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[本]のメルマガ vol.118
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■■ [本]のメルマガ   2002.09.25.発行
■■       vol.118
■■  mailmagazine of books       [第二期最終 号]
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■■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は5174名です。    
■CONTENTS----------------------------------------------------------- 
★トピックス
→本誌リニューアルのお知らせ、新刊情報、イベント情報など。

★特別寄稿「完全報告:ペヨトル・イン・西部講堂2002」/ 黒木實
→ついにファイナル・イベント当日! 舞台裏の苦労とよろこび

★「S_h_o_r_t_ S_t_o_r_y_ S_t_r_e_a_m_」/ aguni(あぐに)
→多摩川〜鶴見川〜帷子川〜大岡川〜中村川……タマちゃん、タマちゃあああん

★「現代思想の最前線」/ 五月(ごがつ)
→チョムスキーのドキュメンタリー映画から、ネグリの反帝国的時間論まで
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■トピックス
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■[本]のメルマガが来月からマイナーチェンジします。

5日号の編集同人が、グッドスピードからマエストロ鏡玉に交代することにな
りました。雑誌編集の激務の中、長い間編集作業にたずさわってくれたグッド
スピードに拍手。この機会に小誌は記者同人の異動を行い、来月より以下の通
りマイナーチェンジします。★が編集同人、( )内は休載中の同人です。
5日号[メディア批評系]:マエストロ鏡玉★、あぐに、グッドスピード。
15日号[業界論=書評系]:掩耳★、南陀楼綾繁、キウ、(湯川新一)。
25日号[人文芸術系]:五月★、忘れっぽい天使。
新たに始まる第三期、今後ともご愛顧のほど、よろしくお願いします!


■英国の社会史家E・P・トムスンの古典的名著がついに完訳

20世紀の英国を代表する社会史家で、カルチュラル・スタディーズの源流であ
るニューレフト(マルクス主義批評)を牽引した功労者の一人、エドワード・
P・トムスンの大著『イギリス労働者階級の形成』が、再来月(2002年11月)
下旬、青弓社からついに邦訳刊行される。原著は"The Making of the English
Working Class"(1963年刊)。名のみ高く、完訳が待望されていた。青弓社
といえば2000年年末にレヴィ=ストロースの大著『親族の基本構造』の新訳を
出版し、A5判で900頁を超える重量級の造本と、14,000円という恐いもの
知らずの定価設定によって、読書家たちを驚嘆させたが、今回は頁数も定価も
よりスケールが大きい。初版は多くないので、注文はお早めに。

『イギリス労働者階級の形成』
エドワード・P・トムスン(1924-1993)[著] 
市橋秀夫(埼玉大学教養学部助教授)/芳賀健一(富山大学経済学部教授)[訳]
A5判上製/約1,200ページ/定価20,000円+税/02年11月下旬刊

内容:宗教、慣習、労働、生活水準、家族、地域社会、民衆文化、そして自由
に生まれたるイングランド人としての伝統的かつ愛国的な政治意識など、多義
的な民衆世界の諸相をつぶさに掘り起こしながら、民衆みずからが展開して
いった対抗的政治運動の歴史をまったく新しい視点で描ききった記念碑的社会
史研究。「読者の「期待の地平」に応える訳業」喜安朗(日本女子大学名誉教
授)、「待望の一書」川北稔(大阪大学大学院文学研究科教授)、「優れてダ
イナミックな歴史分析」松村高夫(慶応義塾大学経済学部教授)など、識者か
ら早くも絶賛の声が寄せられている。

※詳しくは青弓社のHPで http://www.seikyusha.co.jp


■ロートレアモンにインスパイアされた高密度なパフォーマンスを公開

2002年10月4日〜6日、東京大学駒場キャンパスで『マルドロールの歌』の詩
人ロートレアモンを巡る国際シンポジウム「ロートレアモン――ロマン主義か
ら現代性へ」が開かれ、その最終日に、ロートレアモンに想を得た公演(パ
フォーマンス)「糸、迷宮、メタモルフォーズ――『マルドロールの歌』への
反−響」が公開される。ロートレアモンの詩の朗読と、音楽(三絃・筝)との
鮮烈なコラボレーションをお見逃し無く! 作曲と演奏は港千尋氏の実弟、大
尋氏。テクスト構成は詩人の守中高明氏だ。入場無料。
http://www.f.waseda.jp/tachiban/HP-Grillon/Index.htm

