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[本]のメルマガ vol.45
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■■ [本]のメルマガ   2000.9.15.発行
■■       vol.45
■■  mailmagazine of books      [虫はクスリなのだ 号]
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■CONTENTS--------------------------------------------------------- 
★トピックス 
→今回、なんとチケットプレゼントがありまするゾ

★「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
→ネット書店の利用が増えてきたような気がするのは、やはり時代の流
れなのでせうか??

★「本の周りをうろついて・・」/湯川新一
→体調不良で休載。ファンの方、本当にゴメンナサイ

★「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
→今回は四谷シモンの妖しい世界を取り上げます。

★「中国古典で浅学菲才が直る?」/掩耳(えんじ)
→マザコンで下請けの中小企業の社長的な中国思想とはなんだ??
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■トピックス
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■「知を内破する--ひきこもる市民社会の彼方へ」
        講演会チケットを抽選で3名様にプレゼント!◆

『シリーズ越境する知』(東京大学出版会)刊行記念として、
紀伊國屋セミナー「知を内破する--ひきこもる市民社会の彼方へ」
を開催します。
パネラーは栗原 彬、小森陽一、佐藤 学、吉見俊哉の各氏。
また、ゲストパネラーとして、川本隆史、中村和恵、如月小春の各氏を
およびしています。

【日時】 9月28日(木) 午後6時30分〜9時(午後6時開場)
【場所】 紀伊國屋ホール(紀伊國屋書店新宿本店4階)
このセミナーのチケットを、抽選で3名様にプレゼントします。
ご応募は、東京大学出版会へメール(info@utp.or.jp)にてお願いします。
9月24日までに頂いたメールを有効とさせていただきます。

件名に「本メルマガを見た、チケット希望」とお書きいただき、お名前・
ご住所・電話番号をお書き添えください。当選はチケットの発送をもって
かえさせていただきます。ご応募お待ちしております。
(応募先は、東大出版会さんです。まちがえちゃだめよーん)

■平凡社の月刊「太陽」が休刊!
な、なんと、11月12日発売の12月号を限りに休刊に入るそうです。
「別冊太陽」は引き続き刊行されるとのことです。

■読んでますか? [書評]のメルマガ
[本]のメルマガの姉妹誌、[書評]のメルマガが10号を向かえました。
本好き業界人の徹夜した本、辣腕新聞記者、編集者、へなちょこフリー
ライタ―による書評など、読みどころ満載。ぜひ御購読ください。
もちろん無料。まぐまぐ IDナンバー0000036518
HPアドレスhttp://page.freett.com/anjienji/review/

■本の学校・神保町シンポジウム2000
10月28日(土)、「神保町ブックフェスティバル」の関連行事として、
「読者・街・書店」と題するシンポジウムが開かれます。重松清氏の基調
講演、書店人によるパネルディスカッション(司会・永江朗氏)、懇親パ
ーティの他、二つの自主分科会が予定されています。参加費1000円(懇親
パーティ5000円)。参加要項は「本と出版流通のページ」
(http://www.bekkoame.ne.jp/~much/)にあります。申し込み締切は10月
7日です。ぜひ、ご参加下さい。

■講演会のお知らせ
「田村隆一をいかに超えるか」
9月30日(土)1:30より日本出版クラブ会館(03ー3267ー6111)
講演 辻井喬 吉増剛造 
討議 城戸朱理(司会)白石かずこ 新倉俊一 藤井貞和 守中高明
佐々木幹郎
前売り1200円 当日1500円
予約先 思潮社 03(3267)8141 当日『田村隆一全詩集』を特別価格で
販売するそうです

