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[本]のメルマガ vol.63
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■■ [本]のメルマガ     2001.3.15.発行
■■         vol.63
■■  mailmagazine of books       [書庫の支払い 号]
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■CONTENTS----------------------------------------------------------
★トピックス 

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁(なんだろうあやしげ)
→今回は、北から南から、ついでに防衛庁にまで出撃だ(笑)

★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→「自分探し」が終った後の、アートの形を探ります

★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→完全能力主義の落し穴ってなに?

★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→しばらく休載になりまーす。
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■「神曲」ダンテ作 両作品とも以下のページで立ち読みができます。 
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■トピックス
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■『DUO セレクト』発売
口コミだけで、CDやらなんやら含めて140万部突破しちゃったという
出版界奇跡の英単語集『DUO』にセレクト版が登場します。今までのも
のを約六掛けにして、とっつきやすくしたものです(中の例文はすべて新
規に作り直し!)。ついでに言語学で名高いハワイ大学の教授を含むネィ
ティブ・チェック10人以上だそうで、イヤハヤ、恐るべきセレクト版の
登場です。発売は、印刷屋さんのミスがあったりとかで、21日過ぎにな
るそうです。

■鈴木道彦訳 『失われた時を求めて』全13巻 完結!
集英社から刊行されている鈴木道彦先生訳『失われた時を求めて』がつい
に三月十五日発売の『見出された時』をもって完結します。正確で(先人
の訳は、実は誤訳が百箇所以上と指摘する専門家も・・)滅茶苦茶読みや
すい大名訳(実体験)。井上訳で挫折した人も、これなら読破できそうで
す。二十世紀の最高峰をこの機会にぜひ。
また、フランスが二十世紀の締めくくりを記念して作った映画、『見出さ
れた時』も日比谷シャンテ・シネで公開中です。ただし、本読んでないと
ちょっとチンプンカンプンの可能性も・・

■メルロ=ポンティ・コレクション(全7巻)がついに出ます。
前々から噂のあった企画が、みすず書房さんより出ます。第一回配本は4
月上旬。以後3ヶ月に一冊づつのペースで刊行。各巻に木田元さんの解説
付きだそうです。
第一回配本分の本体は、予価2,800円。

さらに、みすず書房さん注目の新刊として、北山修の『幻滅論』があるそ
うです。4月中旬予定。予価 2,400円。
北山さんは、お馴染みの元フォーククルセイダーズ のメンバーで現在九
州大学の精神科医です。

■東京国際ブックフェア2001
好例のイベントが、今年も東京ブックサイトで開催されます。
4月19日から22日まで(19、20は一応関係者のみ。21、22は
一般公開)梅宮アンナに渡辺淳一(ともに21日)、柔道の古賀(22日)
まで、いろんな著名人のサイン会やイベント、さらに値引き販売もたくさ
んあります。ぜひ。

■『ZーKAN』休刊記念フェア
惜しまれつつ四号で休刊したカルチャー雑誌『Z−KAN』のバックナン
バーフェアをBK1で開催中です。宮台真司、香山リカ、岡田斗司夫、山
形浩夫など現代の論客が集まるさまは壮観。 手に入らなくなる前にぜひ
http://www.bk1.co.jp/s/jinbun/

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 ★3/10刊『ためらいの倫理学――戦争・性・物語』    内田 樹 著
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 
46判/並製/272頁/本体2000円/発行:冬弓舎(http://thought.ne.jp/)
ソンタグ、自由主義史観、高橋哲哉『戦後責任論』、加藤典洋『敗戦後論』
フェミニズム、上野千鶴子、宮台真司、性の自己決定、岡真理、レヴィナス
ポストモダニスト、ラカン派、『「知」の欺瞞』、サルトル、カミュ……
■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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全点報告 この店で買った本
第11回 北から始めて西へ

 二月半ばに盛岡・岩手に行き、いったん東京に戻って、今度は大阪・神戸
に出張し、続けて米子に行くという、北から西への一週間を過ごしました。
そのあと田舎に帰ったら、裏庭に書庫ができてました。大工の父親が建てて
くれたもので、わずか六畳の広さなのですが、東京の自宅で増えていく本に
ウンザリしてたところなので、明るい気持ちになりました。だけど、建築費
の支払いがあるので、当分はあまり本が買えないとは、皮肉。