国際シンポジウム「ロートレアモン――ロマン主義から現代性へ」
公演「糸、迷宮、メタモルフォーズ――『マルドロールの歌』への反−響」

出演:港大尋(作曲・演奏)、高田和子(三絃)、佐久間景子(三絃・筝)
テクスト構成:守中高明
日時:10月6日(日)17:00〜18:00
会場:東京大学駒場キャンパス(京王井の頭線・駒場東大前下車)大学院数理
科学研究科大講義室
入場料:無料
主催:東京大学総合文化研究科地域文化研究専攻
問い合わせ:03−5286−1373(早稲田大学法学部・守中研究室)
http://www.f.waseda.jp/tachiban/HP-Grillon/Index.htm

内容:『マルドロールの歌』――非人間的な書物。それはなにも、そこに刻み
つけられた言葉の群れが、あなたのヒューマンな感受性を逆撫でするからとい
うだけではない。なるほど、ここにはたくさんの呪詛があり、たくさんの残酷
が、倒錯がある。だが、それら禍々しい言葉が目指しているのは、悪の表象で
はない。そうではなく、それはヒューマンなものの組織を解体する悪=痛みそ
のものなのだ。マルドロールの変身――それはメタファーじゃない。寓意でも
象徴でも幻想でもない。そうではなく、そこにあるのは一つの、否、無数の生
成変化、すなわち「〜になる」ことだ。『歌』の主体(それは、それを書く人、
そして読む人=聴く人、つまりは「あなた」でもある)は、美しい天使のよう
な少年から、一匹の蛭や豚や両棲類へ、あるいは植物とも動物とも決めがたい
根を張る奇怪な塊へ、さらには輪郭のない霧のような、そして熾天使のような
声を響かせる分身たちへと、変身する。絶え間ない移行と振動と流れ。そこに
あるのは力の帯域である。ここに私たちは、この力を聴き取り、知覚するため
に、複数の装置を導入する。三絃を、筝を奏でる二人の女(古代からやって来
た――おそらくは運命の――糸を紡ぐ女たち)。間歇的なイマージュ、フラッ
シュ・バック。複数化する声。そして叩き出される無数の音列。私たちは、解
釈しない。解釈は生成変化の敵だ。そうではなく、糸を、声を、鍵盤を、別の
ものに変えてしまうこと。あなたの目の前で、おそらく、あなた自身の身体を
巻き込みながら――それこそが、『マルドロールの歌』への反−響の経験であ
るだろう。


■ジュンク連続トークセッション「ストリートをとりもどせ!」

インパクト出版会から刊行された、DeMusik Inter.(平井玄、大熊ワタル、
東琢磨、酒井隆史)編『音の力――ストリートをとりもどせ』を記念し、ジュ
ンク堂書店池袋店にて「ストリート」をテーマに、連続トークセッションが以
下の通り行われる。

第1回「ちんどん的歩行論」9月27日(金)18時半〜
トーク:大熊ワタル×高田洋介(東京チンドン倶楽部主宰)×東琢磨

第2回「ストリートをとりもどせ」10月25日(金)18時半〜
トーク:酒井隆史×平井玄

第3回「ストリートの秘儀と奥義――〈現場〉の創出」11月17日(日)16時〜
トーク:東琢磨×鈴木慎一郎

場所:各回いずれもジュンク堂書店池袋店4F喫茶コーナーにて(池袋駅東口
より目白方面へ徒歩5分。東京都豊島区南池袋2―15―5)
入場料:各回千円(ドリンク付き)要予約制(定員40名)。ジュンク堂書店池
袋店1Fサービスカウンター、もしくは電話(tel 03-5956-6111)にてお申し
込みください。

内容:ストリート=路上を舞台に、摩擦と混沌が生み出す「音の力」。はりめ
ぐらされた管理体制をあぶり出し、はみ出し、そして超えていく路上音楽/芸
能の数々――。ちんどん、大道芸からジャズ、歌謡曲、レゲエ、ヒップホップ
まで縦横無尽に紹介しつつ、音楽、そしてストリートの持つ共同性と可能性を
探ります。この機会にぜひご参加ください!