■みすず書房さんより話題の新シリーズ刊行
『詩人が贈る絵本』(全7巻)長田弘が選んだ7冊
9月・10月・11月に各2冊、12月に1冊で完結。
9月は9/8配本(発売)。
●『白バラはどこに』ガラーツ&イーノセンティ(文) 
ロベルト・イーノセンティ(絵)¥1,800
●『……の反対は』 リチャード・ウィルバー(文&絵)¥1,600
以上9月分
●『十月はハロウィーンの月』ジョン・アップダイク(文)
ナンシー・エクホルム・バーカート(絵)予価¥1,600
●『おやすみ、おやすみ』 シルヴィア・プラス(文) 
クウェンティン・ブレイク(絵)予価1,600
以上10月分
●『夜、空をとぶ』 ランダル・ジャレル(文) 
モーリス・センダック(絵)予価1,600
●『アイスクリームの国』アンソニー・バージェス(文) 
ファルビオ・テスター(絵)予価1,800
以上11月分
●『ジョーイと誕生日の贈り物』マキシン・クーミン&アン・セクストン
(文)イーブリン・ネス(絵) 予価¥1,800
以上12月分
訳は全て、長田弘さん
各巻に応募券付き。全7冊ご購入の方に、セットケースをプレゼント。
完結時には、全7冊セットでの販売もあるそうです。
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■「全点報告 この店で買った本」/南陀楼綾繁
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第5回 他所で買えない本に手が伸びる

八月一日
◎往来堂書店(千駄木)
安藤哲也・小田光雄・永江朗『出版クラッシュ!?』編書房、1500円+税
(以下同)
◎ブックセンターリブロ(池袋店)
松浦弥太郎『本業だけで、楽しいですか?』ブルース・インターアクション
ズ、1800円
和田忠彦『ヴェネツィア 水の夢』筑摩書房、2800円
団鬼六『大穴』角川春樹事務所、1900円
◎ぽえむ・ぱろうる
沼田元氣『ぼくの伯父さんの東京案内』求竜堂、8000円〈特装版〉
花輪和一『刑務所の中』青林工藝舎、1600円
【ひとこと】ヌマゲンさんの新刊は普及版もあるが、限定三百部の特装版は
番号入り、オリジナルプリント一葉つき、トートバッグほかのオマケつきと
なれば、軍配はこちらに。この店では比較的若い番号が置いてあったので、
第四番を購入する。

八月六日
全生庵(谷中)
『全生庵蔵・三遊亭円朝コレクション 幽霊画集』全生庵、2000円
【ひとこと】落語家の円朝の墓がある全生庵では、毎年八月に虫干しを兼ね
て幽霊画が陳列される。何度か観ているが、今年初めて図録が出たので買っ
ておく。

八月七日
◎書肆アクセス
目黒考二『笹塚日記』本の雑誌社、1600円
本間広政・下川和男『書協「Books」と出版社ホームページ』エディタース
クール出版
部、1400円
『本の雑誌』505円
川崎ゆきお『便所バエ対猟奇王』幻堂出版、1429円
『HOT CHILI PAPER』第2号、1429円

八月八日
◎創文堂書店(本駒込)
『東京人』9月号、857円

八月十日
◎青山ブックセンター(新宿ルミネ2店)
西木正明『梟の朝 山本五十六と欧州諜報網作戦』文春文庫、552円
『広告批評』8月号、562円
『噂の真相』9月号、470円
『SD』8月号、2190円

八月十一日
◎ブックマート市ヶ谷
安達哲『幸せのひこうき雲』講談社、505円
車谷長吉『塩壺の匙』新潮文庫、476円
佐藤亜紀『1809 ナポレオン暗殺』文春文庫、552円
田中小実昌『世界酔いどれ紀行 ふらふら』光文社(知恵の森文庫)、533円
アダム・カバット『大江戸化物図譜』小学館文庫、590円
【ひとこと】ネットで注文して書店で受け取る、日販「本やタウン」の取扱
店が増えたので、仕事場の近くの店を指定して注文。三日で届くのは早い。
しかしこのシステム、店の売上げになるんでしょうか? 悪い気がして、つ
いでに何冊か買う。
◎eS!Books(コンビニ受け取り)
岡部一明『サンフランシスコ発:社会変革NPO』御茶の水書房、2600円
【ひとこと】こっちはネットで注文、最寄りのセブンイレブンで受け取り。
本が届いたとメールが来たので行ったら、パッケージごとレンジの上に置い
てあった。イレギュラーな商品なので、店員もよく判っておらず、時間がか
かる。領収書を書いてもらうのもためらわれる。ナンか本を買った気がしな
い。やっぱり書店で買うほうがイイかなあ。

