[本]のメルマガ

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[本]のメルマガ vol.400
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□■[本]のメルマガ【vol.400】10年7月25日発行
                    [400号まできちゃったよ 号]
 http://honmaga.net/
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□■     創刊は1999年5月10日、現在の読者数は5744名です。
■□ 「まぐまぐ」で、殿堂入りメールマガジンのひとつに選ばれました。
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★トピックス
→交通新聞社新書ありがとう1周年フェア

★「甘くて苦いイタリア」 雨宮紀子
→休載です。

★「今月のこの一冊」 小谷敏
→サッカーワールドカップの知られざる貢献

★「ちょっとそこを詰めていただけませんか」 竜巻竜次
→「マック」と「マクド」、呼称の精神性・・・というほどでもないかw

★「はてな?現代美術編」
→休載です。

★「共産趣味のススメ」葉寺覚明
→新連載・共産趣味界の福沢諭吉登場!ただしカネはないw

★「日豪戦争」内藤陽介
→新連載・オーストラリアは日本と戦争したことを忘れていない
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★PR★ 原 書 房 最新刊 ★ http://harashobo.co.jp/

『ヒトラーとシュタウフェンベルク家
 --「ワルキューレ」に賭けた一族の肖像』

ペーター・ホフマン著 大山晶訳
四六判 460頁 定価3360円 ISBN:9784562045891

名門貴族出身のシュタウフェンベルク伯爵がついにヒトラー暗殺を実行するま
での葛藤を、一族の栄光の歴史と膨大な資料から綴った真実の物語。

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■トピックス
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★交通新聞社新書ありがとう1周年フェア
2001年「定刻発車-日本社会に刷り込まれた鉄道のリズム」で読書界に衝撃を与
えた交通新聞社が、いつの間にか鉄道専門の新書を出していた!
ただいま1周年フェアで、「鉄道の見える客室」宿泊券などが当たる。
http://www.kotsu.co.jp/book/shinsyo/PRE2010.html
http://www.kotsu.co.jp/book/shinsyo/index.html


■トピック募集中です!

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■今月のこの一冊 グロバール化した世界を斜め読みする 小谷敏
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サイモン・クーパー ステファン・シマンスキー著 森田浩幸訳 『ジャパン
はなぜ負けるのか 経済学が解明するサッカーの不条理』 NHK出版 20
00円

ワールドカップが終りました。日本代表の前評判は最悪でしたが、国外のワー
ルドカップでは初めての決勝トーナメント進出を果たしました。本田選手とい
う新しいスーパースターの誕生。パラグアイ戦でPKを外した駒野選手の悲嘆。
これらはもちろん印象深い事柄ですが、開幕前とは掌を返したように岡田監督
の手腕を讃えるメディアの対応には笑えました。先見性という意味では蛸にも
劣る批評家たち。日本サッカーというよりも、日本のサッカージャーナリズム
のレベルの低さを浮き彫りにした大会であったと言えそうです。

本書の著者、ステファン・シマンスキーは計量経済学者。アメリカで生まれ当
初からビジネスとして発展していった野球と違い、ヨーロッパで生まれ、宗教
や労働運動の広告塔のような形で発展していったサッカーには、基本的に儲か
らない構造があることを明らかにした『サッカーで燃える国 野球で儲ける国』
(アーサー・ジンバリストとの共著・ダイヤモンド社)は、スポーツ社会科学
の名著です。シマンスキーの鋭利な計量経済的分析を、サイモン・クーパーの
幅広い見聞が補強していく本書の主張には強い説得力を感じます。

過去の膨大なデータの解析を通してシマンスキーは、サッカー強国とは、人口
が多く、国民所得が高く、サッカーの経験値の高い国であるといいます。なる
ほど。今大会の3位までをヨーロッパの豊かな国々が占めました。