○続報!『音の力 ストリートをとりもどせ』出版記念パーティー開催決定!
日時:10月26日(土)17時30分開場、18時〜21時
場所:中野Plan-b(丸の内線中野富士見町駅徒歩7分。中野区弥生町4-
26-20地下1F、1階はバイク屋)
参加費:一般2500円、学生2000円
※ミニライブ、DeMusik Inter.(平井玄、大熊ワタル、東琢磨、酒井隆史)
トークあり。ライブ出演・大熊ワタル、渚ようこ(歌謡曲歌手)、二木信(DJ)、
バビルカダム(ヒップホップグループ)
問合せ:インパクト出版会(須藤)http://www.jca.apc.org/~impact/


■北園克衛の<ゆるやかな研究誌>[kit.kat+]が創刊

生誕百年を迎える今年、北園克衛をめぐる数々のイベントが予定されている。
その一環として、北園克衛の<ゆるやかな研究誌>[kit.kat+](キットカット
プラス)が発行される。「bookbar4」がこの編集局の分室となって、おなじみ
の「おかえりのすけ」をナビゲーターに迎え、以下(↓)のサイトでこの冊子の
購読と参加をお誘いしています。http://www.okae.li/kitkat/ (「おかえり、
キットカット」と読みます。)マウスをぐるぐる動かして、怪しいところはク
リックしたり左にドラッグしてみたりして、どうか隅々までご覧ください。皆
様のご参加をお待ちしております。
Eメールでのお問い合わせは、 4-kama@mars.dti.ne.jp まで。

参考サイト
◎北園克衛 生誕100年記念イヴェントのお知らせ
http://www2u.biglobe.ne.jp/~artbooks/kk/index.html
◎bookbar4 楽天ブックス/北園克衛の写真に隠れていたモノ
http://www.mars.dti.ne.jp/~4-kama/shop/rakuten/top.html
◎奥成達資料室/vouと北園克衛と
http://www.okae.li/tatsu/vou.html

★おわびと訂正
本誌9月5日号(116号)のトピックス欄で紹介した「北園克衛の<ゆるやかな
研究誌>[kit.kat+]が創刊」の記事で、誤植がありました。記事中「参考サイ
ト」の2つのURLについて、本来「~」のところ「 ̄」と表記して配信してしま
いました。関係者のみなさんにお詫びを申し上げ、上記のとおり訂正のうえ、
あらためてご案内申し上げます。(5日号編集室)
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■特別寄稿「完全報告:ペヨトル・イン・西部講堂2002」承前/ 黒木實
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ペヨトルのファイナルイベントについてこれまで2回にわたって記してきたが、
今回は本番の様子を振り返ってみたい。イベント主催者の例にもれず、本番を
あたかも客のように愉しむことは許されないため、内容というよりも現場周辺
の裏話となってしまうことをあらかじめご了承いただきたい。出演者は、本誌
でも掲載されたので、プロフィールなどの詳細については、樋口ヒロユキ作成
の以下のサイトを参考にされたい。

ペヨトルイン西部講堂2002 
http://www.yo.rim.or.jp/~hgcymnk/peyotl/index.html

5月11日、朝9時、私は西部講堂に「出社」した。平日の勤めをもっている
ため、朝晩、会社の行き帰りや休みの日も、西部に日参する生活が続いていた。
別に毎日通う必要もなかったのだが、ここ1週間くらいは舞台の仕込み、リ
ハーサルなどが連日のようにあり、「カラッポの箱」だった西部が、あたかも
われわれのイベントのために存在するスペースであるかのように姿を変えてい
くさまを、毎日確認せずにはおられなかったのだ。ほぼ真東を向いて屹立する
西部の瓦には、かつて「パレスチナの赤い星」と呼ばれた3つの星があったが、
今は時代の流れか黄色い星となるも、朝日を浴びればとりわけ美しい。ボラン
ティアや西連協のスタッフと苦心して立てた、入場ゲートのタテカンや西部の
外観を写真に収めてから、設営の仕上げに入る。