八月十二日
◎bk1(オンライン書店)http://www.bk1.co.jp/
石黒敬章『続 幕末・明治のおもしろ写真』平凡社(コロナ・ブックス)、
1524円

八月十三日
◎eS!Books(コンビニ受け取り)http://www.esbooks.co.jp/
前坊洋『明治西洋料理起源』岩波書店、2500円
たかさきももこ『ふたりのイブ』集英社、505円

八月十八日
◎ブックマート市ヶ谷
西木正明『間諜二葉亭四迷』講談社文庫、638円
西木正明『標的』集英社文庫、600円
『サイゾー』9月号、657円
【ひとこと】また、日販「本やタウン」での注文。一人の作家に入れ込むと、
手に入る本を全部買いたくなってしまう。そういう「総ざらえ」購入に、オ
ンライン発注は便利だ。

◎高岡書店
谷岡ヤスジ『アギャキャーマン傑作選』実業之日本社、1900円
風間やんわり『たもっさんの時間』第1巻、505円
◎書肆アクセス
横浜市中央図書館開館記念誌『横浜の本と文化』横浜市中央図書館、5000円
(税込)
『LB中洲通信』9月号、500円
◎東京堂書店
柴田宵曲『随筆集 団扇の画』岩波文庫、600円
武田泰淳『士魂商才』岩波現代文庫、900円
陣野俊史『じゃがたら』河出書房新社、2400円
富田昭次『明治・大正・昭和ノスタルジック・ホテル物語』平凡社(コロナ
・ブックス)、1524円

八月十九日
◎書泉ブックドーム(川口)
つげ忠男『舟に棲む』第1巻、ワイズ出版、1800円
『月刊サンデーGX』410円
【ひとこと】書泉グループの一番新しい店(九八年十二月オープン)。コン
ピュータ、趣味(鉄道、車)、スポーツ、アイドルといった書泉らしい品揃
えなのだが、ほかの店では狭いフロアに客がひしめいているのに比べ、ココ
は四階まである大きな店でスペースをたっぷり取っている。そのためか、ナ
ンだかほのぼのとしているのが妙。四階のコミック売り場では、売れ線シリ
ーズの第一巻のビニールパックをヤメて中身が見られるようになっている。
コレはけっこう購買につながると思うぞ。ちなみに、川口にはそごうでの古
本市のため寄ったのだが、リブロポートや岩波書店のここ十年ぐらいの本が、
一点何十冊も置かれていた。新刊書と違って、古本の場合、同じ本が何冊も
あるとトタンに買う気が失せるのはフシギだなァ(そう云いつつ一万円近く
買ったが)。
◎うらわ美術館(浦和)
『もうひとつの扉 20世紀・アーティストの本』図録、1800円

八月二十日
◎博山房書店(本駒込)
遠藤淑子『狼には気をつけて』第2巻、白泉社、390円
【ひとこと】不忍通り沿いの小さな新刊書店だが、この辺りでは比較的マン
ガの品揃えがイイので、近くの本駒込図書館に寄るついでにときどきのぞく。
かなり古い店のようで、ぼくはこの店のおそらく昭和二十年代の宣伝マッチ
のラベルを所有している。隣りに「動坂映画館」(『谷根千』第三十号によ
れば「動坂映画劇場」)があったようだ。昔はニギヤカな通りだったんだろ
うなァ。