ブラジルとアルゼンチンについても、人口とサッカーの経験地は大変なもので
す。日本は人口も多く、世界に冠たる経済大国。足りないものはサッカーの経
験値だけ。ヨーロッパの有力クラブチームに進む選手がたくさん出てきて経験
を積めば、将来のワールドカップ制覇も夢ではないと二人の著者は言います。

優れたプレーに対しては、そしてよく戦ったチームに対しては、惜しみない賞
賛を贈る素晴らしい観客の存在こそが、日本サッカー界の宝です。2002年
の韓日ワールドカップのベルギー戦では、得点を喜ぶベルギーサポーターの「
アイーダ」の合唱に日本人サポーターが加わっています。

決勝トーナメントの日本対トルコ戦では、勝ったトルコに対しても、敗れた日
本に対しても、等しく大きな拍手が起こりました。この二つが韓日ワールドカッ
プにおけるもっとも感動的な光景であったと、著者の一人クーパーは述べてい
ます。

ワールドカップの経済効果は、何百億円といわれていますがそれは眉唾もの。
関連グッズの売り上げが増え、スポーツパブが繁盛したとしても、サッカー関
係以外の支出が削られるだけ。差し引きはゼロです。

寝不足の人が増え、自国のチームが負ければみんながイライラするワールドカッ
プなどなくなればよいのか。そうではないと著者たちは言います。ワールドカッ
プの開催中はどこの国でも顕著に自殺率が下がります。ワールドカップには共
通の話題を提供することで人々を孤独から救い出し、幸福感を生み出す力があ
るのです。

◎小谷敏
大妻女子大学人間関係学部教授。「余命5年」の難病から生還し、こうしてモ
ノが書けること感謝。最新刊「若者は日本を変えるか-世代間断絶の社会学」世
界思想社

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■ちょっとそこを詰めていただけませんか 竜巻竜次
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今回は「かなりどうでもいいけど以外に気になる話」

先日、こんな記事をmixiで見つけた。
いわく「マクドと略す派に心強い情報」とあり「2008年7月のアイシェア調査に
よると、東日本では「マック」派が84.4%で多数派なのに対して、西日本では
「マクド」派が52.3%で多数派となっている。

しかし名刺交換をすると社員のアドレスは『@jp.mcd.com』つまり正式な略は「
マクド」と言う事になる。」と。(少々古い調査ではあるが)

ほらね!なにが「ほらね!」か分らないが社名から考えて「マック」になるの
は無理であろうと考えていた自分の意見が証明されたような気になった。
McDonaldのどこに「a」があるんだ!言ってみろ!略せば「Mcd」でしょうが!
なにカッコつけて「マック」なんだよ、と。

(「マック」は会社自らが愛称として使っているのだから別にカッコつけたわ
けではもちろんないが。)

ただし、こう思うのはあくまで自分サイド、関西サイドに立っての話でこれが
店側から「朝マクド」とか「マクドシェイク」とか言われると、「ちょっとそ
れは違うやろ」と考えてしまう。
これはなぜなんだ?

これはもしかすると「隠語であること」を求めているのではないだろうか。
上から与えられた物ではない自分たちだけの略語、自分たちだけの共通語であっ
てお墨付きが欲しい訳ではけっしてない。

逆に「そうですよ、マクドが正式なのでこれからはすべてマクドで行きますね」
とか言われようモノなら「すみません、理屈はそうでしょうが「ド」ってゆー
のはどうなんでしょうねぇ・・、朝はマックでいいんじゃないでしょうか」と
言いたくなるぐらいだ。

本流になるのがむずがゆい訳で「そっちはマックでいいんじゃないの、こっち
はこっちでマクドで行かしてもらうから・・ま、ホンマゆーたらこっちが正式
やねんけどね」的な気分が欲しいのだ。

いかにも中央嫌い、東京嫌いの関西人の感覚かもしれない。
そして先の調査で関西でも約半分弱の人間は「マック派」だと言う事に少し驚
かされた。つまり二人に一人が「マック」と言ってる訳だ。

関西固有の文化、反骨心はどんどん先細りになって行くのかと淋しく思えてし
まったのだが、よくよく考えたら「McDonald」はマクダーナルズと発音するの
が正しいのだから「マクダ」と略してる人がいないとも限らないかな?


