[本]のメルマガ

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[本]のメルマガ vol.725


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■■ [本]のメルマガ                 2019.08.05.発行
■■                              vol.725
■■  mailmagazine of books         [そろそろ、旧のお盆 号]
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『図解 異常気象のしくみと自然災害対策術』

ゲリー・マッコール著 内藤典子訳
A5判 192ページ 本体1,800円+税 ISBN:9784562056439

予想不能のゲリラ豪雨、台風による冠水や暴風、落雷…異常気象のしくみと災
害の発生をイラストでわかりやすく紹介。自然災害大国アメリカの防災アドバ
イザーがおくる、あなたと家族を守るためのガイドブック。

■CONTENTS------------------------------------------------------------

★トピックス
→ トピックスをお寄せください

★味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
→ その38「幽霊と囲む食卓」その2『黄泉から』

★ホンの小さな出来事に / 原口aguni
→ 転生したら?

★声のはじまり / 忘れっぽい天使
→ 今回はお休みです。

★「[本]マガ★著者インタビュー」
→ インタビュー先、募集中です。

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■トピックス
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■トピックスをお寄せください
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 出版社の皆様、あるいは出版業界の皆様より、出版関係に関わるトピックス
(イベント、セミナー、サイン会、シンポジウム、雑誌創刊、新シリーズ刊行
など)の情報を、広く募集しております。

 情報の提供は、5日号編集同人「aguni」hon@aguni.com まで。

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■味覚の想像力−本の中の食物 / 高山あつひこ
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その38「幽霊と囲む食卓」その2『黄泉から』

 何度も言うようだが、私は幽霊が苦手だ。

 だからこう書いていながら、幽霊と食卓を囲むなんて本当のところぞっとし
ないねと思っているのだが、そんな私でも嬉々として亡き人の霊と共に食卓を
囲みたい日がある。

 そう、それがお盆だ。

 実は私は、お盆の風習をあまり知らない。典型的な核家族で育ったことに加
え、親が京都人だったせいもある。あちらでは、これだけ盛大な五山の送り火
をしているのだから、送り火はもちろん迎え火も必要ない、というふうに過ご
していたらしい。実際マンション住まいでは気軽に迎え火を焚くわけにもいか
ないから、今でもせいぜい故人の好物を仏壇に供えて、みんなで食事をするく
らいで過ごしている。

 お盆というものはフランスにもあるようで、そんな風景や、戦前の下町のお
盆の様子が描かれている物語がある。

 それが、久生十蘭著の『黄泉から』という作品だ。
 
 物語は、戦争が終わった次の年のお盆の日から始まる。

 主人公の光太郎は、電話でこんな品々を注文する。

「ショコラ、キャンデイ、マロン・グラッセ、ブリュノオ……」

そして、

「女の子が飲むような甘口のヴァン・ド・リキュウル」はなかったので、
貴腐ワインの「オゥ・ソーテルヌ」を用意させる。

それから銀座にまわり、

「ボン・トンで誂えさせたキャナッペ」

を抱えて帰って行く。

 是非、この文章はフランス語の発音で思い浮かべて欲しい。

“Chocolat, Candy,  Maron Grasse,  Pruneau……et  Haut Sauternes”

 戦後すぐの東京では、まず手に入らないような贅沢でハイカラな品々だ。
 
 電話の相手は、闇屋のような怪しげな相手だろう。若い女性を連れ込むため
の品だと決めつけていたようだが、実は光太郎が迎えたかったのは、死者の霊、
若い女性の霊なのだ。

 彼が誂えたのは、仏蘭西に憧れた若い女性のためのお供えの品なのだ。

 彼女の名はおけい。光太郎のたった一人の肉親で従妹だった。生きていれば
たぶん二十二、三歳くらいだろうか。仏英和女学校を出て仏蘭西人の私塾に通
っていて、やがてはソルボンヌに留学する予定だった。そして何より光太郎を
慕っていて、パリに留学中の光太郎に招かれる事を待ち望んでいたという。け
れど光太郎にとって彼女はあまりにも子供で、その思いにこたえるつもりはな
かった。留学中の八年間も連絡を取ろうとしなかったし、今の今まで彼女のこ
とを思い出してもいなかったのだ。