八月二十二日
◎旭屋書店(水道橋店)
中川六平『「歩く学問」の達人』晶文社、1900円
吉田戦車『伝染るんです。』小学館(BLUE COMIX)、95円
◎丸善(お茶の水店)
『散歩の達人』9月号、524円
【ひとこと】平凡社ライブラリーのコーナーがないのには驚いた。「各ジャ
ンルに分けてます」と云われたが、地味なテーマの本なので当然見つからず。
ひとかたまりになっているコトの利点もあるなあ、と思う。

八月二十三日
◎文鳥堂書店(飯田橋店)
森高夕次(作)・あきやまひでき(画)『おさなづま』第2、3、4巻、双葉
社、各533円
つげ忠男『舟に棲む』第2巻、ワイズ出版、1800円
野中英次『ドリーム職人』第3巻、講談社、533円
◎三省堂書店(神保町本店)
大西巨人『二十一世紀前夜祭』光文社、1800円
高橋敏『国定忠治』岩波新書、660円
宮本常一他監修『日本残酷物語』2、平凡社ライブラリー、1359円
みなもと太郎『雲竜奔馬』第4巻、潮出版社、533円
【ひとこと】二階・文庫売り場のPOP攻勢がスゴイ。創刊したばかりの
「ハルキ・ホラー文庫」なんて、ほとんど全点に手書きのPOPが付いてい
る。旧刊の鯨統一郎『邪馬台国はどこですか?』(創元推理文庫)がどーん
と平積みされていたりして、オモシロイ本を本気で売ろうという姿勢が見え
るのが嬉しい。

八月二十五日
◎紀伊國屋書店(新宿本店)
坪内祐三編『明治文学遊学案内』筑摩書房、1900円
長谷川昇『博徒と自由民権 名古屋事件始末記』平凡社ライブラリー、
1068円
京谷秀夫『一九六一年冬「風流夢譚」事件』平凡社ライブラリー、1359円
『新潮45』9月号、762円
◎あおい書店(新宿店)
『ダークサイドJAPAN』10月号、648円

八月二十六日
◎岩波ブックサービス
宮本常一他監修『日本残酷物語』1、平凡社ライブラリー、1359円
武田麟太郎『日本三文オペラ』講談社文芸文庫、1200円
金石範『万徳幽霊奇譚・詐欺師』講談社文芸文庫、1200円
北原糸子『地震の社会史 安政大地震と民衆』講談社学術文庫、1050円
河野与一『新編 学問の曲り角』岩波文庫、660円
【ひとこと】この店は、九月一日から経営が変わるそうだ。コレまで文庫や
新書の地味なタイトルを揃えていてくれたコトに敬意を表して、ナン冊か買
っておこう。

八月二十七日
◎ジュンク堂書店(大宮店)
池谷伊佐夫『書物の達人』東京書籍、2300円
小森陽一『日本語の近代』岩波書店、2300円
保坂和志『生きる歓び』新潮社、1500円
森高夕次(作)・あきやまひでき(画)『おさなづま』第5巻、双葉社、552円
『アックス』第16号、933円
『ダークサイドJAPAN』8月号、648円
【ひとこと】ロフトの二階分を占めている。下がマンガで、上が書籍・雑誌。
上の階は、一列に違うジャンルがぎっしりと詰め込まれているので、ジュン
ク堂各店でもより図書館っぽさが目立つ。マンガ専門の階は品揃えがイイ。
マンガについて云えば、完全に神保町よりは地方都市の大型書店の方が揃う。
やはりスペースがあるせいか。風俗本のコーナーで、若いカップルがマリフ
ァナ本を熟読してたのがブキミだった。