◎竜巻竜次
マンガ家 自称、たぶん♀。関西のクリエーターコミュニティ、オルカ通信の
メンバーとしても活躍中。この連載も、呑んだ勢いで引き受けてしまった模様
http://www.mmjp.or.jp/orca/tatumaki/tatumaki.html

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■共産趣味のススメ 葉寺覚明
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第1回
はじめまして。共産趣味者の葉寺覚明と申します。「共産主義」ではありませ
ん。趣味です。「共産趣味」という言葉は、インターネットの中ではそこそこ
定着しているとは思いますが、聴きなれない言葉だと思っている方もおられる
のではないでしょうか。

共産趣味というのは、簡単にいえば「共産主義」な存在(共産主義者の方々と
か、団体とか国家とかです)をワッチするという趣味のことです。いまやすっ
かりの絶滅危惧種「ヘルメットにタオル」の人々や、毛語録や金日成バッジな
どの共産圏グッズというと分かりやすいでしょうか。旧ソ連の武器とか飛行機
とか、かっこいいですよね?

そんな「共産趣味者」の中には、共産主義という「思想」を考察したりする方
々もおられます。もちろん、左翼運動の経験があったりして、今もそれなりに
思い入れがあって読んでる方々もそこそこおられますが、私のようにこういう
本を娯楽として扱っている人というのは、あまり多くはないのかも知れません。

ちなみに、私はマルクスなどが書いた本は、まああほなりにそこそこは読んで
はおります。ある程度共産主義というものが分かっていないと、考察するのに
困るからです。必ずしも、右だの左だのというような、自分の思想のために読
んでいるというわけではありません。私の場合は動機は不純ですが、ヨーロッ
パ史を研究する場合、キリスト教の知識がないと困るのと同じようなものとい
うふうに考えております。だめですか(笑)?

そんな理由で共産主義者が書いた文書を読んでみますと、大真面目に読んでる
人々がいるというのに、読んでてすごく面白いということに気がつきました。
まさに「笑って楽しむトンデモ本」(疑似科学という意味ではありません。書
いている本人は大真面目なのに、文字通り「笑って楽しめる」本です)が、世
の中にはあるのだということを実感したわけです。

私の場合、まあマルクス・レーニン主義の古典も、文体の冷徹ぶりなどがけっ
こう好きなのですが、特に「スターリン主義」と見なされているような、例え
ば「スターリン万歳!」とかなんとか書いてある文書がもう、大好きです。毛
沢東とか金日成とかチャウシェスクとか、共産圏の個人崇拝コンテンツ、もう
思い出すだけで萌えてしまいます(笑)。住みたくはないけど(爆笑)

そんなスターリン大元帥ですが、今でこそスターリンというと、極悪人だとい
うイメージが定着しまっくていますが、一方でいまだに尊敬している人々も少
なからずいますし、昔はもっとたくさんいました。共産圏はもちろんのこと、
日本も例外ではありません。

天下の『朝日新聞』がスターリンのことを「子ども好きなおじさん」などと書
いていたのは有名ですし、スターリンが死んだときは、築地本願寺で盛大な法
要が行われました。もちろん、圧倒的多数の日本人はソ連もスターリンも大嫌
いでしたが、その一方、それくらい慕っていた人々もいくらかは存在していた
わけです。今ではもう大笑いするしかないのですが、事実なのですから仕方が
ありません。

スターリンは、そこらの「ほめ殺し」などとは比べ物にならないレベルで賞賛
されていました。なにしろ「レーニンの弟子にして戦友」という、とてつもな
くえらいお方です。ほめ言葉は、いくらあっても足りません。今ですと金正日
総書記が、北朝鮮つながりの方々の間で賛美されまくっていますが、スターリ
ンは世界の6分の1以上の地域で賛美されておりました。