二月一日
◎bk1(オンライン書店)
宮崎修二朗『柳田國男トレッキング』編集工房ノア、3000円+税(以下同じ)
◎虎ノ門書房(田町店)
藤本義一『川島雄三、サヨナラだけが人生だ』河出書房新社、1900円
◎三省堂書店(大丸東京店)
橋本治『二十世紀』毎日新聞社、2400円

二月二日
◎ブックセンター・リブロ(池袋店)
杉森久英『戦後文壇覚え書』河出書房新社、1998年
渡辺啓助『ネメクモア』東京創元社、4000円
徳田秋声『縮図』岩波文庫、600円
永井龍男『朝霧・青電車その他』講談社文芸文庫、980円
ヨゼフ・コジェンスキー『ジャポンスコ ボヘミア人旅行者が見た1893年の
日本』朝日文庫、660円
【ひとこと】文芸書コーナーで、東京の文学散歩のフェアをやっていた。文
学散歩のガイド本に加え、東京を描いた小説を並べている。たまたまカバン
に入れて読んでいた、野口富士男『感触的昭和文壇史』(文藝春秋)に、『
縮図』は未完のまま刊行されたとあるが、本当にセンテンスの途中で終わっ
ている。フシギな本だ。『ネメクモア』は100歳の現役作家・渡辺啓助の作品
からのセレクション。特装版もあるそうだが、そこまで手が出ず。
◎ジュンク堂書店(池袋店)
大澤良貴『ゲーム雑誌のカラクリ2 ダークサイド編』KTC、1200円
ジョージ秋山『現約聖書』メディコム・トイ(発行)、青林堂(発売)、
2400円
後藤総一郎監修『山中共古 見付次第/共古日録抄』パピルス、6000円
酒井忠康『影の町 描かれた近代』小沢書店、1000円(自由価格本)
平山三郎『詩琴酒の人 百鬼園物語』小沢書店、950円(自由価格本)
富士川英郎『鴎外雑志』小沢書店、1150円(自由価格本)
『柴田宵曲文集』小沢書店、第7巻、5000円(自由価格本)
【ひとこと】池袋店は全フロアの大増床により、大幅にレイアウトが変わっ
た。一番大きい変化は、各階のレジを廃して、一階で全部精算させるシステ
ムにしたこと。一階には壁面のみに新刊コーナー、奥が雑誌で、あとはすべ
てレジのカウンターとなった。まるで銀行にいるような感じだ。各階は奥に
広くなり、店員は常に走り回っている。呼び出しの電話が誰も聞こえずにズ
ーッと鳴り続けているのが不憫。広くなった分、大胆なフェアがやりやすく
なった面もあろうが、もう少し平積みあるいは面出しの本を多くしないと、
ナニを売りたいのが伝わってこない。まあ、押しつけがましくないのが、ジ
ュンク堂のイイところなのだが……。リブロで買った本を持ってた上に、二
階で小沢書店の自由価格本をどっさり見つけたのでカゴが重くなり、各階を
移動するのがキツイ。
◎往来堂書店
『村山知義グラフィックの仕事』本の泉社、4762円
ジャン=クリストフ・グランジェ『クリムゾン・リバー』創元推理文庫、
920円
山田風太郎コレクション1『天狗岬殺人事件』出版芸術社、1700円

二月四日
◎bk1
浅見淵『昭和文壇側面史』講談社文芸文庫、1165円

二月六日
◎書肆アクセス
『菊池寛全集』補巻(追悼文集、自伝文集)、武蔵野書房、9000円
『LB中洲通信』2月号、500円

二月八日
◎高岡書店(小川町)
『本の雑誌』3月号、505円
【ひとこと】通勤時にはいつも神保町まで歩いているのだが、最近、小川町
に「ブックマーケット」という新古書店ができたので、そこを覗きがてら、
並びにある高岡、神谷という二軒の新刊書店に寄る。どちらも小さいながら、
しっかりした品揃えで好感が持てる。
◎三省堂書店(神保町本店)
文震亨『長物志 明代文人の生活と意見』第3巻、平凡社(東洋文庫)、
2600円
『谷崎潤一郎=渡辺千萬子往復書簡』中央公論新社、1900円
【ひとこと】一階の奥で「翻訳者・翻訳編集者が選ぶ会心の一冊・嫉妬の一
冊」というフェアをやっている。池内紀、青山南、深町真理子ら翻訳家と、
各社の翻訳書担当者、二十人ぐらいが、気に入っている翻訳書を手書きのP
OPでススメている。ヨコには翻訳に関する本も一緒に置いてある。こうい
うフェアは、「このミス」ベストテンを並べただけのフェアとは違って、ホ
ントに好きで企画しているようで、心が動くなあ。ナニを買おうかと思案し
て、中国明代のモノについての事典『長物志』を手に取る。オモシロそう。
こんな本はフェアでもなければ、存在さえ知らずにいたかもしれない。