八月二十八日
◎プロジェット(渋谷)
『ARNO:white ass european cowboy』IMSCHOOT(ベルギー)、5623円
『Carouschka's TICKETS:A world-wide collection』1万2180円
ANTHON BEEKE『MATCHBOX LABELS』010 PUBLISHERS(ロッテルダム)、700円
『REDSTONE MATCHBOX』NO.4&5、REDSTONE PRESS、各1727円
STEVEN HELLER&LOUISE FILI『STREAMLINE:AMERICAN ART DECO GRAPHIC
DESIGN』
CHRONICLE BOOKS、2411円
【ひとこと】渋谷・道玄坂を上がったトコロにある、デザイン関係の新刊&
洋書の店。一年半前に開店した。ナンでも元・青山ブックセンターのヒトた
ちが経営しているらしい。久しぶりに行ったら、先日うらわ美術館で見かけ
た『ARNO』というアーティスト・ブック(シングルレコードを四角に切って
綴じた妙な本)が積んであり、コーフンして買う。店のヒトにほかにアーテ
ィスト・ブックはないかと聞くと、『Carouschka's TICKETS』というバカで
かい本を奥から出してくる。世界中の乗車券・入場券コレクターがつくった
本。コレも高いけど、「見かけたときに買うしかない」と思い切り、カード
で買う。

八月三十日
◎bk1(オンライン書店)
竹中労+かわぐちかいじ『黒旗水滸伝 大正地獄篇』上・下、皓星社、
各2500円
【ひとこと】発売前に予約した本が、書店よりも先に手に届く。コレは快感
です。

今月の購入本 計77冊(夏バテしながらもこんなに買うなんて……バカ?)
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■「今日(こんにち)の芸術」/忘れっぽい天使
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固有の時間に触れる戦慄 −「四谷シモン−人形愛」展

新宿の小田急美術館で開催された「四谷シモン−人形愛」展(8/23〜
9/10)を観てきた。
四谷シモンはもちろん著名な人形作家だが、その作品をじっくり鑑賞
したことは今までなかった。こういう「知ってるつもり」というのが実は一
番いけない。「知ってるつもり」になってその作品をすぐに「孤高のエロ
ス」だの何だのと片づけてしまいがちになるからだ。今回、人形作品
をゆっくりじっくり見て回ることができて本当に良かった。奇形的なおど
ろおどろしさを予想していたが全くそうでなく、すっきりとして、素朴でさ
えある「よい人形」であったのだ。

四谷シモンは1944年に生まれ。父はタンゴ楽士、母はダンサー。幼
少より人形作りに目覚めたが、21歳の時ハンス・ベルメールの人形の
写真を見て決定的な衝撃を受けたという。また唐十郎の主催する状況
劇場にも役者として参加し、人気を得た。寺山修司の天井桟敷と乱闘
騒ぎを起こした事件は有名。渋澤龍彦、種村季弘、瀧口修造、金井美
恵子など多くの文化人と交流あり。「四谷シモン 人形愛」(美術出版社)
写真集「NARCISSIME 四谷シモン」(篠山紀信撮影 書肆山田)「シ
モンのシモン」(ライブ出版)などの本がある。
なお、「シモン」の名は、好きだったジャズ歌手ニーナ・シモンから取ら
れたという。

今回の展覧会は、人間としての四谷シモンに焦点を当てたもので、人
形作品だけでなく、役者時代の写真やポスターも多く展示されている。
状況劇場に参加していた頃の写真は時代の特異性を感じさせられるも
のが多く、それはそれで興味深かったのだが、ぼくはもっぱら初めて見る
彼の人形に心を奪われていた。
人形が立っている場所にはそこだけ、ざわざわした展覧会場とは違っ
た空気と時間が流れていたのだ。