 けれどこの日、偶然駅のホームでフランス語の私塾の主のルダンさんに会っ
たことから、全てが始まったのだ。

 ルダンさんは戦死したかつての生徒たちの霊を迎えに、今からお墓に行くの
だと言うのだった。そして、彼らが生還したら開くと約束していた大宴会を、
お盆のこの日、その霊の為に催すのだと言う。ルダンさんは、従妹のおけいに
ついても、きっと大宴会に来てくれると思うと言う。

 おけいは、戦争の末期に軍属の和文タイプライターとして従軍し、ニューギ
ニアで亡くなったらしい。いまだに遺骨も戻らず、墓もないままなのだった。

 おけいについて語るルダンさんの言葉から、光太郎は、もはや子供ではなく
なっていた彼女の思いと自分の冷酷さを改めて思い知ったのだ。

 すべての仕事の予定をキャンセルし、お盆の準備を始めた光太郎だったが、
遺骨も仏壇もない家では、このご馳走をどこに供えればいいのかがわからない。
小机に並べてみたり、暖炉に移したり、ピアノの上に飾ってみたりと、あれこ
れしてみるのだがどうも落ち着かない。結局そのまま、ぽつねんと椅子に腰を
かけて、様々なことを思いだしながらこおろぎの鳴く声を聞いているしかなく
なってしまう。

 そこへ思いもかけない来客があり、光太郎は従妹の最後の様子を知り、さら
に従妹の霊がここにいることを確信するのだが、その物語は読んでからのお楽
しみにしよう。

 光太郎は銀座に店を構えていた家の息子という設定で、下町の祖母の家での
戦前のお盆の風景も覚えている。

「真菰の畳を敷いてませ垣をつくり、小笹の藪には小さな瓢箪と酸漿がかかっ
ていた。巻葉を添えた蓮の蕾。葛餅に砧巻。真菰で編んだ馬。蓮の葉に盛った
団子と茄子の細切れ……」

 葛餅に砧巻、団子と茄子の細切れ、そんなお菓子や料理を供えるものなのだ
という事を私も初めて知ったのだが、きっと舞台となった戦後すぐの東京では
こんな品々も手に入らなかっただろう。

 この他に、物語の中にはフランスのお盆と呼ばれるレ・モール「死者の日」
のペール・ラシェーズの墓地の風景も描かれている。秋の日に墓参りをする人
々を見ながら、墓地を見下ろす墓地展望亭というカフェで、死者を悼む人々の
中に混じって感慨にふけったこともある彼なのだった。

 この物語で残念なのは、主人公たちが食べ物を味わう場面が一切ないことだ。
たとえ一粒のショコラであっても、光太郎は従妹の霊と共に味わうべきだった
のではないだろうか?

 ショコラ、その甘い響きを口にしながら味わうことによって、死者が持って
いた異国への憧れや、あの世とこの世を繋ぐ儚い感覚を、共に感じられるので
はないだろうか?けれど、光太郎がその甘く官能的な菓子を口にすることはな
く、物語は進んでいく。

 最後に光太郎は従妹の霊を伴って、ルダンさんが自宅で開いているという死
者との大宴会に行こうとする。

 ルダンさんは弟子に対してはいつも大盤振る舞いで、アルムーズやシャトゥ
・イクェムとかのボルドオやブルゴーニュの古酒の栓を開けてその旅立ちを祝
っていたとあるから、すごいご馳走が用意されているかもしれない。けれど、
そちらのパーティの様子を見ることはなく、物語は途中の道で終わってしまっ
ている。

 物語の最後の一行で、光太郎は闇に向かって手を差し伸べる。この姿に幽霊
談の怖ろしさを感じるべきか、それとも私のように、ああ彼にとって従妹はい
つまでも幼い女の子の感覚なんだなという寂しさを感じるべきかは、ぜひこの
短い物語を手に取ってご判断いただきたい。

 そろそろ、旧のお盆だ。

 私も亡き人の大好物、シュウ・ア・ラ・クレェムなどを用意しようと思う。
そして、その笑顔を思い浮かべ共に味わうことで、私なりのお盆を過ごそうと
思っている。

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『黄泉から』久生十蘭著
「文豪の怪談ジュニアセレクション 霊」   汐文社
「女霊は誘う 文豪怪談傑作選 ; 昭和篇」  ちくま文庫
「久生十蘭短篇選」            岩波文庫 
「定本久生十蘭全集 6」          国書刊行会
「久生十蘭全集 第2」            三一書房,

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高山あつひこ:ライター(主に書評)。好きなものは、幻想文学と本の中に書
かれている食物。なので、幻想文学食物派と名乗っています。著書に『みちの
く怪談コンテスト傑作選 2011』『てのひら怪談庚寅』等

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■ホンの小さな出来事に / 原口aguni
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転生したら?