二月九日
◎ブックマート市ヶ谷
正岡容『明治東京風俗語事典』ちくま学芸文庫、1400円
枝川公一『日本マティーニ伝説 トップ・バーテンダー今井清の技』小学館
文庫、533円

二月十日
◎bk1
渡辺啓助『鴉白書 探偵横丁下宿人』東京創元社、1456円
◎宮城県立美術館
『生誕100年記念 柳瀬正夢展』宮城県立美術館他、2200円
『柳瀬正夢 疾走するグラフィズム』『ねじ釘の画家・柳瀬正夢展』武蔵野
美術大学美術資料図書館、1500円(2冊で)
◎金港堂(仙台本店)
『噂の真相』3月号、448円
◎さわや書店(盛岡本店)
『小松左京マガジン』創刊号、952円
『ふうらい 不思議羅針盤いわて』第2号、500円
【ひとこと】佐野眞一『だれが「本」を殺すのか 』(プレジデント社)で
も、活気のある書店として紹介されていた。一見、ごく普通の書店に見える
のだが、各コーナーがよく考えられて並べられている。平積みにされている
本もなんだかとても自信を持って置かれているようだ。奥の芸能(とくに宝
塚)、スポーツ(格闘技など)のあたりは、ビデオも一緒に置かれ、よく動
いている感じがする。『ふうらい』は岩手のタウン誌。旅に出ると、その土
地のタウン誌が珍しくて買ってしまう。読まないことも多いのだが。

二月十二日
◎古書ほうろう
『地域雑誌 ぶらり奈良町』創刊号、400円
【ひとこと】この店は古本屋だが、委託で新刊雑誌やミニコミが置いてある。
『ぶらり奈良町』を立ち読みしてたら、明日一緒に仕事するカメラマンの太
田順一さんのエッセイが載っていてビックリ。そういえば、奈良在住だった。

二月十三日
◎国立民族博物館
梅棹忠夫『行為と妄想 私の履歴書』日本経済新聞社、1700円
中牧弘允編『越境する民族文化』千里文化財団、1100円

二月十四日
◎神戸市立博物館
『没後30年 川西英展』神戸市立博物館、300円
◎兵庫県立近代美術館
『アメリカン・ドリームの世紀展』愛知県美術館他、2200円
◎烏書房(元町)
中野りうし『しあわせBOX』(音楽CD)1050円
【ひとこと】神戸では博物館、美術館、図書館を回っていろいろ調べる。美
術館の図録はかさばし重いのでなるべく買いたくないが、あとでは入手しに
くいのでその場で買っておかないとねえ。烏書房は、本のセレクトも棚のレ
イアウトもいいのに、客が少ないのが惜しい。店主の川辺さんは、サイト
(http://homepage2.nifty.com/hon-karasu/)をはじめたが、多少集客につ
ながるとイイんだが。ちなみに、ぼくもコラムを連載開始。気持ちのよい小
書店には肩入れしたくなる。

二月十五日
◎本の学校・今井ブックセンター(米子店)
和田芳恵『ひとすじの心』毎日新聞社、1800円
蘆原英了『サーカス研究』新宿書房、2400円
【ひとこと】「本の学校」の書店員研修講座で、「読者から見た書店論」な
るハナシをする。この「本のメルマガ」を数号分コピーして配ると、数人か
ら「ウチの店にも来てください」と云われる。水戸黄門のように全国書店を
行脚しようか(印籠はないけどね)。一緒に話したのが、数日前に会った、
盛岡「さわや」の伊藤さん。伊藤さんの話は現場の書店員ならではの説得力
があったが、こちとらのハナシは煮えきらずヘナヘナな感じでした。

二月十九日
◎bk1
『別冊かまくら春秋 最後のかまくら文士永井龍男追悼号』かまくら春秋社、
922円
◎往来堂書店
ローレンス&ナンシー・ゴールドストーン『旅に出ても古書店めぐり』ハヤ
カワ文庫、720円