会場に足を踏み入れた者は誰でも、まず少女の人形の美しさに目を見
張るだろう。何と言ってもその顔、特に目。その目はある動きを、微妙では
あるが生き生きした動きを感じさせる。瞼の開き具合、頭の傾け具合、眉
の反り返り具合で、彼女たちは多様な動きの途中に自分たちがあること
を語る。彼女たちは決して「お人形さん」のようにおとなしくしているわけで
はない。彼女たちは固有の生活の真っ只中にあり、ぼくたちではない誰か
にすっと向かい合っている。シモンの人形は、シモンが愛したベルメールの
のような、奇異な感覚を一方的にまくしたててくる能弁な人形とは違うのだ。
彼女たちが背負っているものはもっと何でもない各々の日常生活だ。ただ、
その日常生活の目に見えない襞の感触が、目の表情から生々しく感じ取
られ、ぼくたちをゾクッとさせる。文学作品のように物語になっていない分、
彼女たちの日常生活の細部への想像は際限がなくなってくる。絵を見るに
は椅子が必要だと言ったのはクレーだが、四谷シモンの人形を本気で鑑賞
しようと思ったら椅子だけでなくベッドも必要だろう。一緒に寝ることも含め、
ともに生活することも考えなければならない。それでも、彼女たちの生活の
中にぼくたちは入れないのだ。その「彼女たちの生活に入れない」ことへの
苛立ちが狂おしい気分を生み、その場を立ち去りがたい思いにさせる。

「シモンのシモン」(ライブ出版)という会場で売っていた本を読むと、四谷
シモンは相当に筆の立つ人だということがわかる。彼の書いた詩作品も収
録されているが、やや時代の制約を感じさせるとはいえ、今でも読むに耐え
る展開の面白さを備えている(特に散文体の詩)。またエッセイや対談でも、
自分の考えを理路整然と述べており、創作に関して非常に意識的な作家で
あることが窺える(口調は時に上品ではないが)。
彼が作る人形も、ただ存在していれば満足という風には見えない。動作の
途中にふっと時を止められてしまった、つまり語りかけてくる人形なのだ。但
し、語りかけるにしても我々観客に直接まくしたてるのでなく、彼らを包むふっ
くらした虚構の時空の中の相手に向かって、相手の言葉にも耳を傾けながら
語りかけているのである。我々観客は、各々の人形に固有な対話の様子を
目で見ることによって想像しなければならない。

シモンの人形はもちろん少女たちばかりでなく、天使や少年、大人の男の
ものもある。95年製作の「目前の愛」の天使の人形や96年製作の「キリエ・
エレイソン」のキリストの人形は、深くて長い思索のうねりを表情に湛えてお
り、いつまで見ていても見飽きることがない。ほんのちょっとした首の傾げ方、
視線の方向、皺の刻み方で「思索」そのものが現出してしまっている。自己
完結しているのでない、明らかに「相手」がいる思索。何もしてやれることは
ないにしても、この厚みのある時間を、傍にいて見守らせてほしい…。

四谷シモンの人形をじっくり見たことは貴重な体験だった。人形一体一体
に固有のドラマがあり時間があり、鑑賞者はそれらを長い時間かけて想像
しなければならない。鑑賞者が自分勝手に作り上げた安易なストーリーは
人形たちによってすぐさま笑われ、否定されてしまうだろう。従って鑑賞者
は想像すると同時に、自分の想像を否定しなければならない。他者の固有
性に触れていくことの快感と緊張感が同時にそこには存在するのである。
鑑賞することが文字通りの「体験」であるようなこの展覧会。四谷シモン氏
には悪いが、人形の存在感の前に、役者シモンの影はすっかり薄くなって
しまったように思われたのであった。
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■ 中国古典で浅学菲才が直る?/掩耳(えんじ)
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<老荘思想>――を語ってはならない、または余りに安易な古典の学問とは

中国古代の思想の中には、現代の西欧思想にも深甚な影響を与え続ける、実
に現代性豊かな(素粒子理論との関連で語られちゃったりします)モノがあ
ります。その名は老荘思想。西欧流に言う<タオイズム>ちゅうやつですね。
まあ『老子』と『荘子(そうし、でもいいけど、そうじ、と読む方が慣用)』
の思想のことです。