前売りの売上げの悪さも、当日となってはどうすることもできず、あとは1人
でも多くの入場者が来てくれることを祈るだけ。当初より、採算が懸念されて
いたこともあり、なんとか別部門で収益を上げなければとの思いから、私はお
もに外販部を組織し、ボランティアや来場者のための飲食を仕入れたり、賑や
かしのためのブースを募集したりした。ブースは、これまでペヨトルの在庫保
護運動において中心的役割を果たしてきた三月書房をはじめ、新生ペヨトルと
もいえる「ステュディオ・パラボリカ」のご一行や、イベント参加団体の「ア
ニメーション・スープ」のグッズ販売など、徹夜のイベントなので、みなの食
料や酒も切れることのないよう幅広く周到に調達したつもりだ。

雨が降りそうで降らない肌寒い曇天の一日、夕刻になって開演が迫ると、三々
五々と来場者が集まってくる。いわゆる人気アーティストの単独公演でもない
ので、みなノンビリというか、客足はかなり鈍い。会場には、フランス著作権
事務所のコリーヌ・カンタンさんや、個性的かつ耽美的な店構えと品揃えで名
高く、生田耕作とも縁の深かったアスタルテ書房の店主も、幻想的な足取りで
ゆるゆると現れ、ワイン片手に話が弾む。出場者が順に登場するオムニバス形
式なので、開演中は静寂を保って混乱を避けるため、演目ごとに扉を閉ざし、
途中入場はできないシステムをとっていた。演目が終了するたび、入場者が吐
き出され、また並んで再入場するのだが、それも大人しく整然と行われるため、
来客が多いという実感はわかなかったが、それでも結果的には総数400人を
越えていた。

パフォーマンス部門が一段落した午後10時以降は、朝までヴィデオ上映。そ
もそも遠方からくる客が、始発まで時間をつぶせるようにと配慮された親切な
(?)企画だったが、3時をまわるとかなりの客が大音響にも関わらず、コッ
クリコックリと頭を垂れている。控えのスタッフルームもすべての出演者の出
番が無事終了し、いくぶんリラックスして、ビールや焼酎片手に終映時間を辛
抱強く待っている。今野が「もう、みんな寝てるみたいだから、ここで回すの
止めちゃおうか」と発言し、律儀なテクニカル・スタッフの苦笑をかう。私は
このあたりで早めに引き上げさせてもらった。

さて、翌日の12日。前日そつなく終えたせいか、初日ほどの緊張感も薄れ、
12日の記憶といえばあまりない。主催者としては、ただただ何事もなく無事
に終わってくれればそれでよかった。その日の京都新聞に、さっそく昨日のイ
ベントの記事が出た。出演者の一人、畠山直哉についてこう書いてある。
「・・・畠山さんは箱に小さな穴を開けたピンホールカメラを頭からかぶって
会場を練り歩くユニークなパフォーマンスを展開・・・」えっ、そうだっ
け??? 昨日、数人の客に、畠山さんはもう出たんですか?などと聞かれ、
はー、多分などといい加減な返事をしていたのだが、他のボランティアスタッ
フに聞くと、ステージでは誰も見ていないのだという。畠山さんは、昨日朝早
くから西部に登場し、広場のすみで終日、なにやら銀の小さなテントを立てて
孤独な作業を行っていた。ボランティアの出演者付き人係も来客もアーティス
ト制作中とあっては、おいそれと声をかけることもできない。畠山さんの参加
形態については、スタッフもよく把握していなかったので、他の出演者同様、
てっきり舞台にあがるだろうと誰もが疑っていなかったのだが、実は野外で日
のあるうち、ピンホールカメラを使って、黄色い三つ星の西部講堂正面図をド
ローイングしていたのだった。この作品は50部くらいだったかコピーして、
完成した12日に会場で配布したので、ことの顛末が判ってもらえたと思うが、
11日のみ参加された入場者には、「畠山さんはどこ?」という疑問が残った
に違いない。この場を借りてご報告とお詫びを申し上げたい。