スターリン様はスーパーヒーローなので、当然、悪役もいなければなりません。
悪役というのは、帝国主義者やファシストはもちろんですが、メインの悪役は、
やはりトロツキストやブハーリン一味、つまり大粛清の対象になった人々のこ
とだったりします。今でこそ大粛清は非難の対象になっていますが、「スター
リン批判」以前は、大粛清はむしろ、スターリンの功績のひとつとされていま
した。

そんな正義のスターリンが、極悪非道の反革命を粉砕したわけですから、当然、
いかにトロツキーらが処刑に値する連中なのかが延々と書かれるわけです。罵
詈雑言の語彙も豊富です。もともとマルクス主義の泰斗が書いた文は、ただで
さえ罵詈雑言がちりばめられているのですが、なにせ相手はブルジョアよりも
憎たらしい裏切者スパイ一味です。

少しばかり挙げても、「ちっぽけな虫ケラの力にひとしい…白衛軍の一寸法師
ども」「不用なガラクタとして、いつ何時でも事務室からほうりだされる国家
の臨時雇員にすぎない」「鬼畜の輩」とか、もう救いようがありません。

ほかにも、赤軍を作ったのはホントはトロツキーなのに、スターリンがつくっ
たことになっていたり、トロツキストが「若くてあまり党のことを知らない党
員にデマを吹き込んだ」とか、「ナチスの手先になってキーロフを暗殺した」
とか延々と書いてあるので、ずっと読んでるとなんだか大粛清がとってもすば
らしい正義の鉄槌に見えてしまうから困ったものです。

ちなみに、戦前の日本共産党も「ごろつきー!トロツキー!」と書いておりま
したし、戦後も「トロツキスト」(具体的には、いわゆる「新左翼」のことで
す。トロツキストではない新左翼も含まれますが…)への憎悪は相当なもので
した。

なにしろトロツキーは「革命のユダ」ですから、まあ当然といえば当然であり
ましょう。もっとも、最近では罵倒語としての「トロツキスト」というのは、
あまり見られません。これも時代の変化というやつでしょうか。

スターリンが死んだとき、ソ連はもちろん、世界中の「平和勢力」の皆さんは、
こぞって「スターリンの不滅の名前は、つねに、ソヴェト国民と進歩的な全人
類の心のなかに生きるであろう」などとほざきまくっておりました。今の基準
ですと理解に苦しむ方も多いかと存じます。まあスターリンは、否定的な意味
でも人類の心のなかに生きているお方だとは言えますね(苦笑)。

そんなスターリンですが、死後たった3年後の1956年、フルシチョフが有名な「
スターリン批判」をし、スターリンの権威はサブプライム以降の株のように大
暴落してしまい、スターリンを賛美する人々は、絶滅とまではいきませんでし
たが、かなり減少しました。たった数年前はスターリン賛美本なんてものは腐
るほどあったというのに、もう目も当てられません。

そんなスターリン賛美本は、どれもすごくおもしろいのですが、中でも極めつ
けは、1954年に理論社が出した詩集『スターリン讃歌』ではないでしょうか。
原爆落とされまくってアメ公に打ちひしがれている人たちが、スターリンが死
んだ1953年の1年後を記念して、スターリンへの熱い思いを詩にしたためたとい
う本です。

が、いくらアメ公が憎たらしいとはいえ、それ以上に憎まれているスターリン
をつかまえて、「スターリンさん、ありがとう!」「やさしいまなざし」とか、
そんな詩ばかりが収められています。筆者も野間宏、壺井繁治、土方鉄などと
いった豪華ぶりです。