この思想の主な特徴を列挙しますと・・
1)すべての根源には大いなる<道>――これがタオですな――というもの
が存在する。
2)この道の存在を知った者にとって、世俗の価値観――美醜や出世、死生
なんてものまで――すべては、同じモノでしかない(万物斉同と言います)
3)すべては同じモノということがわかると、一見、無用と思われるものに
も、深い働きがあるということまでわかっちゃう・・

まあ、こんな思想なのですが、この老荘思想、実は一つ大きな落とし穴があ
ります。
それは、老子と荘子って、<老荘思想>という言葉でひと括りにされて語ら
れることが多いんですが、よく考えれば、そりゃ使用タームが似ているだけ
じゃん、ひとまとめにしたらマズイじゃんってシロモノ、ってことなのです。

では、何がそんなに違うのか。
まず『老子』。ものごとの根源には道があるとか、美醜は同じとかいろいろ
語っていますが、その根本にあるのは、この世の中でうまく生きて抜いてい
くにはどうすればよいか、なのです。
つまり、『老子』とは、ズバリ言うと、マザコンの下請け企業の社長の思想
なのです。
『老子』の教えから、その理由を列挙します。
1)生をまっとうする(生き抜く)ためには、強いモノ(現代でいえば大企
業・取引先)には絶対さからわない。弱さ(まあ、ヘコヘコするということ
でしょうか)に徹してしぶとく生き残るべし。
2)強弱や美醜といった価値観は相対的でしかないと、(大企業に良いよう
に苛められる)自分の境遇をなぐさめてみる。
3)赤ん坊にもどって母親の胸ですやすや寝るようなせ界が理想だなどと現
実逃避を夢想する(まあ、マザコンですな≪笑≫)。でも、夢想するだけ。
4)そのくせ、国家の政策はこうでなくちゃ駄目だとか、(現代の社長が居
酒屋で一席ぶって憂さ晴らすように)語ってみたりする。
5)そのうえ、戦争もこうやんなきゃ駄目だとか言い始める(現代で言えば
やはり居酒屋で、プロ野球の監督の采配に云々するようなもの??)
・・どうです。そこいらへんにゴロゴロする、下請け社長そのまんまやない
っすか??

一方、『荘子』は違います。
『荘子』の思想は、ズバリ、脱現実社会。つまり、こんなイヤな世の中から
は、逃げちゃえ、背を向けちゃえ、という思想なのです。

つまりですねー、ものすごい極端な比喩を使うと、<老荘思想>という言い
方は、中小企業向けコンサルタントと、サリン撒いたとされる某宗教教団を
一緒に表現しちゃったようなものなのです。もし現代で、使っている言葉が
似ているからと言って、この2つをひと括りにして語ったら抗議殺到やない
っすか?これ、中国古代の話だから、抗議なしで無事に済んでるだけの気も
します。まあ、良い商売してます、古典学者の人は(笑)
あ、実はこの老荘の違いには、さらに面白い傍証もあるのです。これは次回
で・・
(続)
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■あとがき
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>この夏、食品の異物混入が話題になりましたねー
>はあはあ
>友人が、食品工場(おにぎり)で働いてるんですが、やっぱトラブルは、
週に一回くらいは起きるんだって。当然、異物混入以外も含めてだけど・・
>え、そんなに!!?
>一応、衛生基準のマニュアルとかあるんだけど、それを守っていると時間
内に決められたおにぎりの個数を作れないんだそうな。
>え、じゃあ生産目標と衛生マニュアルがそもそも矛盾してるんだ。
>そうそう、工場経験とかの少ないお偉いさんが頭で作ったり、できないと
わかってて言い訳のタメにマニュアル作ったらしい・・
>それは現場が言い迷惑ですね・・。でも、あの異物騒ぎはちと異常ですな
>そうだよー、虫なんか、薬じゃ薬じゃとか言って食べちゃうのがおばあち
ゃんの知恵だったのにねー(笑)。まったくご先祖様に顔向けできない不肖
の消費者&マスコミですな。昔の何でも食べて、ものを粗末にしないおばあ
ちゃんに懺悔しなさい(笑)
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