さてさて、本日の入場者は、最終的にどうやら500人を越えたらしい。安堵
に胸をなでおろしながら、私は始めて客として、小屋のなかに入った。トリの
笠井叡を観るためだ。今回初めて、客の入った西部内部を見た。終電を気にし
てか途中退席する客に舌打ちしながら、白い舞台に白いスーツで渾身のパ
フォーマンスを行う笠井叡を見守りつつ、ピンク・フロイドの「エコーズ」が
流れると、これですべておしまいだな、と別の感慨が沸き起こってくる。この
イベントも、ペヨトルも70年代も80年代も。イベントの前から樋口ヒロユ
キに「これが終わったら黒木さん、きっと泣いちゃうでしょ」と冷やかされて
いたが、それはなかった。そして、このあと出演予定だった田中泯は結局来な
かった。当初、太秦での撮影を終えて駆けつけるというシナリオになっていて、
そのため、時間を伸ばし気味にして待機体制をとっていたが、間に合わなかっ
たのだ。そのことで特にクレームを受けることもなくて幸いだったが、期待し
ていた来客のみなさんには本当に申し訳ないと思う。ペヨトルサポーター書店
でもあるアルケミーブックストア店主が、やはり笠井さんを観たあとで、いつ
もウルウルしている眼をさらに輝かせて、ここで終わって、余韻を噛みしめな
がら家に帰る、これでよかったんですよ、となぐさめるように言ってくれた。
(続く)

●黒木實(くろきみのる):1994年、エルヴェ・ギベール『悪徳』で仏文学翻
訳者としてデビュー。2000年より現在まで「ペヨトル管財人」を務め、任期満
了につき、再デビューを目論んでいる。
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■「S_h_o_r_t_ S_t_o_r_y_ S_t_r_e_a_m_」/ aguni(あぐに)
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Story_05 タマちゃんを追え!

 街を吹く風も少し冷たいものが混じり始めた今になって、今年の夏を振り
返ってみましょう。仕事ばかりしていたなぁ。とかいう個人的なことはいいと
して、この夏の世の中の話題をさらった象徴的な存在はなんだったかなー、と
振り返ってみると、それは金正日でも小泉首相でも田中康夫でも、オサマ・ビ
ン・ラディンでもブッシュでもなく、残念ながら人間様などではなくて、突如、
多摩川に出現したアゴヒゲアザラシのタマちゃんだと思ったのでした。

 といっても、関東圏以外の方にはどこまで報道されているのかわからないの
で、余計なことだとは思うけれども、勝手に解説しておきましょう。

 突如、多摩川に現れたナゾのゴマヒゲアザラシ。夏休みであることもあって、
たちまち名物に。親子連れやらカップルやら老夫婦やらガキ・・・いや、学生
さんやらお子様達で多摩川は突如、タマちゃんフィーバーに。初めはあまり騒
いでいなかったマスコミの方々も、タマちゃんのかわいさみたさに集まる人の
数の多さにびっくりしてか、連日やれ現れた、やれ消えたと大騒ぎに。国土交
通省までもが対策会議を開くまでの大騒ぎになった。・・・ゴジラじゃないん
だから、ねぇ。

 と、皮肉を言ったり揶揄して見ても、なぜか、汚いコンクリートで固められ
た河で泳ぎ、休み、ヒゲ掃除なんかしているタマちゃんを見ると、やはり気に
なってしまうのである。不思議なことに。騒いでいる人を見て、笑顔になって
しまうのである。なんでかな。

 とりわけタマちゃんの不思議で人の口の端に上る理由は、タマちゃん自身が
ヒトトコロに落ちついておらず、河から河へと移動して行くところにある。ま
るで巡業か興業かのように、人の多いところ多いところへ、と移動して行くの
である。

多摩川 8月7日〜8月16日
鶴見川 8月25日〜8月30日
帷子川(かたびらがわ)9月12日
大岡川 9月15日〜9月21日
中村川 9月24日〜

 こう日付を見て行くと、現れては消え、消えては移動して現れるタマちゃん
に人々が翻弄された夏だった。振り返ってそう思うのである。

 地球温暖化。異常気象。経済不安。政治不安。脱ダム。そんなキーワードが
ちりばめられていた2002年の夏。不景気と経済・政治不安の中で、自然破壊と
経済効率のハザマに揺れながら、我々はどこかしら不安な日常を過ごしている。
そんな中、自然と街の接点にふらりと現れたのがタマちゃんだった。
 かつてビキニ島での核実験がゴジラという怪物を生み出した。人々は自然を
超える超自然の力を持って彼を葬り去った。しかしあれは、フィクションの世
界での話。現実には、街中を流れる河に現れた自然の姿を前に、私達はまった
く抵抗力を持っていなかった。今まで自然として見向きもしなかった河が、実
は生きていることに気づいたとき、人々は何を見たのだろう?