こんなすばらしい詩集が上梓された、そのたった2年後にフルシチョフが「スター
リン批判」をしでかしたことを考えると、もう笑いが止まりません。当然のこ
とながら、まじめな共産主義者の中には、ハンガリー動乱とかで衝撃を受けま
くった人たちが少なからずいまして、いわゆる「新左翼」の源流のひとつにな
りました。

以上、ほんの少しばかり、共産趣味者が見た「共産主義」な文書の魅力を、自
分なりに書いてみました。悪趣味といえば悪趣味かもしれませんし、娯楽とし
て読めとまでは申しませんが、普段とは異なるアプローチをしてみるのもおも
しろいのではないでしょうか。読むだけで頭の痛くなる共産主義の本が、また
違ったふうに見えるかも知れません。


葉寺覚明
共産趣味者。古今東西の膨大な左翼文献や資料を収集しすぎたため、本の重量
に家屋が耐えきれなくなりつつある模様。「だれか共産趣味博物館を作って館
長にしてくれて、賃金奴隷の身分から解放してくれるなら全資料を寄付するの
に」と夢想しているという噂
http://maoist.web.fc2.com/
http://www.geocities.co.jp/WallStreet/7903/stalin/

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■日豪戦争 内藤陽介
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第1回

間もなく8月15日がやってくる。
毎年、この時期になると、新聞等で日本が米国と戦争をしたことを知らない若
者が少なからずいるとの調査結果が発表され、識者と称するタレントが歴史の
風化や若者の無知を嘆いてみせるというのがお約束となっている。

しかし、こうした光景を見るたびに、僕にはあるひとつの疑問がわきあがって
くる。なぜ、米国だけではなく、“英国”とも戦ったのだと一言付け加える者
が少ないのか、と。

昭和天皇の開戦の詔勅には、「朕茲ニ米國及英國ニ対シテ戦ヲ宣ス」としっか
り書かれている。また、当時の帝国臣民の生活の中には、“鬼畜米英”という
スローガンが氾濫していた。さらに、“大東亜戦争”の大義が、欧米列強の植
民地支配からアジアを解放するためことにあったのなら、大日本帝国の主敵は、
フィリピンしかアジアに植民地を持たなかった米国ではなく、アジアの広範な
地域を植民地支配下に置いていた英国というのが戦争の大義に沿った理解であ
ろう。

ところで、一口に“英国”といっても、日本が戦ったのは英本国=イギリスに
限定されているわけではない。かつて日の沈まぬ帝国と呼ばれた大英帝国は、
第一次大戦後の国力の衰退に伴い、海外自治領の発言力をある程度認めざるを
得なくなった。このため、1931年のウェストミンスター憲章により、海外自治
領には外交権が与えられ、英本国と海外自治領は、英国王を共通の国家元首と
した主権国家の平等な共同体、すなわち英連邦を構成することになった。

この結果、自治領の議会は英本国の議会の支配を受けず、英本国は自治領に対
して法律を押しつけることができなくなり、自治領は事実上の独立国となった
が、国家元首はあくまでも英国王であり、その意味では旧大英帝国の枠組みも
辛うじて残されたといってよい。

1939年9月にナチス・ドイツとの戦争が勃発したことで、英連邦に加盟するカ
ナダ、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ連邦の各主権国家はド
イツと戦うことになった。また、英連邦加盟の主権国家以外にも、英領インド
や直轄植民地も“英国の戦争”に否応なしに動員されている。

たとえば、直轄植民地だった香港では、日中戦争下の中国との国境沿いに構築
されていた醉酒灣防線のほかに、香港島南岸には鉄条網が準備され、灯火管制
の演習も繰り返されたほか、白人男性の徴兵も始まった。1941年初頭の段階で
は、香港に駐留していた“イギリス軍”は本国から派遣された歩兵二個大隊と
インド軍二個大隊が中心で、日英開戦直前の11月に香港に到着した増援部隊は
カナダ軍であった。

