を抱えた作曲家・アカリをつれて生まれ故郷の四国の森
の谷間へ戻っており、そこへ古義人の小説を研究しているアメリカ人女性ロ
ーズさんが加わり、三人で生活をはじめていた。古義人は谷間に伝わる童子
の伝承を基にしての小説を構想しているがうまく進まない。地元の人間たち
からもうまく受け入れられているようには見えない。

 古義人は深い憂鬱にとらわれている。ともすればあちら側へ、死の側へと
惹かれてしまう。自分を引き留めてくれる人は、残り少なくなった。少年時
に自分をこちら側へ引き戻してくれた母はもういない。死への衝動を心配し
ていた吾良は先に自死してしまった。妻の千樫はベルリンに行って戻ってこ
ない。

 少年の頃、古義人はコギーとともにあった。コギーはあるとき森へと昇っ
て行ってしまったまま戻らなくなった。自分は取り残されてしまった。「童
子」としてコギーは森の中へと行ってしまい、自分は「童子」に選ばれるこ
ともなく、ここにとどまっている。村の窮境を軽やかにすり抜けて突破口を
開く、時間・空間を自在に行き来する「童子」になれずにいまの世を生き延
びてきた。自分は、なぜ・どのようにして、生きてきたのか? 「どうして
生きてきたんですか?」(P402)という問いを自身に発する。

 この小説のクライマックスは最後のデモ隊と機動隊の衝突をパフォーマン
スとして復元するシーンだろう。奥瀬のホテルを利用した文化施設の計画は
古義人を中心としつつ、かつての「若いニホンの会」のメンバーの幾人かが
集ってつくられた「老いたるニホンの会」によって進められていた。計画自
体は頓挫するのだが、最後に「我が青春のジグザグデモ」を復元して若かり
し頃を「再読」してみようということになる。このパフォーマンスの途中で
メンバーの中心人物だった黒野が死に、古義人も意識不明の怪我をする。意
識の戻らないまま、古義人のさまよう思考が地の文で語られる部分は、深い
悲しみに充ちている。

  しかし、なぜ目ざめるのか? いま、自分が夢を見る人の回路にプラグ
 を差し込んでいるのなら、あるいは自分の回路が、いまや森の夢を見る人
 の回路そのものであるならば・・・・・・ その事態こそが、森に昇って「童子
 」となることではなかったか? 自分は大岩の奥の水のなかの、数百尾の
 ウグイの目に映る「童子」であればよかったのだ。どうして自分は、あの
 時、これから来る大きい痛みを正しいとして受け入れ、こちら側へ戻って
 来たのか? あの時は、大きい者の手が足を捩ったからか? それならい
 ま大きい者は現われないまま、なぜ自分からその痛みのうちに目ざめよう
 とするのか?(P521)

 この小説に語られている事柄はすべてノスタルジーの方向を示していると
思う。深い根元的なノスタルジーだ。年老い、懐古的になり、日本作家らし
く私小説的な雰囲気まで醸し出しながら、それでもそこに探り出される深い
悲しみは、生の原型にまで遡ろうとする普遍性への志向を失わない、作家の
営為だ。大江健三郎の作品を読み続けてきた一読者として、この作家はもっ
とも実りの豊かな時期に来ていると感じる。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
〈新 生〉の 風 景――ロラン・バルト、コレージュ・ド・フランス講義
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 原 宏之 著   四六判並製/240頁/ISBN4-925220-07-1/本体1800円
 発行:冬弓舎  http://www.thought.ne.jp/html/adv/vitanova/
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  バルトの死後に残された、小説「新生」執筆の企図を記したメモの謎。
  はたして、バルトは小説を書いていたのか?     【好評発売中】
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■あとがき
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>なんか、来年は税金他が随分上がるらしいですねー
>はあはあ
>しかし、新税導入とかいう場合、煙草とか発泡酒とか、人がやめたくても
やめられない嗜好品がいつも狙い打ちにされますよねー
>ああ、政府もそこんとこはウマイこと考えてますよね
>そこで一つ良いアイデアがあるんですよ、旦那(笑)。いま話題になって
いる事象で一番やめたくてもやめられなさそうなものって、役人の天下りだ
と思うんですよね。延々マスコミで騒がれながら、まったく減る気配ないで
すもんね
>確か、数年務めて退職金ガッポガッポなんでしょ。そりゃやめられません
わなー
>だから、「天下り税」をつくって天下りした人からは特別に収入に応じて
税金取るのはどうでしょうね。こりゃ税収増えますぜ
>うーん、確かに。でも、役人が自分で自分の首を絞める制度には与しない
でしょうね……
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