 現実のモンスターは可愛過ぎて、スターになってしまった。これにはディズ
ニー・シーもかなうまい。・・・と、不景気下の夏休み、突如現れた近所のイ
ベントを、絵日記のネタにすることで、親が子どもをごまかしたかどうかはわ
からない。
 同じような絵日記を見せられた先生はまあ、おつかれさま、といったところ
でしょうかね。

○関連サイト

特集:アザラシ タマちゃん(asahi.com)
http://www.asahi.com/national/tama_chan/index.html

トピックス > エンターテインメント > タマちゃん(YAHOO! JAPAN)
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/entertainment/tamachan/

『多摩川・鶴見川に現れたアザラシについて』(京浜工事事務所)
http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/news/h14/tama/azarasi/azarasi_index.htm

アゴヒゲアザラシに関する連絡会(京浜工事事務所)
http://www.keihin.ktr.mlit.go.jp/news/h14/tama/azarasi/tsurumi/renrakukai/index.htm

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※ユニークなサイト・メルマガをご存知の方がいらっしゃいましたら、
メール( sss@aguni.com )にてお知らせくださると幸せです!(私が)
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■「現代思想の最前線」/ 五月(ごがつ)
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第33回:反「帝国」の闘争へ――チョムスキーとネグリの言論活動

ドキュメンタリー映画『チョムスキー 9.11』が、9月28日(土)より、渋谷の
ユーロスペースでモーニング・ショー(午前10:50より)にて公開される。先
日、幸運なことに試写会を拝見することができた。監督はジャン・ユンカーマ
ン、製作は山上徹二郎、配給はシグロ。忌野清志郎が音楽を担当している。

シグロ特集ページ http://www.cine.co.jp/chomsky9.11/index.html
ユーロスペース http://www.eurospace.co.jp/

マサチューセッツ工科大学での授業のほかは、講演と執筆に明け暮れていると
いう言語学者ノーム・チョムスキーが各地をスピーチ行脚する様子と、独占イ
ンタビューを編集したもので、上映時間は74分。ユーモアをふんだんに交えな
がらのチョムスキーの語り口に引き込まれる、あっというまのひとときだ。講
演やインタビューを断片化して再編集するわけだから、たしかに流れとしては
しばしば「ぶつ切り」であるような感じはある。しかし、彼の密度の濃い議論
は実際彼の本を読めばいいわけで、活動家としてのチョムスキーの飽くなき発
言者ぶりは充分に見取ることができる。何と言ってもエンディング。思い出す
だけで胸が熱くなる。

印象的なのは、チョムスキーを囲む民衆の熱気だ。私は、ここしばらく、星条
旗を掲げる熱烈な愛国者としてのアメリカ大衆しか、報道番組で見ていなかっ
たような気がするので、これは新鮮だった。チョムスキーの講演を聞くために
集まった人、人、人。講演後に目を輝かせて「大いに励まされた」と語る婦人、
笑顔で帰路につく男性。知識人の役割は「真実を語ること」だとチョムスキー
は言う。どんなに惨めで馬鹿馬鹿しい現実が世界を蔽っているとしても、真実
には人々を前進させる力があるのだ。

彼は何度でも同じことを話す。何度でも、諦めず、倦まず。「誰だってテロを
やめさせたいと思っている。簡単なことです。参加するのをやめればいい」。
実際、巧妙なレトリックによる言い逃れだけには良く通達している似非知識人
たちのどうでもいい発言に比べれば、彼の率直さは賞讃に値する。その忍耐た
るや、並大抵の精神力によるものではない。この映画をぜひお奨めしたい。観
れば必ず、勇気が沸いてくるはずだ。