 お盆だから、というわけではないが、遅ればせながら『転生したらスライム
だった件』をAmazonプライムで見て、面白い。なんじゃこりゃ、と思ってマン
ガも読んでしまった。現在、12巻。続きが早く読みたいところである。

 ただ、マンガとアニメとを比較したとき、アニメ版の方がストーリーがよく
まとまっている気がしたので、その印象を記載したい。

 初めてこのラノベというかマンガというかアニメの話を聞いたときに、印象
としてはさほど面白さを感じず、フーン、という印象だった。しかし、実際に
アニメを見てみると、ほほう、なるほど、と思った。

 以下、できるだけストーリーをばらさないように書くが、ネタバレが含まれ
るかもしれないので、これから読む人、見る人は気をつけられたい。

 まず転生ものということで、うだつのあがらない主人公が転生して活躍する、
という話かと思えば、まあ、そういう側面もあるかもしれないが、ゼネコン勤
務で37歳ということで、ああ、そうなんだ、と。

 彼女が居ないという設定はまあ、いろいろこの世に未練が残りそうなので、
そういう設定と解釈。

 で、ストーリー開始早々に転生し、現世の話はまったくと言っていいほど出
てこない。あれよあれよという間に事件に巻き込まれて話がぐいぐい進んでい
く。

 このストーリー展開、何かに似ているな、と思ったら、シュミレーションゲ
ームのそれだ、と思った。戦って勝って兵を育てたり食糧を作ったり城を築い
たりとしていくうち、だんだんと強くなって領土を拡大していく、というゲー
ム。あれをストーリーに起こすとこうなるんかなーという印象である。

 このマンガを読んで、例えば、パズルゲームなんかもそのうちストーリーに
なるんじゃないかと、そんなことも思った。

 話は全体として、非常に御都合主義である。その御都合主義が「転生したス
ライム」ということですべて片付いてしまうところがすごい。しかし、その御
都合主義が気にならない仕掛けが強力な「敵」の存在。

ちなみに、私がこのタイトルを最初に見たのがこちら。

講談社 純利益64%増 電子書籍好調 紙の不振補う
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41565580R20C19A2X30000/

「人気漫画「進撃の巨人」や「転生したらスライムだった件」などの電子の単
行本の販売が好調で、売上高を押し上げた。」

とのこと。確かに、Amazonプライムとかでアニメを見て、続きを知りたくなっ
て電子書籍、というのは行動としてアリ、だと思う。

 そしてこの本のユニークなのは、もともと、下記のサイトでの掲載から始ま
った、とのこと。

転生したらスライムだった件 小説家になろう
https://ncode.syosetu.com/n6316bn/

 以前、どこかで紹介した『まおゆう』もネットでの小説掲載からのスタート
だった。

 ネットに小説(プロットレベル)を掲載する→面白いからメディアミックス
展開

 そんな流れが既にメジャーになっていることに、驚くが、では、なんでもか
んでもそうなるわけではない。やはりこのプロットが圧倒的に面白かったから
メディアミックス展開にも耐え、なおかつ、講談社という大型出版社の業績に
ついての記事にまでタイトルが掲載されるのだろう。

 いわゆる編集者というのは、やはり一般のヒトとは違う嗅覚を持っているん
だなぁ、ということを、しみじみと感じた作品であった。

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■「[本]マガ★著者インタビュー」:
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 メールにて、インタビューを受けていただける印象に著者の方、募集中です。
 【著者インタビュー希望】と表題の上、
 下記のアドレスまでお願い致します。
 5日号編集同人「aguni」まで gucci@honmaga.net

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■あとがき
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 お盆まっさい中ですね。台風も通過中です。(aguni原口)

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