二月二十一日
◎東京堂書店
幸田文『回転どあ・東京と大阪と』講談社文芸文庫、1100円
『サイゾー』3月号、690円
『散歩の達人』3月号、550円
『世界の文学84 近世の出版文化』朝日新聞社(週刊朝日百科)、560円

二月二十二日
◎書泉ブックタワー(秋葉原)
中野不二男『日本の宇宙開発』文春文庫、660円
林望『パソコン徹底指南』文春文庫、690円
ミステリー文学資料館編『「探偵文藝」傑作選』光文社文庫、667円
多岐川恭『氷柱』創元推理文庫、980円

二月二十三日
◎三陽堂(防衛庁売店)
『軍事研究』3月号、886円
【ひとこと】数年間市ヶ谷に通っているのに、自衛隊の中に入ったコトがな
かった。防衛庁も移転してきたことだし、ハナシのタネに一度見ておくかと、
友人と見学ツアーに申し込む。売店には書店も入っているが、狭くて雑誌と
文庫がほとんど。「ユダヤの陰謀」系の本が多く置いてあったのが印象的だ
った。
◎旭屋書店(銀座店)
小野不由美『黒祠の島』祥伝社(ノン・ノベルス)、886円
徳田秋声『仮装人物』岩波文庫、660円

二月二十四日
◎bk1
森まゆみ『一葉の四季』岩波新書、700円
◎東京都庭園美術館(目黒) http://www.teien-art-museum.ne.jp
『ポスター芸術の革命 ロシア・アヴァンギャルド展』2500円
【ひとこと】一九二〇年代のロシアで、こんなに映画ポスターがつくられて
いたとは。中心になっている「ステンベルク兄弟」のポスターは、日本人が
蒐集したコレクションが元になっているとか。四月一日まで開催してるので、
行ってみてください。図録もヨカッタ。

二月二十六日
◎千葉市美術館
『日本の版画2 1911-1920 刻まれた「個」の饗宴』2500円
◎ジュンク堂書店(池袋店)『収集の弁証法 久保覚遺稿集』『未完の可能
性 久保覚追悼集』刊行会発行、影書房発売、5000円
伊丹由宇『こだわりの店乱れ食い』文藝春秋、1190円

今月の購入本 59冊(オンライン書店にちょっと飽きてきた)
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■「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
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相手探しの時代?−「THE GIFT OF HOPE」展(東京都現代美術館)
忘れっぽい天使

肩透しを食うことの多い「観客とのコミュニケーションをめざす」型の企
画展の中で例外的と言っていいくらい楽しいものを見ることができた。
「THE GIFT OF HOPE−21世紀アーティストの冒険」展である(東京都現代美
術館 2000年12月16日〜2001年4月8日)。
実はこの展覧会の名前を知った時、反射的に嫌悪感を感じてしまった。以
前、この「今日の芸術」欄でメディア・アートと呼ばれる芸術を批判的に論
じたことがあった(http://page.freett.com/anjienji/index.html)。観客
との新たなコミュニケーションの道を探るなどとうたいながら、その実、観
客の参加の余地などまるでなく、器材だけは新しいが心理主義的な図式を辿
り直しただけの古臭い中身を見せつけられるものばかりではないか、という
のがその主旨だ。作者の肥大したエゴを指し示す標語のようなものになりさ
がっている作品群にうんざりしきっていたぼくは、東京都現代美術館のこの
企画にも足を運ぼうかどうか迷ったのだが、来て良かった。ここに並べられ
た作品は、完成度はともかく、見知らぬ人との親密な交流を心底から喜ぶ表
情を持ったものばかりだった。

ヤノベケンジの「アトムスーツ・プロジェクト」は、放射能防護服「アト
ムスーツ」に身を包んでチェルノブイリ原子力発電所近辺を訪ね、住民と交
歓し、写真を撮って集成・展示するとともに、小さな「アトムスーツ」を装
着させたガイガー・カウンターを多数会場に配置させるというもの(ガイガ
ーカウンターは宇宙線を受けると微かな電子音を発し点滅する)。ぼんやり
したイメージとして存在するに過ぎなかった「チェルノブイリ」という土地
に、そのイメージを表象させた外装で乗り込んでいくわけ。酔っ払いから「
こいつは外から俺達をからかいに来ているんだ」というようなことを言われ
てシュンとしてしまった話などが、絵日記として壁に貼ってあったりする。
感傷的なヒューマニズムに捕まってしまったきらいもあるが、「作品」でな
く、体験の共有をめざした「プロジェクト」として筋が通っている。