10月12日(土)からは、京都朝日シネマでレイト・ショー公開。同じくこの秋
のプサン国際映画祭に正式招待され、アメリカでも年内に公開予定だという。
アメリカのマスメディアがチョムスキーをどう遇しているかはご存知の方もい
らっしゃるだろう。ほとんど無視されるか、馬鹿にされているのだ。なお、地
域や学校での自主上映のためのプリント貸し出しをシグロで受け付けていると
のこと。地方で興味のある方は問い合わせてみてほしい(TEL:03-5343-3101)。

また、この映画で取り上げきれなかった独占インタビューの全容は、リトル・
モアから発売された書籍『ノーム・チョムスキー』で読むことができる。これ
は必読だ。お値段も1000円ぽっきりと、超お得である。

リトル・モアHP http://www.littlemore.co.jp/

チョムスキーは1928年生まれだから、今年で74歳だ。いやはや、元気である。
頭脳明晰である。911一周年ということもあり、今月は上記の新刊のほかに、
2点刊行されている。一冊は、トランスビューから刊行された1999年のインタ
ビュー集『チョムスキー、世界を語る』であり、もう一冊は今週、文芸春秋か
ら発売される『金儲けがすべてでいいのか――グローバリズムの正体』だ。し
かしモノすごいタイトルにするものである。ちなみに原題は、"Profit over
People: Neoliberalism and World Order"だというから、これは1998年に
Seven Stories Pressから刊行されたものの翻訳だろう。

トランスビュー http://www.transview.co.jp/09/top.htm
文春 http://bunshun.topica.ne.jp/search/html/3/58/97/4163589708.html

アメリカ本国でも、新刊や再刊が相次いでいる。マスメディアの等閑視に比べ、
小出版社たちは怒涛のように彼の本を出しているわけで、しかもアマゾンなど
であっという間に品切になっていたりする。例えば94年に刊行され、順調に版
を重ねている"Media Control: The Spectacular Achievements of Propaganda"
(2002, Seven Stories Press, ISBN:1583225366)はその中のひとつだろう。
112頁のコンパクトな本だが、8月に発売された第2版が入手しづらくなってい
る。大幅に増補されたようだから、注目が集まっているのかもしれない。とは
言っても、この種の本をマスメディアが取り上げるわけはないのだけれど。あ
あ痛快だ。

同じ版元からは同月に、チョムスキーとサイードの共著の第2版も出版されて
いる。"Acts of Aggression: Policing Rogue States" (by Noam Chomsky,
Edward W. Said. 2002, Seven Stories Press, ISBN:1583225463)がそれだ。
1999年に初版が発行されたこの小さなパンフレット(64頁)は、サイードの論
文「アポカリプス・ナウ」とチョムスキーの論文「ならず者国家」に加え、補
遺というかたちでラムジー・クラークの小論「世界人権宣言の50周年記念につ
いて」を掲載している。

こうして色々見てみるとニューヨークに拠点を置いているインディー系版元の
セヴン・ストーリーズ・プレスの精力的な出版活動は目覚しい。それもそのは
ず、昨年の「パブリッシャーズ・ウィークリー」紙で、アメリカでもっとも速
く成長しているインデペンデント出版社に認定されたのだという。国際作家会
議が昨年創刊した注目の新雑誌「アウトダフェ」(隔年刊)の英語版の発行発
売元にもなっている。小出版社という以上の存在感と活躍である。

http://www.sevenstories.com/

さて、ネグリについて少し補足的な情報を。案の条と言おうか、時期的なもの
もあり、ネグリにあちこちの新聞や雑誌が発言を求めているようで、ここ最近
ではフランスの「ル・モンド」や「ル・モンド・ディプロマティーク」、イタ
リアの「イル・マニフェスト」などが、ネグリの論文やらインタビューやらを
掲載している。そのうちの一つが日本語で読めるので、参照されたい。「ル・
モンド・ディプロマティーク」の8月号に掲載された「イタリア左翼の再建に
向けて」というテクストである。

http://www.netlaputa.ne.jp/~kagumi/articles02/0208-3.html

明るい。ネグリは「希望の人」だ。チョムスキーもやはりそうだが、ネグリの
この力強い、前進する意欲はどこから生まれてくるのだろう。彼の情熱に惹か
れて、ということだろうか、あるいは『帝国』が売れているからだろうか、こ
の年末に、コンティヌウム社から『革命の時』という英訳新刊の予告が出てい
る。これまたすごいタイトルである。