この一事をもってしても、日本が戦った鬼畜米英の“英”の部分が、決して、
イギリスを指すのではなく、英連邦のさまざまな地域から成り立っていたこと
がわかる。
このように、さまざまな要素をはらんだ“英国”のなかでも、日本との戦争の
実質的な主役となったのがオーストラリア軍であった。そのひとつの証拠とし
て、1枚の切手を紹介しておこう。

http://blog-imgs-45.fc2.com/y/o/s/yosukenaito/20100724215420be3.jpg

これは、オーストラリア地図の輪郭の中に、カンガルーが描かれたデザインの
2シリング切手の上に“B.C.O.F. JAPAN 1946”の文字が加刷(すでにある切手
の上に文字などを後から印刷すること)されたものだ。

加刷に用いられた切手は、1946年1月3日にオーストラリアで発行されたもの
だが、このデザインそのものは1913年に発行されたオーストラリア連邦最初の
切手(それ以前のオーストラリアには連邦共通の切手はなく、州ごとに異なる
切手が発行されていた)と同じで、デザイナーはB.ヤングである。

加刷されている文字の“B.C.O.F.”は“British Commonwealth Occupation
Forces”、すなわち、“英連邦占領軍”の意味である。
中学・高校の歴史教科書では「敗戦後の日本は連合国の占領下に置かれたが、
実質的には米軍の単独占領だった」と説明されている。もちろん、この記述は
間違いではない。

ただし、“実質的に”という表現が入っているのは、割合は少ないながらも、
米軍以外の占領軍が進駐していたことを意味している。そして、米軍以外の占
領軍のうち、一番規模が大きかったのが英連邦軍であり、その主力はオースト
ラリア軍だったのである。

日本に進駐してきた英連邦軍が、オーストラリアの切手に“B.C.O.F. JAPAN 
1946”の文字を加刷した切手を発行・使用したのも、英連邦対日占領軍におけ
るオーストラリア軍のプレゼンスが圧倒的に大きかったからにほかならない。
そして、多くのオーストラリア軍将兵が勝者として日本に上陸してきたのは、
彼らが、対日戦争で払った多大なる犠牲の対価によるものである。

このため、現在でもオーストラリア国内では、“対日戦争”は国家にとって多
大なる苦難の時代として語り継がれている。その中には、日本人としてとうて
い看過できないような事実の捏造も少なくないし、その結果として、かの国で
は反日感情が伏流しつつ再生産され続けているという現実は見逃してはならな
い。

ひるがえって、そもそも、“日英戦争”があったことさえ、もはや曖昧になっ
ている日本では、オーストラリアが日英戦争の“英”の主要な構成要素であっ
たことなど、ほとんど忘れられているのが実情である。

そこで、この連載では、日本が戦った先の戦争を、オーストラリアを軸に見直
してみようと思う。その際、ひとつの切り口として、当時の切手や郵便物を狂
言回しとして使ってみたい。

ある地域で切手を発行し、郵便サービスを提供するということは、その地域が
切手発行国の政治的ないしは経済的な影響下におかれていることの証となる。
このため、戦争や革命などの混乱期には、その地域の実効支配者は通貨に次い
で切手を発行するのが常であるし、それが不可能な場合には、スタンプだけで
も用いて郵便事業を行うものである。郵便事業を民営化する国が少なくない現
在ではなかなか見えづらくなっているが、郵便活動というのは、本来的には主
権行使の具体的な一例だったのだ。

 改めていうまでもなく、オーストラリアと英本国で使われている切手は全く
別のものだ。英連邦の一員であるとはいえ、オーストラリアが英本国とは別の
主権国家である以上、当然のことである。

したがって、第二次世界大戦中にオーストラリア軍の展開していた地域から、
オーストラリアの切手を貼って、オーストラリアの郵便システムを用いて運ば
れた郵便物を眺めていけば、英本国ではなく、オーストラリアにとっての戦争
を具体的にイメージしやすくなるのではないかと考えたのだ。