島袋道浩の「そしてタコに東京観光を贈ることにした」は、明石で取れたタ
コをビニール袋などに入れて東京まで旅をさせ、その途中で出会った人や風
景をビデオに収めるというもの。生きたタコを持ってタクシーに乗り込む様
子はおかしいし、タコを中心に通りすがりの人たちと和気藹々の関係ができ
ていく様もいい。タコを海に帰す場面も感動的。但し、「なぜタコか」とい
う肝心な所が曖昧だ。タコのイメージと旅のイメージが文字どおり「からみ
つく」ようだったらもっと面白くなったのに。このままだとちょっと変わっ
た紀行日記で終わってしまう。タコにまつわる独自な概念形成が必要だろう。
作者は作家活動を直接語りかけるために、出張スライドショーを企画してい
るようで、その行動力が羨ましい(対象は社会人から中学生まで)。

タイのスラシ・クソンウォンの「フリー・フォー・オール」は、タイ各地か
ら集められた日用品を壁に貼り付け、訪れた人に好きなものを持っていって
もらうだけ、という大胆なもの。もちろんタイではありふれた雑貨でしかな
いものばかりなのだが、日本人の感覚とはちょっと違った色合い、デザイン
に改めて目を見張る。同じ物でも、違う土地に持って適切な配置の工夫をす
るだけでアートになってしまうんですね。タイの人の個室を模した小部屋の
展示もあり、そこが気に入ってしまったらしく中に座り込んでなかなか出て
こない女の子もいた。

同じくタイのナウィン・ラワンチャイクンの「フライ・ウィズ・ミー・ト
ゥー・アナザー・ワールド インサム・ウォンサムとその旅に捧げる」は、タ
イの偉大な芸術家、インサム・ウォンサムの若き日の姿を絵・漫画・インス
タレーションなど様々な手段で描き出す。ウォンサムは1960年代にスクータ
ーに跨って超ビンボー世界旅行に出ることで創作活動を始めた。そんなウォ
ンサムの自由な精神に対する尊敬の念が、ユーモア溢れる漫画作品、スクー
ターに跨った姿の像、ウォンサムの住む小屋のコピーその他から熱く伝わっ
てくる。もちろんウォンサムを偉人扱いするのでなく、彼が今にもそこに出
現しそうな臨場感を仮構することに徹している。ここにも部屋の様子の再現
があったが、タイ人は他人の家にあがりこむのが好きなのか?
だが、美術館の高くて冷たくて白い壁を何らかの方法で覆い隠す工夫が必
要だったと思う。こういう壁に囲まれていると「作品を鑑賞している」気分
になってしまうではないか。

他にも「視聴覚交換マシン」(二人一組で目にビデオカメラを取りつけ、
互いの視覚を入れ替えるように操作する。八谷和彦)とか身近で日常的な
ものを軽いタッチでひたすら描きまくる試み(イー・ジンギョン、韓国)な
どがありそれぞれが楽しかった。
これらのアーティストたちの試みの特長は、まず自分自身が観客の先頭を
切って自分の作品の参加者となる、という点にある。つまり、表現の管理者
としての地位−作品の意味を全て作者の内面世界に帰着させ、作品の外側を
うろつく鑑賞者に、わずかな手掛かりを与えそれを元に作者の内面世界を復
元させることを求める−には見向きもせず、友達に対するように観客を迎え
入れる空間を作り、観客と一緒に遊ぶことを目指しているようなのだ。自分
を説明するためでなく、自分が楽しむために空間形成がなされる。人間は間
柄の中で生きる存在だから十分楽しむためには相手が必要ということになる。
だから確実に相手に何かを手渡すことが表現の眼目になってくる。自己の内
面世界に閉じこもることに自由を見出していた時代は終わった。何故なら、
閉じこもったアーティストは実は部屋の戸を誰かが叩きに来るのを心待ちに
していたのであり、「自由」が完成して戸が完全に叩かれなくなった今、な
お内面を聖なる空間として崇めることには意味がないからだ。