"Time for Revolution" by Antonio Negri, December 2002, Continuum,
Price: £50.00, Hardcover 240 pages, ISBN: 0826459315

目次は以下の通り。
Translator's Introduction & Acknowledgements
Time for Revolution 1: The Constitution of Time
Preamble
I. First Dislocation: the time of subsumed being
II. First Construction: collective time A
III. First Construction: collective time B
IV. Second Construction: productive time A
V. Second Construction: productive time B
VI. Third Construction: constitutive time A
VII. Third Construction: constitutive time B
VIII. Second Dislocation: the time of the revolution W
IX. Third Dislocation: the time of the revolution Y
Afterword
Time for Revolution 2: Kairos, Alma Venus, Multitudo
Introduction
I. Kairos
II. Alma Venus
III. Multitudo

上記目次を既刊のイタリア語原書のいくつかと照合してみると、この英訳書は、
マニフェストリブリ社から刊行されたネグリの著書2点を英訳して1冊にまと
めたものだとわかる。第一部が97年刊の"La costituzione del tempo.
Prolegomeni: Orologi del capitale e liberazione comunista"
ISBN:88-7285-136-4であり、第二部は2000年刊の"Kairos, Alma Venus,
Multitudo: Nove Lezioni impartite a me stesso" ISBN:88-7285-230-7
に該当する。前者はもともと80年から81年にかけて書かれたもので、後者は
『帝国』とほとんど同時に発表されたものだ。

『帝国』の時と同じく、スラヴォイ・ジジェクが例によって面白い推薦文を寄
せているので参照しておくと、「私たちはもう一人のネグリを発見する。哲学
的で、神学的ですらある問題構成に沈潜する、もう一人のネグリを。この本は
必読書である。世界資本主義「帝国」にかんする、巷間に広く知られたネグリ
による分析の、固有の知的背景が分かる」とのこと。『革命の時』という英語
の題にある「時」とは、「いまが革命の時だ、立ち上がれ」という場合の「い
ま」をも意味するものだろうが、それ以上にまず、ジジェクが示唆するように、
ネグリがカントからハイデガーまでの時間論と対峙するかたちで構想した、
「時間の構成論」における時間概念を指すだろう。

97年刊のタイトルに明らかだが、それはいまだに「プロレゴメナ」つまり、序
説である。革命の時がいつ到来するのか、いつ「達成」されるのか、という問
題は、マルクス主義の歴史において、いまだに決定不可能な核である。ネグリ
は2000年刊の著書で明らかにしているとおり、「愛」と「多数者」という契機
から、新たな「時間(カイロス)」論を構築している。神話学が教えるところ
によれば、ギリシア語の「カイロス」とは、均質な機械的物理的量としての時
間である「クロノス」に対し、好機であり、人生における特別なタイミングを
意味している。 つまり、革命とは年月日が定められたクロノス的時間におい
て達成されるのではなく、つねにすでに「その時」と任意で表現されうるよう
なカイロス的時間において転換を迎えるのである。

(少し勝手に要約しすぎたかもしれないことをお断りしておきたいが、ネグリ
のカイロス論は、デリダの言うメシア的時間との関連性においても興味深い考
察ができるだろうことを付け加えておきたい。それは神学的というよりは、政
治学にかかわるもので、民主主義の到来をめぐる問題である。)

英訳本『革命の時』は「帝国」の詐術がいったいいつ停止するのか、という重
大な疑問を解釈する上で役に立つから、当然売れるだろう。『帝国』について
言えば、つい最近、911をめぐる「ホットワイアード」誌の特集記事で、坂
本龍一が「帝国」というキーワードを持ち出しているのを読んで、ああ、こう
した知識人層までネグリ=ハートの鍵概念が応用拡張的に使われるようになっ
たんだな、と複雑な思いがした。誰もが「帝国」を口にできるけれど、「いつ」
と問うことの重大性に正面から取り組んでいる知識人は少ないのではないか。
その意味で言えばこの国では、柄谷行人は依然として少数派なのだろう。帝国
に抗する時間論、反帝国的時間論が待望されている。[2002年9月24日]
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