近年、環境保護を騙る犯罪者集団“シーシェパード”がオーストラリアを根拠
地の一つとし、日本の調査捕鯨に対して卑劣なテロ攻撃を繰り返しているが、
これに対してオーストラリアの政府高官がテロリストではなくわが国を非難す
るという、信じがたい事態が起こっている。

その背景には、オーストラリア社会に抜きがたく浸透した反日感情があること
は間違いない。そして、国家としての“対日戦争”の体験が、そのひとつの源
泉になっていることはだれにも否定できないであろう。

中国や韓国の反日感情は、彼らの主張が妥当なものであるかどうかは別として、
僕たちにもわかりやすい。これに対して、日本人の新婚旅行先としても人気の
高い“コアラとカンガルーの国”と反日のイメージはなかなか結び付かない。
それだけに、彼らのバックグラウンドとしての“日豪戦争”(彼らの視点から
いえば“豪日戦争”というべきか)の痕跡をたどってみることは、それなりに
意味のあることだと思う。

同時に、郵便学者という看板を掲げている僕としては、切手や郵便物というフィ
ルターを通じて、新事実の発見や歴史的事実の新解釈という点でのオリジナリ
ティはともかく、いささかなりとも従来とは異なった視点からの歴史絵巻を展
開することで、読者のみなさんに楽しんでいただけるのであれば、これに勝る
喜びはない。

次回以降、よろしくお付き合いいただければ幸いである。

内藤陽介(ないとう・ようすけ)
1967年、東京都生まれ。東京大学文学部卒業。郵便学者。日本文芸家協会会員。
フジインターナショナルミント株式会社・顧問。切手等の郵便資料から国家や
地域のあり方を読み解く「郵便学」を提唱し研究・著作活動を続けている。主
な著書に、戦後記念切手の読む事典<解説・戦後記念切手>シリーズ(日本郵
趣出版、全7巻+別冊1)、『外国切手に描かれた日本』(光文社新書)、『
切手と戦争』(新潮新書)、『皇室切手』(平凡社)、『満洲切手』(角川選
書)、『大統領になりそこなった男たち』(中公新書ラクレ)など。8月下旬、
最新作『事情のある国の切手ほど面白い』(メディアファクトリー新書が刊行
予定
http://yosukenaito.blog40.fc2.com/

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り、広告は随時募集中です。詳細はメールにて編集同人までお尋ね下さい。

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■編集後記
400号記念の号というのにレギュラー執筆陣のお二人がニ、三ヶ月休載というこ
とで、お二人の短期集中連載をお願いしました。短期で済むかは著者に聞いて
くださいw

趣味と言えば、最近の個人的トピックをひとつ。鉄っちゃんの友人が鉄道の枕
木を使って駐車場を造っている時に、見知らぬクルマがやってきて停まった。
クルマから出てきたのは、みんなが知ってる某タレント。TV東京の「田舎に泊
まろう」でも来たのかとビックリしていると、またまた通りがかったのだが、
鉄道趣味者と見てお願いがあると言う。

高齢により引退し、子供の世話になるため自宅を処分するのだが、庭にある某
電鉄の信号機の引き取り手を探している。愛着があって鉄くずにするには忍び
ないので「もらってくれないか」とのこと。

で、友人から一人では動かせないと思うから来てくれと言われて手伝いに行っ
たのだが、これがまた重い。家人に聞けば自宅に入れる時には8人がかりで持っ
て来たと言う。それを先に言ってくれw

二人で動かせるようなものではないため、雨の中、五つくらいに分解したのだ
が、これがまた一苦労。遮断機も下りればカンカン音も赤点滅もする完動品な
ので、部品を外すと配線が出てきてこれをどう処理するのか外すごとに沈思黙
考・・・なので余計に時間がかかった。

帰りの高速道路は、軽トラックのアクセルをベタ踏みしても80キロしか出ない
・・・そうして、友人宅には信号機が鎮座。現在配線に悪戦苦闘中。

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