「自分探し」が終わり「相手探し」の時代が始まっている、のだろうか。
--------------------------------------------------------------------
■中国古典で浅学菲才が直る!?/掩耳
---------------------------------------------------------------------
「徹底した実力主義には、ちと問題が――韓非子だけでは組織は動かない」

韓非子――
徹底した能力・法治主義の組織をつくるために、上に立つ人は賞罰の権限を
しっかり握って離さず、実績だけを信用する・・派閥に頼らなければ地位を
維持できない人や、口だけの人、へつらいモノはすべて排除や――というこ
とは前回までのおさらい。なんだ、当ったり前じゃん、イイことジャンとい
う声も聞こえてきそうです。

しかし、実はこれだけでは組織はうまく回り続けません。
いや、というよりこの方法は有効な状況が結構限定されているということで
す。じゃあ、どんな状況に適しているのか。

端的なのは、情実主義、人情主義の弊害が蔓延している組織の立て直しです。

そりゃ、当たり前だと言われそうですが、これには中国古典の思考法がかか
わって来ます。中国古代の思想では、常にバランスが重んじられます。
中庸――ものごとの急所をつき続ける(庸、とはずっとという意味)ことを
目指すといってもいいかもしれません。
と、同時に物事はどうしようもなくバイオリズムのような曲線を描くという
考え方もありました。こちらは、健康法で有名な「気」の思想(必ず満ち欠
けを繰り返す)に現われてもいる部分です。

組織運営における一方の極、それが徹底した能力・法治主義――韓非子の思
想なのです。
そしてその反対が、人間主義的、身分差別的発想(今で言えばキャリアは出
世、偉いとこの二代目もすぐ出世、オーナーの息子は当然とか≪笑≫)の組
織――これは、無理に言えば儒教的な思想になります。

つまり、
能力・法治主義と身分・情実主義の極の間で、組織というのはどうしようも
なくバイオリズムのように揺れ動くものだ、ということです。そして、行き
過ぎた情実主義の組織も、行き過ぎた能力主義の組織も、結局はマイナスが
多くなるということです。そして、一方の極に行き過ぎた場合は、反対の極
を当てるのが、まずは有効であり、早道なのです。

実際、韓非子的な思想を取り入れて、それまでの封建貴族体制を打ちこわし、
実績あげなきゃ報奨も勲功もやらんという改革を達成した秦は、それによっ
て飛躍的に充実した国力を武器に中国を統一しました。

しかし、問題はその後です。統一した後も、秦は徹底した能力・法治主義を
貫きました。その結果下にいる人間が嫌気を起こしたのです。あまりに厳し
過ぎる能力主義は、当然かなりの落ちこぼれた人間を出しますが、その人間
が不満を解消するシステムがないため、組織に刃向かって来る――特に、失
敗即厳罰、といった厳し過ぎる体制を布くと、自分の部下だったはず者を、
兵家では手出しを禁ずる「追いつめられて死に物狂いなった反攻者」に仕立
てかねないのです。

実際、秦は、陳勝・呉広という、法令に触れてこのままいけば死刑という状
況に追いつめられた者が、どうせ死刑になるんならと始めた反乱がきっかけ
であっさり滅びました。

要は、完全能力・法治主義にしろ、情実主義にしろ、状況に応じての使い様
なのです。このことは、漢の宣帝――あんまし有名じゃないけど滅茶苦茶
な名君の言葉「法と儒の併用」ということに現われています(続)
---------------------------------------------------------------------
■あとがき
---------------------------------------------------------------------
>花粉症の季節ですねー
>はあはあ
>実は、三十年以上前から花粉症なんです
>ひぇー、それは長いですね
>昔って、「花粉症」って言葉なかったじゃないですか。で、三月になると
鼻水出るわ、涙出るわ、ホント子供心に悲しくなって来て、僕はもう駄目な
んじゃないかウジウジとかしてました
>ああ、涙が出ると、悲しくなりますもんねー
>でも、どこかのお医者さんが「花粉症」発見してくれたんで、なーんだ単
なる病気だったんだ―とわかって、とても人生明るくなりました(笑)。そ
のお医者さんにはホント感謝しますよ
>ええ、話やねー(笑)
>でも、不思議なことに、三十年も花粉症やってると、年々症状が改善され
ていくの
>そりゃ、老化ってことじゃあ・・
>部屋がいつでも埃まみれだからという噂も・・どちらにしても情けないで
すぅ、シクシク(笑)
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